(7) 意識と物質の関係を表す理論について


 
宇宙の万物は、三次元空間+時間の広がりの中で(厳密には、一般相対論的なそれらの軸の相互関係によって)、それらをパラメ−タ−として表現される。もちろん、物理理論の展開過程などにおいて、暫定の次元やパラメ−タ−を設定して表現することは通常の手法として用いられる(電磁気論、量子論 ete.)が、本質的には基本パラメ−タ−は変わらないのである。

 ところが、ニュ−サイエンスの理論の多くは、平気で基本パラメ−タ−を変更しそれぞれの構想に合わせてそれらをもっともらしく用いているのである。
 たとえば、”意識工学”の基本公式として提案された、”物質”と”意識”との関わりを表現する式といわれるもの(複素電磁理論)は次のとおりである。

     
 ここで、(1)は”物質”(通常のマックスウェルの電磁場方程式)、(2)は”意識”を表し、それらが相互に関わって、テレパシ−やサイコキネシスのような超常現象を引き起こすのだそうである。
 この、虚数単位を用いてEとHを入れ替えるなど、(電磁場理論のように途中のパラメ−タ−としてではなく、)実在しない”虚数の時空”そのものを設定する手法は、他のいくつかのニュ−サイエンス理論にも見られるものである。
 ところが、数式をよく見ると、(1)と(2)は全く独立な式であり、それぞれの間には何ら相互関係が無いのである。
 すなわち、”意識”と”物質”は互いに全く影響し合うことが無いという、作者の意図に反した論理的に矛盾した結果を表現しているにすぎないのである。
 したがって、(2)式は単なるこじつけにすぎず、この理論を提案した人は全く数学を知らないのである。


 では、意識が物質に影響を及ぼすかの実験ではどのような結果が与えられているのだろうか。
 信憑性がおけるという点から、ノーベル賞物理学者のB・ジョセフソンの著書(「科学は心霊現象をいかにとらえるか」、B・ジョセフソン、徳間書店)から、2つの実験結果を引用すると次のとおりである。

 一つは、意識の物体に与える効果に関する実験群の統計処理についてのものであり、「ランダムな物理系における意識に関連した効果の測定」(1989 ラディン、ネルソン・foundation of physics誌)を紹介している。ここで扱われている実験は”マイクロP−K実験”すなわち、ランダム出力となるよう設計された電子回路の微弱な出力が被験者の意志によって変化するかを調べるという実験群で、研究者68、実験597、コントロ−ル実験235、論文152についてメタ解析(公表デ−タからのお蔵入りデ−タ数の推定)を行ったものである。その結果、お蔵入りデ−タ数は54000であり、ジョセフソンは、これほど多くの否定的な実験結果があるとは考えにくいという事が今の所最も有力な証拠であるとした上で、逆に、メタ解析の助けを借りる必要の無いほどの明確な実験結果は無いと も述べている。

 もう一つは、ジョセフソン自身の実験によるもので、意識についての遠隔相互作用を量子力学を用いて相関を計算したものである。対象は、EPR相関との類似性から、テレパシ−(一つの心と別の心との直接的つながり)及び サイコキネシス(心が遠隔的に物体に影響を与える現象)である。その結果は、それらの相互関連は純粋にランダムであり量子論の適用は不可能ということであった。


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