FMラジオの実験




  1. FMテスト発信器の作成:


  FM受信器のマーカーとして、PICで作った信号を FM変調しながら発振する 簡単なテスト発信器を作成した。 市販のFMラジオで確認すると、45pFのトリマ・コンデンサーを回して 周波数 f = 80〜110MHzであり、5m以上の距離から充分受信した。 ただし、若干のスプリアス(他の周波数成分が同時に発射する)があるので あくまでテスト用である。

  LC発振回路には 可変容量ダイオード(1SV101)を入れ、発振段から周波数変調を入れるようにした。ダイオードに 5Vのプルアップ・バイアスをかけながら、PICからの信号電圧をかけた。 コイルは、φ0.6mmスズメッキ線をドライバーの軸に巻きつけて約5mmφの直径にした。
  また、アンテナに用いた φ0.7mmのステンレスワイヤは、安全のために先端を丸める。

  PIC(12F675)の信号データとしては、単なる方形波から 制御用信号までいくつかを出すことができる。 また、5V程度のマイク・アンプで変調すると、ワイヤレス・マイクになる。

      


  2. ストレート・タイプ受信器の実験:


  (1) 超再生受信器:

  超再生受信器は、トランジスタを発振停止〜発振の間の電流条件に設定し、その不安定な領域に電波が入ることによって、AMもFMも一度に増幅・検波してしまう仕組みとなる。 シンプルな割りに、感度はかなり良かった。 しかし、条件を設定する 5kΩVRの調整は非常にクリチカルで、すぐ条件が発振か停止のどちらかに偏り 聞こえなくなる欠点がある。 用いるトランジスタには、発振遷移領域が広いものを選ばなくてはならないと思われる。 帰還用コンデンサー(5〜10p)には この調整範囲を見て適当なものを用いる。
  (* 感度が良く、軽量なので、昔のラジコン受信器にはこの回路がよく用いられた)
    

  (2) カスケードアンプと FM復調回路:

  高周波増幅のFETは、発振しにくい カスケード接続とした。 位相コイル式のFM復調回路の一つであるが、ワイズ検波式にすれば位相コイルは不要になる。
  T1の共振回路は非常にクリチカルで調整しにくいので、この6p+7pTCの代わりに 20pポリバリコンを入れると、FM放送を聴くための同調回路になる。
  テスト発信器による試験では、市販のFMラジオと比較して感度はあまり良くないが、AFアンプを後につなげると スピーカーでも聞こえるようになった。

  


  (3) 高周波プリアンプ:

  マイクロ波帯まで使えるローノイズFET: NE3210S01 を用いて、同調回路付きのRFプリアンプを作製した。同調用コアは、トロイダル・コア(FT37−61)を用いたので、調整はブロードだった。 これを、上記のFM受信器につなげて、受信感度UPを図ったが、感度はそれほど変わらなかった。 このローノイズ・アンプは、本格的な受信アンテナから入力し、本格的なVHF帯受信機に出力した場合にその効果を発揮する。

  



  3. FMラジオ I Cを用いた受信器の作製:


  ストレート・タイプの受信器では、いずれも 受信する周波数帯域を狭めるのが困難であり、ノイズも同時に増幅してしまうので感度(S/N比)が悪く、アンテナをしっかり作るなど、電界強度が大きくなければ使えない。
  そのため、LC発振や水晶発振による局所発振と混合して 中間周波(FMや短波帯で一般に10.7MHz、AM放送で455kHz)をつくり 帯域を著しく狭めて、それから思い切り増幅する、いわゆる 「スーパーヘテロダイン方式」が、真空管の時代から、民生用・産業用・プロ・アマチュアを問わず どのような受信機でも普通に用いられている。
  ただし、トランジスタのみで作ると、回路がやや複雑で素人が簡単に作れないので、ここでは、FMラジオ専用 I Cである LM1800(三洋電機)を用いて 大幅に簡略化された回路で作ることにする。(* 300円FMラジオにも使われている ・・・ 買った方が作るよりもはるかに安い?100円だった時は”部品取り”の為にたくさん買われたそうである

 

  LM1800は、FMラジオ専用の I Cで、RFアンプ、LC局所発振、中間周波増幅(独自に I C 内部で 100kHz)、AGC(自動利得制御)、FM検波を内蔵し、AM/FM切替ができ、同調・局発用 LCと 簡単な部品を付けるだけで、低い電界強度でも非常に感度良く動作する。 電源電圧は3V。

  T1、T2のコイルは FCZ80MHzを使ってもよいが、ここでは 10mm角シールド・ボビンセットを用いて手巻きで作製した。(φ0.2ポリウレタン線 4T(2T+2T)で L=0.3〜0.4μH)
  調整はコアのねじの調整で行なったが、同調の T1はきわめてブロードであるが、局発の T2コイルは非常にクリチカルだった。T2のコアを回してFM放送を選局する
  (* T2を回して選局するのが難しいので、これらの 同調用、局発用コンデンサーのそれぞれに、20p+20pのバリコン(PVC、ポリバリコン)を入れて、通常のFMラジオとした方が良い。この場合、電源とアースがショートしないように、同調側のLCとアースとの間に0.01μ程度のコンデンサーを入れる。)

  I Cピンのピッチは1.78mmと狭いので、プリント基板への穴あけは ユニバーサル基板(ピッチ2.54mm)を約45度斜めに固定してφ.8ドリルで行なった。(ユニバーサル基板を使う場合は、I Cを45度斜めに付ける) I Cは足を交互に曲げて穴に差し込む。

  オーディオ・アンプには、TA7368P(Vcc2〜10V、40dB、1.1W: SP4Ω3〜6V、SP8Ω9V)を用い、電源3Vで(手持ちの)3Ωスピーカーを付けた。8Ωのスピーカーを鳴らす場合は、電源電圧を9Vにする。ただし、3Vと 9Vの2電源となる。

  (* 音声の増幅にはちょうど良いが、方形波信号の増幅には、出力波形が 積分回路を通したように歪んでいてそのままでは使えない。この場合、出力に微分回路を付けて修正する。 また、水晶発振による局所発振ができないので、ラジコンに使うような場合、周波数が安定しないので毎回調整するという事になる。)


 




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