熱電対温度計



  熱電対の起電力は、ゼーベック効果によって熱接点と冷接点に発生する熱起電力の差であり、数mV〜数十mV程度の微弱な電圧なので、増幅するオペアンプには 充分低い電圧までをも正確に増幅し、しかも、広い範囲で直線性が良いという性能が求められる。



  1. 初段オペアンプの選定:


  熱電対からの起電力を受ける 初段のオペアンプとしては、計装オペアンプ INA128(BURR BROWN製: ローオフセット 50μV max、ロードリフト 0.5μV/℃ max、ロー入力バイアス電流 5nA max、 電源 ±2.25〜±18V)を用いた。ローオフセットなので、出力電圧の±方向のバランスが良く、零点調整が省略できる。 INA128は、3個のオペアンプを組み合わせて1個のオペアンプにしたもので、1、8pin間に入れる により、オペアンプの電圧増幅率 G のみを変える構造になっている。
  Rは、5kΩVRで約10以上、mV表示 = ℃表示 となるように、G=24〜25程度を狙う。(*)

  * 仕様書より、 R = NC : G=1、 R = 50.00kΩ : G=2、 R =6.556kΩ: G=10、  R =2.632kΩ : G=20、  R =505.1Ω : G=100、 R =50.05Ω : G=1000、 R =5.001Ω : G=10000  など。

  このオペアンプ単独による増幅の場合、熱電対の冷接点を氷水で0℃にする古典的な方法で用いることができる。 後段に他の増幅器を入れないので、これが最も正確で、零調不要

  (cf. 入力電圧が、741などの初期からのオペアンプでは0.6V以下、NJU7032D、LM358Nなどでも 10mV以下になると信号を大きく歪ませるので、熱電対用初段増幅には使えない)

  


  2. 冷接点の補償回路:


  氷水を使わないで 冷接点の温度補償するには、Pt100(白金線抵抗体)と REF102(基準電圧発生器・10V)を用いてブリッジを構成して行なう方法がデータシートで推奨されているいるが、これらの部品が高価な上、手に入りにくい。
   

  そこで、負の温度勾配を持つ温度計測センサ S−8120C を用いて温度補償することにした。 K熱電対(C:クロメル(+)、A:アルメル(−))の起電力の温度変化は +40.7μV/℃ なので、これを打ち消すために、S−8120C(−8.20mV/℃、 V(mV)≒1713−8.20T(℃)、 Vcc=2.4〜10V)からの出力を抵抗分割して電圧を重畳する。起電力−温度直線の切片の電圧上昇分は、零調用抵抗で調整した。

    −8.20(mV/℃)×(2.342(kΩ)/(470(kΩ)+2.342(kΩ))) + 40.7(μV/℃) ≒ 0 、  2.342(kΩ) = 2.2(kΩ)+120(Ω)+22(Ω)

 

  バッファのNJU7023Dの@は、R2(10kΩ)への零調用24kΩの抵抗からの影響を断ち切るために挿入した。 また、比較として、オフセット調整端子のあるオペアンプを実験したが(上右図)、調整範囲が届かなかった。  温度測定は、出力の mV = ℃ の表示とした。

  (アンプ部の 直線性の測定結果の一例)
     





  3. PICデータロガへの接続:


  前回作製した PIC16F877A データロガ(電圧計)に接続して、パソコンに自動的にデータを取り込めるようにする。

  この PICデータロガは、+側のみを測定することしか考えていないので、バッファ用オペアンプは差動アンプ゚を用いて 1電源動作(+5V・・・データロガより供給)に変換した。また、INA128の前段に零電圧調整部を設け、本来の使い方と同様に前段ブリッジとした。

  データロガーのプログラムには、ADコンバーターの出力値(0〜1023)をそのまま V = V*1 とし、5桁のうち上位3桁(buf[0]〜buf[2])のみを表示したので、分解能は0.5〜1℃、ただし、このPICが扱えるのは 2バイト領域=65535(=216−1)までで、しかも、PICも オペアンプも 5V以下で飽和するから、約600℃までの測定となる。 このとき、INA128で 36倍強、差動アンプで 5倍弱に増幅した。(600℃表示のとき、出力約4.5V) 1000℃まで測定する場合は増幅率を下げる。(分解能も下がる)
  * (追記) AD変換後のデータを取り出す記述を、 v=(ADRESH<<8)|ADRESL; から v=(ADRESH*256)+ADRESL; に変更します。前者は、PICのシフトレジスタの設計が悪くデータ取得ができないか不安定で、数値がふらつく原因となっている。
  測定時間はクロック発生器から与えるのが良いと思われるが、ここではタイマ0を用いて10(Sec)の時間を作った。

  パソコンに取り込むソフト:TeraTermの設定は、通信速度(ボーレート): 4800、 8ビット、 フロー制御: XON−XOFF。 液晶でモニターし、データロガの電源SWを一度OFFにしてからONすることで、パソコンへの記録スタートとする。

 

  調整は、まず、零点調整を 室温の水(18℃、棒温度計と共に挿入、18℃表示に合わせる) と、ゲイン調整を 沸騰水(100℃弱)で予備的に行い、次に、零点調整を室温水(18℃、)、ゲイン調整を 亜鉛(Zn、試薬1級)の凝固点(419℃、実際は不純物のため数℃低い、ステンレス容器で溶解)で行ない、これを交互に数回繰り返して調整した。亜鉛の凝固開始点は明瞭でなかったが、凝固終了点(不純物が濃縮)ははっきり出たので、終了点の手前の平らな所を凝固点とした。

  * 増幅器は、特に100℃以下では直線性が良くないので、それぞれの近辺の温度で使用するのが無難である。 また、電圧が微弱な領域を扱うので、保護管や測定系をシールドして 手を触れないなどの注意が必要。 保護管に手を触れるだけでも大幅に狂う。

  ** 100℃以下の温度測定では、半導体温度測定素子(LM35DZ・・・0−100℃・摂氏に比例した電圧出力(30℃=300mV)・精度±1℃、など)の方が、PICとの相性も良く簡単である。

  


  ●  ソース


  * INA128は、微弱な電圧の直線的な増幅に向いているので、±イオン検出器、(検波して)微弱な電磁波の検出器、希薄溶液のガルバニ電池の電圧測定、心拍計、細胞膜電位の測定など、いろいろな応用が考えられる。



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