自然数論における不完全性定理の証明(抜粋):
S を 数記号をもつ理論とする。
かつ であるような式 A が存在するとき、 S は ω‐矛盾 を含むという。 このような A が存在しないとき ω‐無矛盾 という。
数論的述語 W 、W* を次のように定義する。
、
W、W* は再帰的述語であるから、N の中でそれらを表現する式が存在する。それらを W、W* (自由変項 x、y)とすると、
が成り立つ。
式 の ゲーデル数を n とする。その式の自由変項 x に 数記号 n−を代入して、閉式
G をつくると、
述語 W と 自然数 n の定義より、W(n 、b) が成り立つのは、b が
G (= ゲーデル数 n の式に含まれるゲーデル数23の自由変項に数記号 n−を代入して得られる式)
の証明のゲーデル数であるときである。
ゆえに、 W(n 、b) ⇔ b は G の証明のゲーデル数である。
ゲーデルの第1不完全性定理:
@ N が無矛盾であるならば、G は N で証明可能ではない。
A N が ω‐無矛盾であるならば、〜G は N で証明可能ではない。
(証明)
@ G が N で証明可能であると仮定して、N が矛盾を含むことを示す。
であるならば、N における G の証明が存在する。 G の証明のゲーデル数を
p とすると、W(n、p) である。 ゆえに である。
ところが、論理的公理により、 より、 となって、N が矛盾を含むことになる。
A N が ω‐無矛盾であると仮定する。このとき N は無矛盾でもあるから、@によって、N
における G の証明は存在しない。 ゆえに、 である。ゆえに、
である。
N は ω‐無矛盾であるから、 ではない。 ゆえに、〜G は N で証明可能ではない。
理論 S のすべての閉式 A について、 または であるとき S は完全であるという。
でも でもないような閉式 A が存在するとき S は不完全であるという。
数論的述語 Fml(a)、Pf(b、a) は再帰的述語であるから、N の中にそれらを表現する式が存在する。それぞれを表現する式 Fml(自由変項 x)、Pf(自由変項 y、x)とすると、
が成り立つ。この Fml、Pf を用いて Consis なる閉式を作ると、
ゲーデルの第2不完全性定理:
N が無矛盾であるならば、Consis は N で証明可能でない。
(証明)
第1不完全性定理の@より、N が無矛盾であるならば G は N で証明可能でない、が言える。この証明の全過程を理論
N の中で形式化することにより、
が得られる。(証明略)
(G は N で証明可能でない、を表す式は G 自身である。)
ゆえに、 ならば である。ところが、N が無矛盾であるとき、 でないから でない。