ルカの福音書*
第1章
1* 私たちの間で強く確信している これらの出来事について、記事にまとめて書き上げようと、すでに多くの人々が着手しているのですが、
2 これは、初めからの目撃者で、みことばのしもべとなった人々から、私たちに委ねられたもので、
3 私もまた、最も初期からのすべての事を詳しく調べ、それを順序立てて書いて、あなたに差し上げようと思っております。
尊敬するテオピロ殿*。
4 それは、すでにあなた様に報告されている事が紛れもない事実であることを、これによってよく知っていただくためであります。
5 ユダヤの王ヘロデの治世に、アビヤの組*の祭司で名をザカリヤ*という者がいた。その妻はアロンの家系の娘で、名をエリサベツ*といった。
6 二人とも神の御前に正しい人であって、主の戒めと定めとを、みな非難されることなく行なっていた。
7 ところが、エリサベツは不妊の女であったため、彼らには子がなく、そして二人ともすでに年老いていた。
8 さてザカリヤは、その組が当番になり神の御前に祭司の務め*をしていたとき、
9 祭司職の慣例に従ってくじを引いたところ、主の聖所*に入って香をたく*ことになった。
10 香をたいている時間に、多くの民衆はみな外で祈っていた。
11 すると、主の御使いが現れて、香の祭壇の右に立った。
12 ザカリヤはこれを見て、動揺し、恐怖に陥った。
13 そこで御使いが彼に言った。「恐れるな、ザカリヤよ。あなたの祈りが聞かれたのです。あなたの妻エリサベツは男の子を産みます。その子の名をヨハネ*と付けなさい。
14 彼はあなたにとって喜びと楽しみであり、多くの人々もその誕生を喜ぶでしょう。
15 彼は主の御前に偉大な者となり、ぶどう酒や強い酒を決して飲まず、まだ母の胎内にいる時からすでに聖霊に満たされ、
16 そして、イスラエルの多くの子らを、彼らの神である主に立ち返らせるでしょう。
17* 彼はエリヤの霊と力とをもって、御前に先立って行き、父の心を子に向けさせ*、逆らう者に義人の思いを持たせて、整えられた民を主に備えるでしょう。」
18 するとザカリヤは御使いに言った。「いったい何によって、私はその事を知るのでしょうか。なぜなら、私は老人ですし、妻も年を取っているからです。」*
19 御使いが答えて言った。「私は神の御前に立つガブリエル*です。これらの知らせをあなたに伝える*ために、遣わされた者です。
20 見よ。あなたは、時が来れば成就する私の言葉を信じなかったから、この事が起る日まで、おしになり、語ることができなくなります。」
21 民衆はザカリヤを待っていたが、彼が聖所内で手間取っているのを不思議に思っていた。
22 やっと彼は出てきたが、物が言えなかったので、人々は彼が聖所内で幻*を見たのだと悟った。彼は彼らに合図をするだけで、引き続き、おしのままでいた。
23 それから務めの期間が終わったので、彼の家に帰って行った。
24 その後、妻エリサベツはみごもり、五か月のあいだ引きこもっていたが、こう言った。
25 「主は、日々私を顧みてくださって、人々の間から私の不名誉を取り除くために、このようにしてくださいました。」
26 六か月目に、御使いガブリエルが、神から遣わされて、ナザレというガリラヤの町に来た。
27 御使いは、その町のダビデの家系のヨセフという人の、いいなづけになっている処女の所に来た。その処女の名はマリヤ*といった。
28 御使いがマリヤのいる所に入って来て、言った。「喜びあれ*。恵まれた人よ*。主があなたと共におられます。女たちの間で祝福された*者よ。」
29 この言葉にマリヤはひどく困惑して、このあいさつは何事だろうかと、思い巡らした。
30 すると御使いが言った。「恐れることはない。マリヤよ。あなたに、神から大いなる恵み*が訪れたからです。
31 見よ。あなたはみごもって男の子を産むでしょう。その子をイエス*と名付けなさい。
32* 彼は大いなる者となり、いと高き方の子と呼ばれるでしょう。そして、神である主は、彼に彼の祖先ダビデの王座をお与えになり、
33* 彼は永遠にヤコブの家を治め、終わることの無い王国を支配するでしょう。」
34 そこでマリヤは御使いに言った。「どうして、そんな事があり得ましょうか。私はまだ、夫を知りませんのに。」
35* 御使が答えて言った。「聖霊があなたに臨み、いと高き方の力が影のようにあなたを覆うでしょう。それゆえ、生れ出る子は聖なる者であり、神の子と呼ばれるでしょう。
36 見なさい。あなたの親族エリサベツも高齢にもかかわらず子を宿しています。不妊の女といわれていたのに、もう六か月になっています。
37 神が言われる言葉には、何一つ不可能はありません。」
38 そこでマリヤが言った。「ご覧ください。私は主のはしためです。あなたのお言葉の通りに、この身に成りますように。」 そして御使いは彼女から離れて行った。
39 何日かして、マリヤは立ち上がり、山地に入って行き、ユダの町へ急いだ。
40 そして、ザカリヤの家に入ってエリサベツにあいさつした。
41 エリサベツがマリヤのあいさつを聞いたとき、その子が胎内で飛び跳ねた。エリサベツは聖霊に満たされ、
42 大声で叫んで言った。「あなたは女たちの中で祝福されています。そして、あなたの胎の実は祝福されています。
43 何ゆえでしょう。主の母上が私のところへ来てくださるとは。
44 ご覧なさい。あなたのあいさつの声が私の耳に入ったとき、子供が胎内で大いに喜んで、飛び跳ねました。
45 主から語られた*ことがらが必ず成し遂げられる*と信じた*人は、何と幸い*なことでしょう。」
46* するとマリヤは言った。「私のたましいは主を崇め*、
47 私の霊は、私の救い主であられる神を大いに喜びます*。
48 それは、この卑しいはしために、目を留めてくださったからです。本当に、今から後のすべての時代の人々は、私を幸いな者と呼ぶでしょう
49 力ある方*が、私に大いなる事をしてくださったからです。その御名は聖く(きよく)*、
50 主のあわれみは、世代から世代に渡って、主を畏れる(おそれる)者たちに及びます。
51 主はみ腕をもって力のわざをなされ、心の思いが高慢な者を追い散らし、
52 統治者を王座から引き降ろし、身分の低い者を引き上げ、
53 飢えている者を良いもので満たし、富んでいる者を何も持たせないで帰らせます。
54 主は、あわれみをお忘れにならず、主の子供、イスラエルを助けてくださいました。
55 それは、私たちの父祖たち、アブラハムに、またその子孫たちに、永遠にまでも、と語ってくださった通りです。」
56 マリヤは、エリサベツのところに約三か月滞在し、それから、家に帰った。
57 さてエリサベツは月が満ちて、男の子を産んだ。
58 近所の人々や親族は、主が大いなるあわれみを彼女にかけてくださった事を聞いて、彼女と共に喜んだ。
59 八日目になったので、幼子(おさなご)に割礼*をするために人々が来て、父の名にちなんでザカリヤという名にしようとした。
60 ところが、母親は、「いいえ、ヨハネ*という名前にしなければいけません。」と言った。
61 人々は、「あなたの親族の中には、そのような名の付いた者は、一人もいません。」と彼女に言った。
62 そして父親に合図して、どんな名にしたいのか尋ねた。
63 ザカリヤは書き板を持ってこさせて、それに、「その名はヨハネ。」と書いたので、皆は不思議に思った。
64 すると、ただちに、ザカリヤの口が開かれ、舌がほどけて語りだし、神をほめたたえた*。
65 近くに住む人々はみな恐れを感じ、またユダヤの山々全体に、これらの事がすべて語り伝えられたので、
66 聞く者たちは皆それを心の中にとどめて、「この子は、一体、どのような者になるのだろう。」と言っていた。そして主の御手が彼と共にあった。
67 彼の父ザカリヤは聖霊に満たされ、預言して言った。
68 「イスラエルの神である主は、ほむべきかな*。主はその民を訪れ、贖い(あがない)をなされ、
69 私たちのために、救いの角を、彼の子であるダビデの家にお立てになった。
70 昔からの、聖なる預言者たちの口によって語られた通りに、
71 私たちを敵から、またすべての私たちを憎む者たちの手から、救い出してくださる方である。
72 こうして、神は私たちの父祖たちにあわれみをかけ、その聖なる契約を憶えておられる。
73 それは、父祖アブラハムに誓われた誓いであり、
74 私たちを敵どもの手から救い出し、恐れることなく、主の奉仕に仕えさせてくださり、
75 また、私たちの生涯のすべての日々に、主の御前に、忠実で、義であるように、仕えさせてくださるのである*。
76 幼子よ。あなたもまた、いと高き方*の預言者と呼ばれるであろう。それは、主の御顔に先立って行き*、その道を備え*、
77 主の民に、罪の赦しによる救いの知識を与えるからである。
78 これは私たちの神の、あわれみ深いみこころ*による。そのあわれみによって、日の出*が、いと高き所*から私たちを訪れ、
79* 暗黒と死の陰とに住む者たちを照らし、私たちの足を平和の道へ導くであろう。」
80 幼子は成長し、その霊は強くなり、そしてイスラエルの民に現れる日まで、荒野にいた。
* ルカによる福音書と、使徒行伝は、異邦人の弟子ルカが書いたといわれる。 ルカは、ピレモン:24、Uテモ4:11、コロ4:14の3ヶ所に名前があり、パウロに従って、初期のマケドニア宣教から、ローマへの護送まで付き添っていたとされ、ルカの福音書は、ローマでのパウロの軟禁中に口頭で受けてそれを書き記したものとされる。 ルカの福音書では、伝道者でもある使徒パウロの霊性が流れ、特に、救いの恵みのすばらしさを記述している。(ルカ9:51〜19:44に、伝道者、収穫の主、としてのイエスを表現している)
*1 序文:、 福音書ではテオピロ様(殿、閣下)であるのに対し、使徒行伝では親しく呼び捨てで書いているので、テオピロはこの伝道的な福音書を読んで、キリスト者になったといわれている。
当時、ルカの職業の医者は奴隷扱いだったので、テオピロのお抱えだったルカは自由人にされ、それゆえ獄中のパウロの所へ自由人として行って取材できた。
*5 アビヤの組 祭司24組の第8組(T歴24:9、アロンの子孫の組み分け)、 ザカリヤ(ゼカリヤ): 主は覚えておられる、 エリサベツ: わが神は誓い
*8 勤めの期間、ユダ山地の住居からエルサレム神殿に出勤した
*9 ナオス(ギ、単男) temple、聖所、神殿 (cf.ハギオス 幕屋)、 聖所で香をたく職務は、非常に名誉なことで、くじで当たるのは一生に一度あるか無いかのことだった。 これは、聖所内で香の煙が上がるとともに、全イスラエルの平和と祝福と恵みを祈るもの(詩141:2、黙示8:3、4)で、出てくると
アロンの祝祷(民6:24−26)を祈った
*13、60 イオーアンネス(ギ)、 ヨハーナーン(ヘ)、john、ヨハネ 主(ヤハ)は恵み深い の意
*17 マラキ4:5、6
*18 しるしを求める問い(明らかに呼ばれたことが分かるのに、不信仰)
*19 ダニエル8:16、9:21、 ガブリエル: 神は力強い、 ユーアンゲリゾー(ギ) bring good news、bring well message、Gospel、(この場合、単なる)知らせ; 福音、良い知らせ
*22 オプタシア(ギ) vision、幻
*27 マリアム(ギ)、あるいは マリア(ギ) = ミルヤーム(ヘ) ミリヤム(出エジ15:20)
*28 カイーレ(ギ) <カイロー be glad、be rejoice、喜び(喜び系のあいさつ)、お元気で、敬礼、 ケ カリトーメネー(ギ、女) 恵まれた人(女性)よ、 ユーロゲーメネー(ギ、女) 祝福、賞賛する
*30 カリン(ギ) <カリス、grace、(大いなる)恵み
*31 イエソウス(ギ) イェホーシュア(へ) イェシューア(アラム語) 「ヤハウェは救い主」 の意
*32、33 Uサム7:12−16、詩篇89、イザヤ9:7、エゼ34:23、24、ホセ3:5、アモ9:11等
*35 § ヨセフの夢の、「彼女が妊娠している霊は聖なる霊だからです」(マタイ1:20) と同様に、イエスが生まれつき「神」でおられることを表す → 2:49
*45 レラレーメノイス(ギ、複中、過去完了) 語られた、 エスタイ テレイオーシス(ギ)、エスタイ(未来)
will be、完了するだろう、 ピステューササ(ギ、アオ過去(不定過去))
信じている、 マカリア(ギ、単女) 幸い (マタイ5:3等)
*46 ハンナの祈りに似ている(Tサム2:1−10)、 メガリューネイ(ギ、現在、3単)
<メガリューノー、make great、magnify、崇める(大いなる者と言う、大きい、高い とする)
*47 エーガッリアセン(ギ、アオ過去、3単) <アガリアオ、exults、rejoice exceedingly、称える(非常に喜ぶ、大いに喜ぶ)
*49 デュナトス(ギ) able、powerful、mighty 力ある方、 ハギオス(ギ) holy、聖なる
*59 生後8日目に割礼(創世17:12)
*64、68 ユーロゲオー(ギ) praise、褒め称える、 ユーロゲートス blessed、ほむべきかな
*75 仕えさせてくださるのである は補足
*76 ヒュプシストウ(ギ) Most High 、いと高き方、 プロ プロソーポウ(ギ) before face (of Lord)、(主の)御顔の、現れの (時間的)前に、 マラキ3:1
*78 スプラグコノン(ギ) (直訳) bowels、腸、心、 アナトレー(ギ) dayspring、日の出 (マラキ4:2)、 ヒュプソス(ギ) on high、heaven 天、いと高き所
*79 イザヤ9:2
第2章
1 そのころ、全世界*の人口調査をせよとの勅令が、皇帝アウグスト*から出た。
2 これは、クレニオ*がシリヤの総督であった時に行われた最初の人口調査*であった。
3 そこで、人々は皆、登録*をするために、それぞれ自分の町へ行った。
4 ヨセフもダビデの家系であり、またその血統でもあったので、ガリラヤの町ナザレを出て、ユダヤのベツレヘム*と呼ばれるダビデの町へ上って行った。
5 それは、すでに身重になっていたいいなづけの妻マリヤと共に、登録をするためであった。
6 ところが、彼らがそこにいる間に、マリヤは月が満ちて、
7 初子となる男子を産み、布にくるんで、飼葉おけの中に寝かせた。宿屋には空いている場所が無かったからである。
8 さて、この地方で羊飼たちが、夜、野宿しながら羊の群れの番をしていた。
9 すると、見よ、一人の主の御使いが彼らの近くに立ち、主の栄光が彼らのまわりを照したので、彼らは非常に恐れた。
10 御使いは言った。「恐れることはありません。見よ。私はあなたがたに、この民全体*に与えられるはずの、大いなる喜びの知らせを伝えるからです。
11 今日、ダビデの町に、あなたがたのために、救い主がお生れになりました。この方こそ、主なるキリスト*です。
12 あなたがたは、赤ん坊が布にくるまって飼葉おけの中に寝かされているのを見るでしょう。これが、あなたがたへのしるしです。」
13 すると、突然、この御使いと共に、おびただしい天の軍勢が現われ、神を賛美して言った。
14 「いと高き所では、神に栄光があるように。地の上では、みこころにかなう人々*に平和があるように。」
15 御使いたちが彼らを離れて天に帰ったとき、羊飼たちは、「さあ、ベツレヘムへ行って、主が知らせて下さったその出来事を見てこよう。」と、互に語り合った。
16 そして急いで行って、マリヤとヨセフと、また飼葉おけに寝かされている赤子とを見つけ出した。
17 それを見た時、幼子について自分たちに告げ知らされた事を、人々に伝えた。
18 聞いた人々はみな、羊飼たちが話してくれたことを不思議に思った*。
19 しかし、マリヤはこれらの事をことごとく心に留めて、思い巡らしていた。
20 羊飼たちは、見聞きしたことが何もかも自分たちに語られた通りだったので、神をほめたたえ、また賛美しながら帰って行った。
21 八日が過ぎ、割礼をほどこす時になったので、胎に宿る前に御使いが告げた通りに、幼子をイエス*と名付けた。
22 それから、モーセの律法による彼らのきよめの期間が過ぎたとき、両親は幼子を連れてエルサレムへ上った。
23* それは主の律法に、「母の胎を初めて開く男の子は皆、主に聖別された者、と呼ばれなければならない。」と書いてある通り、幼子を主に捧げるためであり、
24* また同じ主の律法に、「山ばと一つがい、または、家ばとのひな二羽。」と定めているのに従って、犠牲(ぎせい)を捧げるためであった。
25 その時、エルサレムにシメオンという名の人がいた。この人は正しい、神を敬う人で、イスラエルが慰められることを待ち望んでいた。また聖霊が彼と共におられた。
26 そして主が遣わす救い主に会うまでは死ぬことはないと、聖霊の示しを受けていた。
27 この人が御霊に感じて神殿に入った。すると律法の定めを行うため、両親も幼子イエスを連れて入って来たので、
28 シメオンは幼子を腕に抱き、神をほめたたえて言った。
29 「主よ、今こそ、あなたが語られた言葉の通りに、このしもべを平安のうちに去らせてくださいます。
30 私の目が、今、あなたの救いを見たからです。
31 この救いはあなたが万民の前に備えてくださったもので、
32 異邦人を照す啓示の光、そして、あなたの民、イスラエルの栄光です。」
33 ヨセフと、主の母とは、幼子についてこのように語られたことを、不思議に思った。
34 するとシメオンは彼らを祝福し、そして母マリヤに言った。「見よ。この幼子は、イスラエルの多くの人々を倒れさせたり立ち上がらせたりするために、また反対を受けるしるしとして、定められています。
35* そして、あなた自身も剣で胸を刺し通されるでしょう。それは多くの人の心にある思いが、現れるためです。」
36 また、アセル族*のパヌエルの娘で、アンナ*という女預言者がいた。彼女は非常に年をとっていた。娘の時代にとついで、七年間だけ夫と共に住み、
37 その後、やもめとして暮らし、八十四歳になっていた。そして神殿を離れずに、断食と祈りとをもって、夜も昼も神に仕えていた。
38 この老女も、ちょうどその時間に、彼らの傍らに立ち、神に感謝をささげ、そしてこの幼子のことを、エルサレムの救いを待ち望んでいるすべての人々に語り聞かせた。
39 両親は主の律法に従ってすべてを成し終え、ガリラヤへ向かい、彼らの町ナザレに帰って行った。
40 幼子*は、成長し、霊において強められ、知恵に満ち、そして神の恵みが彼の*上にあった。
41 さて、イエスの両親は、過越しの祭りには毎年エルサレムへ上ることにしていた。
42 そして、イエスが十二歳になった時も、祭りの慣習に従ってエルサレムへ上って行った。
43 ところが、祭りが終って帰るとき、少年*イエスはエルサレムに留まっておられた*が、両親はそれに気づかなかった。
44 そして一行の中にいると思い込んで、一日分の道のりを行ってしまい、それから、親族や知人の中を捜したが、
45 見つからないので、彼を捜しながらエルサレムへ引き返した。
46 そして三日後になって、イエスが神殿の中で教師たち*の真中に座って、彼らの話を聞いたり質問したりしておられるのを見つけた。
47 聞く人々は皆、イエスの理解する力*や彼の数々の答えに驚嘆していた。
48 両親はこれを見て驚き、そして母が彼に言った。「息子よ*。どうしてこんな事をしてくれたのです。見なさい。お父様も私も心配して、あなたを捜していたのです。」
49* するとイエスは言われた。「なぜわたしをお捜しになったのですか。わたしの父の働きの中に*、わたしが在らなければならない*ことを、ご存じなかったのですか。」
50 しかし、両親はその語られた言葉を理解することができなかった。
51 それからイエスは両親と一緒にナザレに下って行き、彼らにお仕えになった。母はこれらの言葉を皆、心の中に留めていた。
52 イエスはますます知恵*が増し加えられ、年齢も進み、そして神と人々によって愛された*。
*1、2 全世界 = ローマ帝国、 皇帝アウグストゥス(BC31-AD14) ローマに至る街道を整備、 クレニオが、ヘロデ・アケラオ(マタイ2:22)の領地のシリヤ州に送られ、総督になった時の人口調査 = 使徒5:37
の人口調査(AD6、by.ヨセフォス)。
*3 この人口調査に先駆けての 最初の住民登録は、BC8年頃。 一方、ヘロデ大王(BC37−)はBC4没なので、マタイ2:16より、
イエスの誕生は少なくとも没年の2年前以前、BC5−6年頃となる。
*4 ベイト・レヘム(ヘ)、 パンの家 の意
*10、14 この民全体 = みこころにかなう人々 = イスラエルの民 の事。 → :34 幼子は、イスラエルの多くの人が倒れる審判者でもあり、受難のメシヤであり、その後、福音が異邦へ宣べ伝わる
*11 クリストース キューリオス(ギ) = ヤハウェ ハ マーシヤハ(ヘ) = Christ the Lord、 このギリシャ語の配列は新約でここだけ、 主であるメシヤ(油注がれた者)
*18 サウマゾー(ギ) wonder、(驚きと共に、軽い疑いがあって)不思議に思う ⇔ :19 マリヤとの違い
*21 イエソウス(ギ) イェホーシュア(へ) イェシューア(アラム語) 「ヤハウェは救い主」 の意
*23、24 出エジ13:2、12、 レビ12:8、(5:11)
*35 御子の十字架の死と、後の時代の”マリア崇拝”という間違った信仰によって、彼女の霊が煩わされること cf.Tサム28:15
*36 当時、アッシリヤ捕囚後のイスラエル十部族の帰還者は、一部はいた(使徒26:7)、 アンナ(ギ)
= ハンナ(へ)
*40 パイディオン(ギ、単中) 子供、幼子、の性に合わせて、アウトー(<アウトス)も中性、3・単 なので、「その」ではなく「彼の」と訳す
*43 パイス(ギ) 子供、少年、 ヒュペメイネン(ギ、アオ(不定)過去、3・単)
< ヒュポメーノー 残る、留まる、;踏みとどまる、耐え忍ぶ
*46 ディダスカロス(ギ) teacher、master、先生、主、(五役者の)教師
*47 スューネシス(ギ) understanding、running together 理解力
*48 テクノン(ギ) child、son 子、子供
*49 トイス(ギ、冠詞、中性・複数)、the → (推論して、) プラグマタ(ギ、中性・複数、<プラグマ の複数) things、works、businesses 事柄、働き、仕事 (cf. ナオス(男・単) 神殿、聖所、 ハギオス(中・単)
幕屋、 オイキア(女・単) 家、 エクレシア(女・単) 教会、 などとなって性・数が異なる)、 デイ(現在) エイナイ(現在<エイミ) メー I must be § これは 天地創造(以前)のわざから始まって、御子イエスが必ず御父と共にわざをなされることを言っている。 当時13歳で一人前(バル・ミツバ、成人式)だったので、この前から「神」の働きをされていたことになり、御子イエスが
生まれつき「神」であることを強調している。
*52 ソフィア(ギ) wisdom、知恵、 ヘーリキア age、年齢、 カリティー(ギ、受) <カリス grace、favour、(直訳)恵まれる、好まれる
第3章
1* 皇帝テベリオ在位の第十五年、ポンテオ・ピラトがユダヤの総督、ヘロデがガリラヤの領主、その兄弟ピリポがイツリヤ・テラコニテ地方の領主、ルサニヤがアビレネの領主、
2 アンナスとカヤパとが大祭司*であったとき、神のことばが、荒野でザカリヤの子ヨハネに臨んだ。
3 彼はヨルダン川のほとりのすべての地方に行って、罪のゆるしを得させる悔改めのバプテスマを宣べ伝えた。
4* それは、預言者イザヤのみことばの巻に書いてある通りである。すなわち、「荒野で呼ばわる者の声がする。『主の道を備えよ、その道筋をまっすぐにせよ。』
5* すべての谷は埋められ、すべての山と丘とは低くされ、曲ったところはまっすぐに、でこぼこ道は平らになり、
6* こうして、あらゆる肉が*、神の救いを見るであろう。」
7 さて、ヨハネは、彼からバプテスマを受けようとして出てきた群衆に言った。「まむしの子ら*よ、来たるべき御怒りから逃れられると、誰が教えたのですか。
8 だから、悔改めにふさわしい実を結びなさい。自分たちの父にはアブラハムがいるなどと、心の中で思ってはいけない。あなたがたに言います。神はこれらの石ころからでも、アブラハムの子孫たちを起こすことができるのです。
9 斧もまた、すでに木*の根元に置かれています。だから、良い実を結ばないあらゆる木は切られて、火の中に投げ込まれます。」
10 そこで群衆が彼に、「それでは、私たちは何をすればよいのですか。」と尋ねた。
11 彼は答えて言った。「下着*を二枚もっている者は、持たない者に分けてやりなさい。食物を持っている者も同じようにしなさい。」
12 取税人もバプテスマを受けに来て、彼に言った。「先生*、私たちは何をすればよいのですか。」
13 彼らに言った。「定められている以上のものを、徴収してはいけない。」
14 兵士たちも尋ねて言った。「では、私たちは何をすれば良いのですか。」 彼は言った。「人を脅したり、強要して取ったりしてはいけない。自分の給与で満足していなさい。」
15 民衆は救い主を待ち望んでいたので、みな心の中でヨハネのことを、もしかするとこの人がキリストではなかろうかと心の中で討論していた。
16 そこでヨハネはすべての者に言った。「私はただ、水であなたがたにバプテスマを授けているだけです。しかし、私しよりも力のある方が来られます。私には、そのサンダルのひもを解く値うちもありません*。このかたは、聖霊と火とによって、あなたがたにバプテスマをお授けになります。
17 また、箕を手に持って、脱穀場をことごとくきよめ、麦を集めて倉に納め、殻は消えない火で焼き尽くされるでしょう。」
18 それから、ヨハネは他にも多くの勧めをして、人々に良い知らせを宣べ伝えた。
19 さて、領主ヘロデは、兄弟の妻ヘロデヤのことで、また自分がしたあらゆる悪事について、ヨハネから罪ある者とされていたので、
20 彼を牢獄に閉じ込めて、いろいろな悪事の上に、もう一つこの悪事を重ねた。
21 民衆が皆、バプテスマを受けたとき、イエスもバプテスマを受けて祈っておられると、天が開けて、
22 聖霊があたかも 鳩のような姿をとってイエスの上に降りて来て、そして天から声が発せられて、こう言った。「あなたはわたしの愛する子、わたしの喜ぶ者である。」
23 イエスは、約三十歳の時から、宣教を始められた。そしてイエスは、人々にはヨセフの子とみなされていた。 ヨセフはヘリ*の子、
24 それから、順番にさかのぼって、 マタテ、レビ、メルキ、ヤンナイ、ヨセフ、
25 マタテヤ、アモス、ナホム、エスリ、ナンガイ、
26 マハテ、マタテヤ、シメイ、ヨセフ、ユダ、
27 ヨハナン、レサ、ゾロバベル、サラテル、ネリ、
28 メルキ、アデイ、コサム、エルマダム、エル、
29 ヨセ、エリエゼル、ヨリム、マタテ、レビ、
30 シメオン、ユダ、ヨセフ、ヨナン、エリヤキム、
31* メレア、メナン、マタタ、ナタン、ダビデ、
32 エッサイ、オベデ、ボアズ、サルモン、ナアソン、
33 アミナダブ、アラム、エスロン、パレス、ユダ、
34 ヤコブ、イサク、アブラハム、テラ、ナホル、
35 サルク、レウ、ペレグ、エベル、サラ、
36 カイナン、アルパクサデ、セム、ノア、ラメク、
37 メトセラ、エノク、ヤレデ、マハラレル、カイナン、
38 エノス、セツ、アダム、そしてアダムは神の子である。
*1 テベリオの即位 AD14〜、15年目は
AD28、9年になる。 ポンテオ・ピラト(AD26−36、総督)、 ヘロデ・アンティパス(BC4−AD39、ガリラヤとペレアの国主)、 ガリラヤの北東にテラコニテ、その北がアビレネ。 領主とは、 テトラルケオー(ギ) tetrarch、四分領主 (古代ローマの『領土の4分の1を統治する者』)、使徒13:1
*2 アンナスはAD6−15年で退職になったが実権を握り続けたので、事実上、カヤパ(AD18−36)と二人の大祭司がいたように記述している
*4、5、6 イザヤ40:3−5、 サルクス(ギ) flesh、肉(なる者)
*7 ゲンネーマタ エキドゥノーン(ギ) offsprings of vipers、毒蛇の子孫たち
*9 木はイスラエルの象徴: ぶどうの木(ホセア10:1)、いちじくの木(エレ8:13)
*11 キトーン(ギ) tunic、undergarment、チュニック、外衣、(ひざまである)肌着(下着)
*12 ディダスカロス(ギ) teacher、master、先生、主、(五役者の)教師
*16 靴(サンダル)の紐を解くのは奴隷の仕事で、それ以下であると言っている
*23、31 ヘリはイエスの母マリヤの父、 cf. ヨセフの父はヤコブ(マタイ1:16)、 ダビデからヘリまでは、マリヤの系列を追っている
第4章
1* さて、イエスは聖霊に満たされてヨルダン川から帰り、そして、霊にあって*荒野へ導かれた。
2 イエスは四十日間そこにおられてから、悪魔*の試みを受けられた。何も食ないでいるその日数が終わって、空腹を覚えられた。
3 そこで悪魔が言った。「もしあなたが神の子*であるなら、この石に、パンになるように言いなさい。」
4 イエスは悪魔に向かって答えて言われた。「『人はパンだけで生きる*のではなく、神の一つ一つの言葉による。』*と書いてある。」
5 それから、悪魔はイエスを高い所へ連れて行き、一瞬のうちに世界のすべての国々を見せて、
6 言った。「すべてのこの権威を、また これらの栄華とを、あなたにあげましょう。それらは私に与えられたものであり*、誰にでも私の一存で与えられうるからです。
7 それゆえ、もし、あなたが私の前にひざまずくなら、すべてがあなたのものです。」
8 イエスは答えて言われた。「私から立ち去れ*。サタン。『あなたの神である主*を拝み*、仕えよ。』*と書いてある。」
9 それから悪魔はイエスをエルサレムに連れて行き、神殿の頂上に立たせて言った。「もしあなたが神の子*であるなら、ここから下へ飛び降りてみなさい。
10 『神はあなたのために、御使いたちに命じてあなたを守らせるであろう。』*とあり、
11 また、『あなたの足が石に打ちつけられないように、彼らはあなたを手で持ち上げる。』*とも書いてあります」
12 イエスは答えて言われた。「『あなたの神である主を試みては*ならない。』*と語られている。」
13 悪魔はあらゆる誘惑をし尽くして*、次の機会までの間、イエスを離れ去った。
14 それからイエスは御霊の力に満ちあふれてガリラヤへ帰られると、そのうわさがその地方全体に広まった。
15 イエスはいくつもの会堂*で教えられ、すべての者から尊敬を受けられた。
16 それからお育ちになったナザレ*に行き、安息日にいつものように会堂に入られ、聖書を朗読しようとして立たれた。
17 すると預言者イザヤの書が手渡されたので、その巻物を開いて、こう書いてある所を見つけられた。
18* 「主*の御霊がわたしの上にある。 主はわたしに油を注ぎ、貧しい人々に福音を宣べ伝え、壊れた心の者たちをいやす*ために、わたしを遣わされた。 囚人には釈放*を、盲人には目が開かれることを告げ、しいたげられている者を自由に**し、
19* 主の受け入れの年を、告げ知らせるために。」
20 イエスは聖書を巻いて係の者に返し、席に着かれると、会堂にいるすべて者の目がイエスに注がれた。
21 そこでイエスは、「このみことばは、今日、あなたがたが耳にした通りに、成就しました。」と語り始められた。
22 すると、彼らはみなイエスを確認し、またその口から出て来る恵みの言葉に感嘆し、また、こう言った。「この人はヨセフの子ではなかったか。」
23 そこで彼らに言われた。「あなたがたは、きっと、『医者よ、自分自身を直せ。』*という、ことわざを引いて、カペナウムで行われたと聞いていた事を、あなたの郷里のこの地でもしてくれ、と言うでしょう。」
24* それから言われた。「まことに、あなたがたに言います。預言者は、自分の郷里では受け入れられないものです。
25 そこで、わたしは真理によってあなたがたに言います。エリヤの時代に、三年六か月に渡って天が閉ざされ、イスラエル全土に大ききんがあったとき、そこには多くのやもめたちがいたが、
26 エリヤはそのうちの誰にも遣わされないで、ただシドンのサレプタにいる一人のやもめにだけ遣わされました*。
27 また預言者エリシャの時代に、イスラエルには多くのらい病人がいたが、そのうちの一人もきよめられないで、ただシリヤのナアマンだけがきよめられました*。」
28 すると、会堂にいたすべての者たちはこれを聞いて、怒りに満ち、
29* 立ち上がってイエスを町の外へ追い出し、その町が建っている丘の崖まで連れて行って、放り投げようとした。
30 しかし、イエスは彼らの真中を通り抜けて、去って行かれた。
31 それから、イエスはガリラヤの町カペナウムに下って行かれた。そして安息日になると、人々を教えられたが、
32 その言葉に権威があったので、彼らはその教えにより驚きに打たれた。
33 すると、汚れた悪霊につかれた人が会堂にいて、大声で叫び出した。
34 「ああ、われわれと何の係わりがあるのか*。ナザレのイエスよ。われわれを滅ぼしに来たのか。あなたが誰であるのか知っている。神の聖者だ。」
35 イエスはこれをしかって、「黙れ。この人から出て来い。」と言われた。すると悪霊は彼を人々の真中に投げ倒して出て行き、彼は何の傷も負わなかった。
36 皆の者は驚いて、互に語り合って言った。「これは、何と、権威と力のある言葉だろうか。汚れた霊に命じられると、彼らは出て行くのだ。」
37 こうしてイエスの評判が、その地方の至る所に広まっていった。
38 イエスは会堂を出て、シモン*の家に入られた。ところがシモンのしゅうとめが高熱を出して病んでいたので、人々は彼女のためにイエスにお願いした。
39 そこで、イエスは彼女の所に来て、そばに立って熱を叱ると、熱が引いたので、ただちに彼女は起き上がって、彼らをもてなした。
40 日が暮れると*、人々がいろいろな病気で弱っている者たちをイエスのところに連れてきたので、その一人一人に手を置いていやされた。
41 悪霊も、「あなたこそキリスト、神の子だ。」と叫びながら多くの人々から出ていった。しかし、イエスは彼らを叱って、物を言わせなかった。彼らがイエスがキリストであると知っていたからである。
42 夜が明けると、イエスは寂しい所へ出て行かれたが、群衆が捜し回り彼の所まで来て、自分たちから出て行かれないようにと引き止めた。
43 しかしイエスは、「わたしは、他の町々にも神の御国の福音を宣べ伝えなければなりません。自分はそのために遣わされたのです。」と言われた。
44 そして、ガリラヤの*諸会堂で説教された。
*1 マタイ4:1−11、 野の獣もそこにいた、より 幻ではなく実際に野に行った(マルコ1:13) エン トー プニューマティ(ギ) in(by、with) the Spirit
*2 ディアボロス(ギ) devil 悪魔、accuser、calumniator、告発する・訴える者、誹謗・中傷する者; (ヘブライ語の本来の意)サタン、敵対者
*3、9 ヒュイオス トウ セオウ(ギ) Son of God 神の子、神の息子 ← 天からの御声(3:22)からの言及
*4 ゼーセタイ(ギ) <ザオ live、(ゾエ、(永遠の)いのち、活力)、 申命記8:3
*6 cf. Tヨハ5:19
*8 (直訳) わたしの後方へ出て行け、 主:ヤハウェ、 拝み (申命記では)恐れ、 申命記6:13 「あなたがたの神である主を畏れ、仕え、御名によって誓いを果たせ。」
*10、11 詩篇91:11、12、 サタンは 詩篇のみことばさえも悪用したが、イエスは
いずれも申命記の十戒のみことばを用いてサタンを撃退された
*12 ロー(ヘ、Don't) テナスー(ヘ、未完、2・複尾) <ナサー tempt、test、(try、prove)、試す、、 cf. バハン 試験する、証明する(ゼカ13:9、マラ3:10)、 申命記6:16
*13 あらゆる誘惑: 誘惑はこの3種に代弁される
*15 スナゴーガイス(ギ、複) <スナゴゲー、 シナゴーグ、(ユダヤ教の)会堂
*16 ナザレは、イエスの幼少期からずっと過ごされた場所で、ヨセフとマリヤの故郷でもある(1:26、2:4)
*18 イザヤ61:1、 主:ヤハウェ、 (直訳)壊れた心をつなぎ合わせ、 アフェシス(ギ) 釈放
と 自由(解放)は同じ言葉、 イザヤ58:6
*19 イザヤ61:1、 神の復讐の日を告げ、 は、あえて語られなかった
*23 医者であるルカのみが記述
*24、29 マタイ10:21、マルコ13:12の、 兄弟は兄弟を、父は子を死に渡し、の一部が成就
*26 T列17:9、 サレプタ(ギ) = ツァルファス(ヘ)、ツァレファテ
*27 U列5:1−14
*34 ティ ヘーミン(ギ) what to us、 われわれと何か(係わりが)あるのか
*38 シモン = ペテロ
*40 シナゴーグで教えられたその日は安息日だったので、日没後に人々は来た
*44 マルコ1:39
第5章
1 さて、群衆が神のことばを聞こうとして押し寄せてきたとき、イエスはゲネサレ湖畔*に立っておられたが、
2 そこに二艘(そう)の小舟*が寄せてあるのをご覧になった。漁師たちは、舟から降りて網を洗っていた。
3 その一艘はシモン*の舟であったが、イエスはそれに乗り込み、シモンに頼んで岸から少しこぎ出させ、そして座って、舟の中から群衆に教えられた。
4 話がすむと、シモンに、「深みへこぎ出し、網を下ろして漁をしなさい。」と言われた。
5 シモンは答えて言った。「先生*、私たちは夜通し働きましたが、何も取れませんでした。それでも、あなたのその言葉によって*、網を下ろしてみましょう。」
6 そしてその通りにしたところ、おびただしい魚の群れが入って、網が破れそうになった。
7 そこで、もう一艘の舟にいた仲間に、助けに来るよう合図をしたので、彼らが来て魚を両方の舟いっぱいに入れた。そのために、舟が沈みかけるほどになった。
8 これを見てシモン・ペテロは、イエスのひざもとにひれ伏し言った。「主よ、私から離れてください。私は罪深い者です。」
9 それは、彼も、一緒にいた者たちも皆、取れた魚の量に驚愕したからである。
10 シモンの仲間であったゼベダイの子ヤコブとヨハネも、同様であった。すると、イエスがシモンに言われた、「恐れることはない。今から後、あなたは人間をとるようになります。」
11 そこで彼らは舟を陸に引き上げ、一切を捨ててイエスについて行った。
12 イエスが町々の一つにおられた時、見よ、全身らい病になっている人がそこにいた。イエスを見ると、顔を地に伏せて願って言った。「主よ。あなたのみこころでしたら、あなたは私をきよめることがおできになります。」
13 イエスは手を伸ばして彼にさわり、「わたしはそうしよう*。きよくなれ。」と言われた。すると、らい病がただちに去って行った。
14 イエスは、だれにも話さないようにと彼に言い聞かせ、「ただ行って自分のからだを祭司に見せ、それからあなたのきよめのため、モーセが命じた通りの捧げ物*をして、人々にあかししなさい。」と命じられた。
15 それでもイエスの評判はますます広まって行き、おびただしい群衆が、教えを聞いたり、病気を直してもらったりするために集まってきた。
16 しかしイエスご自身は、荒野に退いて、そこで祈っておられた。
17 ある日のこと、イエスが教えておられると、ガリラヤとユダヤの村々から、またエルサレムから来た*パリサイ人たちや律法学者たちが、そこに座っていた。主の力が現れ、人々はいやされていた。
18 そして、見よ、人々が一人の中風の人を寝床に載せたまま連れてきて、家の中に運び入れ、イエスの前に置こうとした。
19 ところが、群衆のためにどうしても運び入れる方法がなかったので、屋上の間に上り、屋上の土をはがして*、病人を寝床ごと群衆の真中に吊り下ろして、イエスの前に置いた。
20 イエスは彼らの信仰を見て、「人よ*。あなたの罪は、今赦されました*。」と言われた。
21 すると律法学者たちとパリサイ人たちとは、「神を汚すことを言うこの者は、一体、何者か。ただ神のほかに、誰が罪を赦すことができようか。」と言って理屈を言い始めた。
22 イエスは彼らの論議を見抜いて、「あなたがたは心の中で何の理屈を言っているのですか。
23* あなたの罪は赦されたと言うのと、起きて歩けと言うのと、どちらがたやすいですか。
24 しかし、人の子が地上で罪を赦す権威を持っていることを、あなたがたが知るために。」と彼らに言い、中風の人に、「あなたに命じる。起きなさい。寝床を取り上げて家に帰りなさい。」と言われた。
25 すると病人はただちに皆の前で起き上がり、寝ていた床を取りあげて、神をほめたたえながら家に帰って行った。
26 すべての者は驚いて呆然とし*、そして神を崇め、畏れに満たされて、「今日は、見たこともないもの*を見た」と言った。
27* これらの出来事の後、イエスが出て行かれると、レビ*という名の取税人が収税所に座っているのを見て、「わたしについて来なさい。」と言われた。
28 すると、彼はすべてを捨てて立ち上がり、イエスについて行った。
29 それから、レビは自分の家で、イエスのために盛大な宴会を催したが、多くの取税人たちや、彼らといっしょにいた大ぜいの人々が、横になって共に食卓に着いていた*。
30 ところが、パリサイ人やその律法学者たちが、イエスの弟子たちに対して文句を言った。「なぜあなたがたは、取税人や罪人などと飲食を共にするのですか。」
31 イエスは答えて言われた。「健康な人は医者を持つ必要はありません。必要なのは、病人です。*
32 わたしが来たのは、義人を招くためではなく、罪人を悔い改めに招くためです。」
33 また彼らはイエスに言った。「ヨハネの弟子たちは、よく断食をし、また祈りをしており、パリサイ人の弟子たちもそうしている*のに、あなたの弟子たちは食べたり飲んだりしています。」
34 するとイエスは言われた。「あなたがたは、花婿が一緒にいるのに、婚礼の友人たち*に断食をさせることができますか。
35 しかし、花婿が彼らから奪い去られる日が来ます。その日々には断食します。」
36 それからイエスはまた一つの たとえを語られた。「誰も、新しい着物から布ぎれを切り取って、古い着物につぎを当てる人はいません。もしそんなことをしたら、新しい着物を裂くことになるし、新しい着物から取った布きれも古いのに合わないでしょう。
37* また誰も、新しいぶどう酒*を古い皮袋に入れません。もしそんなことをしたら、新しいぶどう酒は皮袋を張り裂き、そしてぶどう酒は流れ出て、皮袋もだめになります。
38 新しいぶどう酒は新しい皮袋に入れると、両方保ちます。
39 また誰も、古い酒を飲んでから、新しいのを飲みたがりません。それは、『古いものが良い。』と言うからです。」
*1 ガリラヤ湖(ギリシャ名でゲネサレ)の岸辺、 ルカ書では リムネー(ギ) Lake、湖 と書いている
*2 小舟は 7−10メートルの長さ
*3 シモン・ペテロ
*5 エピスタタ(ギ) <エピスタテス Master、(ルカ書特有の言葉で)(弟子が師に)先生、(ルカ8:24、9:33、49、17:13) ペテロはこの時点で、イエスを権威ある指導者として見ていた。 エピ デ トー レーマティ(単・中) ソウ、
on yet the word of You、それでも、あなたのその言葉(レーマ)によって ・・・ 信仰の歩み
*13 マルコ1:41、 セロー(ギ) I will、 そうしよう、そうしてあげよう いやされるのは主のみこころであることの表明、(マルコでは、主のあわれみが動機)
*14 レビ14:1−32
*17 ついに、本部のエルサレムからも調査に来た
*19 屋根、あるいは、屋上の間は、一年に一度、多くの木の枝を渡して
土を盛って踏み固めていた。 ケラモーン(ギ) 粘土。(パレスチナでは、粘土を焼いた瓦はほとんど用いられない)
*20 アンスローペ(ギ) <アンスローポス human being、人よ (cf.マルコ2:5 テクノン(ギ) child、子)、 アフェオーンタイ(ギ、完了・被、3・複) (複数の罪が、今すでに)赦された
*23 マルコ2:9、 いやすほうが難しい。わざが起こることが、この場合、御子の神性の証明 (今のこの瞬間に)赦された → この場にいるイエスが神であり、罪を赦す権威を持っていることを示す
*26 エクスタシス(ギ) trance、be amazed、恍惚状態、 パラドクソス(ギ) unexpected、uncommon、予期しない、珍しい、信じがたい
*27 マタイ9:9、 レビ = マタイ、 アルパヨの子(マルコ2:14)
*29 カタケイマイ(ギ) lie、have lain down at meals、食事のために横になる(当時の正餐の作法)
*31 医者ルカらしい記述、 当時の医者は 身分が低く、召使い扱いだった
*33 パリサイ人は週に2度断食(ルカ18:2)
*34 (直訳) 婚礼の式場の子どもたち
*37 発酵途中の新しいワインは、そのガスにより古く硬くなった革袋を張り裂く
第6章
1 過越し祭の後の第二安息日*に、イエスが麦畑の中を通って行かれたとき、弟子たちが穂を摘み、手でもみながら食べていた。
2* すると、あるパリサイ人たちが言った。「あなたがたはなぜ、安息日に許されていないことをするのですか。」
3 そこでイエスが答えて言われた。「あなたがたは、ダビデとその供の者たちとが空腹だったとき、ダビデが何をしたか読んだことがないのですか。
4* すなわち、神の家に入って、祭司たちの他は誰も食べてはならない供えのパンを取って食べ、また供の者たちにも与えたではありませんか。」
5 また彼らに言われた。「人の子は安息日にも主です。」
6 また、別の安息日に、会堂に入って教えておられたときにも、そこに右手のなえた人がいた。
7 律法学者たちやパリサイ人たちは、イエスを訴える口実を見つけようとして、安息日にいやされるかどうかを凝視していた。
8 イエスは彼らの考えを知っておられたが、その手のなえた人に、「起きて、真中に立ちなさい。」と言われると、起き上がって立った。
9 そしてイエスは彼らに向かって言われた。「あなたがたに尋ねます。安息日に良いことを行うのと悪を行うのと、いのちを救うのと殺すのと、どちらが良いですか。」
10 そして彼ら一同を見回して、その人に、「手を前に伸ばしなさい。」と言われた。その通りにすると、その手はもう一方の手のように健全になった。
11 そこで彼らは分別も何も無くなり*、イエスをどうしてやろうかと、互に話し合った。
12* このころ、ある日が来て*、イエスは祈るために山へ行き、夜を徹して神に祈られた。
13* 日が上って、弟子たちを大声で呼び寄せ、その中から十二人を選び出し、これに使徒*という名をお与えになった。
14 すなわち、ペテロとも呼ばれるシモンと、その兄弟アンデレ、ヤコブとヨハネ、ピリポとバルトロマイ、
15 マタイとトマス、アルパヨの子ヤコブと、熱心党と呼ばれるシモン、
16 ヤコブの子ユダ、それからイスカリオテのユダ。このユダが裏切り者*となったのである。
17 そして、イエスは彼らと一緒に山を下って平地に立たれたが、大ぜいの弟子たちや、ユダヤ全土、エルサレム、ツロとシドンの海岸地方などからの大群衆が、教えを聞くため、また病気をいやしていただこうとして、そこに来ていた。
18 そして汚れた霊に悩まされている者たちも、いやされた。
19 また群衆は皆、なんとかしてイエスに触れようと努めた。それはイエスの内から力が流れ出て、すべての者をいやしたからである。
20* そのとき、イエスは目を上げ、弟子たちを見て言われた。 「貧しい人たちは、幸いです*。神の御国はあなたがたのものだからです*。
21 今、飢えている人たちは、幸いです。満ち足りるからです。 今、泣いている人たちは、幸いです。笑うようになるからです。
22 人の子のために、人々があなたがたを憎むとき、また、あなたがたを排斥し、非難し、あなたがたを邪悪な者として除名するときは、あなたがたは幸いです。
23 その日には喜びなさい*、飛び跳ねて喜びなさい*。見よ。天においてあなたがたの受ける報いは大きいからです。彼らの祖先たちも、預言者たちに対して同じことをしたからです。
24 しかし、慰めを今、受けている、あなたがた富んでいる人たちは、災いです。
25 今、満腹している人たちは、災いです。あなたがたは飢えるようになるからです。今、笑っている人たちは、災いです。あなたがたは嘆き、泣くようになるからです。
26 人々が皆、あなたがたをとても素晴らしいと言うならば、あなたがたは災いです。彼らの祖先も、にせ預言者たちに対して同じことをしたからです。
27* しかし、わたしが言っていることを 今、聞いている*あなたがたに言います。 あなたがたの敵を愛し、あなたがたを憎む者たちに良くしてやりなさい。
28 のろう者を祝福し、悪口を言う者のために祈りなさい。
29 あなたの頬を打つ者にはもう一方のの頬をも向け、あなたの着物を奪い取る者には下着*をも拒まないようにしなさい。
30 あなたに求める者には与えてやり、あなたの持ち物を奪う者からは取り戻さないようにしなさい。
31* あなたがたが人々にしてほしいと望むことを、人々にも同じようににしなさい。
32 もし、自分を愛してくれる者を愛したからといって、どれほどの恵み*になるでしょうか。罪人でさえ、自分を愛してくれる者を愛しているからです。
33 もし、自分に良くしてくれる者に良くしたからといって、どれほどの恵み*になるでしょうか。罪人でさえ、同じ事をしているからです。
34 また返してもらうつもりで貸したからといって、どれほどの恵み*になるでしょうか。罪人でさえ、同じ分を返してもらうつもりで、仲間に貸すからです。
35 しかしながら、あなたがたは、あなたがたの敵を愛し、良くしてあげ、また何も失望しないで*貸しなさい。そうすればあなたがたが受ける報酬は多く*、そして、あなたがたはいと高き方の子供たちとなります。いと高き方は、恩知らずの者たちや、悪人たちにも、あわれみ深いからです。
36 あなたがたの父なる神があわれみ深い方であられるように、あなたがたもあわれみ深い者になりなさい。
37 人をさばかないように。そうすれば、自分もさばかれません。また人を罪に定めないように。そうすれば、自分も罪に定められません。赦しなさい。そうすれば、自分も赦されます。
38* 与えなさい。そうすれば、自分に与えられます。人々は最高の*量り*によって、押し込み、ゆすり入れ、溢れ出るまでに、あなたがたの懐(ふところ)に入れてくれます。あなたがたの量るその量りで、自分も量り返されるからです。」
39 イエスはまた一つの たとえを語られた。「盲人は盲人の手引ができるでしょうか。二人とも穴に落ち込まないでしょうか。
40 弟子はその師以上のものではありませんが、訓練を受ければ、みなその師くらいにはなります。
41 なぜ、兄弟の目にあるちりはよく見えながら、自分の目にある梁に気が付かないのですか。
42 すなわち、なぜ、自分の目にある梁は見ないで、あなたの兄弟に、兄弟よ、あなたの目にあるちりを取らせてください、と言えますか。偽善者よ、まず自分の目から梁を取り除きなさい、そうすれば、はっきり見えるようになって、兄弟の目にあるちりを取り除くことができます。
43 それは、腐った実のなる良い木は無く、また良い実のなる病気の木も無いからです。
44 あらゆる木は、それ自身が実らす実によって、分かるからです。いばらからいちじくを取ることはないし、野ばらからぶどうを摘むこともないからです。
45* 善人は良い心の倉*から良い物を取り出し、悪人は悪い心の倉から悪い物を取り出します。それは、心に満ち溢れることを、口が語っているからです。
46 わたしを主よ、主よ、と呼びながら、なぜわたしの言うことを行わないのですか。
47* わたしのもとに来て、わたしの言葉を聞いて行う者が、何に似ているか、あなたがたに示しましょう。
48 それは、地を深く掘り、岩の上に土台を据えて家を建てる人に似ています。洪水となり、川が氾濫してその家に押し寄せてきても、揺り動かされませんでした。岩の上に建てられていたからです。
49 しかし聞いても行わない人は、土台なしで、土の上に家を建てた人に似ています。激流が押し寄せて来ると、その家はたちまち倒れてしまい、その壊れ方はひどいものでした。」
*1 エン サッバソー デウテロプロートー(ギ) in sabbath second-first、 過越し祭の終わった最初の第2安息日 (大麦の収穫が終わり、小麦が実る頃。4月半ば頃)
*1、2 申命記23:25、 パリサイ人の口伝律法では、刈り入れ、脱穀は安息日にしてはいけない”労働”であり、これらもそうであると拡大解釈された
*4 Tサム21:1−6、 レビ24:5−9
*11 (直訳) 狂気に満たされ
*12、13 エゲネト(ギ、アオ過去2(瞬時過去)、3単) it occured、came to pass、 イエスは、12使徒一人一人のために 夜を徹して祈られた。おそらく、1人につき1時間の祈り、 アポストロス(ギ) apostle、使徒 = シャリーアハ(ヘ) 権威を認められた代理人、(単に)遣わされた者 の意
*16 プロドーテス(ギ) betrayer、traitor、裏切り者、売国奴 cf. マタイ、マルコでは一貫して、 引き渡す者
*20 ルカ6章17〜49 地上説教 cf.マタイ5章〜7章は山上の垂訓(山上の説教)、 マカリオイ(ギ)
<マカリオス happy、幸い、うらやむべき、 エスティン(ギ)= there is、 cf.マタイ5:3 天の御国は彼らにすでにあるからです
*23 カイーレテ(ギ、現在、2複) <カイーロー rejoice、be glad;rejoice exceedingly;be well (大いに)喜ぶ、 (ギリシャ、ローマ風の)喜びのご挨拶、お元気で、 スキルテーサテ(ギ、アオ過去、2複) leap、飛び跳ねる(て喜ぶ)
*27 聞くこと: cf. マルコ4:24
*29 チュニック、ひざまであるそでの無い肌着(その上に上着を着ていた)
*31 = マタイ7:12、黄金律、 = 旧約聖書の要約
*32、33、34 カリス(ギ) grace、 (大いなる)恵み、 メーデン アペルピゾンテス(ギ) nothing despairing、(直訳) 何も絶望(失望、落胆)しないで (聖書でここだけの言葉) (人には何も期待せずに、)主が報いてくださると信じ、主に期待して、の意。 ポリュース(ギ) many、much、large (数、量が)多い、大きい
*38 カロス(ギ) beautiful、good、excellent、美しい、良い、優れた、すばらしい、 メトロン(ギ) measure、 量り、測定
*27〜38 § 敵をアガペーの愛で愛せよ、から始まる この一連のメッセージは、何と、最後には経済的な祝福に結論されている。 地上説教で、ここに集まった「貧しい人々」は、「大いなる恵み」を受ける秘訣を学ばせられた。 マルコ4:24
では、「聞く」ことにポイントがある
*45 マタイ12:35、 cf. マタイ13:52、 セサウロース(ギ) storehouse、treasury、倉庫、宝の倉(箱)、宝
*47、48 この場合、救いの信仰(行いが要らない)ではなく、神のことばの土台の上に、聞き従いの家を建てること。 ヤコブ1:22
第7章
1 イエスはこれらのすべての言葉を、聞いている人々に語り終えられると、カペナウムに入られた。
2 ところが、ある百卒長に重用されていたしもべが、病気になって死にかかっていた。
3 この百卒長はイエスのことを聞いて、ユダヤ人の長老たちをイエスのところに遣わし、自分のしもべを助けに来てくださるようにと、お願いした。
4 彼らはイエスのところにきて、熱心に願って言った。「あの人はそうしていただくのにふさわしい価値*がございます。*
5 私たちの国民を愛し、私たちに会堂を建ててくれたのです。」
6 そこで、イエスは彼らと共に出かけられた。ところが、すでにその家から遠くない所まで来られたとき、百卒長は友人たちを送ってイエスに言わせた。「主よ。どうぞ、ご足労くださいませんように。私は屋根の下にあなたをお入れする程の者では*ございません。
7 そのために、自分であなたのところに伺う値打ち*さえもない者です。ただ、お言葉を下さい。そして、私の少年*をいやしてください。
8 それは、私も権威の下に*置かれてある*人間ですが、私の下に兵士たちがいまして、一人の者に、『行け。』と言えば行き、他の者に、『来い。』と言えば来ます。また、私のしもべに、『これをせよ。』と言えば、するのです。」
9 イエスはこれを聞いて不思議に思われ*、ついて来た群衆に振り返って言われた。「あなたがたに言います。これほど偉大な*信仰は、イスラエルの中にさえも見たことがありません。」
10 使いに来た者たちが家に帰ると、しもべは健康になっていた。
11 その翌日、ナイン*という町へ入られたが、弟子たちや大ぜいの群衆も一緒に行った。
12 町の門に近づかれると、見よ、あるやもめの一人息子だった者が死んだので、埋葬のために運び出すところであった。大ぜいの町の人たちが、その母に付き添っていた。
13 主はこの婦人を見て深い同情を覚えられ、「泣かないでもよい。」と言われた。
14 そして近寄って棺(ひつぎ)に手をかけられると、担いでいる者たちが立ち止まったので、「若者よ、あなたに言う。起きなさい。」と言われた。
15 すると、死人が起きて座り、話し始めた。イエスは彼をその母にお渡しになった。
16 人々は皆、恐れをいだき、神をほめたたえて、「偉大な預言者が私たちの間に現れた。」、また、「神はその民を顧みてくださった。」と言った。
17 イエスについてのこの話は、ユダヤ全土およびその近辺の至る所に広まった。
18* ヨハネの弟子たちは、これらのことを全部彼に報告した。するとヨハネは弟子の中から二人の者を呼び出し、
19* イエスのもとに送り、「『来たるべき方』*はあなたですか。それとも、他に誰かを待ち望むべきでしょうか。」と尋ねさせた。
20 そこで、この人たちがイエスのもとに来て、言った。「私たちはバプテスマのヨハネからの使いです。『来たるべき方』はあなたですか、それとも、他に誰かを待ち望むべきでしょうか、とヨハネが尋ねています。」
21 そのとき、イエスはさまざまな病気と、苦しみと、悪霊とに悩む人々をいやし、また多くの盲人を見えるようにしておられたが、
22 答えて言われた。「行って、あなたがたが見聞きしたことを、ヨハネに報告しなさい。盲人が見え、足なえが歩き、らい病人はきよくなり、つんぼは聞え、死人は生き返り、貧しい人々には福音が宣べ伝えられています。
23* わたしにつまずかない者は、幸いです。」
24 ヨハネの使いたちが行ってしまうと、イエスはヨハネのことを群衆に語りはじめられた。「あなたがたは、何を見に荒野に出て来たのですか。風に揺らぐ葦ですか。
25 では、何を見に出てきたのですか。柔らかい着物をまとった人ですか。見なさい。きらびやかに着飾って、ぜいたくに暮している人々なら、王の宮殿にいます。
26 では、何を見に出てきたのですか。預言者ですか。その通り。あなたがたに言いますが、預言者よりもはるかに優れた*者です。
27 『見よ。わたしは使いをあなたの御顔の先に*遣わし、あなたの前に*、道を用意させる。』*と書いてあるのは、この人のことです。
28* あなたがたに言っておく。女たちの産んだ者の中で、ヨハネより大きい人物はいません。しかし、神の御国では最も小さい*者も、彼よりは偉大です*。
29 これを聞いた民衆は皆、取税人たちでさえも、ヨハネのバプテスマを受けて、神を正しい方であるとしたのです。
30 しかし、パリサイ人たちと律法家*たちとは彼からバプテスマを受けないで、自分たちに対する神のみこころを無視したのです。」
31 主は言われた。「それで、今の時代の人々を何に比べられるでしょうか。彼らは何に似ているでしょう。
32 それは子供たちが広場に座って、互いに呼びかけ、『私たちが笛を吹いたのに、あなたたちは踊ってくれなかった。弔いの歌を歌ったのに、泣いてくれなかった。』*と言うのに似ています。
33 なぜなら、バプテスマのヨハネが来て、パンを食べることも、ぶどう酒を飲むこともしないと、あなたがたは、あれは悪霊に憑かれているのだ、と言い、
34 また人の子が来て食べたり飲んだりしていると、見よ、あれは食いしん坊、大酒を飲み、また取税人、罪人の仲間だ、と言います。
35 しかし、知恵の正しいことは、知恵のすべての子供たち*が証明します。」
36 あるパリサイ人がイエスに、食事を共にしたいと招いたので、そのパリサイ人の家に入って食事の席に着いて横になられた。
37 すると、見よ、その町に、ある罪深い女がいて、パリサイ人の家で食卓に着いておられることを聞いて、香油の入った石膏のつぼを持って来て、
38 泣きながら、イエスの後ろからその足もとに寄り、まず涙でイエスの足をぬらし始め、自分の髪の毛でぬぐい、そして、その足に接吻して*、香油を塗った*。
39 イエスを招いたパリサイ人がそれを見て、心の中で言った。「もしこの人が預言者であるなら、自分に触れている女が誰であるか、またどんな部類の女か分かるはずだ。それは不道徳な女なのだから。」
40 そこでイエスは彼に言われた。「シモン*、あなたに言うことがあります。」 彼は、「先生、どうぞお語り下さい。」と言った。
41 イエスが言われた。「ある金貸しに金を借りた人が二人いたが、一人は五百デナリ、もう一人は五十デナリを借りていた。
42 ところが、返すことができなかったので、彼は二人共に免除した。どちらが彼を多く愛するようになるか言ってください。」
43 シモンが答えて言った。「多く免除された者だと思います。」 イエスが言われた。「あなたの判断は正しい。」
44 それから女の方に振り向いて、シモンに諭(さと)された。「この女をご覧なさい。わたしがあなたの家に入って来た時に、あなたは足を洗う水をくれませんでしたが、この女は涙でわたしの足をぬらし、髪の毛で拭いてくれました。
45 また、あなたはわたしに接吻をしてくれませんでしたが、彼女はわたしが家に入った時から、わたしの足に接吻をして止みませんでした。
46 また、あなたはわたしの頭にオリーブ油を塗ってくれませんでしたが、彼女はわたしの足に香油を塗ってくれました。
47 それゆえ、あなたに言いますが、この女は多く愛したので、彼女の多くの罪は赦されているのです。少しだけ赦された者は、少しだけしか愛しません。」
48 そして女に、「あなたの罪は今赦された。」と言われた。
49 すると同席の者たちが彼ら自身の間で言い始めた。「罪を赦すこの人は、何者だろう。」
50 しかし、イエスは女に言われた。「あなたの信仰があなたを救ったのです。平安の中に行きなさい*。」
*4、7 アクシオス(ギ) having weight、befitting 価値のある、 § 強いとりなしの祈り
*6 ヒカノス(ギ) enough、sufficient 充分な
*7 アクシオー(ギ) fit、worthy、deem、 親しみを込めて しもべ(ドウロス、servant、slave)を少年(パイス、boy)と呼んでいた
*8 サウマゾー(ギ) wonder、marvel、 不思議に思う、驚く、 ヒュポ エクソウシアン タッソーメノス(ギ) under authority set、 エゴー アンスローポス エイミ(ギ) I am a human
*9 トサウテーン(ギ) <トソウトス so great、so many、so long (time)、大変 偉大な、大きい
*11 カペナウムから1日分行った、エン・ドル(Tサム28:7)とシュネム(U列4:8)の間の町
*18、19、23 ヘロデに捕えられていた獄中のヨハネ(弟子たちとは自由に面会)、 信仰が揺らぎかけていた、 エルコメノス(ギ) He that should come、来たるべき方
*26 ペリッソーテロス(ギ) superior、exceeding abundantly、上位の、優れた、はるかに越えて(多い)
*27 マラキ3:1、マタイ11:10、 ルカ1:76、 顔・現れの(時間的)先に、 (位置的に)正面に
*28 マタイ11:11、 § ヨハネ: 先駆の職務の器、 御国の最小の者: (わざが起こり)御国が来ているときの、イエスの弟子たち、 の職務の差。 メイーゾン=メガス(ギ)の比較級、 ミクローテロス=ミクロス(ギ)の比較級、 「女たちから生まれた者たち」は、ヨブ記14:1、15:14、25:4
から 「死ぬべき人間」 を表す。 旧約時代の束縛にある人よりも、御子の十字架によって開かれた
天の御国の働き人たちのほうが、はるかにまさっている。十字架がそれほど完全であるということ。
*30 ノミコース(ギ) lawyer、律法家、律法の専門家
*32 それぞれ、結婚式遊び と 葬式遊び
*35 テクノン(ギ) (信仰の)子
*38 カタフィレオー(ギ) は、通常のフィレオーよりも
反復した長い接吻で、ユダの接吻(マルコ14:45、マタイ26:49)、放蕩息子の父(ルカ15:20)、エペソ長老(使徒20:37)のみ。 ベタニヤでの香油(マタイ26:6−13)は十字架の直前で、これとは異なる
*40 ここのパリサイ人の家主のシモン
*50 ポレウオウ エイス エイレーネーン(ギ) go into peace、平安(な生活)の中に(入って)行きなさい、(この後の生活を保障する言葉)
第8章
1 その後、イエスは、多くの町や村を巡回して、説教し、神の御国の福音を宣べ伝えられた。十二弟子も一緒だった。
2 また悪霊を追い出され、病弱をいやされた数名の婦人たち、すなわち、七つの悪霊を追い出していただいたマグダラと呼ばれるマリヤ*、
3* ヘロデの執事クーザの妻ヨハンナ、スザンナ、その他、自分たちの持ち物によって一行に奉仕した多くの婦人たち*も一緒にいた。
4 さて、大ぜいの群衆が集まり、さらに町々からの人たちが、イエスのところへ次々と押し寄せて来たので、一つのたとえで話をされた。
5 「種まきが種を蒔きに出て行った。蒔いているうちに、ある種は道ばたに落ちた。人々に踏みつけられ、空の鳥に食べられてしまった。
6 他の種は岩地の上に落ち、芽を出したが水分が無いので枯れてしまった。
7 他の種は、いばらの真中に落ちたので、いばらも一緒に成長して、それをふさいでしまった。
8 また、別の種は良い地に落ちたので、成長して百倍もの実を結んだ。」 このように語られた後、大声で、「聞く耳のある者は聞きなさい。」と言われた
9 弟子たちは、「この たとえはどういう意味ですか。」とイエスに質問した。
10 そこで言われた。「あなたがたには、神の国の奥義を知ることが与えられていますが、他の人たちには、見ても見えず、聞いても理解しないために、たとえで話すのです。
11 この たとえはこういう意味です。種は神のことばです。
12 道ばたに落ちたものは、聞いた後、信じることも救われることもないように、悪魔によってその心から
みことばが奪い取られる人たちのことです。
13 岩地の上に落ちたものは、みことばを聞いた時には喜んで受け入れるが、根が無いので、しばらくは信じていても、試錬の時が来ると、信仰から離れ去る人たちのことです。
14 いばらの中に落ちたものは、聞いてから日を過ごすうちに、生活の中の、心づかいや富や快楽に塞がれて、実の熟するまでにならない人たちのことです。
15 しかし、良い*地に落ちたものは、良い*心、幸いな*心でみことばを聞いた後、これをしっかりと引き止め*、揺るがない*で実を結ぶに至る人たちのことです。
16 だれも明かりを灯して、それを何かの器で覆いかぶせたり、寝台の下に置いたりはしません。燭台の上に置いて、入って来る人たちに光が見えるようにするのです。
17 それは、隠されているもので、明らかにされないものは何も無く、秘密にされているもので、いつまでも知られず、明るみに出されないものはないからです。
18* だから、どのように聞くか*に注意しなさい。持っている人は更に与えられ、持っていない人は、持っていると思っているものまでも、取り上げられるからです。」
19 さて、イエスの母と兄弟たちとがイエスのところに来たが、群衆のために会って話をすることもできなかった。
20 それで、誰かが、「あなたの母上と兄弟たちが、会おうと願って、外に立っています。」と伝えた。
21 するとイエスは人々に答えて言われた。「神のみことばを、聞いて、行なう者が、わたしの母、わたしの兄弟なのです。」
22 ある日のこと、イエスは弟子たちと舟に乗り込み、「湖の向こう岸へ渡ろう。」と言われたので、一同が船出した。
23 渡って行く間に、イエスは眠ってしまわれた。すると突風が湖に吹きおろしてきた*ので、水が満ちて、危険になった。
24 そこで、彼らは近づいてイエスを起し、「師よ*。師よ。私たちは死にかかっています。」と言った。それで、イエスは起き上がって、風と荒波とを叱りつけると、風は止んで大なぎになった。
25 イエスは彼らに言われた。「あなたがたの信仰は、どこにあるのですか。」 彼らは恐れ、驚いて互に言った。「一体、この方はどなただろう。風と水に命じられると、それらも従うとは。」
26 それから、彼らはガリラヤ湖の対岸、ガダラ人の地に渡った。
27 イエスが陸に上がられると、その町の人で、悪霊に取りつかれた人と出会われた。彼は、長い間着物も着ず、家に居つかず、墓場に住んでいた。
28 この人がイエスを見て叫び声を出し、御前にひれ伏して大声で言った。「いと高き神の子イエスよ。あなたは私と何の係わりがあるのです*。お願いです、私を苦しめないでください。」
29 それは、イエスが汚れた霊に、その人から出て行け、とお命じになったからである。というのは、悪霊が何度も彼を捕えたので、彼は鎖と足かせとでつながれて看視されていたが、それを断ち切って悪霊によって荒野へ行かされていたからである。
30 イエスは彼に、「おまえの名は何か。」とお尋ねになると、「レギオンです。」と答えた。彼の中にたくさんの悪霊が入り込んでいたからである。
31 悪霊どもは、アビス*に行くことを自分たちにお命じにならないようにと、イエスに願い続けた。
32 さて、その山地には非常に多くの豚の群れが飼われていた。そこで、それらの豚の中へ入ることを許していただきたいと、悪霊どもが願い出て、イエスはそれをお許しになった。
33 そこで悪霊どもは、その人から出て豚の中へ入り込んだ。すると、その群れは崖から湖へ駆け下り、湖になだれ落ちて、おぼれ死んでしまった。
34 飼う者たちは、この出来事を見て逃げ出して、町や村里に行って伝えた。
35 人々はこの出来事を見に出てきた。そして、イエスのところに来て、悪霊を追い出された人が着物を着て、正気になってイエスの足もとにすわっているのを見て、恐れた。
36 それを見た人たちは、どのようにこの悪霊につかれていた者が救われたかを、彼らに語り聞かせた。
37 それから、ガダラの地方の民衆は皆、自分たちの所から立ち去ってくださるようにとイエスに頼んだ。彼らが非常な恐怖に打たれていたからである。そこで、イエスは舟に乗り込み帰ろうとされた。
38 悪霊が追い出された人は、共に居たいと乞い願ったが、イエスは彼に帰るようにと、こう言われた。
39 「家へ帰って、神があなたにどんなに大きなことをしてくださったか、語り聞かせなさい。」 そこで彼は立ち去って、イエスが自分にして下さった大いなることを皆、町中に言い広めた。
40 それからイエスが帰って来られると、群衆は喜んで迎えた。皆がイエスを待ち受けていたからである。
41* そして、見よ、ヤイロという名の人が来た。この人は会堂管理人であった。彼はイエスの足もとにひれ伏して、自分の家に来てくださるよう願った。
42 彼に十二歳ほどになる一人娘があったが、死にかけていた。ところが、イエスが出て行かれる途中、群衆が押し迫ってきた。
43* ここに、十二年間も長血をわずらっていて、医者のために自分の生活費*を皆使い果してしまったが、誰によっても直されなかった女がいた。
44 この女が後ろからイエスに近寄って衣のふさにさわったところ、その血の流れがただちに止まった。
45 イエスは言われた。「わたしに触ったのは、誰ですか。」 人々はみな自分ではないと言ったので、ペテロと連れの者たちが、「師よ。群衆があなたに押し迫り、ひしめき合っているのです。それでも誰が触れたのかと言われるのですか。」と答えた。
46 しかしイエスは言われた。「誰かがわたしに触りました。それは、力がわたしから出て行ったのを感じたからです。」
47 女は隠しきれないのが分かり、震えながら進み出て、御前にひれ伏し、イエスに触った訳と、触るとたちまち直ったこととを、すべての人々の前で打ち明けた*。
48 そこでイエスが女に言われた。「娘よ、あなたの信仰があなたを救った*のです。平安のうちに行きなさい*。」
49 イエスがまだ話しておられるうちに、会堂管理人の家から人が来て、「娘は亡くなりました。この上、先生*を煩わすには及びません。」と言った。
50 しかしイエスはこれを聞いて会堂管理人に言われた。「恐れることはない。ただ信じていなさい。娘は救われます。」
51 それから家に入られるとき、ペテロ、ヤコブ、ヨハネ、およびその少女*の父母のほかは、だれも一緒に入って来ることをお許しにならなかった。
52 人々は皆、娘のために泣き、悲しんでいた。イエスは言われた。「泣くことはありません。娘は死んだのではなく、眠っているのです。」
53 人々は娘が死んだことを知っていたので、イエスをあざ笑った。
54 イエスは皆の者を外に出され、それから彼女の手を取って、叫んで言われた、「少女*よ、目を覚ましなさい。」
55 すると彼女の霊が戻って来て、娘は即座に起き上がった。イエスは何か食べ物を与えるように指示された。
56 両親は非常に驚いていたが、イエスはこの出来事を誰にも話さないようにと、彼らに命じられた。
*2 マタイ27:56、28:1
*3 ガリラヤの国主ヘロデ・アンティパスの宮廷にも、信じる家臣がいた: 侍従たち(マタイ14:2)、王室の役人(ヨハネ4:46)、乳兄弟マナエン(使徒13:1)、 この中に
小ヤコブとヨセの母マリヤと サロメ(マルコ15:40)
*15 カロース(ギ) good、beautiful、affecting the mind agreeably、良い(「良い」地と同じ)、美しい、(心が)同意して作用する アガソース(ギ) useful、pleasant、happy、excellent、役に立つ、喜んでいる、幸いな、 カテコー(ギ) hold back、restrain、引き止める、 ヒュポモーン(ギ) steadfastness、constancy、揺るがない、不動の
*18 賜物は、救いの賜物だけではなく、その上に建て上げられた「聞く」信仰の賜物も必要。 ポース アコユエテ(ギ) how you hear、あなたがたの 聞き方、どのように聞くか → 心の土壌、 主に同調する心で、喜んでで聞くこと(:15)、 ≒ cf. マルコ4:24 聞く内容、 聞いている内容をはっきり捉えなさい
*23 夕方から夜にかけて吹く、ガリラヤ湖に特有の強風
*24 エピスタテス(ギ) master、師
*26 ガダラ人の地 = マルコ5:1、 マタイ8:28 ではギルガシ人の地。 ガダラの町は湖の南東約10キロ、 cf.
ゲラサは50キロで湖岸から遠すぎる
*28 ティ エモイ カイ ソイ(ギ) what to me and to You、私と あなたに 何かあるのか
*30 レギオン(ラテン) 4千人 または 6千人の軍団
*31 アビュッソス(ギ) abyss、アビス、底知れぬ所: 堕落天使らがゲヘナの最終的なさばきを受ける前に、一時的に入れられる獄。サタンも千年王国の間ここに閉じ込められる
(黙示9:11、11:7、20:3)
*41 マタイ9:18、マルコ5:22
*43 マタイ9:20、マルコ5:28、 ビオス(ギ) life、living、good、(終わりのある)いのち、生活、財産
*47 § マルコ5:28 では 「救われる(未来)と、言い続けていた(未完了過去)」
*48 セソ−ケン(ギ、完・3単) < ソーゾー 救った、 ポレユオウ エイス エイレーネーン(ギ) go into peace、平安の中へ行きなさい (§ これからの平安を保証する言葉 = レク レ
シャーローム(ヘ、U列5:19)、 ヘブライ語聖書・ルカ8:48でも レキー レ
シャーローム)
*49 ディダスカロス(ギ) teacher、master、先生
*51、54 パイス(ギ) child、(boy or girl)、servant、(直訳)子供
第9章
1 それからイエスは十二弟子を呼び集めて、彼らにすべての悪霊を制し、病気をいやす力と権威とをお授けになった。
2 また神の国を宣べ伝え、かつ病人をいやすために遣わして、
3 言われた。「旅のために何も持って行かないように。杖も袋もパンも銀貨も持たないで、また下着*も二枚は持って行ってはいけません。
4 また、どこかの家に入ったなら、そこに留まって*いなさい。そしてそこから出かけることにしなさい。
5 誰もあなたがたを受け入れる者がいなかったら、その町を出て行くとき、彼らに対する
あかしとして、足からちりを払い落しなさい。」
6 弟子たちは出て行って、村々を巡り歩き、あらゆる所で福音を宣べ伝え、またいやしを行った。
7 さて、国主*ヘロデはいろいろな出来事を耳にして、非常に困惑していた。それは、ある人たちは、ヨハネが死人の中からよみがえったと言い、
8 またある人たちは、エリヤが現れたと言い、また他の人たちは、昔の預言者の一人が復活したのだと言っていたからである。
9 そこでヘロデが言った。「ヨハネは私がすでに首を切ったのだが、私がこのようなことを聞いているこの者は、一体
何者だろうか。」 そしてイエスに会いたいと思っていた。
10 使徒たちは帰ってきて、イエスに自分たちのしたことをすべて報告した。それからイエスは彼らを連れて、ベツサイダ*という町へひそかに退かれた。
11 ところが群衆がそれを知ってついて来たので、イエスは彼らを受け入れ、神の御国のことを語り聞かせ、またいやしが必要な人たちをいやされた。
12 それから日が傾いてきたので、十二弟子がイエスのもとに来て言った。「群衆を解散させて、まわりの村々や部落へ行って宿を取り、食物を手に入れるようにさせてください。私たちはこんな寂しい所に来ているのですから。」
13 しかしイエスは言われた。「あなたがたで、彼らに食物を与えなさい。」 彼らは言った。「私たちにはパン五つと魚二匹しかありません。この大ぜいの人のために食物を買いに行くしかありません。」
14 というのは、男だけで約五千人もいたからである。しかしイエスは弟子たちに言われた。「人々をそれぞれ五十人ずつの組にして、横にならせなさい*。
15 彼らはその通りにして、皆を横にならせた。
16 イエスは五つのパンと二匹の魚とを手に取り、天を仰いで、それらを祝福して裂き、弟子たちに渡し、群衆の前に置かせた。
17 皆の者は食べて満腹した。そして、その残りのパンくずを集めると、十二かご*あった。
18 イエスが一人で祈っておられたとき、弟子たちが近くにいたので、彼らに尋ねて言われた。「群衆はわたしを誰と言っていますか。」
19 彼らは答えて言った。「バプテスマのヨハネだと、言っています。しかし他の人たちは、エリヤだと言い、また昔の預言者の一人が復活したと言っている者もいます。」
20 彼らに言われた。「それでは、あなたがたはわたしを誰と言いますか。」 ペテロが答えて言った。「神のキリストです。」
21 イエスは彼らを戒め、この事を誰にも言わないように命じ、そして言われた。
22 「人の子は必ず多くの苦しみを受け、長老たち、祭司長たち、律法学者たちに捨てられ、また殺され、そして三日目によみがえります。」
23 それから、皆の者に言われた。「誰でもわたしの後についていたいと思うなら、自分を否定し、日々自分の十字架を負って、わたしについて来なさい。
24 それは、自分のいのち*を救おうと思う者はそれを失い、わたしのために自分のいのちを失う者は、いのち*を救うからです。
25 たとい人が全世界を手に入れたとしても、自分自身が失われたり、損害を受けたりしたら、それは何のための利益になるでしょう。
26* わたしとわたしのことばとを恥じる者に対しては、人の子もまた、自身と、父と、聖なる御使いとの栄光のうちに来るとき、その者を恥じるでしょう。
27 まことに*あなたがたに言います。神の御国を見るまでは、死を味わわない者が、ここに立っている者の中にいます。」
28 これらのことを話された後、八日ほどたってから、イエスはペテロ、ヨハネ、ヤコブ*を連れて、祈るために山*に登られた。
29 祈っておられる間に、み顔の様子が変り、み衣が稲妻のように白く輝いた。
30* すると、見よ、二人の人がイエスと語り合っていた。それはモーセと エリヤであった。
31* 彼らは栄光の中に現れて、イエスがエルサレムで遂げようとするご最後*のことについて話していたのである。
32 ペテロとその仲間の者たちとはひどく眠かったが、目が覚めると、イエスの栄光と、共に立っている二人の人とを見た。
33 この二人がイエスを離れ去ろうとしたとき、ペテロはイエスに言った。「師よ。私たちがここにいるのは、すばらしいことです。それで、私たちは幕屋を三つ建てましょう。一つはあなたのために、一つはモーセのために、一つはエリヤのために。」 彼は自分が何を言っているのか分からなかった。
34 彼がこう言っている間に、雲が湧き起こって、彼らを覆い始めた。そしてその雲の中に入ったとき、彼らは恐れた。
35 すると雲の中から御声があった。「これはわたしの愛する子である。* 彼に聞きなさい。」
36 そして声が止んだとき、イエスが一人だけになっておられた。弟子たちは沈黙を守り、自分たちが見たことについて、その頃は誰にも話さなかった。
37 翌日、一同が山を降りて来ると、大ぜいの群衆がイエスを出迎えた。
38 すると、見よ、ある人が群衆の中から大声をあげて言った。「先生、お願いです。私の息子を見てやってください。私の一人息子です。
39 ご覧ください。霊が彼に取りつくと、急に叫び出し、それから霊は彼をひきつけさせて、泡を吹かせ、なかなか出て行かずに彼を弱り果てさせるのです。
40 それで、あなたのお弟子たちに、この霊を追い出してくださるように願いましたが、できませんでした。」
41 イエスは答えて言われた。「ああ、なんという不信仰な、曲った時代でしょう。いつまで、わたしはあなたがたと一緒にいなければならないのか。またあなたがたに我慢しなければならないのか*。あなたの子をここに連れてきなさい。」
42 ところが、その子がイエスのところに来る時にも、悪霊が彼を引き倒して、ひきつけさせた。イエスはこの汚れた霊を叱りつけ、その子供をいやして、父親にお渡しになった。
43 人々は皆、神の偉大さに非常に驚いた。皆の者がイエスのしておられる数々の事を不思議に思っていると、イエスは弟子たちに言われた。
44 「あなたがたはこの言葉を耳に留めていなさい。人の子は、人々の手に渡されようとしています。」
45 しかし、彼らは何のことか分からなかった。まだ彼らに覆いがかかっていて、認めることができなかったのである。また彼らはその言葉について尋ねるのを恐れていた。
46 それから、弟子たちの間で、彼らのうちでだれが最も偉いだろうか、という議論がはじまった。
47 イエスは彼らの心の考え方を見抜き、一人の幼子(おさなご)*を取り上げて、ご自分のそばに立たせ、彼らに言われた
48 「誰でも、この幼子をわたしの名のゆえに受け入れる者は、わたしを受け入れるのです。そしてわたしを受け入れる者は、わたしをお遣わしになった方を受け入れるのです。それは、あなたがたすべての中で最も小さい、そこにいる*この者こそ、偉大だからです。」
49 また、ヨハネが答えて言った。「師よ。私たちはあなたの名を使って悪霊を追い出している人を見ましたが、その人は私たちに共について来ないので、止めさせました。」
50 イエスは彼に言われた。「止めさせてはならない。あなたがたに反対しない者は、あなたがたの益になります*。」
51 さて、イエスが上げられる日までの時が満ちたので、エルサレムへ行く方へ、顔をまっすぐ向けられ、
52 自分に先立って使者たちを遣わされた。そして彼らがサマリヤ人の村へ入って行き、イエスのために準備をしようとしたところ、
53 彼らは、イエスがエルサレムへ顔を向けて進んで行かれるということで、受け入れようとはしなかった。
54 弟子のヤコブとヨハネとはそれを見て言った。「主よ。エリヤもしたように、みこころでしたら、私たちが天から火を下して、彼らを焼き尽くすように言いましょうか。」
55 イエスは振りかえって、彼らをお叱りになられ、言われた。「あなたがたは、あなたがたがどのような霊的状態であるか知らないのです。」*
56 そして一同は他の村へ行った。
57 彼らが道を進んで行くと、ある人がイエスに向かって言った。「あなたがおいでになる所なら、どこへでもついて行きます。主よ。」
58 イエスはその人に言われた。「きつねには穴があり、空の鳥には巣があります。しかし、人の子はどこで頭を横たえたら良いのだろうか。」
59 また他の人に、「わたしについて来なさい。」と言われた。するとその人が言った。「主よ。まず、父を葬りに行くのをお許しください。」
60* 彼に言われた。「その死人を葬ることは、死人に任せておきなさい。あなたは、出て来て神の御国を宣べ広めなさい。」
61 また他の人が言った。「あなたについて行きます。主よ。でも、まず私の家の者に別れを言いに行くことをお許しください。」
62* イエスは言われた。「手を鋤(すき)にかけてから、後ろを見る者は、神の国にふさわしくありません。」
*3 キトン(ギ) tunic、undergarment、チュニック(ひざまでの長い肌着、この上に簡単な外套を着た)
*4 メノー(ギ) remain、abide、残る、留まる ヨハ15:4「主の枝にとどまる」、Tコリ13:13「いつまでも残るものは、」等
*7 テトラアルケス(ギ) 四分領主、 ヘロデ・アンティパス ガリラヤとペレヤの国主(マタイ14:1)
*10 5つのパンの奇跡は、ベツサイダ(ガリラヤ湖の北部のヨルダン川東岸の町)の近くで行なわれた(マタ14:13、マコ6:45、ヨハ6:1)
*14 カタクリーノー(ギ) make to recline
*15 アナクリーノー(ギ) lean against、lay down 寄りかかる、(食事のため)横になる
*17 コフィノス(ギ) basket、(手で持つ)かご、12使徒に一つずつの報酬
*24 プシュケー(ギ) life、soul、(肉的)いのち、たましい、 (直訳) それ、 いのちを救う = 神のいのちを得る (→ 17:33、マタイ10:39)
*26 イエスと、イエスの言葉を人前で否定しないで、自分の十字架を負う事 の教え
*27 アレーソース(ギ) truly、まことに (= アーメン)
*28 3人の側近は すでにイエスを神の御子と信じていた(:20)ので、御子としてのしるしが与えられた。 タボル山ではなく、ヘルモン山に超自然的に上げられたといわれる (→ マルコ9:2)
*30、31 モーセとエリヤは、それぞれ律法と預言者(=旧約聖書)の象徴。
これは、旧約時代の終焉と、御子の十字架によって開かれる新たな時代への交代を表す。 と同時に、世の終わりの時に彼らにもう一度生を受けて、エルサレムで殉教してくれないか、と彼らに言われていたと考えられる。(黙示11:3−13)、 エクソドス(ギ) exit、departure(from life)、decease、出口、出発、死 (出エジプトにひっかけている)
*35 選んだ とは書いていない (3:22、マタイ3:17、マルコ9:7 にも無い) 選びの子ではなく、初めからの子だから
*41 群衆だけでなく、残っていた9人の弟子たち( = まだ御子を神と信じていない)に対しても言われた
*47 パイディオン(ギ) 子供、 ここでは 幼子(赤子から幼児まで)
*48 ヒュパルコー(ギ) come forth、be、be at hand;begin below、前に来た、すぐそこにいる
*50 ヒューペル(ギ) in behalf of、for the sake of、over、more、(あなたがた)の代理になる、利益になる
*55 § エリヤは主に聞き従って賜物を行使した。人間的な動機で行なっても
実を結ぶことはできない。 ルカ書では、異邦人(バビロン人の混血)のサマリヤ人の記述が特に記されている
*60、62 § 厳しいように見えるが、後ろを振り返ることが、どんなに献身の決意を失わせるか (cf.ロトの妻)
第10章*
1* その後、主は別に七十人*を選び、行こうとしておられたすべての町や村へ、ご自身が現れる先に*、二人ずつ遣わされた。
2 そのとき、彼らに言われた。「収穫は多いが、働き人が少ない。だから、収穫の主*に願って、その収穫のために働き人を投げてよこす*ように求めなさい。
3 さあ、行きなさい。わたしがあなたがたを遣わすのは、小羊を狼の中に送り出すようなものです。
4* 財布も袋もくつも持って行かないように。道では、誰にもあいさつしてはいけません。
5 どこかの家に入ったら、まず、『平安がこの家にあるように。』と言いなさい。
6 もし平安の息子がいたら、あなたがたの祈る平安はその人の上に留まります。もしそうでなかったら、それはあなたがたの上に帰って来ます。
7 それで、その同じ家に留まっていて、家の人が出してくれるものを飲み食いしなさい。働き人がその報酬を受けるのは当然だからです。また家から家へと渡り歩いてはいけません。
8 どの町へ入っても、人々があなたがたを受け入れてくれるなら、あなたがたの前に出されるものを食べなさい。
9* そして、その町にいる病人をいやし、『神の国はあなたがたに近づいた。』と言いなさい。
10 しかし、町へ入っても、人々があなたがたを受け入れない場合には、大通りに出て行って言いなさい。
11 『私たちの足についているこの町のちりも、拭き捨てて行く。しかし、神の御国が近づいたことは、知っておきなさい。』
12 あなたがたに言っておきます。その日には、この町よりもソドムの方がまだ耐えやすい*のです。
13 災いだ*、コラジンよ。災いだ、ベツサイダよ。おまえたちの中でなされた力あるわざが、もしツロとシドンでなされていたなら、彼らはとうの昔に、荒布をまとい灰の中に座って、悔い改めたことでしょう。
14 しかし、さばきの日には、ツロとシドンの方がおまえたちよりも耐えやすい*のです。
15 そして、カペナウムよ。おまえは天にまで上げられようとでもいうのだろうか。ハデス*にまで落されるでしょう。
16 あなたがたの言葉に聞く者は、わたしに聞くのであり、あなたがたを拒む者は、わたしを拒むのです。そしてわたしを拒む者は、わたしを遣わされた方を拒むのです。」
17* それから、七十人が喜んで帰ってきて言った。「主よ*。あなたの名によって、悪霊でさえも私たちに服従します。」
18* 彼らに言われた。「わたしはサタンが稲妻のように天から落ちるのを見ました。
19* わたしはあなたがたに、へびやさそりを踏みつけ、敵のあらゆる力に打ち勝つ権威を授けました。だから、あなたがたに害を加える者は一つもありません。
20 しかし、霊があなたがたに服従することを喜ぶのではなく、ただ、あなたがたの名が天に書かれていることを喜びなさい。」
21 そのとき、イエスは聖霊によって喜びあふれて言われた。「天地の主なる父よ。あなたをほめたたえます。これらの事を賢い者や知恵のある者に隠して、幼子(おさなご)*に現わして*くださいました。そうです。父よ、これはあなたの御前で みこころにかなった事*でした。
22 すべてのものは、父から、わたしの手にゆだねられています。そして、子が誰であるかは、父の他は知る者はありません。また父が誰であるかは、子と、父を現わそうとして子が定めた者との他は、誰も知っている者はいません。」
23 それから弟子たちの方に振り返り、ひそかに言われた。「あなたがたが見ていることを見る目は、幸い*です。
24 なぜなら、あなたがたに言いますが、多くの預言者や王たちも、あなたがたの見ていることを見ようと願ったが、見ることができず、あなたがたの聞いていることを聞こうと願ったが、聞けなかったからです。」
25 するとそこへ、ある律法家*が現れ、イエスを試みようとして言った。「先生。何をしたら永遠のいのちを相続できるでしょうか。」
26 イエスは彼に言われた。「律法には何と書いてありますか。あなたはどのように読んでいますか。」
27 彼は答えて言った。「『すべての心で、すべてのたましいで、すべての能力で、すべての理解力で、あなたの神である主を愛せよ。』 また、『自分を愛するように、あなたの隣人(となりびと)を愛せよ。』とあります。」
28 彼に言われた。「あなたは正しい答えをしました。これを行ないなさい。そうすれば、あなたは生きます。」
29 すると彼は自分の義を立てようとして、イエスに対して言った。「では、私の隣人(となりびと)とは誰ことですか。」
30 イエスが答えて言われた。「ある人がエルサレムからエリコに下って行く途中で、強盗どもが彼を襲い、その着物をはぎ取り、なぐって傷を負わせ、半殺しにして逃げ去った。
31 すると偶然、一人の祭司がその道を下ってきたが、この人を見ると、道の反対側を通って行った。
32 同様に、レビ人もこの場所に来たが、彼を見ると反対側を通って行った。
33 ところが、あるサマリヤ人が旅をしてこの人のところを通りかかり、彼を見て気の毒に思い、
34 近寄ってきてその傷にオリーブ油とぶどう酒とを注いで包帯をしてやり、自分の家畜に乗せ、宿屋に連れて行って介抱した。
35 翌日、デナリ二つを取り出して宿屋の主人に手渡し、『この人を介抱してください。費用がもっとかかったら、帰りがけに、私が支払います。』と言った。
36 この三人のうち、だれが強盗に襲われた人の隣人(となりびと)になったと思いますか。」
37 彼は言った。「その人にあわれみ深い行ないをした人です。」* そこでイエスは言われた。「あなたも同じように行って、そして、行ないなさい。」
38* 彼らが旅を続けているうちに、イエスがある村へ入られた。すると、マルタ*という名の女がイエスを家に迎え入れた。
39 この女にマリヤ*という妹がいたが、イエスの足もとに座って、みことばに聞き入っていた。
40 ところが、マルタは接待で忙がしくて、落ち着かず、イエスのところに来て言った。「主よ、妹が私だけに接待をさせているのを、何とも思われませんか。私の手伝いをするように妹に言いつけてください。」
41 主は答えて言われた。「マルタよ。マルタよ。あなたは多くのことを心配して、思いわずらっています。
42* しかし、必要なものは一つです。マリヤはその良いほうを選びました。それを、彼女から取り去ってはいけません。」
* § ルカ9:51〜19:44 までの約10章にも及ぶ長大な箇所は、ガリラヤからエルサレムまでの旅程を巡回する、伝道者、収穫の主、としてのイエスを表現している
*1 70人: 創世記10章の 異邦の70民族(ハム、セム、ヤペテから出た民族)より、全異邦人を暗示する数、 (直訳) 顔の(時間的に)先に、 (因みに、70人訳は、ファラオの命令により、BC4〜5世紀に書かれたヘブライ語旧約聖書を、BC3
世紀からBC1世紀にかけて段階的にギリシャ語に翻訳させた、誤訳だらけの訳本で、別物)
*2 トウ キュリオイ トウ セリスモウ(ギ) the Lord of the harvest、収穫の主 = 主イエスご自身の事、 エクバッロー(ギ) cast out、drive out、投げ出す(強い言い方)
*4 cf. ルカ9:3−6
*9 いやしを中心的なわざとして行う伝道
*12、14 アネクトテロス(ギ) bearable、tolerable、耐えられる、我慢しうる、(意訳で)まだ罰が軽い
*13 ウーアイ(ギ) woe、alas
*15 ハデス(ギ) よみ、 救われないで死んだ人の霊が一時的にいる獄
*17 キュリエ(ギ) Lord、Master、主よ、 70人の弟子は 主よ と言っている (12使徒は(ルカでは)
エピスタタ、(師弟関係の)師よ)
*17、18、19 = マルコ16:17、18 伝道に伴って、信者に現れるしるし
*21 ネピオス(ギ) infant、little child、幼児、 アポカリュプト(ギ) uncover、make known、覆いを取る、 ユードキア good will、delight、みこころの事、喜ばしい事
*23 マカリオス(ギ) happy、blessed、幸い
*25 ノミコース(ギ) lawyer、律法家、律法の専門家
*37 異邦の混血のサマリヤ人()を敵視していた律法学者の彼でさえも、その親切なサマリヤ人を隣人として認めざるを得なかった
*38、39 ヨハネ11:1−、 マルサ(ギ) マルタ(女主人 の意)、 マリア(ギ) マリヤ、(ミルヤム(ヘ)、ミリアム、 意味は諸説あり ex) メリイ(エジプト語)で
愛される者)
*42 主は語られます、私たちは聞きます。これが基本的な神との関係。
第11章
1 また、イエスはある所で祈っておられたが、祈り終えた時、弟子の一人が言った。「主よ。ヨハネがその弟子たちに教えたように、私たちにも祈りを教えてください。」
2 そこで彼らに言われた。 「祈るときには、こう言いなさい。『天におられる私たちの父よ、御名が聖なるものとされますように。 あなたの御国が来ますように。 天においてあなたのみこころがなされるように、地においてもなされますように。
3 私たちの日ごとの食物を、日々お与えください。
4 私たちの罪をもお赦しください。私たちも、私たちに負い目のある者を皆赦します。 私たちを試みに会わせないで、悪しき者*からお救いください。』」
5 そして彼らに言われた。「あなたがたのうちの誰かに、友人がいるとして、その人のところへ真夜中に行き、『友よ、パンを三つ貸してください。
6 友だちが旅の途中で私のところに着いたのですが、何も出してやる物が無いので。』と言った場合、
7 彼は中から、『面倒をかけないでくれ。もう戸締まりはしてしまったし、子供たちも私と一緒に床に入っている。起きて、何かをあなたに与える事はできない。』と言うでしょう。
8 しかし、あなたがたに言います。もし、友人だからというのでは起きて与えてくれなくても、恥も外聞もなく図々しく*頼むならば、起き上がって必要なものを何でも出してくれるでしょう。
9 そこでわたしはあなたがたに言うのです。 求めよ、そうすれば、与えられます。 捜せ、そうすれば、見い出します。 叩け、そうすれば、開かれます。
10 それは、誰であっても、求める者は受け、捜す者は見い出し、戸をノックする者には開かれるからです。
11 あなたがたの中で、息子がパンを求めているのに石を、魚を求めているのに、魚の代りにへびを手渡すような、そんな父親が誰かいますか。
12 また、卵を求めているのに、さそりを手渡しますか。
13 このように、たといあなたがたが悪い者であっても、自分の子供たちには良い贈り物を与えることを知っているのだから、尚の事、天の父は、求める者に聖霊を下さらないことがあるでしょうか。」
14 さて、イエスは悪霊を追い出しておられた。それは、おしの霊であった。悪霊が出て行くと、口のきけない人がものを言うようになったので、群衆は不思議がっていた。
15 その中のある人々は、「彼は悪霊のかしらベルゼブル*によって、悪霊どもを追い出しているのだ。」と言い、
16 また他の人々は、イエスを試みようとして、天からのしるし*を求めた。
17 しかしイエスは、彼らの考えを見抜いて言われた。「どんな王国でも、それ自体が分裂すれば滅びてしまい、また分かれた家がその家の上に倒れてしまいます。
18 だから、もし、サタンの国自体が分裂すれば、その国はどうして立ち行けますか。あなたがたはわたしがベルゼブルによって悪霊を追い出していると言いますが、
19* もし、わたしがベルゼブルによって悪霊を追い出すとすれば、あなたがたの息子たちは誰によって追い出しているのですか。このことにより、彼らがあなたがたの審判者なのです。
20 しかし、もし、わたしが神の指によって悪霊を追い出しているのなら、神の御国はすでにあなたがたのところに来ているのです。
21* 強い人が武装して自分の邸宅を守っている限り、彼の持ち物は安全です。
22* しかし、もっと強い者が襲ってきて彼を征服すれば、その頼みにしていたあらゆる武装を取り去って、その戦利品を分けるのである。
23* わたしと共にいない者は、わたしに反対するものであり、わたしと共に集めない者は、散らす者です。
24 汚れた霊が人から出ると、休み場を求めて水の無い所を歩きまわるが、見つからないので、出てきた元の家に帰ろうと言って、
25* 帰って見ると、その家は掃除がされ、飾りつけもしてありました。
26 そこで、また出て行って、自分よりもさらに悪い他の七つの霊を連れて来て中に入り、そこに住みつきます。そうすると、その人の後の状態は初めよりももっと悪くなるのです。」
27 イエスが話しておられるとき、群衆の中から一人の女が声を張り上げて言った。「あなたを宿した胎、あなたが吸われた乳房は、なんと幸いなことでしょう。」
28 しかしイエスは言われた。「いや、むしろ、幸いなのは、神のことばを聞いてそれを守る人たちです。」
29 さて群衆が群がり集まったので、イエスは語り出された。「この邪悪な時代はしるし*を求めますが、預言者ヨナのしるしの他は与えられません。
30 というのは、ニネベの人々に対してヨナがしるしとなったように、人の子もこの時代に対してしるしとなるからです。
31 南の女王*が、今の時代の人々と共にさばきの座に立って、彼らを罪に定めます。なぜなら、彼女はソロモンの知恵を聞くために、地の果てからはるばる来たからです。そして、見よ。ソロモンにまさる者がここにいるのです。
32 ニネベの人々が、今の時代の人々と共にさばきの座に立って、彼らを罪に定めます。なぜなら、ニネベの人々はヨナの宣教によって悔い改めたからです。そして、見よ。ヨナにまさる者がここにいるのです。
33 誰も、ともしびを灯して、それを地下の穴倉や枡の下に置くことはしません。むしろ入って来る人たちに、そのともしびが見えるように、燭台の上に置きます。
34 あなたの目は、体のともしびです。あなたの目が澄んでいれば、全身も明るいが、目が邪悪*であれば、体も暗いのです。
35 あなたの内側の光が暗くならないように注意しなさい。
36 それゆえ、もし、あなたの体の全体が明るくて、暗い部分が少しもなければ、ともしびが輝いてあなたを照す時のように、全身が明るくなるでしょう。」
37 イエスが語っておられる時、あるパリサイ人が、自分の家で昼食をとっていただきたいと申し出たので、入って横になり食卓につかれた。
38 ところが、食事の前のきよめのバプテスマをされなかったのを見て、そのパリサイ人は不思議に思った。
39 そこで主は彼に言われた。「さて、あなたがたパリサイ人は、杯や大皿の外側をきよめるが、あなたがたの内側は、強奪と悪事とで満ちています。
40 愚かな者たち。外側を造られた方は、内側をも造られたではありませんか。
41 むしろ、あなたの内側に持っている物を、慈善のために与えなさい*。そうすれば、見よ。あなたがたにとって、すべてがきよいものとなります。
42 しかし、災いだ*。あなたがたパリサイ人は。ハッカ、ヘンルーダ*、あらゆる香味野菜*の十分の一を納めているが、公義と 神への愛とをなおざりにしています。十分の一も*おろそかにはできないが、これこそしなければならないことです。
43 災いだ。あなたがたパリサイ人は。会堂の上席や、広場であいさつされることを好んでいます。
44 災いだ。あなたがた律法学者とパリサイ人は。偽善者よ。あなたがたは、人目につかない墓のようなものです。その上を歩いても人々は気がつきません。」
45 一人の律法家*がイエスに答えて言った。「先生、そんなことを言われるのは、私たちまでも侮辱することです。」
46 そこで言われた。「あなたがた律法家*も、災いだ。負い切れない重荷を人に負わせながら、自分ではその荷に指一本でも触れようとしません。
47 災いだ。あなたがたは。預言者たちの碑を建てるが、しかし彼らを殺したのは、あなたがたの先祖だったのです。
48 それゆえ、あなたがたは、自分の先祖のしたことであると証言し、それらに同意しているのです。先祖は確かに彼らを殺し、さらに、あなたがたがその碑を建てています。
49 このことにより、『神の知恵』*もまた、このように言っています。『わたしは預言者と使徒とを彼らに遣わすが、彼らはそのうちのある者を殺し、また追放するであろう。』
50 それは、世界の基が据えられた時から、流されてきたすべての預言者たちの血について、この時代がその責任を問われます*。
51 アベルの血から、祭壇と家との間*で殺されたザカリヤ*の血に至るまで。そうです、あなたがたに言います。この時代がその責任を問われます*。
52 災いだ。あなたがた律法家*は。知識のかぎ*を取り上げて、自分が入らないばかりか、入ろうとする人たちを妨げてきました。」
53 イエスがそこを出て行かれると、律法学者たちやパリサイ人たちは、ひどく絡みつき、さらに多くのことについての質問を繰り出し、
54 ひそかに待ち伏せして、告訴するために、イエスの口から出る言葉じりを捕えようと捜した。
*4 ポネロス(ギ) wicked one、悪しき者(単数)
*8 アナイーデイア(ギ) shamelessness、impudence
*15 マタイ10:25、12:24、マルコ3:22、 ベエルゼボユル(ギ) バアル・ゼブブ(エクロンの神)= はえの主
*19 マタイ12:24、 § ユダヤ人魔除け祈祷師(使徒19:13)がいて、また、ある程度の悪霊追い出しや癒しならば通常の祭司職も行っていたので、この論法により、彼らも悪霊によって追い出しているから、その仲間であるパリサイ人らも彼らを裁かなければならないことになる
*21、22 神の力によって悪霊(強い人)から解放されて、初めて、その邸宅を分捕る(その人が救われる)ことができる
*23 マタイ12:30、 特に伝道において、イエスが、すなわち、「聖霊」が共におられることが必要であること
*25 せっかく悪霊追い出ししても、(救われて)聖霊がその人のうちに居なければ、その空き家にもっと悪い者が入って状態は悪化する
*29、16 セメイオン(ギ) sign、 (この場合)イエスが神の子であるしるし (変貌山、昇天など、 ただし
ヨナのしるし(十字架と復活)の一つである 十字架の釘の跡(手の穴)はトマスに示された)
*31 T列10:1、 シェバ(創10:7、クシュ(エチオピア)の子孫セバ)の女王
*34 目が悪い = けち、物惜しみする、物欲に支配されていること、 申命記15:9(物惜しみして=(直訳)目が邪悪になって)、箴言23:6
*41 タ エノンタ ドーテ エレエーモスネーン(ギ) the (rhings) within (you) give alms、あなたの内側のものを、慈善のため捧げなさい
*42 ウーアイ(ギ) woe、alas、(感嘆詞)、ああ、災いだ、 ペガノン(ギ) rue、ルー、ヘンルーダ、芸(うん)香、 ラカノン(ギ) ハーブ、葉野菜、 十分の一も は補足
*45、46、52 ノミコース(ギ) lawyer、律法家、律法の専門家 ・・・ ルカ独特の表現(マタイで22:35のみ) cf.
グラムマテウス scribe、律法学者
*49 Tコリ1:24、コロサイ2:3、 キリストご自身 あるいは、キリストにある神の知恵
*50、51 祭壇と神の家(聖所)の間は祭司のみ入れた、 マタイ23:35
より、バラキヤの子ザカリヤ、 (直訳) 探し出されます
*52 マタイ23:13 では、 天の御国を閉ざしている
第12章
1 その間に、非常に多くの群衆が、互に踏み合うほどに集まって来たが、イエスはまず初めに、弟子たちに語られた。「パリサイ人のパン種に気をつけなさい。それは彼らの偽善です。
2 覆われているもので、現れてこないものはなく、隠れているもので、知られてこないものはありません。
3 だから、あなたがたが暗やみで言ったことは、明るみで聞かれ、小部屋の中で耳元へ語ったことは、屋上で言い広められます。
4 そこでわたしの友であるあなたがたに言います。体を殺しても、その後でそれ以上何もできない者どもを恐れることはありません。
5 あなたがたが恐れるべき方が誰であるのか、前もって伝えておきます。殺した後で、さらにゲヘナ*に投げ込む権威を持っている方を恐れなさい。そうです。あなたがたに言います。この方を恐れなさい。
6 五羽の雀(すずめ)は二アサリオン*で売られているでしょう。しかし、その一羽でも神の御前に忘れられていません。
7 さらに、あなたがたの頭の毛までも、みな数えられています。恐れることはありません。あなたがたは、たくさんの雀を超えて、優れた者*です。
8 そこで、あなたがたに言います。誰でも人々の前でわたしを受け入れる者を、人の子も神の御使いたちの前で受け入れます。
9 しかし、人々の前でわたしを拒絶する者は、神の御使いたちの前で知らないと言われます。
10 また、人の子に主張して言う者*は赦されますが、聖霊を悪く言う*者は、赦されません。
11 あなたがたが会堂や、役人たち、権力者たちの前へ引き出された時、どのように、何を、弁明しようか、また何を言おうかと心配する必要はありません。
12 なぜなら、言うべきことは、聖霊がその時に教えてくださるからです。」
13 群衆の中の一人がイエスに言った。「先生、私の兄弟に、相続財産を分けるように言ってやってください。」
14 イエスは彼に言われた。「人よ。誰がわたしを、あなたがたの裁判官や仲裁人に立てたのですか。」
15 そして人々に言われた。「どん欲に対して、気を付け、見張っていなさい。あふれるほど多くの物を持っていても、人のいのち*は、持ち物にはよらないのです。」
16 そこで一つの たとえを語られた。「ある金持ちの畑が大豊作でした。
17 そこで彼は心の中で、『どうしようか。どこに私の収穫物を集めておこうか。』といろいろ考えて、
18 言いました。『こうしよう。私の倉を取り壊し、もっと大きいのを建てて、そこに私の穀物と、私の財産とを全部しまい込もう。
19 そして自分のたましい*に言おう。たましい*よ、おまえには長年の間の食糧が蓄えてあるではないか。さあ休んで、食べて、飲んで、楽しもう。』
20 すると神が彼に言われました。『愚か者よ。あなたの たましいは、今夜のうちにも取り去られる。そうしたら、あなたの用意した物は、誰のものになるのか。』
21 自分自身のために蓄え、神に対して富まない者は、この人のようです。」
22 それから弟子たちに言われた。「だから、あなたがたに言います。何を食べようかと、いのちのことで心配したり、何を着ようかと体のことで思いわずらのをやめなさい。
23 いのちは食物にまさり、体は着物にまさっています。
24 烏(からす)のことを考えてみなさい。種を蒔くことも、刈リ入れることもせず、また、納屋もなく倉もありません。それでも、神は彼らを養っていて下さいます。あなたがたは鳥よりも、はるかに優れた者ではありませんか。
25 あなたがたのうち、誰が思い煩ったからといって、自分の身長を一ペーキュス*でも延ばすことができるでしょうか。
26 そんな小さな事さえできないのに、どうして他のことを思い煩うのですか。
27 野の花*のことを考えてみなさい。紡ぎもせず、織りもしない。しかし、あなたがたに言うが、すべての栄華のただ中にあったソロモンでさえ、この花の一つほどにも着飾ってはいませんでした。
28 今日は野にあって、あすは炉に投げ入れられる草でさえ、神はこのように衣服を着せて下さいます。ましてや、あなたがたには、どんなに良くしてくださることでしょう。信仰の無きに等しい者たちよ。
29 あなたがたも、何を食べ、何を飲もうかと、探し求めたり、思い煩ったりすることを止めなさい。
30 それは、これらのものは皆、世界のすべての国民が切に求めているものだからです。あなたがたの父は、これらのものがあなたがたに必要であることを、ご存じです。
31 それよりもまず*、神の御国を求めなさい。そうすれば、これらのものはすべて加えて与えられます。
32 小さい群れよ、恐れることはありません。あなたがたの父は、喜んで、あなたがたに御国を与えて下さいます。
33 あなたがたが持っている物を売って、慈善のために与えなさい。あなたがた自身の古びない財布をつくり、盗人も近寄らず、虫*食いもない天に、尽きることのない*宝を蓄えなさい。
34 それは、あなたがたの宝のある所に、あなたがたの心もあるからです。
35 腰に帯を締め、ともしびを灯していなさい。
36 主人が婚宴から帰ってきて戸を叩くとき、すぐ開けようと待っている人たちのようにしていなさい。
37 主人が帰ってきたとき、目を覚しているのを見られるしもべたちは、幸いです*。まことに*、あなたがたに言います。主人のほうが帯を締めて、しもべたちを横にならせて食卓につかせ、近寄って来て給仕をしてくれます。
38 主人が夜*、あるいは夜半過ぎ*に帰って来ても、そのようにしているのを見られるなら、その人たちは幸いです。
39 また、このことをも知っていなさい。家の主人は、泥棒が来た時間に見張っていたなら、自分の家に穴を掘らせて侵入させはしなかったでしょう。
40 あなたがたも用意していなさい。思いがけない時に人の子が来るからです。」
41 するとペテロが言った。「主よ。この たとえを話しておられるのは、私たちのためですか。それとも、皆の者のためですか。」
42 そこで主は言われた。「主人が、召使いたちの上に立てて、時に応じて定めの食事を備えさせる、忠実な*思慮深い執事*とは、一体誰でしょう。
43 主人が帰ってきた時、そのように務めているのを見られるしもべは、幸いです。
44 確かなことを、あなたがたに言います。主人はそのしもべを、自分の全財産の管理者に立てるでしょう。
45 しかし、もしそのしもべが、主人が帰るまで時間がかかると心の中で思い、男女の召使いたちを打ち叩き、その上食べたり飲んだりして、酔い始めるならば、
46 そのしもべの主人は思いがけない日、気がつかないような時に帰って来ます。そして、彼を真っ二つに切り、不忠実なものたちと同じ目に遭わせるでしょう。
47 主人の心の思いを知っていながら、それに従って用意もせず、働きもしなかったしもべは、多くむち打たれるでしょう。
48 しかし、それとは知らないで、むち打たれるようなことをした者は、打たれ方は少ないでしょう。それは、多く与えられた者は多く求められ*、多く任せられた者は更に多く頼まれる*のです。
49 わたしは、火*を地上に投じるために来たのです。火がすでに燃えていたならと、わたしはどんなに願っていることでしょう。
50* しかし、わたしには受けるバプテスマ*があります*。そして、それが成し遂げられるまで、わたしはどんなに板挟みになって苦しむ*ことでしょう。
51 あなたがたは、わたしが平和をこの地上にもたらすために来たと思っているのですか。あなたがたに言います。そうではなく、むしろ分裂です。
52 というのは、今から後は、一家のうちで五人が分れて、三人は二人に、二人は三人に対立し、
53 また父は息子に、息子は父に、母は娘に、娘は母に、しゅうとめは嫁に、嫁はしゅうとめに、対立して分かれるでしょう。」
54 イエスはまた群衆に対しても言われた。「あなたがたは、雲が西に起るのを見ると、ただちに、大雨が来るぞ、と言います。そして、実際その通りになります。
55 それから南風が吹くと、暑くなるぞ、と言い、実際その通りになります。
56 偽善者たちよ。あなたがたは天地の様子*を評価する*ことを知りながら、どうして今の時代を評価*できないのですか。
57 また、あなたがたは、なぜ自分から進んで、何が義であるかの判別をしないのですか。
58* たとえば、あなたを訴える人と一緒に役人のところへ行くときには、途中でもその人と和解するように努めなさい。そうしないと、その人はあなたを裁判官のところへ連れて行き、裁判官はあなたを獄吏に引き渡し、獄吏はあなたを獄に投げ込むでしょう。
59 わたしはあなたがたに言います。最後の一レプタ*を支払うまでは、決してそこから出て来ることはできません。」
*5 マタイ5:22、 ゲエンナ(ギ) Gehenna、ゲヘナ = 最終的な地獄、火と硫黄の池(マコ9:43、黙20:10)、 cf. ハデス 死者が一時的にいる獄、 アビス 堕落天使の一時的獄
*6 アサリオン: ローマの最小単位の銅貨、1アサリオン=1/16デナリ
*7 ディアフェロー(ギ) carry different ways、differ、distinguish、excel、surpass one、違う道へ運ぶ、はっきり区別する、優れる、超える
*10 エレイ ロゴン(ギ) declare、exhort、point out with words、言葉を述べる、主張する、強く勧める、指摘する、 ブラスフェメオー(ギ) speak reproachfully、be evil spoken of、非難する、悪く言う
*15 ゾエ(ギ) (eternal) life、(永遠の)いのち
*19 プシュケー(ギ) soul、life、(原義)息 → (肉的)いのち、たましい
*25 ペーキュス(ギ) ひじから中指の先までの長さ 1ペーキュス (黙示21:17) ≒ 45センチ ≒ 1キュビト
*27 クリノン(ギ) (直訳) アネモネ、ゆり
*28 オリゴピストス(ギ) little faith、信仰のあまりにも小さい者
*31 プレン(ギ) moreover、besides、(飲み食いのことで煩わされないこと)に加えて、それに加えて
*33 セース(ギ) (直訳) 蛾(衣蛾)、 アネクレイプトス(ギ) unfailing、尽きない、絶えることのない; 確実な (§ 財布からいくらでも無尽蔵に出てくるという意味)
*37 マカリオス(ギ) happy、be blessed、幸い、 アーメン(ギ) verily、まことに、確かに
*38 (直訳) 第2の夜回りの時(午後9時〜午前0時)、 第3の夜回りの時(午前0時〜午前3時)
*42 ピストス(ギ) faithful、(人に対して)忠実な、 オイコノモス(ギ) steward、manager、執事、家令
*48 ゼテーオ(ギ) seek、demand、捜す、要求する、 アイテーオ ask、beg、尋ねる、依頼する
*49 ピュール(ギ、単数) fire、聖霊の火(ペンテコステの聖霊の火、と同時に、さばきの火でもある) → しかしその前に、十字架を通らなければならない
*50 マルコ10:38、45、 バプティスソナイ(ギ、アオ過去) 受けているバプテスマを、 エコー(現在) have、持っている ・・・ 十字架の贖いの事、 スュネコマイ(現在、受、1単) <スュネコー compress、hold together、closely occupied、afflict、二つのものの板挟みにする、つなぎ合わせる、苦しめる § 神と 世とが、御子にあって
和解すること
*56 (直訳) 顔、 (直訳) 試験する、証明する
*58、59 マタイ5:25、26、 狭い町なので、原告と被告が共に裁判所へ行く場合も多い、 1レプタ(ギリシャの最小単位の銅貨) =1/2コドラント =1/128
デナリ
第13章
1* ちょうどその時、ある人々が来て、ピラトがガリラヤ人たちの血を流し、それを彼らの犠牲の血に混ぜた*ことを、イエスに知らせた。
2 そこでイエスは答えて言われた、「そのガリラヤ人たちが、そのような災難にあったからといって、他のすべてのガリラヤ人以上に罪が深かったと思うのですか。
3 あなたがたに言います。そうではない。あなたがたも悔い改めなければ、みな同じように滅びます。
4 また、シロアムの塔*が倒れたために死んだあの十八人は、エルサレムの他の全住民以上に罪の負債があったと思いますか。
5 あなたがたに言います。そうではない。あなたがたも悔い改めなければ、みな同じように滅びます。」
6 それから、この たとえを語られた。「ある人が自分のぶどう園にいちじくの木を植えて置いた。しかし実を捜しに来たが見つからなかった。
7 そこで園の番人に言った。『見てくれ。私は三年間も、このいちじくの木のところに実を捜しに来たのに、実を見たことがない。その木を切り倒しなさい。さらに、土地も塞いでいるではないか。』
8 すると彼は答えて言った。『ご主人様。今年も、そのままにして置いてください。その周囲を掘って肥料をやってみますから、
9 それで来年実が成りましたら良いとして、もしそれでも成らない時は、切り倒してください。』」
10 イエスは、安息日に、ある会堂で教えておられた。
11 すると、見よ、そこに十八年間も、病の霊に取り憑かれ、前にかがみに腰が曲がったまま*で、からだを伸ばすことの全くできない女がいた。
12* イエスはこの女性を見て、呼んで、彼女に、「女よ。あなたは病弱から解放されました*。」と言って*、
13 両手を彼女に置かれた*。するとただちに、その体がまっすぐになり*、そして彼女は神をほめたたえていた*。
14 ところが会堂管理人は、イエスが安息日にいやしを行なわれたことを憤り、群衆に言った。「働いて良い日は六日あります。その間に、いやされに来なさい。安息日にはいけません。」
15 すると主は答えて言われた。「偽善者たちよ。あなたがたは誰でも、安息日であっても、自分の牛やろばを家畜小屋から解いて、水を飲ませに連れ出さないのですか。
16 それなら、アブラハムの娘であるこの女は、見よ、十八年間もサタンに縛られていました。安息日であっても、彼女はその束縛から解放されるべきではないのですか。」
17 こう言われたので、イエスに反対していたすべての人たちは恥じ入り、そして群衆は、イエスによって成されるすべての栄光のみわざを喜んだ。
18 そこで言われた。「神の御国は何に似ているでしょうか。またそれは何にたとえられるでしょうか。
19 それは一粒のからし種のようなものです。ある人がそれを取って庭にまくと、育って大きな木*となり、空の鳥たちがその枝の間に巣を作るほどになりました。」
20 そして、もう一度言われた。「神の国は何にたとえられるでしょう。
21 それはパン種のようなものです。女がそれを取って三サトン*の粉の中に混ぜると、全体がふくらみました。」
22 さてイエスは教えながら町々村々を通り過ぎ、エルサレムへと旅を続けられた。
23 すると、ある人がイエスに、「主よ。救われる人は少ないのですか。」と尋ねた。イエスは彼らに対して言った。
24* 「努力して戦って*、狭い門*から入りなさい。あなたがたに言いますが、多くの人々が入ろうとして捜し求めても、入れなくなる*からです。
25 家の主人が立って戸を閉めてしまってから、あなたがたが外に立ち戸を叩き始めて、『ご主人。ご主人。どうぞ開けてください。』と言っても、主人はそれに答えて、『あなたがたがどこの者か*知らない*。』と言うでしょう。
26 そのとき、『私たちはあなたの前で飲み食いしました。また、あなたは私たちの大通りで教えてくださいました。』と言い始めても、
27 彼は、『あなたがたがどこの者か*知らない*。不義の働き人たち*よ、皆、わたしから離れ去れ。』と言うでしょう。
28 アブラハム、イサク、ヤコブやすべての預言者たちが神の御国に入っているのに、あなたがたは外に投げ出され、そこで泣き叫んだり、歯ぎしりをしたりするでしょう。
29 それから人々が、東から西から、また北から南から来て、神の御国で宴席に横になって着くでしょう。
30 このように、見よ、今、最後の者たちが*先頭の者たちになり*、また、今、先頭の者たち*が最後の者たち*になるのです。」
31 その同じ日に、あるパリサイ人たちが、イエスに近寄ってきて言った、「ここから出て行きなさい。ヘロデがあなたを殺そうとしています。」
32 そこで彼らに言われた。「あの狐のところへ行ってこう言いなさい。『見よ。わたしは今日も明日も、悪霊を追い出し、いやしを成し遂げ、そして三日目にわざを完了します。
33 しかし、今日も明日も、またその次の日も、わたしは進んで行かなければなりません。預言者がエルサレム以外の地で死ぬことは、あり得ないからです。』
34 エルサレム。エルサレム。預言者たちを殺し、遣わされた人々を石で打ち殺す者よ。わたしは何回、めんどりが翼の下にひなを集めるように、おまえの子らを集めようとしたことでしょう。それなのに、あなたがたはそれを望まなかった。
35 見よ。あなたがたの家*は、荒れ果てたまま残されます。まことに*、あなたがたに言います。『主の名によって来られる方に、祝福あれ。』*と、あなたがたが言う時が来るまでは、決してわたしを見ることはありません。」
*1 ヨセフォスの自伝によると、ガリラヤ人は革新的で騒動を喜ぶ傾向があったという。巡礼祭の騒ぎの最中に、最後の逃れの場である「祭壇の角」(出21:14、T列1:51)の所で殺されたので、よほど罪深い者らだった、と人々は考えた。 エミクセン(ギ)
<ミグニュミ mix、混ぜる
*4 エルサレム城壁の南東角(以前のシロアム)からさらに南東100m(2004年発見)のシロアムの池(ヨハネ9:7、
シロアハ(イザ8:6)、シェラフ(ネヘ3:15))の所にあった塔といわれるが、詳細は歴史文献にもない、 罪の は補足
*11 シュンクプトー(ギ) bend completely forwards、to be bowed together、 (医者ルカだけの表現、 with + stoop down)
*12 § いやしの信仰のプロセス: アポレリュサイ(ギ、完了、受、2単) have been set free、released、解放された、 エイペン(アオ過去2(瞬時過去)、3単) said、(一度)言って
*13 エペセーケン(ギ、アオ過去(不定過去)) places on、 アノールソーセー(アオ過去、受) was made erect、set up、 エドクサゼン(未完了過去) glorified
*19 § クロガラシ(black mustard) 2.4m程度に成長、3000年前から栽培 (cf. キダチタバコは、種はクロガラシの1/100で非常に小さく、3−4mに成長するが、南米原産でパレスチナ原産ではない)
*21 サタ(ギ、複) <サトン、 1サトン = 13(12.8)リットル
*24 アゴニゾマイ(ギ) (元々)対戦相手と戦う競技、→ contend、争う、struggle、奮闘する(with difficulties and dangers)、 (直訳) door、戸、 テース ステネース ピュレース(ギ) the narrow door(entrance)、狭い戸(入口、 門)、 ウーク イスキュソーシン(ギ、未来、3複) not be able、be strong、(直訳) 強くない、力を持たない、できない、 § 「狭き門」とは、イエスの十字架から御国に入ること = 救われていること、 → 13:25−30、マタイ7:13−23、 にせ預言者は
十字架を通らず、救われていない(=「あなたがたを全然知らない」)。その上で霊的ミニストリーを行うことは、すなわち不法となる
*25、27 ヨハ9:29、 どこ(からの)者か = 神からの者か、人からの者か の意、 ウーク オイダ 知らない (強い否定の言葉で、シナゴーグからの追放にも用いる)
*27 ホイ エルガタイ テース アディキアス(ギ) the workers of the unrighteousness(injustice)、不義(不法)の働き人たち、 すなわち 救われていないでミニストリーを行う人々
*30 今 は補足、エイシン(現在) are、エソンタイ(未来) will be、 エスカトイ(ギ、複) last ones、 プロートイ(複) first ones、
*35 エレ22:5 でバビロン捕囚になるとき一度成就、 :35のみことばはAD70年のエルサレム陥落で成就、 あなたがたの家 = 神殿、 アーメン(ギ) verily、まことに、確かに、 詩篇118:26、仮庵祭の詩歌 § 主の再臨〜千年王国(仮庵がひな型)の時には、贖われたイスラエルの民がこう呼ぶ
第14章
1 イエスは、あるパリサイ派の指導者の家で安息日の食事をすることになり、そこへ入って行かれたが、人々はイエスの様子を伺っていた。
2 すると、見よ、水腫を病んでいる人が、正面にいた。
3 イエスは律法家*たちやパリサイ人たちに言われた、「安息日にいやしをするのは、律法にかなって*いますか。」
4 彼らは黙っていた。そこでイエスはその人の手を取っていやされ、そして家に帰された。
5 それから彼らに言われた。「あなたがたの中で、ろば あるいは牛が井戸に落ち込んだなら、安息日だからといって、ただちに引き上げない者が誰かいますか。」
6 彼らはこれに対して、答えを返すことができなかった。
7 客に招かれた者たちが上席*を選んでいる様子をイエスはご覧になって、彼らに一つの たとえを語られた。
8 「婚宴に招かれたときには、上席に着いてはいけません。あなたよりも身分の高い人が招かれているかも知れません。
9* その場合、あなたとその人とを招いた者が来て、『この方に席を譲ってください。』と言うでしょう。そのとき、あなたは恥じ入って末席*に着くことになります。
10* むしろ、招かれた場合には、末席に行ってそこに着きなさい。そうすれば、招いてくれた人が来て、『友よ、上席の方へお進みください。』と言うでしょう。そのとき、あなたは席に着いている人々の見ている前で、面目をほどこすことになります。
11 それは、自分を高くする者は低くされ、自分を低くする者は高くされるからです。」
12 また、イエスは自分を招いた人に言われた。「昼食または晩餐の席を設けるときは、友人、兄弟、親族、金持の知り合いなどは呼んではいけません。それは彼らもあなたを招き返し、あなたは返礼を受けることになるからです。
13 むしろ、宴会を催す場合には、貧しい人、体の不自由な人、足の悪い人、目の見えない人などを招きなさい。
14 そうすれば、彼らは返礼ができないので、あなたは幸いです。義人たちの復活の時には、あなたは報いられるからです。」
15 一緒に席についていた客の一人がこれを聞いて、イエスに、「神の御国で食事をする人は、幸いです。」と言った。
16 そこでイエスが言われた。「ある人が盛大な晩餐会を催して、大ぜいの人を招待した。
17 晩餐の時刻になったので、招待していた人たちの所へしもべを送って、『さあ、おいでください。もう準備ができています。』と言わせた。
18 ところが皆、同じようなことを言って断り始めた。最初の人は、『私は土地を買いましたので、見に行かなければなりません。お願いです、お断りさせてください。』と言った。
19 他の人は、『私は五対の牛を買いましたので、それを調べに行くところです。お願いです、お断りさせてください。』
20 もう一人の人は、『私は妻をめとりました。このために、行くことができません。』と言った。
21 しもべは帰って来て、これらの事を主人に報告した。すると家の主人は怒ってしもべに言った。『今すぐに出て行って、町の大通りや小道に行って、貧しい人、体の不自由な人、目の見えない人、足の悪い人などを、ここへ連れてきなさい。』
22 しもべは言った。『ご主人様の言われた通りにしましたが、まだ席があります。』
23 主人はしもべに言った。『街道や垣根のあたりまで出て行って、この家が一杯になるように、人々を無理にでも連れて来なさい。
24 あなたがたに言います。それは、招待されていた人でわたしの晩餐を味わう者は、誰一人いないからです。』」
25 大ぜいの群衆がついて来たので、イエスは彼らの方へ振り返って言われた。
26* 「誰でも、父、母、妻、子供たち、兄弟たち、姉妹たち、さらに自分のいのち*までも捨てて*、わたしのもとに来るのでなければ、わたしの弟子となることはできません。
27 自分の十字架を負って、わたしについて来るのでなければ、わたしの弟子である*ことはできません。
28 それは、たとえば、あなたがたの中で、誰かが塔を建てようとするなら、まず座って*、それを完成するための費用を持っているかどうかを計算しないでしょうか。
29 それで、土台を据えただけで完成することができないでいると、見ているすべての人があざ笑うようになるでしょう。
30 『あの人は建て始めたが、完成するには力不足だった。』と言って。
31 また、どんな王でも、他の王と戦いを交えるために出て行く場合には、まず座って*、こちらの一万人をもって、二万人を引き連れて向かって来る敵を迎え撃つことができるかどうかを、よく考えないでしょうか。
32 もし、できないことが分かれば、敵がまだ遠くにいるうちに、使者を送って、講和を求める*でしょう。
33 それと同じように、あなたがたのうちの誰もが、自分の所有するもの*をことごとく捨てる者でなければ、わたしの弟子である*ことができません。
34 塩は良いものです。しかし、もし塩の味が鈍くなった*ら、何によって味を付けられるでしょうか。
35 土にも肥料にも役に立たず、外に投げ捨てられてしまう。聞く耳のある者は聞きなさい*。」
*3 ノミコース(ギ) lawyer、律法家、律法の専門家、 エクセスティ(ギ) lawful、(律法に対し)合法
*7 プロトクリシーア(ギ) the first reclining place、横になって着く席、上座
*9 エスカトス トポス(ギ) last place、最後尾の場所・立場
*9、10 箴言25:6、7
*26 cf. マタイ10:37 では、わたしよりも・・・を愛する者は、 プシュケー(ギ) life、soul、(肉の)いのち、 ミセーオ(ギ) hate、detest、(直訳) 憎む、忌み嫌う
*27、33 エイナイ(ギ、現在) ある、いる
*28、31 座って・・・計算する = 石を使って数える
*32 講和を求める = 従属する
*33 ヒュパルコウシン(ギ、現在、複・中) <ヒュパルコ begin、come forth; be ready、be at hand、始める、現れる、ある、持っている
*34 モライーノ(ギ) be foolish、make flat and tasteless、馬鹿になる、(味を)失う
*35 ホ エコーン オータ アコウエイン(ギ) the one have ears to hear、聞く耳(複数)を持つ者、 (マタイ11:15、13:9、43、マルコ4:9、23、ルカ8:8、14:35、 cf.
「耳」(単数) 黙示2:7、11、17、29、3:6、13、22)
第15章
1 さて、取税人や罪人たちが皆、イエスの話を聞こうとして加わって来た。
2 するとパリサイ人たちや律法学者たちがつぶやいて、「この人は罪人たちを受け入れて一緒に食事をしている。」と言った。
3 そこでイエスは彼らに、このような たとえをお話しになった。
4* 「あなたがたのうちに、百匹の羊を持っている者がいたとします。その一匹がいなくなったら、九十九匹を荒野に残して置いて、いなくなった一匹を見つけるまでは捜し歩かないでしょうか。
5 そして見つけたら、喜んでそれを自分の肩にかついで、
6 家に帰ってきて友人たちや近所の人々を呼び集め、『私と一緒に喜んでください。いなくなった羊を見つけましたから。』と言うでしょう。
7 わたしはあなたがたに言います。それと同じように、一人の罪人が悔い改めるなら、悔改めをする必要のない九十九人の義人たちにまさる喜びが、天にあるでしょう。
8 また、ある女がドラクマ銀貨*十枚を持っていて、もしその一枚をなくしたとすれば、彼女は灯火をつけて家中を掃き、それを見つけるまでは注意深く捜さないでしょうか。
9 そして、見つけたなら、友人たちや近所の人々を呼び集め、『私と一緒に喜んでください。なくした銀貨が見つかりましたから。』と言うでしょう。
10 わたしはあなたがたに言います。それと同じように、一人の罪人が悔い改めるなら、神の御使いたちの前で喜びがあるでしょう。」
11 また言われた。「ある人に、二人の息子がいた。
12 ところが、弟のほうが父親に言った。『お父さん。お父さん。あなたの財産のうちの、私の分け前を下さい。』 そこで、父はその身代*を二人に分けてやった。
13 それから何日もしないうちに、弟は自分のものを全部集めて遠い地へ行き、そこで放蕩に身を持ちくずして財産を使い果した。
14 すべてを使い果たしてしまったとき、その地にひどいききんがあったので、彼は食べるものにも事欠くように*なり始めた。
15 そこで、その地のある住民のところに行って身を寄せたところ、その人は彼を畑に送り、豚を飼う仕事につけた。
16 彼は、豚の食べるいなご豆*で腹を満たしたいと思うほどだったが、彼に与えてくれる人は誰もいなかった。
17 そのとき、彼はわれに返って、言った。『父のところにはパンのあり余っている雇い人たちが何と大ぜいいることか。それなのに、私はここで飢え死にしようとしている。
18 立って、父のところへ帰って、こう言おう。お父さん、私は天に対しても、あなたの前にも、罪を犯しました。
19 もう、あなたの息子と呼ばれる資格はありません。どうぞ、雇い人の一人にしてください。』
20 そこで立って、父のところへ行った。まだ遠く離れているときに、彼の父は彼を見つけ、かわいそうに思い、走って行ってその首に抱きついて、何度も接吻した*。
21 息子は父に言った。『お父さん。私は天に対しても、あなたの前にも、罪を犯しました。もうあなたの息子と呼ばれる資格はありません。』
22 しかし父はしもべたちに言いつけた。『さあ、早く、最上の着物を出してきてこの子に着せ、指輪を手にはめさせ、履物を足に履かせなさい。
23 また、肥えた子牛を引いて来て、ほふりなさい。食べて大いに喜ぼう*ではないか。
24 この息子が死んでいたのに生き返り、いなくなっていたのに見つかったのだから。』 それから彼らは喜びの祝宴を*始めた。
25 ところが、兄は畑にいたが、帰ってきて家に近づくと、音楽や踊りの音が聞えたので、
26 一人のしもべを呼んで、『一体、これは何事なのか。』と尋ねた。
27 しもべは答えた。『あなたの弟さんがお帰りになりました。無事な姿で迎えられたというので、父上が肥えた子牛をほふらせなさったのです。』
28 兄は怒って家に入ろうともしなかったので、父が出てきていろいろなだめた。
29 兄は父に言った。『見てください。私は何年もあなたに仕えて、あなたの言いつけに従わなかったことは一度もありません。しかし、友だちと楽しむ*ようにと、子やぎ一匹も下さったことはありませんでした。
30 それなのに、遊女たちと一緒になってあなたの身代を食い潰して帰って来た、このあなたの息子のためには、肥えた子牛をほふりなさるのですか。』
31 すると父は言った。『子よ*。あなたはいつも私と一緒にいるし、また私のものは全部あなたのものだ。
32 しかし、このあなたの弟は、死んでいたのが生き返り、失われていたのが見つかったのだから、祝宴をして*、大いに喜ぶのは当然ではないか。』」
*4 詩篇119:176、 マタイ18:12−14
*8 1ドラクマ=1デナリ=1/100ミナ (1ミナ=1/60タラント)
*12 ビオス(ギ) (終わりのある)いのち、生活、財産
*14 食べるもの は補足
*16 ケラティオン(ギ) カルヴ(ヘ) イナゴマメ、 果肉は甘みがあって食用(古くからの甘味料)、種と鞘は飼料用
*20 カタフィレオー(ギ) 何度も口づけする 使徒20:37、(御足に)ルカ7:38、(イスカリオテ・ユダが)マタイ26:49、マルコ14:45
*23、24、29、32 これら4つとも ユーフライーノ(ギ) gladden、make joyful、rejoice in、(直訳) 大いに喜ぶ
*31 テクノン(ギ) child
第16章
1 イエスはまた、弟子たちに言われた。「ある金持のところに一人の執事*がいたが、彼は主人の財産を浪費していると、告発する者があった。
2 そこで主人は彼を呼び出して、言った。『あなたに関して聞いていることがあるが、どういうことなのか。もはやあなたを執事にさせておくことはできないから、あなたの会計報告を出しなさい。』
3 この執事は心の中で思った。『どうしようか。主人が私から執事の職を取り上げようとしている。土を掘るには力がないし、物ごいするのは恥ずかしい。
4 分かった、こうしよう。こうすれば、執事の職をやめさせられる時はいつでも、人々が私をその家に迎えてくれるだろう。』
5 そして、彼は、主人の負債者の一人一人を呼び出して、初めの人に、『あなたは、私の主人にどれだけ負債がありますか。』と尋ねた。
6 『油百バテです。』と答えた。そこで執事が言った。『ここにあなたの証書がある。すぐそこに座って、五十と書きなさい。』
7 次に、もう一人に、『あなたの負債はどれだけですか。』と尋ねると、『麦百コル*です。』と答えた。これに対して、『あなたの証書を手に取って、八十と書きなさい。』と言った。
8 ところが主人は、この不正な執事の抜け目ない*やり方に感心した*。この世の子らは自分たちの時代に対しては、光の子ら*よりも抜け目ない者です。
9 それで、あなたがたに言います。不正の富*を用いてでも、自分のために友だちを作りなさい。そうすれば、それが無くなった時は、彼らはあなたがたを永遠の幕屋に迎えてくれるでしょう。
10 最も小さいもの*に忠実*な人は、大きいもの*にも忠実であり、最も小さいものに不忠実な人は大きいものにも不忠実です。
11 だから、もしあなたがたが不正の富*について忠実でなかったら、誰が真理のもの*を任せるでしょうか。
12 また、もし他の人のものについて忠実でなかったら、誰があなたがたの所有するものを与えてくれるでしょうか。
13 二人の主人に仕えることができる しもべはいません。それは、一方を憎んで、他方を愛し、あるいは、一方を支持し、他方を蔑視するからです。あなたがたは、神と富*との両方に仕えることはできません。」
14 金銭を好むパリサイ人たちもこれらの言葉をみな聞いていて、イエスをあざ笑った。
15 そこで彼らに言われた。「あなたがたは、人々の前で自分を義とする人たちです。しかし、神はあなたがたの心をご存じです。人々の間で高くされる者は、神の御前では忌み嫌われます。
16 律法と預言者とはヨハネの時までのものです。それ以来、神の御国の福音が宣べ伝えられ、誰もがこれに力ずくで*入ろうとしています。
17* しかし、律法のケライア*が落ちるよりは、天地の滅びる方が、もっとたやすい。
18 すべて自分の妻を出して他の女をめとる者は、姦淫を行う者であり、また、夫から出された女をめとる者も、姦淫を行う者です。
19* ある金持ちがいた。彼は紫の衣や細布*を着て、毎日ぜいたくに遊び暮していた。
20 ところが、体が腫瘍でおおわれたラザロ*という貧しい人が、この金持ちの門の前に放置されたままで、
21 彼は、その金持ちの食卓から落ちるもので飢えをしのぎたいと思っていた。その上、犬が来て彼の腫瘍をなめていた。
22 この貧しい人がついに死に、御使いたちに連れられてアブラハムのふところ*に送られた。金持も死んで葬られた。
23 そしてハデス*にいて苦しみながら、目を上げると、アブラハムと彼のふところにいるラザロとが、遠くに見えた。
24 そこで叫んで言った。『父よ、アブラハムよ。私をあわれんでください。ラザロを遣わして、その指先を水でぬらし、私の舌を冷やさせてください。私はこの火炎の中でひどく苦しんでいます。』
25 アブラハムは言った。『子よ、思い出しなさい。あなたは生前良いものを受け、ラザロの方は悪いものを受けました。しかし今ここでは、彼は慰められ、あなたは苦しめられているのです。
26 それだけではなく、私たちとあなたがたとの間には大きな淵*があって、ここからあなたがたの方へ渡ろうと思ってもできないし、そこから私たちの方へ越えて来ることもできません。』
27 そこで彼は言った。『父よ、ではお願いします。私の父の家へラザロを遣わしてください。
28 私に五人の兄弟がいますので、こんな苦しい所へ来ることがないように、彼らに厳(おごそ)かにあかしを語ってもらいたいのです。』
29 アブラハムは言った。『彼らには、モーセと預言者*があります。それに聞くべきです。』
30 彼は言った。『いいえ、父アブラハムよ。もし死人の中から誰かが兄弟たちのところへ行ってくれるなら、彼らはきっと悔い改めるでしょう。』
31 アブラハムは言った。『もし彼らがモーセと預言者に耳を傾けないなら、誰が死人の中から生き返っても、彼らはその勧めを聞き入れはしないのです。』」
*1 オイコノーモス(ギ) manager of household、steward、執事、家令
*6 バトス(ギ) 1バテ = 23リットル (液体、 T列7:26、 穀物などは =
1エパ(かご)、レビ19:36)
*7 コロス(ギ) 1コル = 230リットル (液体、固体、 T列5:11)
*8 フロニーモス(ギ) prudently、wisely、賢く、用心深く、堅実な将来に備えて、抜け目なく、 = マタイ10:16、 エパイネーオ(ギ) approve、praise、賛成する、容認する、感心する; ほめる、 光の子: ヨハネ12:36、エペソ5:8、Tテサ5:5、 § この主人にとっての損失はおそらく微々たるもの(数十万円)だったので、抜け目ないやり方に感心する余裕があった cf. タラントのたとえ(1タラント=数千万円)
*9、11、13 富: (直訳) マモン(単・男)
*10 エラキストス(ギ) smallest、least、最小(大きさ、数量など、比較級)、 ピストス faithful、(人や物に)忠実、信頼できる、 ポリュス many、much、large ((注)比較級ではない)
*11 不正の富について、最も小さい(少ない)もの と言っている、 アレーシノン(ギ、形容詞、単・中)
<アレシノス true、veracious、真理の(もの)、本当の(もの) ((注)単・中より、マモンではない、 単・中は、プニューマ(霊、聖霊)、タラントン(1タラント=6000デナリ)、カーリスマ(賜物、贈り物)など)
*16 ビアーゾ(ギ) use force、inflict violence、力を使って、暴力を加えて
*17 マタイ5:18、 ケライア(ギ) serif、ヘブル文字のかぎ型の突起、これが違うだけで全く別の文字となる
*19 ビュッソス(ギ) fine linen、エジプト亜麻の柔らかい下着
*20 ラザロス(ギ) ラザロ(ヘ)は エルアザル(神は助け)の短縮形、(ラザロの復活(ヨハネ11:1−)とは関係ない)
*22 アブラハムの懐(ふところ) the bosom of Abraham = パラダイス、 § シェオル(ヘ、人が死ぬと行く所、(広義の)よみ)のうちの、贖われた者が行くパラダイスのこと(ルカ23:43)
*23 同じシェオルの中に、生前に罪を悔い改めなかったすべての人々が行く、ハデスがある
*26 カースマ(ギ) gap opening、chasm、(深い)裂け目
*29 モーセと預言者(たち)(Moses and the prophets): 旧約聖書の事
第17章
1 イエスは弟子たちに言われた。「罪へのわな*が来ることは避けられない。しかし、それを来たらせる者は、災いだ*。
2 これらの小さい者の一人を罪に誘惑する*よりは、むしろ、ひき臼を首にかけられて海に投げ込まれた方が、まだましです。
3 あなたがたは、自分自身のことに気を付けなさい。もしあなたの兄弟があなたに罪を犯したとしても、彼を戒め、そして悔い改めたら、赦してあげなさい。
4 もしあなたに対して一日に七度罪を犯し、そして七度、『悔い改めます。』と言ってあなたのところへ帰ってくれば、赦してあげなさい。」
5* 使徒たちは主に、「私たちの信仰を増してください。」と言った。
6 そこで主は言われた。「もし、からし種一粒ほどの信仰があったなら、この桑の木に、『根ごと引き抜かれて、海に植われ。』と言ったとしても、それはあなたがたに従ったことでしょう。
7 あなたがたのうちの誰かが、耕作か羊飼いをするしもべを持っているとします。そのしもべが畑から帰って来たとき、彼に、『さあ近くに寄って、横になって食卓に着きなさい。』と言うでしょうか。
8 むしろ、『夕食の用意をしなさい。そして私が飲み食いする間、帯を締めて給仕をしなさい。そのあとで、あなたは飲み食いをしなさい。』と、言いませんか。
9 しもべが指示されたことをしたからといって、主人は彼に感謝するでしょうか。
10 同じように、あなたがたも、言いつけられたことを皆してしまってから、『私たちは役に立たない*しもべです。なすべき事をしたに過ぎません。』と言いなさい。」
11 イエスはエルサレムへ行かれる途上で、サマリヤとガリラヤとの境目あたりを通られた。
12 そして、ある村に入られると、十人のらい病人に出会われたが、彼らは遠くの方で立ち止まり、
13 声を張り上げて、「イエスさま。師よ。私たちをあわれんでください。」と言った。
14 イエスは彼らをご覧になって、「祭司たちのところに行って、自身の体を見せなさい。」と言われた。そして、行く途中で彼らはきよめられた。
15 そのうちの一人は、自分がいやされたことに気が付き、大声で神をほめたたえながら帰って来て、
16 イエスの足もとにひれ伏して感謝をささげた。これはサマリヤ人であった。
17 イエスは彼に言われた。「きよめられたのは、十人ではなかったのですか。他の九人は、どこにいますか。
18 神をほめたたえるために帰って来た者は、この異国人の他にはいないのですか。」
19 それから、その人に言われた。「立ち上がって、行きなさい。あなたの信仰があなたを救ったのです。」
20* また、神の国はいつ来るのかと、パリサイ人が尋ねたので、イエスは答えて言われた。「神の御国は、人々が見て分かる形で*来るものではありません。
21 人々が、ほら、ここにある、そら、そこにある、というようなものではありません。それは、神の国は、見よ、あなたがたのただ中にあるからです。」
22 それから弟子たちに言われた。「人の子の日々を一日でも見たいと願っても、見ることができない日々が来るでしょう。
23 人々はあなたがたに、『ほら、ここに。』、『そら、あそこに。』と言うでしょう。しかし、そちらへ行ってはならず、また彼らのあとを追ってもいけません。
24 それは、稲妻の閃光が天の端から出て天の端へとひらめき渡るように、その日には人の子も、それと同じようであるからです。
25 しかし、最初に、人の子は、多くの苦しみを受け、この時代の人々に拒絶されなければなりません。
26 そして、ノアの日々に起こった通りに、人の子の日々にも同様なことが起るでしょう。
27 ノアが箱舟に入る日まで、人々は食べたり、飲んだり、めとったり、とついだりしていましたが、そこへ洪水が来て、彼らをことごとく破壊し尽くしました。
28 また、ロトの日々にも同じようなことが起こり、人々は食べたり、飲んだり、買ったり、売ったり、植えたり、建てたりしていましたが、
29 ロトがソドムから出て行った日に、天から火と硫黄とが雨のように降り注ぎ、彼らをことごとく破壊し尽くしました。
30 人の子が現れる日も、ちょうどこれらと同じです。
31 その日には、屋上にいる者は、自分の持ち物が家の中にあっても、取りに降りてはいけません*。畑にいる者も同じように、後へ戻ってはいけません。
32* ロトの妻のことを思い出しなさい。
33 自分のいのち*を救おうと捜し求める者は、それを失い、それを失う者は、神のいのちを*保ちます。
34 あなたがたに言います。その夜、二人の男が一つ寝床で寝ていると、一人は迎えられ*、もう一人は残されるでしょう。
35 二人の女が一緒に臼をひいているならば、一人は迎えられ、他の一人は残されるでしょう。
36 二人の男が畑にいると、一人は迎えられ、他の一人は残されるでしょう。
37* 弟子たちは、イエスに答えて言った。「どこでですか*。主よ。」 そこでイエスは言われた。「死体*のある所にはどこでも*、はげたか*も集まるものです。」
*1 スカンダロン(ギ) stick or trigger of a trap、drawn into error or sin、(元々)わなの引き棒 → つまずき、罪の誘惑、 ウーアイ(ギ) ああ、災いだ
*2 (あるいは) つまずかせる = マタイ18:7
*5 § 信仰 とは、神によって増し加えられるものではなく、与えられた神のことば(=からし種)を、自身の内に自分で持って、育て上げるもの
*10 アクレイオス(ギ) useless、good for nothing、(謙譲語として) 役に立たない、至らない
*20 ここで終末における「再臨」の話になる。 = マタイ24:23−27、 パラテレシス(ギ) observation、観察
*31 屋上の間の脇に階段があって、外へ脱出できるが、そこから家に中に入ってはいけない の意、 (マタイ24:16、マルコ13:14では、ユダヤの人々に対して、も加えている)
*32 創世19:26、 世の方を振り返ったロトの妻は「塩の柱になった」、 § 家に入ると惑わされる(マタイ24:17、18、26など)ことの理由になっている
*33 プシュケー(ギ) life、soul、(肉的)いのち、 神のいのち は補足
*34 パララムバノー(ギ) take、receive、迎えられ = ヨハネ14:3
*37 ポウ(ギ、疑問副詞) where、どこで、 ソーマ(ギ、単数) body; dead body、corpse、体、死体、 ホポウ(ギ) wheresoever、where、〜するところではどこでも、 アエトイ(ギ、複) <アエトス eagles、 § この一文は、前節までとの関連がない、 (世界中に建てられる、あるいは、世界中で放映される)反キリストの像の周りに、それを信奉する者たちが集まる、の意と思われる ( ex) 「子たちよ、偶像には警戒しなさい」(Tヨハ5:25)のような言葉が前節に入るとよく合う)
第18章
1 またイエスは、終わりの時に際し*、常に祈るべきであり、失望しないでいることを、人々に たとえで話された。
2* 「ある町に、神を恐れず、人を人とも思わない裁判官がいた。
3 ところが、その同じ町に一人のやもめがいて、彼のもとに足しげくやって来て、『どうぞ、私を訴える者をさばいて、私を守ってください。』と願い続けた。
4 彼はしばらくの間取り合わないでいたが、その後で心の中で考えた。『私は神をも恐れず、人を人とも思わないが、
5 このやもめは本当にうるさいから、彼女の嫌疑を晴らす*裁判をしてやろう。そうすれば、もう来なくなり、私を叩きまくる*ことは終わるだろう。』」
6 そこで主は言われた。「この不義な裁判官の言っていることを聞きなさい。
7 まして神は、日夜叫び求める選民のために、正当であるとする*さばきをせずに、いつまでも遅らせておられる*でしょうか。
8 あなたがたに言います。神はすみやかにさばいて下さいます。 しかし、人の子が来るとき、地上にその信仰*が見られるでしょうか。」
9 自分を義人だと自任し、他人を見下している人たちに対して、イエスはまたこの
たとえをお話しになった。
10 「二人の人が祈るために聖所*に上った。その一人はパリサイ人であり、もう一人は取税人であった。
11 パリサイ人は立って、一人でこう祈った。『神よ。私は他の人たちのような
どん欲な者、不正な者、姦淫をする者ではなく、また、こんな取税人のような者でもないことを感謝します。
12* 私は一週に二度断食して、すべての受けたものの十分の一を捧げています。』
13 ところが、取税人は遠く離れて立ち、天に目を向けようともしないで、胸を打ちながら言った。『神さま。罪人の私をあわれんでください*。』
14 わたしはあなたがたに言います。神に義とされて自分の家に帰ったのは、この人であって、あの人ではなかったのです。そのように、自分を高くする者は低くされ、自分を低くする者は高くされます。」
15 イエスに触っていただくために、人々が幼子(おさなご)たち*をみもとに連れてきた。ところが、弟子たちはそれを見て、彼らを来させないようにした。
16 するとイエスは幼子たちを呼び寄せて言われた。「幼子たちをわたしのところに来させなさい。止めてはならない。神の御国はこのような者たちの国です。
17 まことに、あなたがたに言います。だれでも幼子のように神の御国を受け取る者でなければ、決してそこに入ることはできない。」
18 また、ある会堂役員*がイエスに尋ねた。「良き*先生。何をしたら永遠のいのち*を受けられるでしょうか。」
19 イエスは言われた。「なぜわたしを良い者と言うのですか。神お一人の他に良い方はいません。
20 戒めはあなたの知っているとおりです。『姦淫するな、殺人を犯すな、盗むな、偽証を立てるな、父と母とを敬え。』」
21 すると彼は言った。「それらのことは皆、子供の*時から守っております。」
22 イエスはこれを聞いて言われた。「あなたはまだ一つ不足しています。持っているものをすべて売って、貧しい人々に分けなさい。そうすれば、天に宝を持つようになります。その上で、わたしについて来なさい。」
23 彼はこの言葉を聞いて非常に悲しんだ。大金持ちだったからである。
24 イエスは彼が悲しむようになったのを見て言われた。「財産を持つ者が神の御国に入るのは、何と難しいことでしょう。
25 金持ちが神の御国に入るよりは、らくだが針の穴を通る*方が、もっとやさしい。」
26 これを聞いた人々が、「それでは、誰が救われることができるのですか。」と尋ねると、
27 イエスは言われた。「人間たちには不可能な事でも、神にはできるのです。」
28 ペテロが言った。「ご覧ください。私たちはすべてをそのまま残して、あなたについて来ました。」
29 イエスは言われた。「まことにあなたがたに言います。誰でも神の御国のために、家、両親、兄弟たち、妻、子供たちを残してきた者は、
30 この時代にあってはその幾倍をも受けない者は誰一人いなく、また、来たるべき世では永遠のいのちを受けます。」
31 イエスは十二弟子をそばに呼んで、言われた。「見よ。わたしたちはエルサレムへ向かって上って行きますが、人の子について、預言者たちを通して書かれた事は、すべて成し遂げられます。
32 それは、人の子は異邦人たちに引き渡され、あざけられ、はずかしめを受け、つばきをかけられ、
33 また、鞭打たれてから、ついに殺され、そして三日目によみがえるからです。」
34 弟子たちは、誰一人これらのことを理解しなかった。この言葉が彼らに隠されていたので、イエスの言われることが分からなかったのである。
35* イエスがエリコに近づかれたとき、ある盲人が道ばたに座って、物乞いをしていた。
36 彼は、群衆が通り過ぎる音を聞いて、これは何があるのかと尋ねた。
37 ところが、ナザレのイエスが通られることを人々に聞かされたので、
38 声をあげて、「ダビデの子イエスよ。私をあわれんで下さい。」と言った。
39 先頭に立つ人々が彼に静かにしているようにとたしなめたが、彼はますます激しく叫び続けた。「ダビデの子よ。私をあわれんで下さい。」
40 そこでイエスは立ち止まって、彼を連れて来るようにと指示された。彼が近くに来たので、イエスは彼に尋ねて、
41 言われた。「わたしに何をしてほしいのですか。」*とおたずねになると、「主よ、視力が回復することです」と答えた。
42 そこでイエスは言われた。「見えるようになれ。あなたの信仰があなたを救ったのです。」
43 すると彼は、ただちに見えるようになった。そして神をほめたたえながらイエスについて行った。これを見た人々は皆、神に賛美をささげた。
*1 (原文では) プロス ト(冠詞、単数・中性) 〜、 toward the〜 で、〜には、テロス(単数・中性) end、endtime を入れると、 「終わりの時に向けて、(人々に話された)」 となる (テロス マタイ24:14など)
*2 § 世の終わりの不法の時代にあっても、求めるものには与えられること ≒ ルカ11:5−8
*5、7 エクディケオー(ギ) vindicate one's right、do one justice、嫌疑を晴らす、正当であるとする、 ヒュポピアゾー(ギ) (直訳) (ボクシングの試合で)目の下を打ち叩く
*7 マクロシュメオー(ギ) slow in avenging、longsuffering、報復(復讐)に遅い、忍耐して待つ(=Tコリ13:4、(寛容×))
*8 テーン ピスティン(ギ) the faith、(定冠詞がある)、 = 何が何でも聞かれるまで祈り求める信仰(11:5−8)
*10 ヒエロン(ギ、単・中) sacred place、temple 聖所、神殿
*12 11:42、マタイ9:14
*13 ヒラスコマイ(ギ) be propitious、be gracious、be merciful、ご好意にあずかる(者としてください)
*15 ブレフォス(ギ) new-born child、infant、babe、赤子、幼児 マタイ19:13、マルコ10:13では パイディオン(ギ)子供
*18 アルコン(ギ) ruler、commander、chief、ユダヤ教の会堂の役員、 マタイ19:20では 青年、 アガセー(ギ、呼格) アガソース good constitution or nature、useful、(単純に)良い性質の、 ゾエーン(ギ) <ゾエ アイオーニオン eternal life、永遠のいのち
*21 ネオテス(ギ) youth、youthful age、(13歳で成人式・戒律を守れる年齢とされた)
*25 不可能なことのたとえ、 当時は、貧乏はのろいであり、金持ちが天国に入ると教えられていた
*35 マタイ20:29−34、マルコ10:46−52、 マタイでは2人の盲人、マルコでは
テマイの子、バルテマイ、 いやされた後、弟子としてついて行った
*41 § わざわざここで、何をしてほしいのか、具体的に聞いている事に注意。 具体的求めが聞かれる (直訳)私があなたに何をすることを、あなたは望むのか、 アナブレポー(ギ) look up、to recover (lost) sight
第19章
1 さて、イエスはエリコに入られ、その町を通られた。
2 そして、見よ、そこにザアカイ*という名の人がいた。この人は取税人のかしらで、金持ちであった。
3 彼は、イエスがどんな人か見たいと思っていたが、背が低かったので、群衆のために見ることができなかった。
4 そこで、イエスを見るために、前の方に走り出て、いちじく桑*の木に登った。イエスが、そこを通られるところだったからである。
5 イエスは、その場所にこられたとき、上を見上げて言われた。「ザアカイよ、急いで下りてきなさい。今日、あなたの家に泊まる必要があるからです。」
6 そこでザアカイは急いで降りて、大喜びでイエスを迎え入れた。
7 人々は皆、これを見てつぶやき、「彼は罪人の家に入って、宿をとられた。」と言った。
8 ザアカイは立って主に言った。「主よ、ご覧ください。私は自分の財産の半分を、主よ、貧しい人々に施します。また、誰からの物でも、だまし取った分は四倍にして返します。」
9 イエスは彼に言われた。「今日、救いがこの家に来ました。それは、この人もアブラハムの息子だからです。
10 人の子が来たのは、失われた人を捜し出して、救うためです。」
11 人々がこれらの言葉を聞いているときに、イエスはなお一つの たとえを話された。それはエルサレムが近づいたので、人々が神の御国はすぐにでも現れると思っていたからである。
12 イエスは言われた。「ある身分の高い人が、王位を受けて帰って来るために、遠い国へ旅立つことになった。
13 そこで十人のしもべを呼び十ミナ*を渡して言った。『私が帰って来るまで、これで商売をしなさい。』
14* ところが、本国の住民は彼を憎んでいたので、後から使者を送って、『この人が王になるのを我々は望んでいない。』と言わせた。
15 さて、彼が王位を受けて帰って来たとき、誰がどんな商売をしたかを知ろうとして、銀貨を渡しておいたしもべたちを呼び出させた。
16 最初の者が進み出て言った。『ご主人様、あなたの一ミナで十ミナを儲けました。』
17 主人は言った。『よくやった。良いしもべだ。あなたはほんの少しの物*に忠実であったから、十の町を治める権威を与えよう。』
18 二番目の者が来て言った。『ご主人様、あなたの一ミナで五ミナを儲けました。』
19 そこでこの者にも、『では、あなたは五つの町を治めなさい。』と言った。
20 それから、別の一人の者が来て言った。『ご主人様、ご覧ください。あなたの一ミナです。私はそれを手ぬぐい*に包んで、しまって置きました。
21 私は恐れて逃れていました。それは、あなたが厳しい方でおられ、あなたが預けられなかったものを取り立て、あなたが蒔かれなかったものを刈り取る方だからです。』
22 彼に言った。『私はあなたの口から出るものによってあなたをさばこう。悪いしもべよ。私が厳しくて、私が預けなかったものを取り立て、私が蒔かなかったものを刈り取る者だと、知っていた、というのか。
23* では、なぜ私の銀貨を銀行に預けておかなかったのか。そうすれば、私が帰って来たとき、それを利子と一緒に引き出せたはずだ。』
24 そして、そばに立っていた人々に、『その一ミナを彼から取り上げて、十ミナを持っている者に与えなさい。』と言った。
25 彼らは言った。『ご主人様、彼は十ミナを持っています。』
26 『あなたがたに言う。それは、誰でも、持っている者は、さらに与えられ、持っていない者からは、持っているものまでも取り上げられるからだ。
27 そして、私が王になることを好まなかったあの敵どもを、ここに引き連れて来て、私の前で皆殺しにしなさい。』」
28 イエスはこれらのことを語られた後、先頭に立ち、エルサレムへ上って行かれた。
29 そしてオリーブと呼ばれる山に沿った、ベテパゲとベタニヤ*に近づかれたとき、二人の弟子を遣わして、
30 言われた。「向こうの村へ行きなさい。そこに入って行くと、まだ誰も乗ったことのないろばの子がつないであるのを見つけるでしょう。それを解いて、引いて来なさい。
31 もし誰かに、『なぜ解くのか。』と尋ねられたら、このように言いなさい。『主がお入り用なのです。』」
32 そこで、遣わされた者たちが行くと、彼らに言われたとおりに見つけることができた。
33 彼らが、そのろばの子を解いていると、その持ち主たちが、「なぜろばの子を解くのか。」と言ってきたので、
34 「主がお入り用なのです。」と答えた。
35 そしてそれをイエスのところに引いて来て、その子ろばの上に自分たちの上着を掛けて、イエスをお乗せした。
36 そして進んで行かれると、人々は自分たちの上着を道に敷いた。
37 すでにオリーブ山を下って、ふもとに近づかれると、大ぜいの弟子たちは皆、大喜びで神を賛美して、彼らが見たすべての力あるみわざについて、声高らかに言い始めた。
38* 「主の御名によって来られる王に、祝福あれ。天には平和、いと高きところには栄光あれ。」
39 ところが、群衆の中にいたあるパリサイ人たちがイエスに言った。「先生。あなたの弟子たちに静まるよう言って下さい。」
40 イエスは答えて言われた。「わたしはあなたがたに言います。もしこの人たちが黙れば、石たちが叫ぶでしょう。」
41 都の近くに来られ、それを見られたとき、イエスは都のために泣いて、
42 言われた。「もしおまえが、まさに*この日のうちに、おまえが平和に向かうための出来事*を知っていたら。 しかし、それは今おまえの目から隠されている。
43 それゆえ、おまえにその日々が来る。敵が周りに塁を築き、おまえを取り囲んで、四方から押し迫り、
44 おまえとその中にいる子らとを地に投げつけ、城内の一つの石も他の石の上に残らない*、という日々が。それは、おまえが神のおとずれ*の時を知らなかったからだ。」
45* それから神殿に入り、商売人たちと客たちとを追い出し始めて、
46 彼らに言われた。「『わたしの家は祈りの家でなければならない。』*と書いてあるのに、あなたがたはそれを強盗の巣*にしてしまった*。」
47 イエスは毎日、神殿で教えておられた。祭司長たち、律法学者たち、また民の指導者たちは、イエスを殺そうと狙っていたが、
48 民衆は皆イエスに聞き入って離れない*ので、どのようにしたら良いのか分からなかった。
*1 ザカイオス(ギ) ザアカイ: ザカリヤ(ハヤウェは覚えておられる)の短縮形で、きよい人、義人
の意(エズ2:9、ネヘ7:14、「ザカイ族」)
*4 いちじく桑: いちじくとは異なる。実はいちじくに似て、葉は桑の木。日陰を作るために街道に植えられた。太い幹が横に出て、登りやすい木
*13 ムナ(ギ) ミナ: 1ミナ = 100デナリ = 1/60タラント
*14 アケラオが王位を受けるためにローマに上ったとき、反対したユダヤ人は50人の使者を送った。(それ以前に、ヘロデ大王が王位を受けるときも、ローマの元老院からの帰国後
反対者たちを処刑した)
*17 エラキストス(ギ) エラクス(短、小)の最上級 smallest、least
*20 ソウダリオン(ギ) ハンカチ、手ぬぐい、ふろしき; 顔を覆う布、 タラントを地中に隠す(マタイ25:25)よりも、最もずさんな隠し方だった
*23 当時は、(ローマによる経済発展がパレスチナにも及び、)銀行に預けるとかなり高額な利息が得られた、 主人が預けなかったもの → そのしもべが(銀行に)預けるべきだった
*29 ベテパゲはオリーブ山の山頂のすぐ東(エルサレムまで1.6km)、ベタニヤは南東方向(エルサレムまで3km)。 ヨハネ12:1では、過越の祭の6日前(金曜日)にベタニヤに到着。 日曜日にエルサレムへ入城、宮きよめ
*38 詩篇118:26、ルカ2:14
*42 ゲー(ギ) indeed、even、 タ(複・中) 〜 プロス エイレーネーン ソウ(ギ) the (things) towards(near、with) peace of you、 (冠詞のみの表現、タ は、ルカ2:49 と同じ 複数・中性。 〜がプラグマタ
とすると= things、businesses、works)、 平和=(神との和解による)平和のこと
*44 21:6、マタイ24:2、マルコ13:2、 エピスコペー(ギ) visitation、訪問、 神の は補足
*45 マルコ11:15−17
*46 イザヤ56:7、 エレ7:11、(直訳) 原文も 洞穴
*48 エックレママイ(ギ) hang from、頼る、聞き入る、離れない、釘付けになる (ルカだけの表現)
第20章
1 ある日、イエスが神殿で人々に教え、福音を宣べ伝えておられると、祭司長たちや律法学者たちが、長老たちと共に近寄ってきて、
2 イエスに言った。「何の権威によってこれらの事をするのですか。そうする権威をあなたに与えたのは誰ですか、私たちに言いなさい。」
3 そこで、イエスは答えて言われた。「わたしも、一言尋ねます。答えなさい。
4 ヨハネのバプテスマは、天からのものか、人からのものか。」
5 彼らは互に議論して*言った。「もし天からだと言えば、では、なぜ彼を信じなかったのか、とイエスは言うだろう。
6 しかし、もし人からだと言えば、すべての人々が、ヨハネを預言者だと信じ込んで*いるから、われわれを石で打つだろう。」
7 それで彼らは、「どこからか、知らない。」と答えた。
8 イエスは彼らに言われた。「わたしも何の権威によってこれらの事をするのか、あなたがたに言いません。」
9 そこでイエスは次の たとえを民衆に向かって語り始められた。「ある人がぶどう園を造って農夫たちに貸し、かなりの長旅に出た。
10 季節になったので、農夫たちのところへ、一人のしもべを送って、ぶどう園の収穫の分け前を受け取ろうとした。ところが、農夫たちは、そのしもべを袋叩きにし、何も持たせないで送り帰した。
11 そこで彼は別の一人のしもべを送った。彼らはそのしもべも袋叩きにし、はずかしめた上、何も持たせないで送り帰した。
12 そこで、さらに三人目の者を送ったが、彼らはこの者も、傷を負わせて追い出した。
13 ぶどう園の主人は言った。『何をしたらよいか。そうだ、私の愛する息子を送ろう。彼なら、おそらく敬ってくれるだろう。』
14 ところが、農夫たちは彼を見ると、互いに議論して*言った。『おい、これはあと取りだぞ*。これを殺してしまおう。そうすれば、相続財産はわれわれのものになる。』
15 彼をぶどう園の外に追い出して、殺した*。そうすると、ぶどう園の主人は、彼らに何をするだろうか。
16 彼は出てきて、この農夫たちを滅ぼし、ぶどう園を他の人々に与えるであろう」。人々はこれを聞いて、「そんなことになるのは嫌です。」と言った。
17 そこで、イエスは彼らを見つめて言われた。「それでは、『家を造る者たちの見捨てた石が、隅のかしら石*になった。』*と書いてあるのは、どういうことでしょう。
18 その石の上に落ちる者は誰でも打ち砕かれ、またそれが誰かの上に落ちるなら、その人は粉々に飛び散ってしまいます。」
19 この時、律法学者たちや祭司長たちはイエスに手をかけて捕まえようとしたが、民衆を恐れた。それは、このたとえが自分たちに対して語られたと気付いたからである。
20 そこで、機会を伺っていた彼らは、義人を装ったまわし者ども*を送って、イエスを総督の支配と権威とに引き渡すため、その言葉じりを捉えようとした。
21 彼らは尋ねて言った。「先生。私たちは、あなたの語られること、教えられることが正しく、また、あなたは人を分け隔てせず、真理によって神の道を教えておられることを知っています。
22* ところで、カイザルに税金を納めることは律法に対し合法ですか*、それとも違いますか。」
23 イエスは彼らの悪巧みを見抜いて言われた。「なぜ、あなたがたは わたしを試みるのですか。*
24 デナリ銀貨を見せなさい。それにあるのは、誰の肖像、誰の銘ですか。」 彼らは答えた。「カイザルのです。」
25 するとイエスは彼らに言われた。「それなら、カイザルのもの*はカイザルに、神のもの*は神に返しなさい。」
26 そこで彼らは、民衆の前でイエスの言葉じりを捉えることができず、その答えに驚嘆して、黙ってしまった。
27* 復活は存在しないと、反対のことを主張する*サドカイ人の、ある者たちが、イエスに近寄ってきて質問した。
28 「先生。モーセは、私たちのためにこう書いています。『もしある人の兄が妻をめとり、子がなくて死んだなら、弟はこの女をめとって、兄のために子をもうけなければならない。』*
29 ところで、ここに七人の兄弟がいました。長男は妻をめとりましたが、子がなくて死に、
30 そして次男、三男と、次々に、その女をめとり、
31 七人とも同様に、子をもうけずに死にました。
32 のちに、その女も死にました。
33 それでは、復活の時には、この女は七人のうち、だれの妻になるのでしょうか。七人とも彼女を妻にしたのですが。」
34 イエスは彼らに言われた。「この世の子らは、めとったり、とついだりしますが、
35 次の世に入るにふさわしい、すなわち、死人からの復活にあずかるのにふさわしいと認められる者たちは、めとったり、とついだりすることはありません。
36 それは、彼らはもはや死ぬことがあり得ず、御使いのような者たち*であり、復活の子としての存在の、神の子供たちだからです。
37 死人たちがよみがえることは、モーセも柴の箇所で、主を、『アブラハムの神、イサクの神、ヤコブの神。』*と呼んで、このことを示しました*。
38 神は死んだ者たちの神ではなく、生きている者たちの神です。それは、すべての人が、神に対して生きているからです。」
39 律法学者のうちのある人々が答えて言った。「先生。すばらしいお言葉です。」
40 もはや彼らは、それ以上何も質問しようとしなかった。
41 イエスは彼らに言われた。「なぜ人々はキリストを、ダビデの子である、と言うのでしょうか。
42* ダビデ自身が詩篇の書*の中で言っています。『主*はわが主*に仰せられた。 わたしの右に座していなさい。
43 あなたの敵をあなたの足台とする時までは。』
44 このように、ダビデはキリストを主と呼んでいます。それなら、どうしてキリストはダビデの子なのでしょうか。」
45 すべての人々が聞いているとき、イエスは弟子たちに言われた。
46 「律法学者たちに気をつけなさい。彼らは長い衣を着て歩きたがり、広場であいさつされることや会堂の上席や晩餐の横になる席を好み、
47 やもめたちの家を食い尽くし、見栄のために長い祈りをします。彼らは非常に厳しいさばきを受けるでしょう。」
*5、14 (直訳) 共に数えて
*6 (直訳) 説得されて、納得して
*14 デウテ hither、(呼びかける感嘆詞)
*15 イエスの十字架も、城壁の外で行われた
*17 マルコ12:10、 詩篇118:22、23
*20 エグカーセトス(ギ) spy、スパイ、間者、 この義人とは、昔のハシディーム、しかし、この時代ではパリサイ人、熱心党員のこと
*22 エクセスティ(ギ) lawful、(律法に)合法 = マタイ22:17、マルコ12:14、 納税(ローマへの人頭税で、一人1デナリ)を認めれば
ローマに協力する体制側のヘロデ党に賛成したことになり、野党であるパリサイ人、熱心党、一般の国民からの支持を失う。認めなければ
国主ヘロデとそれに就く者たちから反逆者とされる。
*23 申命記6:16 によって、 イエスの神性、すなわちイエスが主(ヤハウェ)であることを表す
*25 タ(ギ、冠詞、複数・中性) 冠詞のみの表現、 タ プラグマタ で、the things(bussineses、matters)、もの、事柄、働き、 マタイもマルコも同じ冠詞のみの表現
*27 マタイ22:23−33、 アンティレゴー(ギ) 反対のことを言う
*29 申命記25:5、 復活の時のこの女性の困惑を考えると、復活信仰は不条理である、というのが(復活を否定する)サドカイ人の論旨
*36 イサッゲロス(ギ) like the angels、御使いのような(等しい×)
*37 出エジ3:6、 アブラハムの死去の後の現在も、主はアブラハムの神であり(エゴー、現在、I am)、それゆえ彼はやがて必ず復活する の意
*42 詩篇110:1、 ビブロス(ギ) scroll、巻き物、 主* のどちらも) キュリオス(ギ) Lord、master、主。 詩篇では、最初の主は 主(ヤハウェ) = 「ヤハウェは、メシヤ(キリスト)に仰せられた」
第21章
1 イエスは目を上げて、金持たちが献金箱に捧げものを投げ入れるのを見られ、
2 また、ある貧しいやもめが、レプタ銅貨*二つを入れるのを見て、
3 言われた。「わたしは真理をもって*あなたがたに言います。あの貧しいやもめは、誰よりもたくさん入れました。
4 それは、これらの人たちは皆、有り余る中から献金箱に投げ入れましたが、あの婦人は、その乏しい中から、持っている生活費の全部を投げ入れたからです。」
5 ある人々が、見事な石と捧げものとで神殿が飾られていることを話していたので、イエスは言われた。
6* 「あなたがたが見入っているこれらのものは、その石一つでも崩されず、他の石の上に積まれたまま残ることのない、そのような日々が来ます。」
7 そこで彼らは尋ねた。「先生。では、いつそれらのことが起こり、またそれらが起る時には、どんな前兆があるでしょうか。」
8 イエスは言われた。「あなたがたは、真理からそらされないように*気をつけなさい。それは、多くの者がわたしの名によって*現れ、私はある*とか、時は近づいた、などと言うからです。彼らについて行ってはいけません。
9 戦争と暴動とのことを聞くときにも、恐れてはいけません。それは、これらのことは最初に起こらなければなりませんが、終りの時*はすぐには来ないからです*。」
10 それから彼らに言われた。「民は民に、国は国に敵対して立ち上がるでしょう。
11 また世界のあちこちに、大地震があり、疫病や、ききんが起り、またいろいろな恐ろしいことや、天からの大いなるしるし*があるでしょう。
12 しかし、これらのすべての事が起こる前に、人々はあなたがたに手をかけて迫害し、会堂や獄に引き渡し、わたしの名のために王や総督の前に引き出すでしょう。
13 それは、あなたがたがあかし*をする機会となります。
14 そのとき、どう自己弁護しようかと、事前にあれこれ考えておかないように、心に決めておきなさい。
15 それは、あなたの反対者の誰もが否定したり、反対したりができないような口と知恵とを、わたしが*与えるからです。
16 しかし、あなたがたは両親、兄弟たち、親族たち、友人たちによっても引き渡されるでしょう。また、あなたがたの中には彼らに殺される者もいます。
17 また、わたしの名のゆえにすべての人に憎まれるでしょう。
18 しかし、あなたがたの髪の毛一筋でも失われることはありません。
19 あなたがたは踏みとどまる*ことによって、自分のいのち*を獲得します。
20* そして、エルサレムが軍隊に包囲されるのを見たならば、そのときは、その滅亡が近づいたと知りなさい。
21 そのとき、ユダヤにいる人々は山々の地へ逃げなさい。都にいる者たちは、そこから出て行きなさい。また、いなかにいる者たちは都に入ってはいけません。
22 それは、聖書に書かれているすべての事が成就する、報復の日であるからです。
23 その日々には、悲惨だ。身重の女と乳飲み子をもつ女とは。それは、その地に大きな苦難があって、この民には御怒りが臨み、
24 彼らは剣の刃に倒れ、また捕虜となって諸国へ連れて行かれるからです。そしてエルサレムは、異邦人の期間が満ちるまで、彼らに踏みにじられます。
25* また日と月と星々に、しるしが現れます。そして、地上では、異邦の国々の民は不安に悩まされ、海と大波との荒れ狂う音のため恐れ惑い、
26 人々は世界に起ろうとしている事を予想し、恐怖と不安で気を失います。それは、あらゆる天の力*が揺り動かされるからです。
27 そして、そのとき、人の子が、大いなる力と栄光と共に、雲の中にあって*来るのを、人々は見るでしょう。
28 これらの事が起り始めたなら、体を起こして立ち、頭を上げなさい。それは、あなたがたの贖い(あがない)が近づいたからです。」
29 それからイエスは一つの たとえを話された。「一本のいちじくの木を、またすべての木々をよく見なさい。
30 木の芽が吹き出るのを見て、夏がすでに近くなっていることを自分で知るのです。
31 このようにあなたがたも、これらの事が起こるのを見たなら、神の御国が近くにあることを知りなさい。
32 まことに、あなたがたに言います。これらの事が、すべて起こってしまうまでは、この時代は過ぎ去りません*。
33 この天と地*は過ぎ去ります*。しかし、わたしの言葉は決して過ぎ去ることはありません*。
34 あなたがた自身が、二日酔い*や、泥酔や、世の心遣いのために心が重くなっていないように、また、予期しない時にその日が臨むことのないように、よく注意していなさい。
35* それは、わなのように来ます。 それは、その日が、全地の表に座るすべての人に臨むからです。
36 これらの起ろうとしているすべての事から逃れて、人の子の前に立つにふさわしく*あるように、どのような時でも目を覚まして祈っていなさい。」
37 イエスは昼の間は神殿で教えられ、夜には出て行ってオリーブと呼ばれる山で夜を過ごしておられた。
38 人々は皆、教えを聞こうとして、朝早くから神殿に来て、イエスのもとに集まった。
*2 マルコ12:41−44、 1レプタ = 1/128デナリ
*3 アレーソース(ギ) truly、of a truth、most certainly
*6 § AD70年のエルサレム陥落の時、(当初残す予定だった)神殿が炎上し、内部の金が床石の下まで流れ込んだので、兵士たちはすべての石をひっくり返して金を回収した。壮麗なヘロデ神殿がBC20年から改築を開始して64年に完成した、そのわずか6年後に炎上。
*8 惑わされる とは、根本的な所からの惑わしのこと、 エピ(on、by、at) トー オノマティ モユ on the name of Me、わたしの名によって、 エゴー エイミ(ギ、現在) I AM、私である、私はある
*9 テロス(ギ) end、end time、終わりの時、 すなわち 産みの苦しみの初め(マコ13:8)
*11 セメイア(ギ、複) <セメイオン signs、(複数の)しるし、 マタイ24:29 「これらの苦難に続いて、すぐに、太陽は暗くなり、・・・」
*13 すなわち 福音のあかし
*15 わたしが は強意形(ルカ独自)、主が授けることを強調している
*19 ヒュポモネー(ギ) steadfastness、steadfast waiting for、不動の、堅く立って待つ、 プシュケー soul、life、(ここでは 神が与える)いのち
*20 § 1回目の成就: AD67年の秋、ローマ軍は包囲していたエルサレムから不可解な撤退を行い、熱心党などのエルサレムの反乱軍が追撃に出かけローマ軍を大敗させた。(これがのちに大規模な報復となり、AD70年にティトゥスによってエルサレムが陥落することになる。) 熱心党らによって城外に出ることを禁じられていたキリスト教徒たち(+親ローマ派の人々(サドカイ派、パリサイ派など))は、この時、ヨルダン川を渡って
「山々の地」 = デカポリスの ペラなどに脱出することができた。脱出地ペラはあらかじめ啓示されていた。 § 2回目の成就は、再臨直前の終末の時にかかっている
*25 25節から、終末預言となる、 マタイ24:29、黙示6:12
*26 デュナメイス(複) トーン ウーラノーン(複) powers of the heavens、天の力
*27 エン(ギ) in
*32、33 パレールコマイ(ギ) go past、pass by、過去のものとなる、過ぎ去る、(あるいは 滅びる)
*33 ホ ウーラノス(単) カイ ヘ ゲー(単) the heaven and the earth、天(単数)と地、 § 第1の天 = この宇宙のこと、 黙示6:14 「天(単数)は巻物が巻かれるように消えてなくなり、」
*34 (直訳) ワインの飲み過ぎによるめまいや頭痛 (ルカだけの表現)
*35 ≒ Tテサ5:3
*36 カタクシオーオ(ギ) account worthy、judge worthy、に値する
第22章
1 さて、過越しといわれている種なしパンの祭りが近づいた。
2 祭司長たちや律法学者たちは、どのようにイエスを殺そうかと探っていた。それは、彼らが民衆を恐れていたからである。
3 そのとき、十二弟子の一人で、イスカリオテと呼ばれているユダに、サタンが入った。
4 すなわち、彼は祭司長たちや神殿の守衛長*たちのところへ行って、どのようしてイエスを彼らに引き渡すかについて話し合った。
5 彼らは喜んで、ユダに金銭を与える取決めをした。
6 ユダはそれを承諾した。そして、群衆から離れているときにイエスを引き渡そうと、機会を狙っていた。
7* さて、過越しの小羊をほふる、種なしパンの祭りの日が来たので、
8 イエスはペテロとヨハネとを使いに出して言われた。「行って、過越しの食事をするための準備をしなさい。」
9 彼らは言った。「どこに行って準備するのをお望みですか。」
10 イエスは言われた。「市内にはいったら、水がめを持っている男*に出会います。その人が入る家までついて行って、
11 その家の主人に言いなさい。『弟子たちと一緒に過越しの食事をする客間はどこか、と先生が言っておられます。』
12 すると、その主人は席の整えられた二階の大きな広間を見せるので、そこで準備しなさい。」
13 弟子たちは出て行ってみると、イエスが言われたとおりであったので、過越しの食事の用意をした。
14 時間になったので、イエスは横になって食卓に着かれ、使徒たちも共にそうした。
15 イエスは彼らに言われた。「わたしは苦しみを受ける前に、あなたがたとこの過越しの食事をしようと、切に、切に望んでいました*。
16 それは、あなたがたに言いますが、神の御国で過越し*が成就する時までは、わたしは二度と、その食事をすることがないからです。」
17 また杯をつかんで持ち上げ*、感謝をささげてから、こう言われた。「これを取って*、あなたがたで分けて飲みなさい。
18 それは、あなたがたに言いますが、今から後、神の御国が来るまでは、わたしはぶどうの実から造ったものを、決して飲まないからです。」
19 そして、パンを手に取り*、感謝をささげてからこれを裂き、弟子たちに与えて言われた。「これは、あなたがたのために与えられるわたしの体です。わたしを思い出す*ために、このように行いなさい。」
20 それを食べた後に*、杯も同じ様にして言われた。「この杯は、あなたがたのために流されるわたしの血による、新しい契約です。
21 しかし、見よ。わたしを引き渡す者が、わたしと一緒に食卓に手を置いています*。
22 人の子は定められた通りに、確かに去って行きます。 しかし災いだ。人の子を裏切るその人は。」
23 弟子たちは、誰が自分たちのうちで、そんな事を成そうと目論んでいるのかと、互いに議論し始めた。
24 また、彼らの間で、自分たちの中で誰が最も偉いとみなされるか、という論争が起こった。
25 そこでイエスが言われた。「異邦の王たちはその民を統治し、また、権力をふるっている者たちは守護者*と呼ばれます。
26 しかし、あなたがたは、そうではない。かえって、あなたがたの中で最も偉い人は、最も若い者のように、指導する人は仕える者のようになりなさい。
27 横になって食卓に着く人と給仕する者*では、どちらが偉いですか。食卓に着く人の方です。しかし、わたしはあなたがたの只中で、給仕をする者*として、います*。
28 あなたがたは、わたしの試錬*の中でも、わたしと一緒に常に留まっていてくれた*人たちです。
29 それで、わたしの父が御国をわたしに契約して*くださったように、わたしもあなたがたに契約します*。
30 それは、あなたがたが、わたしの御国の食卓で飲み食いをし、また御座に着いて、イスラエルの十二の部族をさばく契約です。
31 シモン、シモン。見よ、サタンはあなたがたを麦のようにふるいにかけることを願っています。
32 しかし、わたしはあなたの信仰がなくならないように、あなたのために祈り求めました。それで、あなたが立ち返ったときには、あなたの兄弟たちを堅く立たせなさい。*」
33 彼はイエスに言った。「主よ。私は牢にでも、また死に至るまでも、あなたとご一緒に行く用意ができています。」
34 するとイエスは言われた。「ペテロ。わたしはあなたに言います。この日、鶏が鳴くまでに、あなたは三度わたしを知らないと言って、わたしを拒絶します*。」
35 そして彼らに言われた。「わたしが財布も、袋も、くつも持たせずにあなたがたを遣わしたとき、何か足りないものがありましたか。」 彼らは、「いいえ、何もありませんでした。」と答えた。
36 そこで言われた。「しかし今は、財布のある者は、それを持って行きなさい。袋も同様に持って行きなさい。また、剣のない者は、自分の上着を売って、それを買いなさい。*
37 あなたがたに言います。それは、『彼は罪人の一人に数えられた。』*と書いてあることが、わたしに成し遂げられ*なければならないからであり、また、わたしに係わることがら*が終わる時*になったからです。」
38 弟子たちは言った。「主よ、ご覧ください。ここに剣が二振りあります。」 イエスは、「それで充分。」と言われた。
39 イエスは出て、いつものようにオリーブ山に行かれると、弟子たちもついて行った。
40 その場所に着いたとき、彼らに言われた。「試練*に陥らないように祈りなさい。」
41 そしてご自分は、石を投げてとどくほどの所まで離れて行かれ*、ひざまずいて*、祈って言われた。
42 「父よ。もし、あなたのみこころならば、この杯をわたしから取りのけてください。しかし、わたしの願いではなく、あなたのみこころが成るようにしてください。」
43 そのとき、一人の御使い*が天から現れて、イエスを力づけた。
44 イエスは苦しみもがきながら、ますます切に祈られた。そして、その汗が血のしたたりのように地に落ちた。
45 イエスは祈りを終えて立ちあがり、弟子たちのところへ行かれると、彼らが悲しみのあまり眠り込んでいるのをご覧になって、
46 言われた。「なぜ眠っているのですか。試練に陥らないように、起きて祈っていなさい。」
47 イエスがまだそう言い終わらないうちに、見よ、群衆が現れ、十二弟子の一人でユダと言われる者が先頭に立って、イエスに口づけ*しようとして近づいてきた。
48 そこでイエスは言われた。「ユダ。あなたは口づけをもって人の子を引き渡すのか。」
49 イエスの周りにいた人たちは、この成り行きを見て、「主よ。剣で撃ちましょうか。」と言って、
50 そのうちの一人が、祭司長のしもべ*に切りつけ、その右の耳*を切り落した。
51* イエスはこれに対して言われた。「このことだけ、させてほしい。*」 そして、そのしもべの耳*に手を触れていやされた。
52 それから、自分に向かって来る祭司長たち、神殿の守衛長たち、長老たちに対して言われた。「あなたがたは、強盗にでも向かうように、剣や棒を持って出て来たのですか。*
53 毎日あなたがたと一緒に神殿にいた時には、わたしに手出ししなかったのに。しかし、今はあなたがたの時であり、暗やみの力*です。」
54 それから人々はイエスを捕え、引いて行き、大祭司*の邸宅へ連れて来た。ペテロも離れてついて行った。
55 人々は中庭の中央あたりに火をたいて一緒に座っていたので、ペテロもその中に紛れて座っていた。
56 すると、ある女中がペテロを見、そして彼が火の明かりの真向かいに座っていたので、彼をじっと見て、「この人もイエスと一緒にいました。」と言った。
57 ペテロはそれを打ち消して、「女中さん*、私はその人を知らない*。」と言った。
58 少したって*、他の人がペテロを見てはっきりと言った。「あなたもあの仲間の一人だ。」 するとペテロは言った。「あなた*。それは私ではない。」
59 約一時間たってから、また他の者が強く断言して、言った。「確かにこの人もイエスと一緒だった。この人もガリラヤ人なのだから。*」
60 ペテロは言った。「旦那*。あなたが何のことを言っているのか、私は知らない*。」 すると、彼がまだ言い終らないうちに、ただちに鶏が鳴いた。
61 主は振り返ってペテロを見つめられた。そのときペテロは、「鶏が鳴く前に、三度わたしを拒絶します*。」と言われた主の言葉を思い出した。
62 そして外へ出て行って、激しく泣いた。
63 イエスを監視していた人たちは、イエスをからかい、鞭で打ち叩き、
64 目隠しをして、「預言で言い当ててみろ。打ったのは、誰か。」と聞いたりした。
65 その他、さまざまな異なることを言って、イエスを愚弄した。
66 夜が明けると、民の長老議会、祭司長たち、律法学者たちが来て集まり、イエスを最高議会*に引き出して言った。
67 「あなたがキリストなら、そう言いなさい。」 イエスは言われた、「もし、わたしがあなたがたに言っても、決して信じないだろう。
68 また、わたしが尋ねても、決して答えないだろう。
69* しかし、人の子は今から後、神の大能(たいのう)*の右の座に着きます。」*
70 そこで、彼ら全員は言った。「では、あなたは神の子なのか。」 イエスは言われた。「あなたがたの言う通り、わたしである*。
71 すると彼らは言った。「これ以上、まだ証人が必要でしょうか。われわれは、彼の口から直接聞いたのだから。」
*4 神殿の治安に就く ユダヤ教会の高官
*7 金曜日: 過越しの祭り 1日 + (続けて)種なしパンの祭り7日間 = 8日間パン種を用いることを禁止(出エジ12:15)
*10 当時、男が水をくむのは珍しいので、すぐ分かった
*15 (直訳) 熱意をもって、望む(エピスミア desire、を2回繰り返し)
*16 (直訳) それ (単数・中性より、=パスカ、「過越し」) 十字架の贖いの事
*17 デコマイ(ギ) take hold of、take up、 ラムバノー take with the hand
*19 ラムバノー(ギ) take with the hand、 アナムネシス remembering、recollection、回想すること、思い出すこと
*20 デイプネーオ(ギ) sup、少しずつ食べる (ルカ17:8、黙示3:20では、夕食をとる)
*21 cf. ヨハ13:26
*25 ユーエルゲテース(ギ) (直訳) 恩人、慈善家 (セレウコス朝のシリアと、プトレマイオス朝のエジプトで好んで用いられた言葉)
*27 デイアコネーオ(ギ) be a servant、attendant、仕える者、 エゴー (デ) エイミ I (yet) AM
*28 ペイラスモス(ギ) trial、proving、temptation、試験・試練、証明、誘惑、 ディアメノー(ギ) stay permanently、remain permanently、常に留まっている
*29 ディアティセマイ(ギ) make a covenant、契約を結ぶ
*32 イエスの復活後、まずペテロに現れた(Tコリ15:5)
*34、61 アパルネオマイ(ギ) deny、拒絶する、否定する、組織から断ち切る (会堂からの追放をも意味する強い言葉)
*36 (主の臨在がない時は、霊的守りが無いので、物質的に最小限の自衛をしなければならない)
*37 イザヤ53:12、 テレオー(ギ) finish、perform、complete、fulfil、終える、成し遂げる、 タ(冠詞、複数・中性) 〜 事柄、仕事、働き、 テロス end、end time、終わりの時
*40 ペイラスモス(ギ) trial、proving、temptation、試験・試練、証明、誘惑 = 22:28 の 試練 に打ち勝ったのと対照的、 § 教会の試練は霊的に眠ってしまうこと
*41 (直訳) 引き裂かれ、引き離し、 ひざまずく祈りは、キリスト者の祈り方になった cf.
ユダヤ人は立って祈った
*43 アンゲロス(ギ、単・男) messenger、angel、(一人の)御使い (ゲッセマネの最も厳しい戦いで、おそらく天使長のミカエルが力づけた) cf. マタイ4:11 御使いたちが仕えた
*47 フィレオー(ギ) love、kiss、友愛、キスする、 cf. マタイ、マルコでは カタフィレオー(ギ) 何度も口づけする
*50 ヨハネ18:10より、ペテロが大祭司のしもべマルコスの耳を切り落とした (ただし、このマルコスはヨハネ・マルコではないといわれる)、 ウース(ギ、単・中) 耳
*51 § 非常に差し迫ったこの場においても、イエスはあわれみを示された、 エアテ ヘオース トゥートゥー(ギ、単数・中性) allow(permit、let) till of this、このことまで、させてくれ(許せ) (イアマ(単・中) healing、いやし)、 オティオン(ギ、単・中) 外耳
*52 (不必要なのに、物々しく)大勢で集まり、剣と棒を持って捕らえると、いかにも大罪人を捕えたような印象を人々に与える
*53 エクソウシア(ギ) power、power of authority、力、権力
*54 元大祭司アンナスの家(ヨハネ18:13)と、カヤパ邸(マタイ26:57)、 アンナスは引退したが実権を握っていた
*57 ギュナイ(ギ) (直訳) woman、女よ、 ウーク オイダ not know、知らない (13:25、27)
*58、60 ヨハネ18:24より、(1回目と2回目の間に)アンナス邸からカヤパ邸へ移されてから、 アンスローペ(ギ) (直訳) man、 ウーク オイダ not know、知らない
*59 =(ガリラヤの)訛りがある(マタイ26:73)
*66 シューネドゥリオン(ギ) サンヘダリーン(ヘ) Sanhedrin、サンヘドリン、ローマ支配下のユダヤの最高議会(71人で構成され、一人が議長、一人が副議長。議員は、祭司、律法学者、パリサイ人ら)、死刑の権限がないので、総督ピラトに引き渡した
*69 詩篇110:1、 デュナミス(ギ) strength power、ability、力、能力
*70 ホティ エゴー エイミ(ギ) that I AM、(あなたがたの言う通り、)(直訳) わたしはある
第23章
1 彼ら全員は立ち上がって、イエスをピラトのところへ連れて行った。
2 そしてピラトに告訴し始め、こう言った。「私たちは、この人が国民を惑わし、税金をカイザルに納めることを禁じ、また、自分こそ王なるキリストである、と言っていることが判明しました。」
3 ピラトはイエスに尋ねた。「あなたがユダヤ人の王なのですか。」 イエスは、「あなたの言う通りです。」と答えられた。
4 そこでピラトは祭司長たちと群衆とに向かって言った。「私はこの人に、何の罪状*も見出せません。」
5 ところが彼らは、ますます言い張って、「彼は、ガリラヤから始めて、ここに至るまで、ユダヤ全土に渡って教え、民衆を煽動しているのです。」
6 ピラトはこれを聞いて、この人はガリラヤ人かと尋ね、
7 そしてヘロデの支配下の人であることをが分かると、その祭りの間はヘロデもまたエルサレムにいたので、そちらへイエスを送り届けた。
8 ヘロデはイエスを見て非常に喜んだ。それは、以前からイエスについて聞いていたので、会いたいと長い間望んでいて、またイエスによって起こされる神のしるしを見たいと願っていたからである。
9 それで、充分に多くの言葉で質問したが、イエスは何もお答えにならなかった。
10 祭司長たちと律法学者たちとは立って、激しい口調でイエスを訴えた。
11 そしてヘロデはその兵卒らと共に、イエスを卑しめたり、嘲弄したりしたあげく、派手な衣を着せてピラトのもとへ送り返した。
12 ヘロデとピラトの両者は、以前は互いに敵対していたのが、この同じ日に親しい仲になった。
13 ピラトは、祭司長たちと役人たちと民衆とを、呼び集めて、
14 言った。「あなたがたは、この人を民衆を惑わす者として私のところに連れてきたので、あなたがたの面前で調べたが、訴えに値する罪*は、何も認められません。
15 ヘロデもまた認めないで、このようにわれわれの所に送り返してきました。見なさい。この人は、死罪に値することは何も犯していないのです。
16 だから、彼を鞭で打って懲らしめてから、釈放します。」
17 さて、ピラトは祭りのたびに一人の囚人を釈放することになっていた。
18 ところが、彼らはいっせいに叫んで言った。「この者を殺せ。バラバ*を釈放しろ。」
19 このバラバは、都で起った暴動と殺人とのかどで、牢に入れられていた者である。
20 ピラトはイエスを釈放したいと願って、もう一度彼らに呼びかけた。
21 しかし彼らは、大声で叫び、「十字架につけろ、彼を十字架につけろ。」と言い続けた。
22 ピラトは三度目にも彼らに向かって言った。「ではいったい、この人は、どんな悪事を働いたというのか。彼には死に価する罪状は認められなかった。だから、鞭打ってから彼を釈放するつもりだ。」
23 ところが、彼らは詰め寄り、イエスを十字架につけるように大声で要求した。そして、彼らと祭司長たちの声が打ち勝った。
24 ついに、ピラトは彼らの要求通りにすることに決定した。
25 そして、暴動と殺人の罪で牢に入れられていた者の方を、彼らの要求どおり釈放し、イエスの方は彼らに引き渡して、彼らの意向に任せた。
26* 彼らがイエスを引いて行く途中、シモンというクレネ人が郊外から出てきたのを捕まえて、強いて十字架を背負わせ、イエスの後から行かせた。
27 大ぜいの民衆と、そして、胸を叩いて悲しみ、哀悼する女たち*の群れとが、イエスについて行った。
28 イエスは女たちの方に振り返って言われた。「エルサレムの娘たちよ。わたしのために泣いてはいけない。むしろ、あなたがた自身のため、またあなたがたの子供たちのために泣きなさい。
29 見よ。『不妊の女と、子を産まなかった胎と、飲ませなかった乳房とは、幸いだ。』*と言う日が、来ます。
30* そのとき、人々は山々向かって、われわれの上に倒れかかってくれ、と言い、また丘々に向かって、われわれを覆ってくれ、と言います。
31 もし、生木でさえもそうされるなら、枯木には何が起こることでしょう。」
32 さて、イエスと共に十字架刑を受ける*ために、他に二人の犯罪人も引かれていった。
33 どくろと呼ばれている所*に着くと、人々はそこでイエスを十字架につけ、犯罪人たちも、一人は右に、一人は左に、十字架につけた。
34 そのとき、イエスは言われた。「父よ、彼らをお赦しください。彼らは何をしているのか、分からないからです。」* 彼らはイエスの着物をくじ引き*で分け合った。
35 民衆は立って見ていた。指導者たちもあざ笑って言った。「あれは他人を救った。もし神のキリストで、選ばれた者であるなら、自分自身を救え。」*
36 兵士たちもあざけり、イエスに近づき、酸いぶどう酒*を持ってきて、
37 こう言った。「あなたがユダヤ人の王なら、自分を救え。」*
38 イエスの上には、「これはユダヤ人の王」*と書いた札が掲げられていた。
39 十字架にかけられた犯罪人の一人が、「もしあなたがキリストであるなら、自分と、われわれを救え。」と、イエスに悪口を言った。
40 しかし、もう一人は、彼を制して言った。「おまえは神を恐れないのか。おまえも同じ刑罰を受けているではないか。
41* われわれは、自分のした事の報いを受けているのだから当然だ。しかし、この方は何も悪いことをしなかったのだ。」
42* そしてイエスに言った。「主よ*。あなたの御国とともに*来られる*時には、私を思い出してください*。」
43* イエスは言われた。「まことに、あなたに言います。今日、わたしと共に、あなたはパラダイス*にいます。」*
44 時はすでに昼の十二時*ごろであったが、太陽は光を失い、全地は暗くなって、三時*まで続いた。
45 そして太陽は暗くなっており、聖所の隔ての幕が左右の真中から裂けた。
46 そのとき、イエスは大声で叫んで言われた。「父よ、わたしの霊を御手にゆだねます。」*。こう言われて息を引きとられた。
47 百卒長は起こったこれらのことを見て、神をほめたたえ、「本当に、この人は義人であった。」*と言った。
48 この光景を見に集まってきた群衆も、これらの出来事を見て、みな胸を打ちながら帰って行った。
49 イエスを知人らや、ガリラヤからついて来た女たちも、皆、遠い所に立って、これらのことを見ていた。
50 ここに、ヨセフという議員*がいたが、有能で公正な人だった。
51 彼は議会の議決や行動には賛成票を入れなかった。彼はユダヤの町アリマタヤ*の出身で、神の御国を待ち望んでいた。
52 この人は、ピラトのところへ行って、イエスの体の引取り人になることを願い出て、
53 それを取り降ろして亜麻布に包み、まだ誰も葬ったことのない、岩を掘って造られた墓に安置した。
54 この日は準備の日*であって、安息日が始まりかけて*いた。
55 イエスと一緒にガリラヤから出て来た女たちは、ヨセフの後について来て、その墓を見、またイエスの体がどのように納められたかを見届けた。
56 そして帰ってから、香料と香油とを用意した。それから戒律に従って安息日を静かに過ごした。
*4、14、22 アイティオス(ギ) author of a cause、(crime、offence)、理由、罪状(罪とする具体的な事実)、罪に定めるための正当な理由、 23:4、14、22、使徒19:40のみ
*17、18 マルコ15:7、 バル・アバス(アラム語)は 父の子
の意。 ピラトは気を利かせて、釈放するのは「人の子」か、「父の子」か、と群衆に問うた。 当時、ユダヤ人たちによってローマ皇帝に直訴されると、ピラトの地位も危ないという思惑があり、強く言えなかった
*26 マルコ15:21、 アレキサンデルとルポスとの父シモンというクレネ人。 イエスがあまりにも弱っておられ、十字架の縦木を背負って、倒れられたため
*27 おそらく善意からしたのであるが、泣き女は葬儀の慣習でもある。 (ガリラヤからついて来た、女性の弟子たちではない)
*29 マタイ24:19、ルカ21:23
*30 ホセア10:8、黙示6:16 御怒りの大いなる日。 ここでは、AD70年のエルサレム陥落の事。(実際、この時、妊婦は八つ裂きにされ、胎児も刺し殺された)
*32 アナイレオ(ギ) lift up (from the ground)、take away (直訳) (地上から)上げる 使徒10:39;、 kill、殺す、使徒22:20など
*33 エルサレム城外にあった。 (北側の城壁外のゴルドンのカルバリがそれといわれる)
*34 十字架上の1番目の言葉、 くじ: 名前を書いたくじ(木片や小石など)を壺に入れて放って、最初に落ちたくじの者が当たり
*35、37 今度はサタンは慌てて、イエスを十字架から降ろそうと誘惑している
*36 酸いぶどう酒: 酸いぶどう酒、または酢を、水で薄めた兵士らの飲料
*38 ヨハネ19:19より、「ユダヤ人の王、ナザレ人イエス」を、ヘブル語、ラテン語(略号で、INRI
(IESVS NAZARENVS REX IVDAEORVM))、ギリシャ語で書いた。これはユダヤ人に対するピラトの腹いせだったが、奇しくも預言的事実を書いたことになる
*41、42 罪の悔い改めと、(十字架は彼が付けられていたので、)この状況で、御子イエスの復活、再臨を信じた、 キュリエ(ギ) Lord、 エルセース(アオ過去2) <エルコマイ come、(その時)来る、 エン テ バシレイア ソウ with(in、by) the kingdom of You、あなたの御国と共に(再臨される) (イエスが御国の中に入る、という表現は存在しない cf.19:15、9:26、27) ミムネスコー remind、思い起させる
*43 イエスが午後3時頃に死なれ、新約時代になった。 その罪人は、すねを折られ死期が早まったので、その日の夜12時までに死亡し、彼の霊は先にイエスが行っておられたパラダイスに行った。(新約時代の救いの第1号) パラダイス: 広義のよみ(シェオル(ヘ))のうちの、天の御国に直行するための一時滞留所(=アブラハムのふところ)。ここで御子イエスの霊は、ノアの洪水以前や旧約時代の義人たちに救いを宣言され、また淵の向こうのハデスにいる不信者にはさばきを宣言された(Tペテ3:20)、 十字架上の2番目の言葉
*44 (直訳) 第6時、 (直訳) 第9時
*46 ここで再び、「父」と呼んでいる (贖いをなし終え、御父との関係が回復した) (直訳) 「わたしの霊を、あなたの両手の中に差し出します。」、 十字架上の7番目の言葉、 マタイ27:50、マルコ15:37では「大声」のみ。舌が乾いて明瞭な発音ではなく、また彼らは遠く離れていた。 cf. ヨハネ19:30の、「完了した」は比較的小さい声だった。ヨハネはマリヤを連れて一度十字架から離れている。 ルカはもちろんパウロも十字架の下にはいなかったが、パウロが後に聞いたことをルカが書きしるした、ということになる
*47 はからずも、この百卒長はイエスの本質を預言した
*50、51 マルコ15:43、 サンヘドリンの有力な議員
*54 準備の日=金曜日(金曜の日没から安息日)、 (直訳)
明けようとしていた(=夜明け)
第24章
1 週の初めの日*、夜明け前に、彼女たちは用意しておいた香料を持って、他の人たちと共に墓に行った。
2 ところが、石が墓からころがしてあるので、
3 中に入って見ると、主イエスの体が見当らなかった。
4 そのため途方に暮れていると、見よ、光り輝く衣を着た二人の者が、彼女らの横に立っていた。
5 女たちは非常に恐れて、顔を地に伏せていると、彼らは言った。「あなたがたは、なぜ生きた方を死人の中で捜すのですか。
6 その方は、ここにはおられません。よみがえられたのです。 まだガリラヤにおられたとき、あなたがたに言われたことを思い出しなさい。
7 すなわち、人の子は罪人らの手に渡され、十字架につけられ、そして三日目によみがえらなければならない、と言われたではありませんか。」
8 そこで女たちはそのイエスの言葉を思い出し、
9 墓から帰って、これらすべてのことを、十一弟子とそれ以外の皆に報告した。
10 この女たちとは、マグダラのマリヤ、ヨハンナ、およびヤコブの母マリヤであった。彼女たちと一緒にいた他の女たちも、このことを使徒たちに話した。
11 ところが、使徒たちには、それが精神錯乱*のように思われて、それを信じなかった。
12 ペテロは立ち上がって墓へ走って行き、前かがみになって中を覗き込むと、亜麻布だけがそこにあったので、そのことを不思議に思いながら自分の家に帰った。
13 そして、見よ、弟子たちのうちの二人が、この同じ日に、エルサレムから六十スタディオン*ほど離れたエマオという村へ行きながら、
14 このすべての出来事について互に語り合っていた。
15 彼らが語り合い、論じ合っていると、イエスご自身が近づいて来て、彼らと一緒に歩いて行かれた。
16 しかし、彼らの目がさえぎられて、イエスを認めることができなかった。
17 イエスは彼らに言われた。「あなたがたが歩きながら、互に語り合っているこれらの話は、何のことですか。暗い表情をして。」
18 その一人のクレオパという者が、答えて言った。「あなたはエルサレムに一人で滞在していたのですか。それで、あなたはこの都で、つい先日起ったことを知らないのですか。」
19 「それは、どんなことですか。」と言われると、彼らは言った。「ナザレのイエスのことです。彼は、神の御前に、またすべての民衆との前に、わざにも言葉にも力ある預言者でしたが、
20 祭司長たちや指導者たちが、死刑に定め、十字架につけるために、引き渡したのです。
21 私たちは、彼がイスラエルを救う方であろうと期待を寄せておりました。その上でこれらの事が起こり、今日が三日目なのです。
22 ところが、私たちの仲間の数人の女性たちも、私たちを驚かせました。それは、彼女らが朝早く墓に行くと、
23 イエスの体が見当らないので、帰って来て、そのとき御使いたちの幻を見て、『イエスは生きておられる。』と告げたと言うのです。
24 それで、私たちの仲間が数人、墓に行って見ますと、彼女たちが言ったとおりで、イエスは見当りませんでした。」
25 そこでイエスは言われた。「ああ、理解できない*人たち。心の動きが遅い*ため、預言者たちが語ったすべての事を信じられない人たちよ。
26 キリストは必ず、これらの苦難を受けて、その栄光に入るはずではなかったのですか。」
27* そしてイエスは、モーセやすべての預言者から始めて、聖書全体にわたり、ご自身について書いてある事がらを、説き明かされた。
28 それから、彼らは行こうとしていた村に近づいたが、イエスはさらに先へ進んで行かれる様子であった。
29 彼らはイエスを無理に引き止めて言った。「私たちと一緒にお泊まり下さい。そろそろ夕方になって、日も暮れてきましたので。」 そこでイエスは、彼らと共に泊まるために、家に入られた。
30 イエスが一緒に横になって食卓につかれたとき、パンを取り、祝福して裂き、彼らに渡しておられるうちに、
31 彼らの目が開けて、それがイエスであることが分かった。すると、み姿が見えなくなった。
32 彼らは互に言った。「来る道中でお話しになったとき、また聖書を解き明かして*くださったとき、私たちの心は、私たちのうちで燃えていなかっただろうか。」
33 そして、その時刻のうちに立ち上がって、エルサレムに帰ると、十一弟子とその仲間が集まっていて、
34 「主は、本当にによみがえって、シモンに現れてくださった。」*と言っていた。
35 そこで二人の者は、道中であったことや、パンを裂かれる様子でイエスだと分かったことなどを話した。
36 こう話していると、イエスご自身が彼らのただ中に立たれた。そして、平安があるように*、と言われた。
37 彼らは非常に怖がり*、恐れに満たされ*、霊を見ているのだと思った。
38 そこでイエスは言われた。「なぜ動揺しているのですか。どうして心に疑いを起すのですか。
39 わたしの手や足を見なさい。まさしく、わたし本人です*。手で触れてみなさい。霊には肉や骨はありませんが、あなたがたが見るように、わたしにはあります。」
40 こう言われて、手と足とを示された。
41 彼らは喜びのあまり、まだ信じられないで、不思議に思っていると、イエスが、「ここに何か食べる物がありますか。」と言われた。
42 彼らが一つの焼いた魚の一切れと、ハチの巣の一辺を手渡すと、
43 イエスはそれを取って、皆の前で召しあがられた。
44 それから彼らに言われた。「わたしが以前あなたがたと共にいた時に、あなたがたに話しておいた言葉は、こうでした。すなわち、わたしについてモーセの律法と預言書と詩篇とに書いてあることは、すべて成就しなければならない。」
45 そこでイエスは、聖書を悟らせるために彼らの心を開いて、
46 言われた。「このように書いてあります。 キリストは苦しみを受けなければならず、三日目に死人たちの中からよみがえり、
47 そして、彼の名による悔い改めと、罪の赦しが、エルサレムから始まって、あらゆる国々の民に宣べ伝えられる。
48 あなたがたは、これらの事がら*の証人です。
49 そして、見よ。わたしは、わたしの父があなたがたに約束されたもの*を、あなたがたに送っていただきます*。だから、いと高き所から力*を着せられる*までは、エルサレムの都に腰を据えていなさい*。」
50* それから、イエスは彼らをベタニヤ*の近くまで連れて行き、両手を上げて彼らを祝福された*。
51 イエスは、祝福しておられる間に、彼らを離れて行かれ、そして、天に引き上げられた。
52 彼らはイエスを礼拝し*、大いなる喜びとともにエルサレムに戻り、
53 絶えず神殿にいて、神を賛美し*、また、祈りをささげていた*。アーメン。
*1 週の初め =日曜日
*11 (直訳) 精神錯乱のうわごと (ルカのこの箇所のみ)
*13 60スタディオン = 約11キロメートル(1スタディオン≒180m)
*25 アノエトス(ギ) not understood、unintelligible、unwise、理解できない、賢くない(=ローマ1:14、ガラテヤ3:1) cf.
モーレ ばか者、信仰を失った者、神に逆らう者(マタイ5:22)、 ブラドュース slow、dull、(直訳) 遅い (ルカのこの箇所のみ)
*27 § 創世記3:15 「女の子孫」、15:5等 「天の星の数」、49:10 「王権はユダを離れず」、 民数記21:9(ヨハネ3:14) 「青銅の蛇」、 申命記18:15(使徒3:22) 「預言者」、 Uサム7:12 「とこしえの王座」、 詩篇22:1 「わが神、どうしてお見捨てになったのですか」、 イザヤ7:14 「インマヌエル」、9:6 「不思議な助言者」、11:1 「エッサイの幹から枝」、 53:5 「苦難のしもべ」、 ダニエル7:13 「人の子」、 9:26 「油注がれた者は断たれ」、 ミカ5:2(マタイ2:6) 「ベツレヘム」、 ゼカリヤ9:9(マタイ21:5) 「柔和でろばに乗られる」
*32 ディアノイゴ(ギ) open、(直訳) (心を、目や耳を(ルカ24:31)、胎を(ルカ2:23)) 開く
*34 まずケパに現れ、(Tコリント15:5)
*36 ヨハネ20:19 (夕方に11キロの道のりを二人が戻って来た同じ日曜日の夜に、)
エイレーネ(ギ、平和・平安) ヒューミン(to you)、 シャローム ラ−ケム(ヘ) あなたがたに平安あれ
*37 プトエオー(ギ) be terrified、(幽霊などに)ぞっとする、怖がらせる、恐怖に陥る (ルカのみ 12:4、21:9)、 エムフォボス thrown into fear、恐れに投げ入れられる (ルカ24:5、使徒10:4など)
*39 アウトス エゴー エイミ(ギ) I am myself、the same I am
*48 トウトーン(ギ、冠詞、複数・中性) these〜、(冠詞のみ)、 〜 は things、matter、businesses
*49 エパッゲリア(ギ、単数) promise、約束のもの(単数)、 ヨハネ14:16、17より、= the Holy Spirit(単数)、聖霊、 アポステッロ(ギ) order (one) to go to an appointed、send、送ってもらう、 デュナミン(単数) エクス ヒュプソウス power out of high、高き所からの力(単数)、 エンデュオ sink into (clothing)、put on、2つが1つになる → (めり込むほどしっかりと)身に着ける、しみ込む、着る、 カシゾー make to sit down、(直訳) 座っていなさい
*50 ベタニヤ: ルカ19:29、 § ベタニヤはオリーブ山頂から少し離れているが、これはイエスの昇天(使徒1:9)と同じ場所・出来事ととる。 その間は40日(使徒1:3)、 祝祷は、すべての最後にふさわしい
*52 プロスクネオー(ギ) kiss the hand、kneeling、ひれ伏して拝む、ひざまづいて礼拝する (§ ひざまづくことは、キリスト者の祈り、礼拝の姿勢となった cf.ユダヤ人は立って祈る)
*53 アイネーオー(ギ) praise、 ユーロゲオー praise、invoke blessings、consecrate a thing with solemn prayers、祈りをささげる