全ヨーロッパから、生身の人間を直立した状態ですし詰めにした輸送列車は、（家畜用運搬車両で一両に８０〜１００人も詰め込んだ）病人も狂人も死者も同居させ、ありとあらゆる臭気に、呻き声、嘆き声を反響させながら、遠いところからは一週間から10日もかかって、終着駅にたどり着いた。この時点で、4人に一人は息絶えていた。SSに一瞥で選別された人々は、まだまだ体力のありそうな者は右の列へ、そして８割がたの、赤子を抱いた母親や病人、子供や老人、身障者などは左の列に並ばされ、ガス室行きになった。右の列の者も労働力を最後まで搾り取って、結局ガス室行きであった。
ガス室は、浴室と書かれてあって、１回あたり２０００人が追い立てられ、室内で直立のまま、チクロンBの猛毒ガスが発射され、１０分から１５分のうちに絶命した。汗と尿に汚れた死んだ人々は引き剥がされ、頭髪を切られ（人の髪の毛は全期間で６０トンに達し、カーペットや詰め物にされ広くドイツ国民に配給された）、２０人あまりの歯科医によって金歯を抜かれ隠している宝石などを調べられた。中には生きている赤ん坊もいたが、ガス室の背後にあるベルトコンベアに乗せられ焼却炉行きとなるのであった。焼却炉は２４時間フル稼働で一日の最高処理能力は約１万７千体であった。すべての作業は強制労働の囚人達が行ない、彼らも６週間ごとに入れかえられ殺された。
即時虐殺を免れた人々は収容者名簿に登録された。（トータルで４０万５０００人、鉄道貨物で移送されてきた人々の約１５％） このうち重労働や病死、銃殺、毒殺、死の行進でほとんどが殺され、ソ連赤軍やポーランド軍が解放した時に骸骨寸前で生き残っていた人々は、このうちの１５％の６万５０００人であった。
衣服は、青い縦縞模様のパジャマ風の上下に三角形の識別票（政治犯は赤、刑事犯は緑、そしてユダヤ人は黄色の星型）を縫い付けていた。収容所内の労働は１日１２時間以上で、食物がほとんど無しのすさまじい重労働であり、労働力は次々と貨車で運ばれてくるので、一人前の作業に耐えられなくなると、すぐ交代させられガス室行きとなった。反抗的な者や食物を盗む者には、１５回の鞭打ちや起立房、空中に吊り上げる処刑柱などの拷問刑には事欠かなかった。
また、囚人達を対象にした各種の医学実験が、SS医師団によって行なわれた。特に、ゲルマンの敵とされたユダヤ人、ポーランド人、ロシア人に対する断種による絶滅を目的とした不妊法の実験であった。
そのほか多くの悪魔的なありとあらゆる生体実験が行なわれ、その対象はアウシュビッツだけで数千人にも達し、そのほとんどが死亡した。
