硫黄の実験;


 硫黄は地上に比較的多量に存在し、火山国である日本は有数の硫黄産出国であるが、現在大部分の硫黄は石油の脱硫精製過程で得られる。硫黄の用途はほとんどが硫酸製造用とゴムの加硫用である。
 硫黄は常温では無毒で安定な元素であるが、高温の硫黄蒸気は原子状になり非常に活性でほとんどの金属と反応してそれぞれの硫化物を形成する。

 1. 硫黄の同素変態の実験;

 通常見かける硫黄は斜方硫黄で常温で安定である(S8)。 これは、ニ硫化炭素などの溶媒に溶かし蒸発させると比較的大きな結晶が得られる。
 硫黄20gを試験管に詰め込み過熱しないようにして徐々に加熱すると、112.8℃以上で溶融して黄〜褐色の液になる。あまり温度が上がっていない状態で、濾紙を敷いたロートに流し込み固まりかけたところで濾紙を開くと、針状の単斜硫黄が現れる。(112.8〜119℃で安定)
 次に、試験管で硫黄を熱し温度を上げて行くと、褐色〜黒色に変わり、かえって粘性が増して動きにくくなる(硫黄分子が重合して大きくなる)。さらに、温度を上げると再び粘度が下がり、444.6℃で沸騰する。この状態で水中に融液を流し込み急冷すると、無定形のゴム状硫黄ができる。ゴム状硫黄はしばらく放置しておくと斜方硫黄に戻る。
          

 2. 沈降硫黄の実験;

 硫黄粉末を5%NaOHと共に加熱すると、硫化ナトリウムとチオ硫酸ナトリウムを生じて溶ける。
       6NaOH + 4S = 2Na2S(硫化ナトリウム) 
                    + Na2S2O3(チオ硫酸ナトリウム) + 3H2O

 硫化ナトリウムはさらに硫黄を溶かし多硫化ナトリウムを生じ、液は黄色になる。

       Na2S + (x−1)S = Na2Sx(多硫化ナトリウム・黄色)  

 これに過剰の希硫酸を加えると、再び硫黄が遊離して非常に細かい黄白色の硫黄(沈降硫黄)が沈殿する。この方法は硫黄の精製に用いられる。
                                


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