燃焼・爆発


 1. 酸素による燃焼の実験;

 空気中には酸素(O2)が約20%含まれている。可燃性物質と酸素が反応する際、反応熱が充分連鎖反応を引き起こすほど大きい場合燃焼という現象になる。純酸素中では空気中では燃えにくい鉄やアルミニウムなども燃焼する。(溶鉱炉では酸素富化空気で温度を上げ精錬の効率を上げている。)

 

 実験室的な酸素の発生には、主として過酸化水素水(3〜10%)の二酸化マンガン(それ自体は変化せず触媒として働く)による分解、
                2H2O2 = 2H2O + O2  
によって行なわれる。 
 他に、
 ・ 塩素酸カリウムの二酸化マンガンによる熱分解、
           2KClO3 → 2KCl + 3O2   (途中でKClO3はKClO4(過塩素酸カリウム)+KClに分解し、さらにKClO4が分解して酸素を放出する。)
 ・ 過マンガン酸カリウムの熱分解、
           2KMnO4 → K2MnO4(マンガン酸カリウム) + MnO2 + O2 
 ・ 過酸化ナトリウムに水を加える、
           Na2O2 + 2H2O → 2NaOH + H2O2(過酸化水素)
           2H2O2 → 2H2O + O2 
などの方法がある。(後三者は可燃性物質が混入していると爆発しやすいのでお勧めできない。塩素酸カリウム法は最近では高校でもやらない。) いずれも、水上置換法によって大き目の試験管や集気びんに酸素ガスを集める。

 

 (鉄線はマッチの軸木に巻きつけ軸木に火をつけ、また、アルミニウム箔は火のついた線香に軽く巻きつけ、それぞれ酸素中に差込む。マグネシウムのリボン状のものに点火して酸素中に入れると爆発的に燃える。ガラスの破損を防ぐ為に下に水を少し入れておく。他に、スチールウール、小さいろうそく、硫黄、赤リンなどが実験しやすい。)


 2. 二酸化炭素による消火の実験;

 二酸化炭素は炭素が酸素中で燃えたあとのいわば燃えかすであり、もはや酸素と反応しないから(しかも、空気よりも重い気体なので)、良い消火剤である。(消火器には二酸化炭素源の重曹(重炭酸ナトリウム)と酸あるいは重曹を飛ばす炭酸ガスが用いられている。) ただし、非常に酸素との結合力が強いマグネシウムなどは、二酸化炭素中の酸素を奪って燃焼する。
           2Mg + CO2 = 2MgO + C  

 



 3. 黒色火薬の実験;

 黒色火薬は昔から兵器などの爆薬として用いられてきた伝統的な火薬であるが、ニトロ化合物(ダイナマイト用)や硝酸アンモン爆薬、プラスチック爆薬などのさらに強力で機能的な爆薬に押されて、最近では導火線、花火、銃やごく一部の採石用にしか用いられていない。
 黒色火薬は、硝酸カリウム(硝石とも呼ぶ。硝酸カリウムは硝酸ナトリウムと違って吸水性がない)を酸化剤として硫黄、木炭を急激に燃焼させ発生する高温のガス圧で爆発させるので、各粉末をあらかじめ充分細かくすりつぶしよく混合するほど良好な爆発力が得られる。
 乾燥した硝酸カリウム1.5g、硫黄0.5g、木炭粉0.4gを別々によくすりつぶし、平たい皿の上で羽根などのやわらかいもので充分混合する。ごく一部を取り和紙に包んで金床の上でハンマーで叩くと破裂する。また、混合物を鉄皿の上に乗せ加熱すると激しく燃焼する。(発生ガスに注意)
 いおうを増やし少量の鉄粉を混ぜると線香花火ができる。
 ((注) 多く作らない事。また、決して筒や狭い容器に入れない事。また、塩素酸塩類は敏感なので実験しない事。)
              
 
 4. 他の酸化剤による燃焼;

 戸外で、過マンガン酸カリウム10gを蒸発皿に入れレンガの上に置きグリセリン5〜10mlを注ぐと、1〜2分後に煙が出て発火し激しく火を吹き上げ燃焼する。


     【 参考 】

 1) 黒色火薬の組成;
  導火線用; KNO3 60〜70、S 15〜25、C 10〜20
  採石用;        60〜70、  10〜20、   10〜20

 2) マッチの組成;
  軸頭薬;  KClO3 50、S 8、ガラス粉 19、雲母 6、珪藻土 4、松脂 1、硼酸 1、膠 12
  摩擦面;  赤燐 48、硫化アンチモン 25、酢酸ビニル 27

 3) 花火の炸裂薬の組成;
  @ 低温系;   (太字:炎色反応の色を出す元素)

KClO4 72.3 72.3 46.1 70.4 30
セラック 11.6 11.6 14.7 11.3
木炭粉  1.8  1.8  2.0  1.7  5
SrCO3  8.9
蓚酸ナトリウム  8.9
Ba(NO)2 31.4
ろくしょう  8.7
塩化ビニル  2.6
でんぷん  5.4  5.4  5.8  5.3 11
NH4ClO4 40
SbS3 14
E(cd・s/g)  650  700  400  100

 
 A 高温系;

赤T 赤U 緑T 緑U
KClO4  20    60  40    60
Sr(NO3)2  30
SrCO3  10
蓚酸ナトリウム  10
Ba(NO3)2  50
BaCO3  20
ろくしょう  20
塩化ビニル  10  10    10  10  10
Mg  60  60  20  30  40  10
セラック  10
E(cd・s/g) 9100 13500 12100 7400 4600 700

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