5. 量子力学の2重構造(1):
量子力学は20世紀に入ってから構築されてきた物理で、それまでの古典物理による世界観をすべて塗り替えるもので、おそらく、科学史上最大の発見です。
それは、物質の状態が表面上に現れる現象はすべて”確率的”(偶然的)であり、その背後には、決して観測にかからない、虚数単位を含む複素数の波動関数というものが”一意的”(必然的)に支配する、”二重構造”なっているからです。
物質の表面上に現れる量子性は、物質の根源であるミクロの状態やマクロであっても熱雑音の静まった極低温、半導体のように純度の高い物質などに典型的に現れ、大きく分けて2つの特徴があります。
1. 確率的性質;
放射性同位元素、および、現在約300種類ある素粒子の中で、電子、光子、ニュートリノなどのごく少数を除くほとんどが、自然崩壊します。
N個の放射性の原子核(Nは1よりはるかに大きい)が崩壊する時、その減少の割合はその時刻における個数に比例するので、
このように指数関数的に、”自然的”に減少する曲線になります。
ここで、原子核の1個に着目すると、それがその時刻に崩壊するかは全く分からず、ただそれが時刻
T0 に崩壊せずに残っている”確率”は 1/e と言えるだけです。
したがって、このような確率的な統計性が自然現象には本源的に存在します。 これは、一般に現れてくる自然現象が一意的に決定される古典物理の見方からすると、非常に承認しにくい事柄です。
また、自然対数の底 e は、完全な正確さで時を刻む原子時計の原理に用いられているように、時間 t
の関数として、素粒子や原子核の自然崩壊というミクロの確率的な”自然現象”にそのまま現れます。そしてそれは、御子イエス様の性質が、被造物のマクロだけではなく、ミクロの領域までも、根本的かつ普遍的に存在する事をあかししています。
2. 波動としての性質;
ミクロの粒子は、粒子としての性質と同時に、波動(物質波)としての性質をもっています。
一定のエネルギーを持つ電子線を2つのスリットをもつスクリーンに当て、その後方にある写真乾板で検出する実験を行なうと、電子線のエネルギーとスリットの間隔が適当であるならば写真乾板上に干渉縞が現れます。古典論的には、あるはずのない所に感光するのです。
また、ビームの強度を極端に弱くしていくと、感光強度は不連続的になり電子の粒子性を現わしてきます。量子論的な現象に現れる不連続性は、物質の根底にある波動性に基づくものです。
この結果は、電子の存在確率に波動の干渉効果が現れることを示しています。そこで、観測に現れる確率密度
I (x) よりも基本的な量であり、かつ、波としての性質を持つ連続的な複素関数 ψ(x)を導入して、
ψ(x)は、その絶対値の2乗が 確率に比例する量なので、”確率振幅”(あるいは、”波動関数”)と呼ばれます。 スリットから出る波動ψ1、ψ2は重ね合わせてψとなり、実際に観測結果に現れる確率 I は、その実数部のみです。
波動を記述するならば、当然、”e、π、i” がすべて現れます。虚数単位 i は、古典物理では便宜的に現れました(実数に代替できる)が、実に驚くべき事に、量子力学では複素数は本質的な量です。
重ね合わせた確率振幅を求めると、
最も簡単な元素である水素原子(陽子1、電子1)についての電子の波動関数を見てみましょう。波動関数は、シュレーディンガー方程式と呼ばれる2階微分方程式で記述されます。これを、3次元、定常波状態(時間
t を含まない)、極座標、陽子と電子の2粒子系(質量比 2000:1、電子の質量me)という条件に限定して考えると、ポテンシャルはV=−e2/r (r 動径方向)で与えられ、
この方程式の解法は非常に複雑であり、これを解くために多くの学者が参与しました。計算の途中で、状態を決める量子数、
n(主量子数 n=1、2、3、・・・)、l (方位量子数 l=0、1、・・・、n−1)、m(磁気量子数
m=−l、−l+1、・・・、l−1、l)が現れ、(主量子数nについての取り得るすべての状態の数はnの2乗個もある)、また、動径方向と角度方向の項が分離され、結局、波動関数
ψnlmは次のようになります。
例えば、水素原子の基底状態の、中心からの距離 r の位置での電子の存在する確率密度D(r)求めると、基底状態(n=1、l=m=0)の波動関数 ψ100 は、
また、球殻 r と r +dr にある r 方向の電子の確率分布は、r = 0から∞まで積分すると当然
1 になります。
ボーアが1913年に古典的な水素原子の軌道と量子仮説をつなぎ合わせた理論で導いたボーア半径
a0 は単発的な結果でしたが、このように、波動関数から求めた確率分布はすべての場合を網羅すると同時に、”指数関数による広がり”を持った美しい分布になります。
自然の根底には、目に見えない複素数の波動という、”神の性質 e、π、i” を持つ、非常に複雑かつ厳密な実体で満たされ、それがこの世に実現する時、必ず ” e ” という啓示が伴って現わされます。
そして個々の現象については人間にはその実現確率という、極めて限定されたものしか知る事ができない構造になっています。
また、波動関数による自然の2重構造は、現実に対応する”霊の世界”が存在し、その霊の世界の方がより本質的である事を示唆しています。(もちろん、ニューエイジで言われるような、波動関数が霊そのものであるという世界観ではありません)
「神は、聖霊様によって大いなる水を覆い、舞いかけ」(創世記1:2)、「神のことばによって万物を創造されました」(創世記1:2、ヨハネ1:3、コロサイ1:16)。
「地でつなぐものは、天でもつながれている。」(マタイ16:19)
すべての被造物は根底からイエス様をあかしします。 御父はどんなにひとり子イエス様を愛しておられるでしょう?すべての被造物にイエス様を描いて、主の栄光を現わしています。