銀の実験


     【 銀について 】

 銀は、比較的産出量が少なく、また、展延性に富む為、古くから貨幣、装飾品や工芸品に用いられてきた。(中世のある時期では金よりも高価な時があった。)
 銀の産出は、単独の場合もあるが、多くは銅、亜鉛、鉛鉱などに少しずつ混入しているので、それぞれの電解精錬時に生成する陽極泥から分離する。
 物理的性質は、原子量107.87、密度10.49、融点961.93℃、熱伝導率319(k=W・m-1・K-1、0℃)、電気抵抗1.47(Ω・m、0℃)であり、熱伝導率、電気伝導度は金属元素中最高である。
 化学的性質は、比較的安定で水素よりもイオン化傾向が小さいので、塩酸や硫酸には溶けない。しかし、酸化性の硝酸には溶けて硝酸銀を生じる。硝酸銀は他の銀化合物の製造の出発原料になる。
 シアンイオンやチオ硫酸イオンにはそれぞれの化合物の沈殿が出来るが、過剰に加えるとそれぞれの錯イオンが形成され溶解する。銀は空気中で安定ではあるが、硫黄化合物(硫化水素など)には反応して表面が黒くなる欠点がある。
 銀の用途は、上記の他に、めっき、銀鏡、合金、電子部品、写真(臭化銀)、医薬品、触媒などさまざまな分野に及ぶ。


   【 実験 〜 銀粉の作製 】;

 銀粒約1gを希硝酸(10%HNO3)50mlと共にポリびんに入れ、発生するNOガスを抜く為軽くふたをして戸外に置き約一週間放置しておくと、銀は完全に溶けて硝酸銀溶液ができる。
 これを200〜300mlビ−カ−に移し、炭酸水素ナトリウム(重曹)NaHCO3を攪拌しながら粉末のまま少しずつ加えると、CO2を放出しながら黄色の炭酸銀Ag2CO3の沈殿ができる。これを充分水洗して乾燥させ、試験管に入れバ−ナ−で弱い赤熱程度に加熱すると、炭酸銀は分解して、酸化銀を経て、銀粉に変わる。(銀粉は希硝酸にも溶けやすい。)

    Ag2CO3(黄色) → Ag2O(黒色)+CO2、  2Ag2O → 4Ag(銀白色)+O2  

        



   【 実験 〜 銀樹の作製 】;

 硝酸銀溶液に銅板を吊るすと、銀と銅が置換して銀樹が生成する。
 
 * (銀樹に比べ、銅樹、鉛樹などは成長が遅く、切れやすかった。ビスマスは樹状にならず殻状になった。(いずれも、硝酸塩溶液の亜鉛による置換))


  【 実験 〜 銀鏡 】;

 A液:硝酸銀AgNO3を2.0g/水100ml(アンモニア性)、B液:ホルマリンHCHO(40%)20ml/水100mlを銀鏡作製直前に1:1で混合すると、容器の壁面に微粒子状の銀が析出する。ホルマリンが重合しやすく、また剥離しやすい。これは、NiやFeなどの電鋳の導電性下地として用いられる。(液中の反応生成物は爆発性なので実験後ただちに液を捨てる事。)
 A液:AgNO3 6.7g、NH3 28%6.4ml、ホルムアミド50ml/水1l、 B液:ホルマリン37%(メタノ−ル12%含有)65ml/水1l、A:B=9:1の方がきれいにできる。(無電解銀めっきの処方)


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