使徒の働き



  第1章


 1 私は先に第一巻を著わしました。おお、テオピロ。それは、イエスが行ないと、教えとの両方を始められてからの、すべてのことについてです。
 2 そして、イエスが天に引き上げられた日までの間、お選びになった使徒たちに、聖霊によって命じられたことについて、書き記しました。


 3 イエスは苦難を受けられた後、自分が生きていることを数々の確かな証拠をもって示され、四十日に渡って彼らに現われて、神の御国のことについて語られた。
 4 そして共に食事をしているとき、彼らに命じられた。「エルサレムから離れないで、わたしから聞いていた父の約束を待っていなさい。
 5 すなわち、ヨハネはまさに水でバプテスマを授けましたが、あなたがたはもう間もなく、聖霊によってバプテスマを授けられるでしょう。」
 6 そして、弟子たちが一緒に集まったとき、イエスに尋ねて言った。「主よ。イスラエルの王国を以前のように復興されるのは、今この時なのですか。
 7 彼らに言われた。「時が長いか短いか、あるいは、まさにその時であるか、ということは、父がご自分の権威によって定めておられることで、あなたがたは知らなくても良いことです。
 8 しかし、聖霊があなたがたに来られる時、あなたがたは力を受け取ります。そして、エルサレム、ユダヤとサマリヤの全土、さらに地の果てまで、わたしの証人たちとなります。」
 9 こう言い終ると、イエスは彼らの見ている前で天に引き上げられ、雲が彼を迎え入れ、その姿が見えなくなった。

10 イエスが上って行かれるとき、彼らが天をじっと見つめていると、見よ、白い衣を着た二人の人が、彼らのそばに立っていて、
11 言った。「ガリラヤの人たち。なぜ天を見つめて立っているのですか。あなたがたのところから天に引き上げられたこのイエスは、まさに、あなたがたが彼が天に行かれるのを見たのと同じ有様で、またおいでになります。」

12 それから彼らは、オリーブという山を下ってエルサレムに帰った。この山はエルサレムに近く、安息日に歩くことが許されている距離のところにある。
13 彼らは、都に行って、彼らの泊まっている屋上の間に上がった。その人たちは、ペテロ、ヤコブヨハネ、アンデレ、ピリポとトマス、バルトロマイとマタイ、アルパヨの子ヤコブと熱心党のシモンとヤコブの子ユダであった。
14 彼らは、婦人たち、特にイエスの母マリヤ、およびイエスの兄弟たちと共に、皆で心を合わせて、祈りに専念していた。

15 そのころ、百二十名ほどの、多くの人々が、同じ場所に一緒に集まっていたが、ペテロは彼らの真中に立って、こう言った。
16 「兄弟たちよ。イエスを逮捕する者たちの手びきとなったユダについては、聖霊がダビデの口をとおして預言した、この聖書の言葉は、成就しなければなりませんでした。
17 ユダは私たちの仲間に加えられていて、この務めを 割り当てられた者でした。
18 ・・・ 彼は不正な報酬で、ある土地を手に入れたが、そこへ頭から下に落ちて、体の真中から破れ裂け、はらわたが皆流れ出てしまった。
19 そして、この事はエルサレムの全住民に知れ渡り、それゆえ、この土地が彼らの国語でアケルダマと呼ばれるようになった。「血の地所」という意味である。・・・
20 それは、詩篇に、『彼の住む所は荒れ果てよ、そこに住む者はいなくなれ。』と書いてあり、また、『その職は、他の者に取らせよ。』とあるからです。
21 ですから、主イエスが私たちと共同生活を送られていた期間中、
22 すなわち、ヨハネのバプテスマの時から、私たちのところから天に引き上げられた日まで、いつも私たちと行動を共にした人たちのうちから、誰か一人が私たちに加わって、主の復活の証人にならなければなりません。」
23 そこで一同は、バルサバと呼ばれ、別名をユストというヨセフと、マッテヤとの二人を立て、
24 祈って言った。「主よ。すべての人の心をご存じである方。この二人のうちから一人を選んで、どうぞお示しください。
25 ユダがこの使徒の職務から落ちて、自分の行くべきところへ行ったので、その職務を割り当てられるために。」
26 それから、二人のためにくじを引いたところ、マッテヤに当ったので、彼が十一人の使徒たちの列に数えられた


   *  この書の名称: プラクセイス・アポストロン(ギ)は、「使徒たちの活動」 の意、 パウロ、その他の弟子たちの多くの情報をもとに、元医者のルカが、ルカによる福音書の続編として書いた。 医者ルカ独自の言葉使いが随所に見られる。  § エルサレムから散らされた12使徒たちや、アンテオケのパウロ、バルナバらによる福音宣教は、小アジヤ、ヨーロッパの領域であるマケドニアを経て、最終的にはローマにまで至った。 これは、イザヤ61:19 の成就(タルシシュ: トルコ東岸、 弓を引く者プルとルデ: トルコ北部、 トバル: トルコ北西部、 ヤワン: マケドニヤ(イオニヤ)、また遠くに島々)。 また、その原動力となったペンテコステの大いなる聖霊の注ぎかけ(2:1−4)は、「先の(初めの)雨」(申命記11:13、14、ヨエル2:23)の成就
   *1  セオフィレ(ギ、呼格、単・男) Theophilus、テオピロ、 § ルカが敬称を付けないで呼んでいるので、先のルカの福音書を読んで、救われ、医者ルカ(当時、医者は奴隷の身分)を解放して自由人にした、といわれる
   *7  クロノウス(ギ、複・男) time either long or short、  カイロウス(複・男) due measure、the right time、その時、節目・機会の時
   *8  デュナミン(ギ、対、単数・女) <デュナミス power for performing miracles、しるしと不思議の能力
   *12  安息日が許す道のり: 律法にはない、口伝(言い伝え)にはある許された距離で、2000キュビト =約900m (民数35:5が根拠とされる)
   *13  すなわち、家の屋上(2階の広間ではない)、 会話、祈り、伝道の格好の場所だった、  § 1:13は、聖書において、11使徒たちの順番を表す最終的な記述になっている(cf. マコ3:16、マタ10:2、ルカ6:14)、  バルトロマイ: ナタナエル、  アルパヨの子ヤコブ: 小ヤコブ、  ヤコブの子ユダ: タダイ、イスカリオテでないユダ
   *15  エン タイス ヘーメラース タフテース(ギ) in the days these、そのころ (ルカ文書で場面を変える時よく使われる言葉)、  (直訳) 多くの名前の人々、  初代教会を構成するメンバー: 70人(ルカ10:1)も含む(500人、Tコリ15:6 ではない)
   *17  (直訳) くじで当たっていた  → :26 くじを引くことへ (くじ引きは、旧約時代からの伝統的な方法、箴言16:33)
   *18、19  ユダが受け取った引き渡しの代金の銀30枚は神殿に返したが、いつも金入れから抜いていた不正の金で土地を購入していたらしい。首を吊った時(マタ27:3−5)、縄が切れて落下した、といわれている
   *19  マタ27:7より、陶器師の畑で、外国人の墓地になった
   *20  詩篇69:25、 109:8
   *23  バルサバス(ギ) 安息日(サバス)の子 の意、ユストは異邦人名、  マッテヤ: 神の賜物 の意、  § マッテヤは、主に1時間祈られていないので、12使徒ではないという説がある。ただし、パウロは「異邦人使徒」なので、イスラエル12部族を牧する使徒たちではないかもしれない
   *26  シュンカタプセフィゾー(ギ)、(ここだけの言葉) (直訳) 壺に(ユダに)反対の票を投じる



  第2章


 1 五旬節の日が満ちて、皆の者が一緒に集まっていると、
 2 突然、天から激しく風が吹いて来るような音が起こって、一同が座っていた家全体に響き渡った。
 3 また、まるで炎のような、分れた舌が見える形で現われただけでなく、また彼らの一人一人の上に留まった。
 4 すると、一同は一つの聖霊に満たされ、御霊が語らせるままに、いろいろな異なる国々の言葉で語り出した。

 5 さて、エルサレムには、天の下のあらゆる国々から、宗教に熱心なユダヤ人たちが来て住んでいたが、
 6 この物音に大ぜいの群衆が集まって来たが、使徒たちが、彼らのそれぞれ国の言葉で話しているのを、すべての者が聞いて、困惑して心が乱された。
 7 そして驚いて、また不思議に思って、互いに言った。「見なさい。話しているこの人たちは、皆ガリラヤ人ではありませんか。
 8 それなのに、私たちがそれぞれ、生れた国の言葉を彼らから聞かされるとは、一体どうなっているのでしょう。
 9 私たちの中には、パルテヤ人、メディヤ人、エラム人もいるし、メソポタミヤ、ユダヤ、カパドキヤ、ポントとアジヤ、
10 フルギヤとパンフリヤ、エジプトとクレネに近いリビヤ地方などに住む者もいて、またローマ人の旅行者、ユダヤ人と改宗者
11 クレテ人とアラビヤ人もいる。 私たちは、彼らが私たちのそれぞれの言葉で、神の大いなる事がらを語っているのを聞くとは、どうしたことでしょう。」
12 皆の者は驚いて、また不思議に思って、互いに言った。「これは、一体何をするつもりなのでしょう。」
13 しかし、あざ笑って、「彼らは若い甘いぶどう酒で酔っているのだ。」と言う者たちもいた。

14 そこで、ペテロが十一人の者と共に立ち上がり、声を張り上げて人々に公然と言った。「ユダヤの人たち、ならびにエルサレムに住むすべての人々、どうか、この事を知っていただきたいのです。私の語る言葉に耳を傾けてください。
15 今は朝の九時なので、この人たちは、あなたがたが思っているように、酒に酔っているのではありません。
16 そうではなく、これは預言者ヨエルを通して語られていたことなのです。
17 それは、『神がこう言われる。終わりの日には、わたしの霊をすべての人に注ぐ。すると、あなたがたの息子たち、娘たちは預言をし、若者たちは幻を見、老人たちは夢を見る。
18 その日には、わたしの男女のしもべたちにも、わたしの霊を注ごう。そして彼らも預言をする。
19 また、上には、天に前兆*を示し、下には、地にしるしを、すなわち、血と火と立ち上る煙とを、示そう。
20 主の大いなる輝かしい日が来る前に、太陽はやみに、月は血に変わる。
21 しかし、主の名を呼ぶ者は、皆、救われる。』

22 人々よ。イスラエルの人たちよ。 今、私の語ることを聞いてください。ナザレ人イエスは、神が彼を通して、あなたがたのただ中で、数々の力あるわざと、奇跡と、しるしとを行なわれ、このことにより、彼が神から遣わされた方でおられることを、あなたがたにはっきりと示された、まさにその方です。それは、あなたがたがよく知っているとおりです。
23 そして、神が決断された目的と、神の予知とによって、このイエスが引き渡されたのですが、あなたがたは、彼を律法の無い人々の手によって、十字架につけて殺したのです。
24 しかし、神は、このイエスを死の苦しみから解き放って、よみがえらせました。この方が死に捕えられていることなど、あり得ないからです。
25 ダビデはイエスについてこう言っています。 『私はすべての時に、私の目の前に主を見ていた。主は、私が揺り動かされないように、私の右にいて下さるからである。
26 それゆえ、私の心は喜び、私の舌は喜び踊った。私の肉体もまた、希望宿営を張る
27 あなたは、私のたましいをハデスに捨てて置くことをせず、あなたの聖者が朽ち果てるのを見るようにハデスに渡されないからです。
28 あなたは、永遠のいのちの道を私に示し、御顔の前にあって、私を喜びの祝宴で満たして下さいます。』

29 人々よ。兄弟たちよ。 族長ダビデについては、私に大胆に言わせてください。彼は死んで葬られ、その墓が今日に至るまで、私たちの間にあります。
30 彼は預言者であり、『彼の腰から肉に従って出る子孫から、キリストを起こし、彼の王座につかせよう。』と、神が堅く彼に誓われたことを知っていたので、
31 キリストの復活について予見して、『彼のたましいはハデスに捨てて置かれず、またその肉体が朽ち果てることもない。』と語ったのです。
32 このイエスを、神はよみがえらせました。そして、私たちは皆その証人です。
33 それで、イエスは神の右に上げられ、父から約束の聖霊を受け取り、それを私たちに注がれたのです。このことは、あなたがたが今、見たり、聞いたりしている通りです。
34 ダビデが天に上ったのではありません。彼自身こう言っています。『はわが主に仰せになった。
35 あなたの敵をあなたの足台にするまでは、わたしの右の座に着いていなさい。』
36 ですから、イスラエルの全家は、この事をよく知っておきなさい。あなたがたが十字架につけたこのイエスを、神は、主、またキリストとして、お立てになったのです。」

37 人々はこれを聞いて、心を刺され、ペテロや他の使徒たちに、「人々よ。兄弟たちよ。私たちは、どうしたら良いのでしょう。」と言った。
38 すると、ペテロは宣べ伝えた。「悔い改めなさい。そして、あなたがた一人一人の罪の赦しのために、イエス・キリストの名によってバプテスマを受けなさい。そうすれば、あなたがたは聖霊の賜物を受けるでしょう。
39 それは、この約束は、私たちの神である主によって召されている者、すなわち、あなたがたと、あなたがたの子供たちと、すべての遠くの者たちとに、与えられているからです。」
40 ペテロは、他にも多くの言葉であかしをして、人々に、「この曲った時代から救われなさい。」と言って勧めた。
41 そこで、彼の勧めの言葉を受け入れた者たちは、バプテスマを受けた。その日、約三千人のたましいが加えられた。
42 そして人々は、使徒たちの教えをしっかりと守り行ない、信徒の良き交わりをなし、共にパンを裂き、祈りをしていた。
43 そして、それぞれのたましいに恐れの念が起こり、使徒たちによって、多くの奇跡としるしとが現われ続けた
44 すべての信者たちは同じ所にいて、すべての物を共有し、
45 資産や持ち物を売っては、それぞれの必要に応じて、皆の者に分配し続けていた。
46 そして毎日、心を一つにして神殿に集まり、家ではパンを裂き、非常な喜びと、純真な心で食事を共にし、
47 神を賛美し、すべての人に好意を持たれていた。そして主は、日ごとに救われる者たちを、同じ所の集会加え続けられた


   *1  五旬節: 過越しから50日目(5月半ば過ぎ)、 = ペンテコステ = 「七週の祭り」(出エジ34:22、申命16:10) = 「初穂の日」(民数28:26)
   *4  一つの は補足、 プニューマ ハギオス(ギ) Holy Spirit、聖霊(単数)、  ト プニューマ the Spirit、御霊(単数)
   *5  § 異邦に住むユダヤ人は、パレスチナのユダヤ人の数倍いた(皇帝アウグストの時代、帝国内のユダヤ人は450万人(エジプトとシリヤ各100万)、帝国内全人口の7%がユダヤ人)、兵役・皇帝礼拝の義務はない、多くが国の都市の市民権と、ローマ市民権の両方を持つ (パウロも生まれながらローマ市民権を持っていた)、  ユーラベース(ギ) pious、religious、信心深い
   *9、10、11  ユダヤ東方: パルティア、メディア、エラム、メソポタミア、  広義のユダヤ(エジプト国境からユーフラテスまで(創15:18)): ユダヤ、  小アジア: カパドキア、ポント、アジヤ、フルギヤ、パンフリヤ、  エジプト: エジプト、リビヤ、  改宗者: 異邦人の改宗者でユダヤ人とみなされた、  クレテ人: ギリシャ近くの島
   *11  メガレイア(ギ、形容詞、複数・中性) great〜、 大いなる(things、事がら)
   *14  レーマタ(ギ、複・中) 語りかけ、声で語る言葉、説教、発言
   *15  (直訳) 第3時
   *17、18、19、20、21  ヨエル2:28−32
   *19  テラス(ギ) portent、miracre、前兆、奇跡、  ヨエ2:30 では、煙の柱
   *24  オディン(ギ) pain of childbirth、(直訳) 陣痛
   *25、26、27、28  詩篇16:8−11、「あなたの御前には喜びが満ち溢れ、」、  プロオーローメーン(ギ、未完了過去、1・単) I saw before、(いつも)前に見ていた
   *26  ユーフライーノ(ギ) gladden、make joyful (ルカ15:23、24、29、32、 祝宴 の意を含む)  アガッリアオ exult、rejoice exceedingly、  エルピス hope、expectation of good、希望 (Tコリ13:13 等、多数)  カタスケノオー pitch one's tent、dwell
   *27  ドーセイス(ギ、未来、2・単) You will give、 ハデス は補足
   *28  ユーフロスュネー(ギ) 
good cheer、ごちそう、joy、gladness
   *30  Uサム7:12、13、詩篇89:3、4、132:11、  カルポス(ギ、単数・男) fruit、実、子孫(単数)、  起こし: あるいは よみがえらせ
   *34、35  詩篇110:1、  : ホ キュリオス(ギ)、 ヤハウェ(ヘ)、  主: ホ キュリオス(ギ)、 アードーン(ヘ)、主、主人
   *39  § この時点で、ペテロは、パレスチナのユダヤ人と、異邦に離散しているユダヤ人の救いについて、宣べ伝えている → 異邦人への宣教(使徒10:9−)
   *43  エゲネト(ギ、アオ過去2(瞬時過去)、3・単) <ギノマイ become、happen、appear、(1回だけ)起こり、  エギネト(未完了過去、3・単) <ギノマイ、 起こり続けた、現われ続けた
   *47  エクレシア(ギ、単・女) 公然の市民の集まり、クリスチャンの礼拝等の場、教会、キリストの御体全体(広義の教会)



  第3章


 1 さて、ペテロとヨハネが、午後三時の祈りのときに神殿に上って行こうとしていると、
 2 母の胎内からの足の不自由な男が、背負われて来た。この男は、神殿に入って来る人々に施しを乞うため、毎日「美しの門」と呼ばれる神殿の門のところに置かれていた者である。
 3 そして彼は、ペテロとヨハネとが、神殿に入って行こうとしているのを見て、施しを求めた。
 4 ペテロとヨハネとは彼をじっと見て、「私たちを見なさい。」と言った。
 5 彼は何かもらえると期待して、二人に注目していると、
 6 ペテロが言った。「銀貨金貨を、私は持ち合わせていません。しかし、あなたに与えるものを、今持っています。 ナザレ人イエス・キリストの名によって、立ち上がって、歩きなさい。」
 7 こう言って彼の右手を取って起してやると、ひざ下の足と、くるぶしとが、ただちに強められ、
 8 跳び上がって立ち、歩き出した。そして、歩き回ったり、飛び跳ねたりして、神を賛美しながら、彼らと共に神殿に入って行った。
 9 人々は皆、彼が歩いて、また神を賛美しているのを見て、
10 彼が神殿の「美しの門」のそばに座って、物乞いをしていた者であると分かった。そして、彼の身に起ったことについて、人々は驚いて動きを止め放心状態となった。
11 彼がペテロとヨハネとに付いて回っていると、人々は皆ひどく驚いて、彼らのいる「ソロモンの廊」と呼ばれる柱廊のところに走って集まった。

12 ペテロはこれを見て、人々に対して答えた。「人々よ。イスラエルの人たちよ。なぜこの事を不思議に思うのですか。また、なぜ、私たちが自分の力や信心深さで、あの人を歩かせたかのように見ているのですか。
13 アブラハム、イサク、ヤコブの神、私たちの先祖の神は、その子であるイエスに栄光を与えられましたが、あなたがたはこのイエスを引き渡し、ピラトが釈放することを決めていたのに、それをピラトの面前で拒みました。
14 あなたがたは、この聖なる、また、義なる方を拒んで、人殺しの男を釈放するように要求し、
15 永遠のいのちの根源なる方を殺しました。 しかし、神はこのイエスを死人の中から、よみがえらせました。私たちは、その事の証人です。
16 そして、イエスの御名を信じる信仰に基いて、イエスの名が、あなたがたが今見て知っているこの人を、強くしました。すなわち、イエスを通しての信仰が、あなたがたすべての前で、彼をこのように完全に健康にしたのです。

17 さて、兄弟たちよ。あなたがたは無知によって事をしてしまったのであり、あなたがたの指導者たちでさえそうであることは、私はよく知っています。
18 神は、あらゆる預言者の口を通して、キリストの受難を予告しておられたことを、このように成就されたのです。
19 それゆえ、悔い改めなさい。そして、罪を拭い去っていただくために、神に立ち返りなさい。主の現われによる刷新の時はすでに来ました。
20 あらかじめ定められていた、メシヤなるイエスを、神が遣わして下さったからです。
21 このイエスは、神が、聖なる預言者たちの口を通して、昔から語っておられた万物が回復する時まで、天に留まっていなければなりませんでした。
22 それは、モーセが、先祖たちにこのように言ったからです。『神であるは、私を立てられたように、あなたがたの兄弟の中から、一人の預言者を立てられる。その預言者があなたがたに語ることには、ことごとく聞きなさい
23 彼に聞かない者はすべて、民の中から滅ぼし去られる。』
24 サムエルをはじめ、その後に続いて語った預言者は皆、今のこれらの日々のことを予告したのです。
25 あなたがたは預言者たちの子供たちであり、神があなたがたの先祖たちと結ばれた契約の子供たちです。神はアブラハムに対して、『地上の諸民族は、あなたの子孫によって祝福を受ける。』と言われました。
26 神が、まず最初にあなたがたのために、そのを立てられ、お遣わしになったのは、あなたがたの悪から一人一人が立ち返ることの中で、あなたがたを祝福するためなのです。」


   *1  (直訳) 第9時、  夕拝は、アダムとエバの頃から行われていた(「そよ風の吹く頃(日の風の頃)」(創3:8))
   *2  美しの門: 一番外側の「異邦人の庭」から、「婦人の庭」へ入る門の一つ
   *6  § 相手の求めや了解なしに、いやしを行なった、珍しい例
   *12  ユーセービーア(ギ) reverence、崇敬、godliness、敬虔; 信心深さ、宗教熱心
   *13、26  パイス(ギ) child、boy or girl、子供、 (しもべ の意味もある: ペテロ特有のイエス観、 マルコの福音書では、「しもべ」としてのイエスを多く記述)
   *15  アルケゴース(ギ) chief leader, prince、君、君主、predecessor in a matter、物質の根源、以前にあったもの、源
   *16  § 信じる者に伴う イエスの名のしるし(マルコ16:17、18)、  イエスの名 が主語、  信仰 が主語
   *19  エクサレイフォー(ギ) 拭き去る、拭い去る; 消し去る、  神に は補足、  エピストゥレフォー turn、return、戻る、立ち返る
   *22、23  申命18:15、 使徒7:37
   *25  スペルマ(ギ、単数・中) seed、(直訳)種、子孫(単数)、  創世22:18
   *26  福音はまずユダヤ人に宣べ伝えられた



  第4章


 1 彼らが民にこのように語っていると、祭司たち、神殿の守衛長、サドカイ人たちが近寄ってきて、
 2 彼らが、イエスの死人たちからの復活を公に宣言して、人々に教えているのを不快に思い
 3 彼らに手をかけて捕え、すでに日が暮れていたので、翌朝まで留置しておいた。
 4  しかし、彼らの話を聞いた多くの人たちは信じた。そして、その男の数が五千人ほどになっていた。
 5 翌日、民の指導者ら、長老たち、律法学者たちが、エルサレムに召集された。
 6 大祭司アンナスをはじめ、カヤパ、ヨハネ、アレキサンデル、そのほか大祭司の一族も皆 出席した。
 7 そして、その真中に使徒たちを立たせて尋問し始めた。「あなたがたは、一体、何の権威で、また、誰の名によって、このようなことを行なったのか。」

 8 その時、ペテロが聖霊に満たされて言った。「民の指導者たち、ならびにイスラエルの長老たちよ。
 9 もし、私たちが、今日、取り調べを受けているのが、病人への良いわざに関して、この人が誰によって救われたかについてであるなら、
10 あなたがた全員も、またイスラエルのすべての人々も、知ってください。あなたがたが十字架につけ、神が死人たちの中からよみがえらせた、ナザレ人イエス・キリストの御名によって、この人が直ってあなたがたの前に立っているのです。
11 このイエスこそは、『あなたがた家造りらに捨てられた石、隅のかしら石なのです。
12 この人以外による救いはありません。それは、私たちを救うことができる名は、この名を除いては、天の下のどのような人間にも与えられていないからです。」

13 人々はペテロとヨハネとの大胆な話し方を見、また同時に、彼らが無学な、特別でない普通の者たちであることを知って、不思議に思った。そして彼らが、イエスと共にずっといた者たちであることが分かってきた。
14 その上、彼らにいやされた者が彼らのそばに立っているのを見て、言い返す言葉もなかった。
15 そこで、彼らに議会から退場するように命じてから、互いに協議を続け、
16 言った。「あの人たちを、どうしたら良いだろう。彼らによって著しいしるしが現われたことは、エルサレムの住民全体に知れ渡っているので、否定のしようもない。
17 ただ、これ以上このことが民の間に広まらないように、今後はこの名によって誰にも語ってはならないと、脅しつけておこう。」
18 そこで、彼らを呼び出し、イエスの名に関して、語ってきたことも、教えてきたことも、全面的にしてはいけない、と命令した。
19 ペテロとヨハネは、彼らに答えて言った。「神に聞くよりも、あなたがたに聞くことが、神の御前に正しいかどうかを判断してください。
20 私たちは、自分の見たこと、聞いていることを、語らないでいることはできないからです。」
21 そこで、彼らは二人を更に脅してから、釈放した。それは、すべての者が、この出来事のために神を崇めていたので、その人々のゆえに、どのように彼らを罰するべきか見出せなかったからである。
22 また、このいやしのしるしが現れた人は、四十歳以上の人だったからでもある

23 彼らは釈放されてから、自分たちのところに帰って、祭司長たちや長老たちが言ったことの一切を報告した。
24 これを聞いた者すべては、一つ心になって、神に向かって声を上げて言った。「造り主。あなたは、天と、地と、海と、それらの中のすべてのものとを造られた方です。
25 あなたは、私たちの先祖、あなたのダビデの口を通して、、このように言われました。『なぜ、異邦人らは騒ぎ立ち、もろもろの民はむなしいことを計り、
26 地上の王たちは立ち上がり、指導者たちは、と、彼のメシヤとに逆らって、一つに組んだのか。』
27 まことに、ヘロデとポンテオ・ピラトとは、異邦人たちやイスラエルの民と一緒になって、この都に集まり、あなたが油を注いだ聖なる御子イエスに逆らいました。
28 彼らがそうしたのは、あなたのみ手と、あなたの助言とによって、あらかじめ定められていたことが成し遂げたられるためでした。
29 主よ。今、彼らの脅迫をご覧ください。そして、あなたのしもべたちに、思い切り大胆にあなたのみことばを語らせて下さい。
30 そしてみことばのうちに、あなたのみ手を伸ばしていやしをなされ、聖なる御子イエスの名を通して、しるしと奇跡が起こりますように。」
31 彼らの熱心な祈りが終わると、その集まっていた場所は揺れ動き、すべての者は聖霊に満たされ、大胆に神のみことばを語り出した。

32 信者たちの群れは、心とたましいを一つにして、誰もその持ち物を自分のものであると言わず、すべての物を共有していた。
33 そして、使徒たちは、主イエスの復活について、非常に力強くあかしを与え続け、そして、大きな恵みが、彼らの全員の上にあり続けた
34 彼らの中に乏しい者は、一人もいなかった。それは、土地や家屋を持っている人たちは、それを売り、売れた代金を持ってきて、
35 使徒たちの足もとに置いた。そして誰にでも、それぞれが持っている必要に応じて分け与えられた。
36 キプロス生れのレビ人で、使徒たちにバルナバ、すなわち「慰めの子」、と呼ばれていたヨセフは、
37 自分の所有する畑を売り、その代金を持ってきて、使徒たちの足もとに置いた。


   *11  詩篇118:22、  協議の上捨てられた の意、  corner stone、角部の2つの壁の土台となる大きな石
   *15  シュネードゥリオン(ギ) サンヘドリン
   *19  アコーオー(ギ) hear、耳が聞こえる、聞く、聞いて学ぶ、理解する
   *22  自然的には決して直らない状態だったことを、ルカは強調した
   *24  デスポータ(ギ、呼、単・男) <デスポーテス master、Lord、ご主人様(ルカ13:25、Uテモ2:21)、主、(所有権と 権力を持っている主人、の意)
   *25、27、30  パイス(ギ) boychild、 子、子供; しもべ、  聖霊によって は無い
   *25、26  詩篇2:1、  メシヤ、油注がれた者 = キリスト
   *30  エン トー(冠詞、単・男) 〜、 in the、 〜は、ロゴス(単数・男)、みことば   →  § この祈りはすぐに聞かれ、ペンテコステの時のように聖霊が激しく臨み、人々は「みことば」を大胆に語った(:31)
   *31  ロゴス(単・男) みことば(単数・男)
   *36  バルナバ: 異邦生まれのユダヤ人、後に、使徒となった(→ 14:14)、 パウロを迎え、アンテオケ教会に迎え入れた、エルサレムには親戚のマルコの家があった



  第5章


 1 ところが、アナニヤという人とその妻サッピラとは共に資産を売ったが、
 2 彼の妻も承知の上で、その代金を別に取って置き、一部だけを持ってきて、使徒たちの足もとに置いた。
 3 そこで、ペテロが言った。「アナニヤよ。なぜあなたは、サタンの思いであなたの心が満たされ、聖霊にうそをついて、土地の代金を別に分けて取ったのか。
 4 売らずにそのまましておいても、あなたのものであり、また、売ってしまってもまだ、あなたの管理のもとにあったはずではないか。なぜあなたは、心の中にこのような思いを置いたのか。あなたは人に対してではなく、神に対しうそをついたのです。」
 5 アナニヤはこの言葉を聞くと、倒れて、息が絶えた。このことを聞いた人々すべてに、非常な恐れが起こった。
 6 それから、若者たちが立ち上がり、その死体を布で巻いて包み、運び出して葬った。
 7 三時間ばかり経ってから、彼の妻がこの出来事を知らずに、入って来た。
 8 そこで、ペテロが彼女に言った。「あの土地をこの値段で売ったというのは、その通りですか」。彼女は、「はい。その値段です。」と答えた。
 9 しかしペテロは言った。「なぜ、あなたがたは心を合わせて主の御霊を試みたのですか。見よ。あなたの夫を葬った人たちの足が、そこの門口に来ています。あなたも運び出されます。」
10 すると女は、たちまち彼の足もとに倒れて、息が絶えた。そこに若者たちが入って来て、女が死んでしまっているのを見て、運び出してその夫のそばに葬った。
11 教会全体と、これを聞いた人たちすべてに、非常な恐れが起こった。

12 そのころ、使徒たちの手を通して、多くのしるしと奇跡とが人々の中で起こり続けていた。そして、一同は心を一つにして、ソロモンの廊に集まっていた
13 他の人々は、一人もその交わりに入ろうとはしなかったが、その人々は彼らを尊敬していた。
14 それでも、男女ともますます多くの人々が、主を信じて、仲間に加わり続けた。
15 ついには、病人を大通りに運び出し、寝台や寝床の上に置いて、ペテロが通るとき、せめて彼の影にでも、その人々の何人かにかかるようにしたほどであった。
16 またエルサレムの近くの町々からも、大ぜいの人が、病人や汚れた霊に苦しめられている人たちを連れて集まってきたが、その全部の者がいやされた。


17 そこで、ある大祭司とそのすべての仲間の者たち、すなわち、サドカイ派の者たちが、ねたみに満たされて立ちあがり、
18 使徒たちに手をかけて捕え、公共の留置場に入れた。
19 ところが夜のうちに、主の御使いが牢の戸を開いて、彼らを連れ出して、言った。
20 「さあ行きなさい。そして、神殿の中に立ち、この いのちのみことばを、そこにいるすべての人々に語りなさい。」
21 彼らはこれを聞き、夜明け頃、神殿に入って教え始めた。一方では、その大祭司と仲間の者たちとが集まって来て、議会とイスラエル人の全長老とを召集し、彼らを連れてこさせるよう人を牢に遣わした。
22 そこで、役人たちが行って見ると、牢の中に彼らがいないので、引き返して報告した。
23 「牢獄は完全に閉まっていて、戸口の前には番人たちが立っていました。ところが開けて見ると、中には誰もいませんでした。」
24 これらの言葉を聞いた、その祭司長と神殿の守衛長は、これは一体何が起こったのだろうと、彼らのことで当惑した。
25 そこへある人が来て、知らせた。「大変です。あなたがたが獄に入れたあの人たちが、神殿の中に立って、人々をを教えています。」
26 そこで守衛長が、役人たちと共に出て行って、手荒なことはしないで使徒たちを連れて来た。それは、人々に石で打ち殺されるのを恐れたためであった。
27 そして、連れて来て、議会の中に立たせて、その大祭司が尋問して、
28 言った。「この名を使って教えてはならないと、きびしく命じておいた命令ではないか。ああ、なんという事だ。エルサレム中があなたがたの教えでいっぱいになっている。あなたがたはこの人の血の責任を、われわれに負わせようと意図しているのだな。」

29 これに対して、ペテロをはじめとする使徒たちは言った。「人間にではなく、神に従うべきです。
30 私たちの先祖たちの神は、あなたがたの手でにかけて殺したイエスを、よみがえらせ、
31 そして、このイエスを導き主とし、救い主として、ご自身の右の座に引き上げられたのです。それは、イスラエルを悔い改めさせて、罪の赦しを与えるためです。
32 私たちは彼にあって、これらの語った事がらの証人たちです。神がご自身に従う者に与えられた聖霊もまた、その証人です。」

33 これを聞いた者たちは、激しい怒りのあまり、使徒たちを殺そうと思った。
34 ところが、民全体に尊敬されていた律法教師のガマリエルというパリサイ人が、議会で立ち上がり、使徒たちを少しの間外に出すように要求してから、
35 一同に言った。「皆さん。イスラエルの人々よ。この人々に関してどのように扱うか、あなたがた自身、気をつけてください。
36 それは、以前の時代に、テューダという者が立ち上がり、自分を何か偉い者のように言いふらしたので、彼に加担した男の数が四百人ほどもありましたが、結局は彼は殺され、彼の信奉者たちも皆、解散して、何も無くなってしまいました。
37 その後も、人口調査の時*に、ガリラヤ人ユダが民衆を率いて反乱を起しましたが、この人も殺され、信奉者たちも皆、散らされてしまいました。
38 そこで今、皆さんに申し上げたいのです。この人たちから手を引いて、彼らのするままにしておきませんか。もし、彼らの目標、あるいは、働きが、人間から出たものなら解体されるでしょう。
39  しかし、もし神から出たものなら、それを滅ぼすことはできないでしょう。もしかすると、皆さんの方が神に敵対する者になってしまします。」
40 そこで彼らは彼に説得され、使徒たちを呼び出して、彼らをむち打った後、イエスの名によって語ってはならないと命じてから、釈放した。
41 使徒たちは、御名のために、侮辱を受けるに価する者とされたことを喜びながら、議会から出てきた。
42 そして、毎日、神殿や、それぞれの家で、教えることを(や)めることなく、キリストであるイエスの福音を宣べ伝えた。


   *4  エン テー セー エクソーシア(単・女) ヒュペールケン(3・単) in the your authority to be、(直訳) あなたの権威のもとにある
   *3、4、5  § 人々はは自発的にささげたのであり、できないならば財産を売らなくても、分納しても問題ない。 しかし、この惑わしは、弱さによる罪ではなく、十分できることを聖霊にはっきり語られたにもかかわらず、全知全能の主にうそをついて、主を試みるという、悪質(サタン的、主の言葉の逆を言う、創世3:4、5)なものであること。アカンの罪(ヨシュ7:1−、「偽って」7:11)、サウルの罪(Tサム15:13、20、うそを言っている)、ゲハジの罪(U列5:25)、などと同様。 さらに、(リバイバルの時など、)聖霊の臨在が強くなると、このようなことでも裁きを受けるので要注意、   エクプシュコー(ギ) 終了する; 息が(たましい、いのち(プシュケー)が)出て行く
   *15  § ペテロの影にかかるように置いた: 主は、このような「信仰」をも尊重され、同じように いやしと解放のわざを現わされた = 19:11、12 パウロの手ぬぐいや前掛け、(魔術ではなく、)「信仰の賜物」
   *17  § 2度目の逮捕、 4章では、サドカイ派(議会の主流を占める)の復活の否定とぶつかったが、今回は、彼らのもっと根底にある、「ねたみ」の感情で動いた
   *21  サンヘドリンの議会と、 イスラエルの子らの長老議会(上院)
   *29、32  ペイサルケーオ(ギ) obey、従う、  ・・・ ここで、「従う」という言葉が出てくる
   *30  クシロン(ギ) wood、tree、木の杭(十字架のこと)、木
   *31  アルケーゴース(ギ) chief leader、prince、指導者、君主、  ソーテール saviour、deliverer、救う者、救助者
   *33  ディアプリオ (直訳) のこぎりで(真っ二つに)切られる思いで、(ここと 7:54のみ)
   *34  ノモディダスカロス(ギ) teacher of the law、律法の教師、モーセの律法の解釈者、  律法を細かく守る”分離された”パリサイ人は死者の復活を信じるので、復活を信じないサドカイ人(議会の主流派)よりは冷静だった
   *36  (直訳) 自身を何者かであるように、  テューダは、BC4のヘロデ大王の死後、無数に起こった反乱の指導者の一人といわれる(詳細は不明、ヨセフォスの記録では年代が合わない)、  信奉者たち: (直訳)説得された人々
   *37  AD6、クレニオ総督の人口調査、  ユダはカイザルに税を納めることに対し反乱を起こした



  第6章


 1 そのころ、弟子の数が増えてくるにつれて、ギリシヤ語を使うユダヤ人たちから、ヘブル語を使うユダヤ人たちに対して、苦情を申し立てた。それは、自分たちのやもめたちが、毎日の配給がおろそかにされていたからである。
 2 そこで、十二使徒は弟子たちの群れを呼び集めて言った。「私たちが神のみことばを差し置いて、食卓に仕えるのは同意できないことです。
 3 そこで、兄弟たちよ、あなたがたの中から、聖霊と知恵とに満たされた、良きあかし人たち七人を調べ上げてください。その人たちを選んでこの仕事をまかせ、
 4 私たちは、もっぱら、祈りとみことばの務めに専念します。」
 5 この提案は群れの全員が喜んで同意した。そして信仰と聖霊とに満ちた人ステパノ、それから、ピリポ、プロコロ、ニカノル、テモン、パルメナ、およびアンテオケの改宗者ニコラオを選び出して、
 6 使徒たちの前に立たせた。すると、使徒たちは祈って手を彼らの上においた。
 7 こうして、神のみことばはますます広まり、弟子の数もエルサレムにおいて非常に増えていき、多くの祭司たちも信仰に服従するようになった。


 8 さて、ステパノは恵みと力とに満ちており、群れの中で、著しい奇跡としるしとを行なっていた。
 9 すると、いわゆる「リベルテン」の会堂に属する人々、クレネ人、アレキサンドリヤ人、キリキヤやアジヤからきた人々などが立って、ステパノと議論したが、
10 彼は知恵と御霊とで語っていたので、それに対抗できなかった。
11 そこで、彼らは人々をそそのかして、「私たちは、彼がモーセと神とを冒涜して言っているのを聞いた。」と言わせた。
12 その上、民衆と、長老たち、律法学者たちを煽動し、彼ところに来て捕えさせ、議会に引いて来させた。
13 それから、偽りの証人たちを立てて、こう言わせた。「この人は、この聖なる所と律法とを冒涜する言葉を語るのを、どうしてもやめようとはしません。
14 すなわち、『あのナザレ人イエスは、この聖なる所を解体して、モーセが私たちに伝えた多くの慣習を変えてしまう。』と、彼が言うのを私たちは聞きました。」
15 議会で席についていた者たちは皆、ステパノに注目したが、彼の顔は、あたかも御使いの顔のように見えた。


   *1  (直訳) ヘレニストと、ヘブライスト(実際はアラム語を語る)、   1、4  ディアコニア(ギ) ministry、ミニストリー、奉仕(ローマ12:7)、務め、供給、給食、  2  ディアコネオー 仕える
   *3  マルテューレオー(ギ) bear witness、証人となる、証言する、give testimony、give a good report、良きあかし人となっている、 § 執事(デイアコノス(ギ))の選出: 教会の事務、配給の奉仕をする者でさえ、聖霊に満たされている必要がある。この中から傑出した器が出た (:5)
   *5  ステファノス(ギ) Stephen、ステパノ: 冠 の意、一番先に殉教した(7:57−60)、 フィリッポス Philip、ピリポ(伝道者): サマリヤ宣教へ(8:4−13)
   *6  § 按手礼: 教会の職の任命に際し、按手を行なって、使徒や長老、教師たちの手を通しての聖霊を注ぎ入れる。通常は、召しと賜物が与えられる。(Tテモ4:14) 誰にでも軽々しく按手してはならない(Tテモ5:22)   cf. タッチ: 任命とは関係なく、頭などに手を置いて聖霊の注ぎかけを祈る。 聖霊の満たしを祈るときなど
   *7  ヒュパコーオー(ギ) 
listen(command) to obey、聞き従う、命令に従う(マコ1:27、ルカ17:6 など、かなり強い力で従わせること)
   *9  会堂(シナゴーグ)は神殿に代わるものとして、エルサレムにおいても、デイアスポラのユダヤ人たちの礼拝と教育の場所だった。 リベルテン(自由にされた者 の意)は、奴隷の身分から解放された人々やその子孫たち
   *13、14  § 指導者たちによる使徒たちの今までの2度の逮捕(民衆は味方)とは違って、今回は 民衆が敵に回ったので、回避できない大迫害へと発展していった。(散らされた弟子たちは、この後、サマリヤ、異邦人伝道へ) ステパノはヘレニストだったので、宣教する対象もディアスポラだった。 彼らは、聖なる所(シナゴーグ、あるいは、神殿)と、モーセの律法との、新しい解釈について理解できず、ステパノが語るのを頑強に阻止しようとした



  第7章


 1 大祭司は、「これらのことは、そのとおりか。」と尋ねた。
 2 そこで、ステパノが言った。 「皆さん、兄弟たち、父たちよ。聞いて下さい。私たちの父祖アブラハムが、カランに住む前に、まだメソポタミヤにいたとき、栄光の神が彼に現われて、
 3 『あなたの土地と、親族から離れて、あなたに示す地に行きなさい。』と、仰せられました。
 4 そこで、アブラハムはカルデヤ人の地を出て、カランに移住しました。そして、彼の父の死後、神は、彼をそこから、今あなたがたの住んでいるこの地に移されましたが、
 5 そこでは、相続財産となるものは何一つ、一歩の長さの土地すらも、与えられませんでした。ただ、その地を所有地として与えるという約束を、彼と、そして彼にはまだ子がなかった時点で、彼の一人の子孫とに与えられたのです。
 6 神はまた言われました。『彼の子孫は他国に移り住み、そこで四百年のあいだ、奴隷にされて虐待される。』
 7 それから、さらに言われました。『彼らを奴隷にする国民を、わたしはさばく。その後、彼らはそこから出て来て、この場所でわたしに仕える。』
 8 そして、神はアブラハムに、割礼の契約を与えられました。こうして、彼はイサクの父となり、八日目に割礼を施しました。それから、イサクはヤコブの父となり、ヤコブは十二人の族長たちの父となりました。
 9 族長たちは、ヨセフをねたんで、エジプトに売り飛ばしました。しかし、神は彼と共におられ、
10 あらゆる苦難から彼を救い出され、エジプト王パロの前で、恵みの賜物と、知恵を与えられました。そこで、パロは彼を宰相(さいしょう)の任につかせ、エジプトならびに王家全体の支配に当らせました。
11 そして、エジプトとカナンとの全地にききんが起り、大きな災いがやって来て、私たちの先祖たちも食物が無くなりました。
12 ヤコブは、エジプトには食糧があると聞いて、初めに先祖たちを遣わし、
13 二回目の時には、ヨセフが兄弟たちに、自分の身の上を打ち明けたので、彼の家族のことがパロに知れました。
14 ヨセフは人を送って、父ヤコブと七十五人の親族すべてとを招き入れました。
15 こうして、ヤコブはエジプトに下り、彼自身も先祖たちもそこで死に、
16 それから彼らは、シケムに運ばれ、かつてアブラハムがいくらかの金でこの地のハモルの子らから買っておいた墓に、葬られました。
17 神がアブラハムに対して立てられた約束の時期が近づくにつれ、民はエジプトの地に根付いて成長し、大いに増えていきました

18 やがて、ヨセフのことを知らない別な王が、エジプトに起こりました。
19 この王は、私たちの同族に対し計略を巡らせ、先祖たちを虐待し、その幼子(おさなご)たちを生かしておかないように捨てさせました。
20 モーセが生れたのはちょうどこの頃で、彼は神にとって麗しい子であり、三か月の間は父の家で育てられましたが、
21 その後捨てられたのを、パロの娘が拾い上げて、自分の子として育てました。
22 モーセはエジプト人のあらゆる学問を教え込まれ、言葉にも行ないにも、力がありました。
23 四十歳になった時、モーセは自分の兄弟であるイスラエル人の子らを顧みる心を起こしました。
24 ところが、その一人が虐待を受けているのを見て、これをかばい、相手のエジプト人を撃って、虐待されているその人のために仕返しをしました。
25 彼は、自分の手によって神が兄弟たちに解放を与えていることを、皆が分かってくれるものと思っていましたが、実際はそれを理解しなかったのです。
26 翌日モーセは、彼らが争っているところに現れ、彼らを和解させようと間に入って言いました。『おい。君らは兄弟ではないか。どうして互に傷つけ合っているのだ。』
27 すると、仲間を傷付けていた者が、モーセを押しのけて言いました。『誰が、あなたをわれわれの指導者や裁判人に立てたのか。
28 あなたは、昨日、エジプト人を殺したやり方で、私も殺すつもりか。』
29 モーセは、この言葉を聞いて逃げ、ミデアンの地寄留者として住み、そこで男の子二人をもうけました。
30 そして、四十年たった時、シナイ山の荒野において、主の御使いが柴の燃える炎の中からモーセに現れました。
31 彼はこの光景を見て不思議に思い、それをよく見ようとして近寄ったところ、主の御声が聞こえてきました。
32 『わたしは、あなたの先祖たちの神、アブラハム、イサク、ヤコブの神である。』 モーセは恐れて震え、それを見る勇気も失せました。
33 すると、主が彼に言われた。『あなたの足から、くつを脱ぎなさい。それは、あなたの立っているこの場所は、聖なる地であるからだ。
34 わたしは、エジプトにいるわたしの民が虐待されている様子を確かに見て、その苦しみうめく声を聞いたので、彼らを救い出すために下って来たのである。さあ来なさい、今、あなたをエジプトに遣わそう。』
35 こうして、このモーセ、すなわち彼らが退けて、『誰が、あなたをわれわれの指導者や裁判人に立てたのか。』と言った、この人を、神は、柴の中で彼に現れた御使いの手によって、指導者、解放者として遣わされたのです。
36 この人が、エジプトの地で、紅海で、また四十年間の荒野で、奇跡としるしとを行なって、彼らを導き出しました。

37 この人が、モーセです。そして彼は、イスラエル人たちに、『神は私を立てられたように、あなたがたの兄弟たちの中から、一人の預言者を立てられる。』と言ったのです。
38 この人が、シナイ山で、彼に語っていた御使いと先祖たちと共に、荒野の集会にいて、生ける啓示を授かり、それをあなたがたに伝えたのです。
39 ところが、先祖たちは彼に耳を傾けようとせず、かえって彼を退け、心の中でエジプトを振り返り
40 『私たちを導いてくれる神々を造って下さい。それは、私たちをエジプトの地から導き出した、あのモーセに何が起こったのか分かりませんから。』とアロンに言いました。
41 そのころ、彼らは一つの子牛の像を造り、その偶像に供え物を捧げ、彼らの手で造った物で喜び祝っていました。
42 そこで、神は顔をそむけられ、彼らを天の星に仕えるままに引き渡されました。それは預言者の書にこう書いてある通りです。『四十年の間、荒野にいた時に、いけにえと供え物とを、わたしにささげたことがあったか。イスラエルの家よ。
43 あなたがたは、モロクの幕屋やロンパの星の神を担いで回っていた。それらは、拝むために自分で造った偶像に過ぎない。それゆえ、わたしは、あなたがたをバビロンのかなたへ移してしまおう。』
44 私たちの先祖は荒野に、あかしの幕屋を持っていました。それは、モーセに、見たままの形通りに造るように、語られた命令どおりに造られたものです。
45 この幕屋は、私たちの先祖によって次々と受け継がれ、神が異邦人たちを彼らの前から追い払い、その所有地を取った後に、ヨシュアと共に持ち込まれ、そして、ダビデの時代にまで及んだのです。

46 ダビデには、神の大いなる恵みが臨み、そして、ヤコブの神のための幕屋を見たいと切に願いました。
47 ただし、神のために家を建てたのは、ソロモンでした。
48 しかし、いと高き方は、手で造った聖所には住まわれません。預言者が言っている通りです。
49 『は仰せられる。天はわたしの王座、地はわたしの足台である。どんな家をわたしのために建てるのか。わたしの休息の場所はどこか。
50 これらのすべては、わたしの手が造ったものではないか。』

51 ああ、かたくなで、心と耳に割礼を受けていない人たちよ。あなたがたは、いつも聖霊に反抗しています。あなたがたの先祖たちと同じように、あなたがたもです
52 あなたがたの先祖が迫害しなかった預言者が、一人でもいたでしょうか。彼らは義なる方が来られることを、予告した人たちを殺ました。 そして今や、あなたがたは、その方を裏切る者、また殺す者となってしまったのです。
53 あなたがたは、御使いたちによって配備された律法を受け取ったのに、それを守ったことはありません。」

54 人々はこれを聞いて、心が真二つに切られる思いで激怒し、ステパノに対して歯ぎしりをした。
55 しかし、彼は聖霊に満たされて、天を見つめて、神の栄光と、イエスが神の右に立っておられるのを見て、
56 そこで、彼は、「見よ。天が開けて、人の子が神の右に立っておられるのが見えます。」と言った。
57 人々は大声で叫びながら、耳をおおい、ステパノにいっせいに殺到し、
58 彼を市外に追い出して、石打ちで殺した。これに立ち合った人たちは、自分の上着を脱いで、サウロという若者の足もとに置いた
59 こうして、彼らがステパノに石を投げつけている間、ステパノは祈り続けて言った。「主イエスよ。私の霊をお受け下さい。」
60 そして、両ひざでひざまずいて、大声で叫んだ。「主よ。どうぞ、このことで、彼らを罪に定めないでください」。こう言って、彼は眠りについた。


   *3  創世12:1
   *5、6  (直訳) 種(単数)
   *6  創世15:13、14
   *10  カリス(ギ) grace、good will、gift of grace、恵み、好意、恵みの賜物 (=パロの夢の解き明かしの賜物)、  ソフィア 知恵 (=行政の知恵)
   *16  創世23:16
   *17  出エジプトの時期、  § イスラエルの民そのものが増えることが約束なのではなく、その末の一人の子孫(種(単数)=キリスト)から、星の数ほどその(信仰の)子孫たちが増えることが、アブラハムとの契約。 このようにして、アブラハムは(イスラエルだけではなく、)「多くの国民の父」となる (創世15:5、6、17:4)
   *25、30  人の手による同胞の解放はうまくいかず、さらに40年の月日がかかって人の力(名誉、権力、体力)が完全に無くなって後、神の手によって出エジプトが行なわれた。
   *29  ミデアンの地: シナイ半島東部と、アカバ湾を挟んだ向かい側の地
   *30  § ヤハウェと語ったのは、直接的には御使いを通してだった。 7:53 より、ステパノは、「律法」が、実は、御使いたちによって定められた(権威が一ランク低い)ものであると言っている (イエスは律法をもう一度、改めて語っている)
   *37  申命18:15、使徒3:22、  § モーセによる、キリストの予告に言及
   *38  エクレシア(ギ、単・女) church、assembly、教会、集会、議会、  ロギア(ギ、中・複) <ロギノン divine oracle、託宣、み告げ、啓示、 cf. ロゴス(単・男)、みことば
   *39  ヒュペーコオス(ギ、形容詞) giving ear; obedient、耳を傾ける; 従順な
   *41  ユーフライーノー(ギ) gladden、make joyful、喜び祝う、祝宴をする (ルカ15:23、黙示11:10、等)
   *42、43  アモス5:25−27、  ステパノが当時の70人訳を使っていたので誤訳: あなたがたの王(マルケケム(ヘ))→モロクの偶像、 シクテ(王の名)→幕屋(スコテ)、 キゥン(アッシリヤの星の神)→ロンパ(エジプトの土星神レパ)  § ここで、アモスの時代(BC760年頃)にあったイスラエルの偶像の罪は、出エジプトの時代にまでさかのぼることを言っている
   *44  あかし: ここでは、律法の石の板
   *47  オイコス(ギ、単・男) house、family、family of God、家、家族、神の家(教会)
   *48  ヒュプシストス(ギ、形容詞、最上級) highest; the most high、いと高き方、  ナオイス(複・男) <ナオス temple、聖所、神殿
   *49、50  イザヤ66:1、2
   *51  スクレロトゥラケロス(ギ) stiffnecked、(新約でここだけ) (直訳) 首を縦に振らない、うなじのこわい(=申命9:13)、頑固な
   *53  7:30、 ガラテヤ3:19 「御使いたちを通して、仲介者(モーセ)の手で定められた」、  ディアタゲー(ギ、名詞) dispositionordinance、配備、配置; 条例、聖餐式、任命 (ここと、ローマ13:2のみ)
   *54  5:33、 ペテロに対するサドカイ派の怒りの表現と同じ
   *55  オーラノス(ギ、単数・男) heaven、天(単数)、空(第1の天)
   *56  heavens、天(複数)
   *58  レビ24:14、16、申命13:9、  サウロス(ギ) サウロ: 後に回心したパウロ、  § ローマ法では禁止の石打ちは、許可を得ずに行われた。 ユダヤ法によれば、証人の一人が崖から突き落とし、それで死ななければ、次の証人が胸部をめがけて大きな石を投げ落として殺した。 そのとき証人たちは自分の上着を脱がなければならなかった。 サウロが彼らの上着を預かった。
   *60  ヒステミ(ギ) stand; make firm、fix establish、立つ、(真理などに)立つ(ヨハ8:44)、任命して立たせる(使徒1:23); 判決を下す、(罪に)定める、設定する; 代金として支払う(マタ26:15)



  第8章


 1 サウロは、ステパノを殺すことに賛成していた。その日、エルサレムの教会に対して大迫害が起り、使徒以外の者はことごとく、ユダヤとサマリヤとの地方に散らされた。
 2 熱心な信者たちはステパノを葬り、彼のために胸を打って嘆き悲しんだ。
 3 ところが、サウロは教会を荒らし回り、家々に押し入って、男たちや女たちを引きずり出し、次々に牢に引き渡していた
 4 一方、散らされて行った人たちは、みことばを宣べ伝えながら巡り歩いた。

 5 ピリポはサマリヤの町に下って行き、人々にキリストを宣べ伝えていた
 6 群衆はピリポの話を聞き、彼が行なっていたしるしを見て、皆でそろって彼の語ることに耳を傾けた
 7 汚れた霊にとり憑かれた多くの人々からは、その霊が大声で叫びながら出て行き、また、多くの中風の者たちや、足のきかない者たちがいやされたからである。
 8 そのため、この町に大変な喜びが起こった。
 9 さて、この町に以前からシモンという人がいた。彼は魔術を行ってサマリヤの多くの人々を驚かし、自分を偉い者のように言っていた。
10 それで、小さい者から大きい者に至るまで皆、彼に関心を持ち、「この人こそ、偉大な神の力である。」と言っていた。
11 彼らがこの人に関心を持ち続けていたのは、長い間その魔術に驚かされていたからである。
12 ところが、ピリポが神の御国と、イエス・キリストの名についての福音を宣べ伝えると、男も女も次々とバプテスマを受けた。
13 シモン自身も信じて、バプテスマを受け、それからずっとピリポの後について行って、力あるわざと、しるしが起こるのを見て、我を忘れるほど驚いていた。

14 エルサレムにいる使徒たちは、サマリヤの人々が、神のみことばを受け入れたと聞いて、ペテロとヨハネとを、そこに遣わした。
15 二人はサマリヤに下って行って、皆が聖霊を受けるようにと、彼らのために祈った。
16 それは、彼らはただ主イエスの名によってバプテスマを受けていただけであって、聖霊は、まだ誰の上にも下っておられなかったからである。
17 そこで、二人が手を彼らの上に置いたところ、彼らは聖霊を受けた。
18 使徒たちが手を置くことにより聖霊が人々に授けられたのをよく見ていたシモンは、金(かね)を持ってきて、
19 「私が手を置けば誰にでも聖霊が授けられるように、その力を私にも下さい。」と言った。
20 そこで、ペテロが彼に言った。「あなたの銀貨は、あなたと共に滅び去れ。あなたは、神の賜物が金で手に入ると思っているのか。
21 あなたの心が、神の目にまっすぐでないゆえに、あなたは、一部も、ほんの一部も、この事にあずかることはできません。
22 だから、あなたのこの悪い思いを悔い改めて、主に願いなさい。あるいは心に抱いたことが、赦されるかも知れません。
23 あなたが、苦い胆汁と、不義の縛りの中にいるのを、私は見ているからです。」
24 シモンはこれに答えて言った。「あなたが言われた事が、私に何も起らないように、私に代わってに主に願って下さい。」
25 一方、使徒たちは厳(おごそ)かにあかしを語り、また主のみことばを語った後、エルサレムに帰った。その途中で、サマリヤ人の多くの村々にも福音を宣べ伝えた。

26 それから、主の御使いがピリポに言った。「立って南方に行き、エルサレムからガザへ下る道に出なさい。」 ・・・ このガザは、荒野になっている ・・・。
27 そこで、彼は立って出かけた。すると、ちょうど、エチオピヤ人の女王カンダケの高官で、女王の財産全部を管理していた宦官(かんがん)*であるエチオピヤ人がいた。彼は、礼拝のためエルサレムに上り、
28 その帰り道の途中だった。彼は、彼の馬車に乗って、預言者イザヤの書を読んでいた。
29 御霊がピリポに、「近づいて行って、あの馬車と一緒に行きなさい。」と言われた。
30 そこでピリポが走って行くと、預言者イザヤのところを声を出して読んでいるのが聞えたので、「あなたは読んでいることを、理解しておられますか。」と尋ねた。
31 彼は、「導いてくれる人がいなければ、どうして理解できるでしょう。」と答えた。そして、馬車に乗って一緒に座るよう、ピリポに頼んだ。
32 彼が読んでいた聖書の聖句はこれだった。 「彼は、ほふり場に引かれて行く羊のように、また、黙って、毛を刈る者の前に立つ小羊のように、口を開かない。
33 彼は、卑しめられ、そのさばきも取り上げられた。誰が、彼の時代のことを語ることができようか。彼のいのちは地上から取り去られたのである。」
34 ここで、宦官はピリポに言った。「教えてください。ここで預言者は誰のことを言っているのですか。自分のことですか、それとも、誰か他の人のことですか。」
35 ピリポは口を開き、この聖句から始めて、イエスの福音を宣べ伝えた。
36 道を進んで行くと、水のある所に来たので、宦官は言った。「ご覧ください。水です。私がバプテスマを受けるのに、何か禁じられていることでもありますか。」
37 ピリポは、「あなたが心の内のすべてによって信じるなら、受けて差しつかえありません。」と言った。すると彼は、「私は、イエス・キリストが、神の子であることを信じます。」と答えた
38 そこで馬車を止めさせ、ピリポと宦官は二人とも水の中に降りて行き、ピリポは宦官にバプテスマを授けた。
39 彼らが水から上がると、主の霊がピリポを取り去ったので、宦官はもう彼を見ることができなかった。宦官は大いに喜びながら帰って行った。
40 その後、ピリポはアゾトに姿を現わして、町々を巡り歩き、至る所で福音を宣べ伝え、ついにカイザリヤに着いた


   *2  ユーラベース(ギ) pious、religious、信心深い、神を敬う (2:5、ルカ2:25、のみ)
   *5  伝道者ピリポ: 7人の配給する者の一人(6:5)
   *6、10  プロセコー(ギ) 関心を向ける、耳を傾ける
   *9  § サマリヤには、への礼拝と共に、異教の偶像崇拝も並行して行われていた。それで、当時東方に多くいた魔術師がサマリヤにもいて、不幸な人々を食い物にしていた
   *14  トン ロゴン(ギ、単数・男) <ロゴス the Word、みことば(単数)
   *15、16、17  § 伝道者ピリポは、しるしを行なって、信じた人々に水のバプテスマを授け、 使徒たちは、(使徒の権限により、)手を置いて聖霊(のバプテスマ)を祈った
   *21  (直訳) 一部(単・女)も、くじ(単・男)も、  ロゴス(ギ) みことば、言葉、語られた事(単・男)、事がら
   *22  カキア(ギ) malignity、ill-will、wickedness、 § 悪事、悪い行いではなく、心の罪、邪悪な動機について言っている
   *25  ディアマルテューロマイ(ギ) testify earnestly、give solemn testimony、おごそかにあかしを語る(ルカ16:28)、おごそかに命じる(Tテモ5:21)、厳しく命じる(Uテモ2:14)
   *26  (直訳) 正午、正午の太陽の方角(=南)
   *27  カンダケ(prince of servants の意) は尊称、  宦官: 性器を切り取られているので、ユダヤ教に改宗できないまま、エルサレムに礼拝に来ていた (申命23:1)、 本書における初の異邦人の救い
   *32、33  イザヤ53:7、8、  § 70人訳なので一部誤訳: そのさばきも取り上げられた(×) → さばきによって彼は取り去られた(○)、  ゾエ(ギ) いのち → プシュケー(肉のいのち) の方がより正しい
   *37  § アレキサンドリア型(改ざん)写本では、この「イエスが神の子である」という最も重要な信仰告白の部分を 欠く。 この一節が無いと、水のバプテスマが救いの条件、という誤解を与える恐れがある
   *40  アゾト: アシュドデ(ヨシュ11:22、Tサム5:1)、ガザの北40km、  カイザリヤ: アゾトからさらに北100kmの沿岸の都市   → (ピリポのその後) 21:8−



  第9章


 1 さてサウロは、なおも主の弟子たちに対する脅迫、殺害の 激しい怒りに燃え、大祭司のところに行って、
 2 ダマスコの諸会堂あての書簡を求めた。それは、この道の者を見つけ次第、男女の別なく縛りあげて、エルサレムに連れて来るためであった。
 3 ところが、道を行ってダマスコの近くにきたとき、突然、天から光が差して、彼の周りを輝き照した。
 4 彼は地に倒れた。その時、「サウロ、サウロ、なぜわたしを追って迫害するのか。」と彼に語る声を聞いた。
 5 そこで彼は、「主よ。あなたは、どなたですか。」と尋ねた。するとは言われた。「わたしは、あなたが迫害しているイエスである針のついた突き棒に向かって蹴るのはあなたにとって痛いことです
 6 彼は震え上がり、驚いて言った。「私に何をしようとなさるのですか。」 主は彼に言われた。「立って、町に入りなさい。そこであなたが何をするべきかを告げられます。」
 7 サウロの同行者たちは、声だけは聞えたが、だれも見えなかったので、言葉も出せずに立っていた。
 8 サウロは地面から立ち上がったが、目を開いても何も見えなかった。そこで人々は、彼の手を引いてダマスコへ連れて行った。
 9 彼は三日間、何も見ることができず、また食べも飲みもしなかった。

10 さて、ダマスコにアナニヤという一人の弟子がいた。主は、幻の中に現れて、「アナニヤよ。」とお呼びになった。彼は「はい、私はここにいます。主よ。」と答えた。
11 そこで主は彼に言われた。「立って、『まっすぐ』という名の通りに行き、ユダの家にサウロというタルソ人を捜しなさい。見よ。彼は、祈っています。
12 彼は、幻で、アナニヤという名前の人が入って来て、手を自分の上に置いて再び見えるようにしてくれるのを、すでに見ています。」
13 アナニヤは答えた。「主よ。エルサレムで、どんなにひどい事を、この人があなたの聖徒たちにしたかについては、多くの人たちから聞いています。
14 そして彼はここでも、あなたの御名を呼ぶ者たちのすべてを捕縛する権限を、祭司長たちからもらって来ています。」
15 しかし、主は彼に言われた。「行きなさい。この人は、異邦人たち、王たち、またイスラエルの子らの目の前に、わたしの名を運ぶ、わたしの選びの器です。
16 それで、わたしの名のために、彼がどんなに苦しまなければならないかを、彼に示そうとしています。」
17 そこでアナニヤは、出て行ってその家に入り、手をサウロの上に置いて、言った。「兄弟サウロよ。あなたが来る途中で現われた、主イエスは、私をここに遣わされました。それは、あなたが再び見えるようになるため、そして聖霊に満たされるためです。」
18 するとすぐに、サウロの目から、うろこのようなものが落ちて、ただちに見えるようになった。そこで彼は立ち上がって、バプテスマを受け、
19 食事をとって元気になった。サウロは、ダマスコにいる弟子たちと共に数日間を過ごしてから、
20 ただちに諸会堂で、キリストについてこの方こそ神の子であると宣べ伝え始めた。
21 これを聞いた人たちは皆、非常に驚いて言った。「この人は、エルサレムで、この名を呼ぶ者たちを滅ぼした者ではないか。そしてここに来たのも、彼らを縛って、祭司長たちのところへ連れて行くためではないか。」
22 しかし、サウロはますます力を増し、このイエスがキリストであることを論証して、ダマスコに住むユダヤ人たちを困惑させた。
23 かなりの日が経って、ユダヤ人たちはサウロを殺す相談をした。
24 ところが、その陰謀はサウロに知れてしまった。彼らはサウロを殺そうとして、昼も夜も、町の城門を見張っていたのである。
25 そこで彼の弟子たちが、夜の間に彼を大かごに乗せて、町の城壁づたいに吊り下ろした。

26 サウロはエルサレムに着いて、弟子たちの仲間に加わろうと試みたが、すべての者は彼を弟子だとは信じないで、恐れていた。
27 ところが、バルナバは彼引き受け、使徒たちのところへ連れて行き、道の途中でどのように主が彼に現れたか、また、彼がどのようにダマスコでイエスの名によって大胆に語ったかを、彼らに詳しく説明した。
28 それ以来、彼は彼らの仲間に加わり、エルサレムに出たり入ったりし、主の名によって大胆に語り、
29 ギリシヤ語を使うユダヤ人たちに語り続け、また彼らと論じ合っていた。しかし、彼らは彼を殺すことに着手し始めた
30 兄弟たちはそれを察知して、彼をカイザリヤに連れて下って行き、タルソへ送り出した。
31 このようにして、各教会は、ユダヤ、ガリラヤ、サマリヤ全地方にわたって建て上げられつつ平和を保ち続け、また主を恐れ、聖霊に励まされて歩み、増え続けていった

32 ペテロはあらゆる所を巡り歩いたが、ルダに住む聖徒たちのところへも下って行った。
33 そして、そこで、八年間も床に寝たきりになっているアイネヤという人に会った。彼は中風だった。
34 ペテロが彼に言った。「アイネヤ。イエス・キリストがあなたをいやして下さいます。起きなさい。そして自分で準備をしなさい。」 すると、彼はただちに起き上がった
35 ルダとサロンに住む人たちは、皆それを見て、主に立ち返った。
36 ヨッパにタビタ ・・・ これを訳すと、ドルカス ・・・ という女弟子がいた。数々の良い働きや施しをしていた婦人であった
37 ところが、そのころ病気になって死んだので、人々はその体を洗って、屋上の間に安置した。
38 ルダはヨッパに近かったので、弟子たちはペテロがルダに来ていると聞いて、二人を彼のもとに送って、「面倒がらずに、どうぞこちらにも来てください。」と懇願した。
39 そこでペテロは立って、二人の者と共にやって来た。彼が着くとすぐ、屋上の間に案内された。すると、やもめたちが皆、彼のそばに来て、ドルカスが生前に作ってくれた下着や上着の数々を、泣きながら見せるのであった。
40 ペテロはすべての者たちを外に出し、ひざまずいて祈った。それから死体の方に向いて、「タビタ。起きなさい。」と言った。すると彼女は目を開け、ペテロを見て起きて座った
41 ペテロは手を貸して、彼女を立たせた。それから、聖徒たちとやもめたちを呼んで、彼女が生きてそこにいるのを見せた。
42 このことがヨッパ中に知れわたり、多くの人々が主を信じた。
43 ペテロはしばらくの間、ヨッパに滞在し、皮なめしシモンという人の家に泊まっていた。


   *1  サウロス(ギ) Saul、サウロ、  シャウール(ヘ)、サウル desired、求められた者 の意、 (Tサム15:17の 小さい は、カータン(ヘ)で別)  § ローマ市民名は、 パウロス(ギ) = パウルス(ラテン)・小さい者 の意、  (直訳) 息を吸い込み、 再度パウロ自身が当時のことを言っている(→ 26:11)
   *5  キュリエ(ギ、呼) <キュリオス、Lord、主、  エゴー エイミ イエソウス I AM Jesus、  ケントン(ギ) iron goad、鉄の針のついた突き棒(goad、家畜を追う、先のとがった突き棒)、sting、(動植物の)刺し針、 § 当時の靴はサンダルだったので、蹴ると痛い。 主の民を迫害することは、これと等価であると言っている
   *10  アナニヤ(→ 22:12) (9:13より、アナニヤはエルサレムから逃れたのではなく、ダマスコにずっと住んでいた)
   *25  スピュリース(ギ) (背負う、葦で作った)大かご、(マタ15:37、マコ8:8、「7つの大かご」)、  この時の説明 → Uコリ13:32、33
   *26  ガラテヤ1:17より、アラビヤに行き、ダマスコに戻り、それからエルサレムに行った。 この間、回心の時から、3年経っていた
   *27  バルナバス(ギ) 慰めの子 の意、  ガラ1:18、19より、パウロがこの時会ったのはペテロと、(イエスの兄弟)ヤコブだけだった
   *29  ヘレニスト、  ステパノのヘレニスト伝道を継承していた
   *30  タルソス(ギ) パウロはキリキヤのタルソ生まれ (22:3)
   *31  エクレーシアイ(ギ、複数・女)、  エプレーシュノント(未完了過去、3・複) were increased、multiplied、 (信徒の数ではなく、教会が)増え続けていった
   *32  ルダ、 ロデ(T歴8:12) ヨッパに近いサロン平原の町(:35)で、ピリポが伝道して通った町でもある(8:40)
   *34  ストゥローソン セアウトー(ギ) 
spreadfurnish to yourself、自分で(食事の用意を)しなさい、の意 (=マコ14:15)
   *35  サロン、 シャロンの野(T歴25:16、イザ33:9、等)、  ルダ、サロンには、ユダヤ人と異邦人が混在していた
   *36  ヨッパ、 現在のテルアビブ・ヤッファ (ヤッフォ(ヨシュ19:46、U歴2:16、エズ3:7、ヨナ1:3)、ギリシャ系の人が多かった。  タビタ(アラム語)、ドルカスはギリシャ語、 かもしか、ガゼル の意、  良い働き、施し = 「慈善」
   *40  § ここでも信仰が完全な者が他にいなかったので、人々を外に出した。 クリスチャンで、生き返った例
   *43  皮なめし は、動物の死骸に触れるので、汚れた職とみなされ 海辺に追いやられていた。ペテロは偏見なくそこに泊まった (レビ5:2)



  第10章


 1 さて、カイザリヤにコルネリオという名の人がいた。イタリヤ隊と呼ばれた部隊の百卒長で、
 2 信心深く、家族全員と共に神を恐れ、民に数々の施しをし、いつも神に祈りをささげていた。
 3 ある日の午後三時ごろ、神の御使いが彼のところに入って来て、「コルネリオ。」と呼ぶのを、はっきりと幻で見た。
 4 彼は御使いをじっと見ていたが、恐ろしくなって、「何の御用ですか。主よ。」と言った。すると御使いが言った、「あなたの祈りと施しは神の前に立ち上り、覚えられています。
 5 そこで今、ヨッパに人を送って、ペテロと呼ばれる、シモンという人を招きなさい。
 6 この人は、皮なめしシモンという人のところに泊まっていて、その家は海べにあります。彼は、あなたが何をするべきかを語ります。」
 7 このように御使いが語って立ち去った後、コルネリオは、家のしもべ二人と、側近の中で信心深い一人の兵士とを呼び、
 8 彼らにすべてを打ち明け、ヨッパへ遣わした。

 9 翌日、彼らが旅を続けて町の近くにきた頃、ペテロは祈りをするため屋上に上った。時は昼の十二時ごろであった。
10 彼は非常に空腹になって、少し食べたいと思い、食事の準備がされている間に、恍惚状態になった。
11 彼が見ると、天が開かれていて、大きな布のような入れ物が四隅を吊るされ、地上に下って来た。
12 その中には、地上のあらゆる四つ足のものや野の獣爬虫類、また空の鳥など、各種の生きものが入っていた。
13 そして彼に、御声が来た。「ペテロ。立ち上がって、それらをほふって食べなさい。」
14 ペテロは言った。「出来ません。主よ。私は今までずっと、きよくないもの、汚れたものを、全く食べたことがないからです。」
15 すると、彼に二度目の御声が来た。「神がきよめたものを、いつまでも、きよくないと言っていてはならない。」
16 このことが三度もあった後、その入れ物はすぐ天に引き上げられた。

17 ペテロが、今見た幻は何の事だろうかと思い巡らしていると、見よ。コルネリオから遣わされた人たちが、シモンの家を見つけ出して、その門口に立っていた。
18 そして大声で、「ペテロと呼ばれるシモンという方が、こちらにお泊まりではありませんか。」と尋ねた。
19 ペテロはまだ、幻について思い巡らしていると、御霊が言った。「見なさい。三人の人たちが、あなたを捜して来ています。
20 さあ、立って下に降りて、彼らを差別しないで、彼らと一緒に出かけなさい。わたしが彼らを来させたのです。」
21 そこでペテロは、コルネリオから遣わされたその人たちのところに降りて行って、言った。「さあ、私があなたがたが捜しているペテロです。どのようなご用件でおいでになったのですか。」
22 彼らは答えた。「公正な人で、神を恐れ、ユダヤの全国民に評判の良い百卒長コルネリオが、聖なる御使いから、あなたを家に招いてお話を伺うようにとの、あなたについてのお告げを聞きましたので、ここに参りました。」
23 そこでペテロは、彼らを呼び入れて、泊まらせた。翌日、ペテロは立って、彼らと連れだって出発した。ヨッパの兄弟たち数人も一緒に行った。

24 その次の日に、一行はカイザリヤに着いた。コルネリオは親族や親しい友人たちを呼び集めて、待っていた。
25 ペテロが到着すると、コルネリオは出迎えて、彼の足もとにひざまずいて礼拝した。
26 するとペテロは、彼を引き起して言った。「お立ちください。私も同じ人間です。」
27 そして一緒に話しながら、部屋に入って行くと、そこには、すでに大ぜいの人々が集まっていた。
28 ペテロは彼らに語った。「あなたがたもご存知の通り、ユダヤの人が他国の人の仲間に加わったり、訪問したりすることは、禁じられています。ところが、神は、どんな人間をも清くない、汚れていると言ってはならないと、私にお示しになりました。
29 私を招いてくださった時、律法に抵触しないで来られたのは、そのためなのです。そこで伺いますが、どのような理由で私を招いてくださったのですか。」
30 これに対してコルネリオは答えた。「四日前、この時刻まで私は断食し、自宅で午後三時の祈りをしていますと、なんと、突然、輝いた衣を着た人が、前に立って、
31 こう告げました。『コルネリオよ、あなたの祈りは聞かれ、あなたの施しは神のみ前に覚えられています。
32 そこでヨッパに人を送ってペテロと呼ばれるシモンを招きなさい。その人は海沿いにある皮なめしシモンの家に泊まっています。』
33 それで、すぐにあなたのところに人を送ったのです。よく来て下さいました。今、私たちは、主があなたにお告げになったすべての事がらを聞くために、皆、神のみ前に出て参りました。」

34 そこで、ペテロは口を開いて言った。「私は、真理によって、よく分かってきました。すなわち、神は人をかたより見ない方で、
35 どの国民であっても、神を恐れ、正義を行う人を、受け入れて下さるということです。
36 神は、イエス・キリストを通して、平和の福音を宣べ伝えられ、このみことばを、イスラエルの子らに送って下さいました。 ・・・ この方は、すべての人の主です。 ・・・
37 あなたがたは、ヨハネがバプテスマを説いた後、ガリラヤから始まってユダヤ全土に広まった事がらを、よく知っています。
38 神はナザレのイエスに聖霊と力とを注がれました。このイエスは、神が共におられるので、良い働きをしながら巡り歩き、悪魔に抑圧されているすべての人々をいやされました。
39 そして、私たちは、イエスがユダヤ人の地やエルサレムでなされたすべてのことの証人です。人々はこのイエスを木にかけて殺したのです。
40 しかし神はこの方を三日目によみがえらせ、御姿を現わしてくださいました。
41 すべての人々にではありませんが、私たち証人としてあらかじめ選ばれた者たちにです。私たちは、イエスが死人の中から復活された後、共に食べ共に飲みました。
42 それから、イエスは、ご自身が生きている者たちと死んだ者たちとの審判者として、神に定められた方であることを、人々に宣べ伝え、またあかしするようにと、私たちに命じられたのです。
43 預言者たちも皆、イエスを信じるすべての者は、その名によって罪の赦しを受けられると、あかしをしています。」

44 まだペテロがこれらの言葉を語っているうちに、このみことばを聞いていたすべての人々に、聖霊が臨まれた。
45 割礼を受けている信者で、ペテロについてきた人たちは、異邦人たちにも聖霊の賜物が注がれたのを見て、驚愕した。
46 それは、彼らが異言を語って神をほめたたえているのを聞いたからである。そこで、ペテロがこう言った。
47 「この人々が私たちと同じように聖霊を受けたので、誰が水をとどめて、彼らにバプテスマを授けないようにできるでしょうか。」
48 こう言って、ペテロはこの人々に、主の名によってバプテスマを受けるように命じた。それから、彼らはペテロに、さらに数日間滞在するように願った。


   *1  カイザリヤ: 港町の大都市、ヘロデ大王が皇帝に敬意を表して命名、ローマのユダヤ総督が駐在、  § 聖書に出て来る百卒長(百人隊長)には良心的な人が多い、(マタイ8:5、27:54、使徒10:1−48、使徒22:25、26、使徒23:17、23、使徒27:43)  ローマ軍の6000人の大隊の軍団(レギオー)を、60分割して、各100人の部隊(百人隊・ケントゥリア)の隊長。
   *2  ユーセベース(ギ) pious、dutiful、信心深い、忠実な
   *2、22、35  フォベオー 
flight by terrifying、fear、be afraid、(割礼は受けていなくても、) ユダヤ教の神を恐れかしこむ の意(:22、:35、 13:16、26)
   *3  (直訳) 第9時
   *9  (直訳) 第6時
   *10  プロスペイノス(ギ) very hungry、非常に空腹 (聖書でここだけの言葉)、  エクスタシス throwing of the mind out of its normal statetrance; amazement、恍惚状態、驚愕、  恍惚状態の幻はめったにない(民数11:25)
   *15  いつまでも は補足、 コイノウ(ギ、命令、現在、2・単) 普通である、= 神にささげられてきよめられていない の意、(現在形より、律法の慣習から抜け切れず、今も、)きよくないと考え続けている  cf. マルコ7:18、19 では、すでに すべての食物はきよい、と宣言された
   *22  デイカイオス(ギ) righteousjust、義なる、公正な、  レーマタ(ギ、複数・中) 語りかけの言葉、お告げ
   *23  昼過ぎ、しかしこれからカイザリヤへ行く時間でもない、  ヨッパ在住の6人のキリスト者と共に(11:12)
   *29  (直訳) 矛盾なしに、抵触しないで
   *34  口(ストマ)を開く とは、重要なことを語るとき (=マタ5:2)、  エプ アレーセイア(ギ) onby truth、真理によって、  カタラムバノウマイ(現在、1・単) lay hold of、catch; understand、つかむ; 捉える、把握する、理解する
   *45  ドーレア(ギ、単数・女) a gift、贈り物  cf. カーリスマ gift of divine grace、神の恵みの贈り物(Tコリ13:4)
   *46  グロッサ(ギ) tongue; tongue、language or dialect from that of other nations、(体の)舌; 異言 (=2:4、 方言や外国語の言葉を御霊によって語る賜物)



  第11章


 1 さて、異邦人たちも神のみことばを受け入れたということが、使徒たちやユダヤにいる兄弟たちは伝え聞いた。
 2 そこでペテロがエルサレムに上ったとき、割礼を受けていて信じた者たちが、彼に対抗して、言った。
 3 「あなたは、割礼のない人たちのところに行って、食事を共にしたということです。」
 4 そこでペテロは、初めから順を追って説明して、こう言った。

 5 「私がヨッパの町で祈っていると、恍惚状態になって幻を見ました。大きな布のような入れ物が四隅を吊るされて、天から下って来て私のところまで届きました。
 6 注意してよく見ていると、地上の四つ足のもの、野の獣、爬虫類、空の鳥などが入っていました。
 7 それから、『ペテロ。立ち上がって、それらをほふって食べなさい。』と、私に言う声を聞きました。
 8 私は言いました。『出来ません。主よ。私は今までずっと、きよくないもの、汚れたものを、全く食べたことがないからです。』
 9 すると、二度目の御声が来ました。「神がきよめたものを、いつまでも、きよくないと言っていてはならない。」
10 このことが三度もあってから、その入れ物はすぐ天に引き上げられました。
11 すると、見よその後すぐに、カイザリヤから遣わされてきた三人の人が、私がいた家に着きました。
12 御霊が私に、差別しないで彼らと共に行くようにと言われたので、ここにいる六人の兄弟たちも、私と共に出かけて行き、全員がその人の家に入りました。
13 すると彼は私たちに、御使いが彼の家に現れて、告げた事がらを話してくれました。『ヨッパに人を送って、ペテロと呼ばれるシモンを招きなさい。
14 この人は、あなたとあなたの全家族とが救われる言葉を語ってくれます。』
15 そこで私が語り出したところ、聖霊が、ちょうど最初に私たちの上に臨まれたのと同じように、彼らの上に下りました。
16 その時私は、主が、『ヨハネは水でバプテスマを授けましたが、あなたがたは聖霊のうちにバプテスマを受けます。』と語られた言葉を思い出しました。
17 このように、もし、私たちが主イエス・キリストを信じた時に下さったのと同じ賜物を、神が彼らにもお与えになったのであれば、私のような者が、どうして神を妨げることができるでしょうか。」
18 人々はこれを聞いて静まり、そして神に賛美をささげ、こう言った。「それゆえに、神は、異邦人にもいのちに至る悔改めをお与えになった。」と言った。


19 さて、ステパノのことから起った迫害のために散らされた人々は、フェニキヤ、キプロス、アンテオケまで進んで行ったが、ユダヤ人以外の者には、誰にもみことばを語っていなかった。
20 そして、その中に数人のキプロス人とクレネ人がいて、アンテオケに行ってからギリシヤ語を話すユダヤ人に語りかけ、主イエスを宣べ伝えていた。
21 主の御手が彼らと共にあったので、多数の人々が主に立ち帰った。
22 この知らせがエルサレムにある教会の人々の耳に入ったので、彼らはバルナバをアンテオケまで遣わした。
23 彼は、そこに着いて、神の大いなる恵みを見て非常に喜んで、すべての者に、心の備えのパンをしっかり保つようにと、励ました
24 バルナバは、聖霊と信仰とに満ちた立派な人であったからである。こうして、かなり大ぜいの人々が主の民に加えられた。

25 それからバルナバは、サウロを捜しにタルソへ出かけて行き、
26 彼を見つけ出して、アンテオケに連れて帰った。二人は、一年間、共に教会に集い、大ぜいの人々を教えた。このアンテオケで初めて、弟子たちがクリスチャンと呼ばれるようになった。
27 そのころ、預言者たちが、エルサレムからアンテオケに下って来た
28 その中の一人であるアガボという者が立って、世界中に大ききんが起ると、御霊によって預言したが、果してそれがクラウデオ帝の時に起こった。
29 そこで弟子たちは、それぞれの力に応じて、ユダヤに住んでいる兄弟たちに援助の物を送ることに決めた。
30 そして、それをバルナバとサウロとの手を通して、長老たちに送り届けた。


   *3、12  ディアクリーノー(ギ) separate、make a distinction、opposehesitate、区別する、差別する、対抗する、ためらう
   *4  カセクセス(ギ) one after another、in order、順序正しく  ステパノのあかしも聖書の順序で語った
   *20  ヘッレニスタース(ギ) Hellenist、ヘレニスト (6:1 と同じ、 ギリシャ語を話すユダヤ人)  cf. ヘッレーナス ギリシャ人
   *21  主の御手が共にあった = 主の力を表すヘブル的表現
   *23  カリン(ギ、単数・女) <カリス grace、(大いなる)恵み、  カイーロー rejoice、be gradrejoice exceedingly、be well、喜ぶ、大いに喜ぶ、カイーレテ お元気で、   内におられる主にしっかり留まる の意 (備えのパン = 主、みことば、 cf. その向かい側にある七枝の燭台 =聖霊)、  プローセシス shewbread、備えのパン(幕屋、神殿の中で、机に6枚ずつ重ねたパンを2つ置く)、前に置くもの、purpose、目的、  § 彼らヘレニストは、ギリシャ語は話してもユダヤ人なのでこの点は詳しい、  § バルナバは、慰めの子 の意、 本名をヨセフ、レビ族(=祭司系含む) の出身で、キプロス島生まれのユダヤ人
      § ヘレニスト(異邦に住むユダヤ人)は、パレスチナのユダヤ人の数倍いた(皇帝アウグストの時代、帝国内のユダヤ人は450万人(エジプトとシリヤ各100万)、帝国内全人口の7%がユダヤ人)、兵役・皇帝礼拝の義務はない、多くが国の都市の市民権と、ローマ市民権の両方を持つ (パウロも生まれながらローマ市民権を持っていた)

   *26  クリスティアノス(ギ) キリストの徒弟 (アンテオケの異教徒たちが、自分たちの宗教の徒弟と同じようなものと考えて、命名)
   *27  この当時も、「預言者の群れ」を形成していた と考えられる
   *28  クラウディオ帝の帝位: AD41−54  この時期、パレスチナ全域(=全世界)にしばしば飢饉があった  → :29 異邦のアンテオケ教会から物資をユダヤの教会へ



  第12章


 1 そのころ、ヘロデ王は教会のある者たちを迫害しようとして、その手を伸ばし、
 2 ヨハネの兄弟ヤコブを剣で切り殺した。
 3 そして、それがユダヤ人たちを喜ばせたのを見て、さらにペテロをも捕えにかかった。それは種なしパンの祝いの時のことであった。
 4 ヘロデはペテロを捕えて牢に入れ、四人一組の兵士四組に引き渡して、見張りをさせた。過越しの祭りの後で、彼を民衆の前に引き出す考えだったからである。
 5 こうして、ペテロは牢に入れられていた。一方、教会では、彼のために熱心な祈りが神にささげられ続けていた。
 6 ヘロデが彼を引き出そうとしていた日の前夜、ペテロは二重の鎖につながれ、二人の兵士たちの間で熟睡していた。番兵たちは戸口で牢を見張っていた。
 7 すると、見よ。主の御使いがそばに立ち、光が牢の内部を照らした。そして御使いはペテロのわき腹を叩いて起こし、「急いで起き上がりなさい。」と言った。すると鎖が彼の両手から、はずれ落ちた。
 8 御使いが、「着物の帯を締め、くつを履きなさい。」と言ったので、彼はその通りにした。それから、「上着を着て、ついて来なさい。」と言われたので、
 9 ペテロはついて出て行った。彼には御使いを通して起こることが現実のこととは知らず、ずっと幻を見ていると思っていた。
10 彼らは第一、第二の衛所を通りすぎて、町に通じる鉄門のところに来ると、それがひとりでに開いた。そこを出て一つの通路に進むと、ただちに御使いは彼を離れ去った。
11 その時ペテロは我に返って、言った。「今、確かに分かった。主が御使いを遣わして、ヘロデの手から、またユダヤ人たちの期待していた悪事から、私を救い出して下さった。」
12 ペテロは自分でよく理解して、マルコと呼ばれているヨハネの母マリヤの家に行った。その家には大ぜいの人が集まって、祈っているところだった。
13 彼が門の戸を叩いたところ、ロダという女中が応対に出てきたが、
14 ペテロの声だと分かって、喜びのあまり門を開けもしないで中へ走って行き、ペテロが門の前まで来ていると報告した。
15 人々は、「あなたは気が違っている。」と言ったが、彼女は間違いないと言い張った。そこで彼らは「では、ペテロの使いの者だろう。」と言った。
16 しかし、ペテロが門を叩き続けるので、彼らが開けると、そこにペテロがいたのを見て、驚いた。
17 ペテロは手を振って彼らを静かにさせ、主が牢から彼を連れ出して下さったいきさつを説明し、「このことを、ヤコブや他の兄弟たちに伝えて下さい。」と言い残して、他の所へ出て行った
18 翌日になって、ペテロはどうなったのかと、兵士たちの間で大変な騒ぎが起こった。
19 ヘロデはペテロを捜したが見つからないので、番兵たちを取り調べたうえ、彼らを連れて行って処罰することを命じ、それから、ユダヤからカイザリヤに下って行って、そこで時を過ごした。

20 さて、ヘロデは、ツロとシドンとの人々に対し、戦争になりかねないほどの敵意を抱いていた そこで、彼らは皆でそろって訪問し、王の侍従官ブラストに取り入って、和解を求めた。それは、その地方が、王の国から食糧を得ていたからである
21 定められた日に、ヘロデは王服を着て、王座に座り、彼らに向かって演説を始めた。
22 すると群衆は、「これは神の声だ、人間の声ではない。」と叫び続けた
23 するとたちまち、主の御使いが彼を打った。彼が神に栄光を帰さなかったからである。彼はうじ虫どもに食い尽くされて息が絶えてしまった。
24 こうして、主のみことばは、ますます盛んになり、広まっていった。
25 バルナバとサウロとは、その任務を果したのち、マルコと呼ばれていたヨハネを連れて、エルサレムから帰ってきた。


   *1  ヘロデ・アグリッパ一世(ヘロデ大王の孫): AD37王位、41年ユダヤとサマリヤを併合、44年死より、12章の記事はこの4年間の出来事。 ユダヤ人への人気取り政策のため、ユダヤ教の偏狭な民族主義から脱却し始めていたキリスト者を迫害した
   *2  マタイ4:21、  § ヤコブは、ゼベダイの子、使徒ヨハネの兄弟、12使徒の一人であり、一貫して主イエスの側近であり、使徒の中で最も先に、AD44年頃、殉教した。(ステパノの殉教はAD35、6年) 使徒ヨハネが100歳近くまで長生きしたのと好対照であ (cf1. イエスの兄弟ヤコブ(ガラ1:19)は、ヤコブの手紙の筆者で、自身をキリストのしもべと称する(ヤコブ1:1)、エルサレム教会の長老、教師(ヤコブ3:1)であり、AD62年エルサレムで殉教、  cf2. 使徒の小ヤコブ(マコ15:40)、アルパヨの子(マコ3:18等))
   *3  過越しの祭り(1日) + 種なしパンの祭り(7日) = 種なしパンの祝い(8日間)
   *11  悪事 は補足
   *12  ヨハネ・マルコ: ヘレニストで、ユダヤ名がヨハネ、マルコの福音書の記者、パウロの助手として小アジアに行き、そこでパウロらと別れ帰った(15:38)、 後にペテロとの間には師弟関係があった(Tペテ5:13、 「子」は、テクノン(ギ、信仰の子)ではなくフィオス(ギ、弟子)という言葉を用いている)
   *17  イエスの兄弟のヤコブ、エルサレム教会の長老、  ペテロは、ヘロデ・アグリッパの捜索隊から逃れるために他の所に姿をくらました
   *20  シュモマケーオー(ギ、動詞) carry on war with great animosity、戦争になる敵意を持つ (ここだけの言葉)、  § ツロとシドンの町は、昔からユダヤから食料の供給を受けていた(T列5:11、エゼ27:17)が、何らかの理由で領主アグリッパの機嫌を損ねていた
   *22  ヘロデの機嫌を取ろうとして、人々はこう叫んだ
   *23  スコレコーブロートス(ギ、形容詞) eaten of worms、うじ虫どもに食われる (ここだけの言葉)  cf. スコーレクス うじ虫、長虫 (マコ9:44、46、48)  § ヨセフォスの「古代史」 X I X (19)・8・2 によると、アグリッパはローマ風の飾り立てた衣装を着て出席したので、日の光が輝き人々は神と崇めたが、凶兆のふくろうが飛んできて、激しい腹痛が起こり、その5日後に死亡した とある
   *25  § 彼らはエルサレム教会に捧げものを運び(11:30)、アンテオケに戻る際に、バルナバのいとこのヨハネ・マルコ (コロ4:10)を伴っていった。 このAD44年のヘロデの死の事件の後に、使徒パウロによる、本格的な宣教の旅が始まる




  第13章


 1 さて、アンテオケにある教会には、バルナバ、ニゲルと呼ばれるシメオン、クレネ人ルキオ、国主ヘロデの乳兄弟マナエン、およびサウロなどの預言者や教師がいた。
 2 彼らが主に礼拝をささげ、断食をしていると、聖霊が、「、バルナバとサウロとを、わたしのために取り分けて、わたしが彼らを召した働きに就かせなさい。」と告げた。
 3 そこで彼らは、断食と祈りとをして、手を二人の上に置いた後、出発させた。

 4 二人は聖霊に送り出されて、セルキヤにくだり、そこから舟でキプロスに渡った。
 5 そしてサラミスに着くと、ユダヤ人の諸会堂で、神のみことばを宣べはじめた。彼らはヨハネを助手として連れていた。
 6 島全体を巡回して、パポスまで行ったが、そこでユダヤ人の魔術師、バルイエスというにせ預言者に出会った。
 7 彼は地方総督セルギオ・パウロのところに出入りをしていた。この総督は賢明な人であって、バルナバとサウロとを招いて、神のみことばを聞こうとした。
 8 ところが魔術師エルマ ・・・ 訳すと、彼の名は「賢者 ・・・ は彼らに反対して、総督を信仰から外れさせようとした。
 9 サウロ、別名でパウロは、聖霊に満たされ、彼をにらみつけて
10 言った。「ああ、あらゆる欺き狡猾さで満ちている悪魔の子よ。すべての公義の敵よ。主のまっすぐな道を曲げることを止めないのか。
11 見よ。今、主の御手がおまえの上にあって、おまえは盲目になり、当分の間、日の光が見えなくなるのだ。」 ただちに、と暗やみが彼を覆ったので、手を引いてくれる人を捜しながら歩き回った。
12 総督はこの出来事を見て、主の教えに驚き打たれ、そして信じた。

13 パウロとその一行は、パポスから船出して、パンフリヤのペルガに渡った。しかし、ヨハネは一行から離れて、エルサレムに帰ってしまった
14 しかし二人は、ペルガからさらに進んで、ピシデヤのアンテオケに行き、安息日に会堂に入って席に着いた。
15 律法と預言書の朗読の後、会堂管理人たちが彼らのところに人をやって、「兄弟たちよ、もしあなたがたのうち、どなたか、この人々に何か奨励の言葉がありましたら、どうぞお話し下さい。」と言わせた。
16 そこでパウロが立ち上がり、片手を振りながら言った。「イスラエルの人たち、ならびに神を恐れる方々。よくお聞き下さい。

17 この民イスラエルの神は、私たちの先祖を選び、エジプトの地で寄留者であった間にこの民を大いに繁栄させ、御腕を高くさし上げて、彼らをその地から導き出されました。
18 そして約四十年に渡って、荒野で彼らの不信仰を耐え忍ばれ
19 カナンの地では七つの民族を倒し、その地を彼らに相続財産として分け与えられました。
20 それらのことが約四百五十年の年月に及びました。その後、預言者サムエルの時代まで、神はさばき人たちを遣わされました。
21 それから、人々が王を要求したので、神はベニヤミン族の人、キスの子サウロを四十年間、彼らに与えられました。
22 それから神は彼を退け、ダビデを立てられ王とされましたが、彼についてあかしをしてこう言われました。『わたしはエッサイの子ダビデを見出した。彼はわたしの心にかなう者で、わたしの思うところすべてを実行する。』
23 神は約束にしたがって、このダビデの子孫の中から、救い主イエスをイスラエルに送られましたが、
24 この方が来られる前に、ヨハネがイスラエルのすべての民に、悔改めのバプテスマを宣べ伝えていました。
25 ヨハネはそのいのちの行程を終えようとするときに、こう言いました。『私はあなたがたが思っている者ではありません見よ。私の後から来られる方がいます。私はその方のくつ紐を解く値うちもありません。』

26 兄弟たち、アブラハムの子孫の方々、また、皆さんの中の神を恐れる方々。この救いのみことばは、あなたがたに送られたのです。
27 それは、エルサレムに住む人々や彼らの指導者たちは、このイエスを認めず、安息日ごとに朗読される預言者の言葉を理解できず、イエスを罪に定め、その預言を成就させてしまいました。
28 また、死に相当する罪状が見出せなかったのに、ピラトに強要して、イエスを上げて除いたのです。
29 そして、人々は、イエスについて書いてあるすべての事がらを成し遂げてから、イエスを木から取り降ろして墓に葬りました。
30 しかし、神はイエスを死人たちの中から、よみがえらせたのです。
31 イエスは、ガリラヤからエルサレムへ一緒に上った人たちに、多くの日に渡って姿を現わされ、そして彼らは、人々に対して、イエスの証人たちとなっています。

32 そして私たちは、神が先祖たちに対してなされた約束が現われたことについて、あなたがたに福音を宣べ伝えているのです。
33 神は、イエスをよみがえらせて、彼らの子孫たち、すなわち私たちに、この約束を完成されました。それは詩篇の第二篇にも、『あなたは、わたしの子。きょう、わたしはあなたを生んだ。』と書いてある通りです。
34 また、神がイエスを死人たちの中からよみがえらせて、もはや永遠に朽ちることのない方とされたことについては、このように言われました。『わたしは、ダビデへの聖なる、信頼できるものを、あなたがたに与える。』
35 なぜなら、他の箇所でもこう言っておられるからです。『あなたの聖者が朽ち果てるようなことは、お許しになりません。』
36 それは、事実、ダビデは、神のみこころによってその時代の人々に仕えましたが、やがて眠りにつき先祖たちの中に加えられて、ついに朽ち果ててしまったからです。
37 しかし、神がよみがえらせた方は、朽ち果てることがなかったのです。

38 ですから、皆さん。兄弟たち。この事をよく知っておいてください。すなわち、この方を通して私たちの罪が赦される、という福音が宣べ伝えられていることを。
39 そしてモーセの律法では義とされることができなかったすべての事についても、信じる者は誰でも、この方によって義とされるのです。
40 それゆえ、預言者たちの書に書いてある次のことが、あなたがたの上に下って来ないように、気をつけなさい。
41 『見よ。あざける者たち。驚け。そして滅び去れ。わたしは、おまえたちの時代に一つの事をする。それは、たとえ誰がおまえたちに説明しても、とうてい信じられないほどのことである。』

42 二人が会堂を出る時、人々は次の安息日にも、これと同じ話をしてくれるようにと頼んだ。
43 そして集会が終ってからも、大ぜいのユダヤ人や神を敬う改宗者たちが、パウロとバルナバについて来た。そこで彼らは、続けて神の恵みに留まっているように語った。
44 次の安息日には、ほとんど町中の人々が、神のみことばを聞きに集まって来た。
45 するとその群衆を見たユダヤ人たちは、ねたみに満たされ、パウロの語ることの反対を言い、また誹謗中傷した。
46 パウロとバルナバは大胆に語った。「神のみことばは、まず、あなたがたに語られなければならなかったのです。しかし、あなたがたはそれを退け、永遠のいのちに価しない者として自分自身をさばいているのです。見よ。私たちは、これから異邦人たちの方へ方向転換します。
47 主は私たちに、こう命じておられるからです。『わたしは、あなたを立てて異邦人の光とした。あなたが地の果までも救いをもたらすためである。』
48 異邦人たちはこれを聞いて大いに喜び、主のみことばを賛美し続けた。そして、永遠のいのちに至るように定められていた者は皆、信じた。
49 こうして、主のみことばは、この地方全体に広まって行った。
50 ところが、ユダヤ人たちは、神を敬う貴婦人たちや町の有力者たちを煽動して、パウロとバルナバを迫害させ、彼らをその州の境界から追い出させた。
51 二人は、彼らに対し足のちりを払い落して、イコニオムへ行った。
52 弟子たちは、ますます喜びと聖霊とに満たされていた。


   *1  パウロの伝道はすべて、アンテオケ教会から遣わされ、祈られ、支えられた。  ヘロデ大王の子、アンティパスの乳兄弟(王子といっしょに宮廷で養育された の意)、マナエン = メナヘム(ヘ) 慰め手、  五役者の預言者、教師 (エペ4:11)。 新約時代にも、公然と預言者職が認められている
   *2  アフォリゾー(ギ) 取り分ける、区別する
   *3  § パウロの第一回伝道旅行の開始、  主の本格的な任務に就かせるための油注ぎを注ぎ入れること。 あらかじめ主に語られた召命の言葉が必要 = 「按手礼」、  cf. タッチ、聖霊の満たし
   *5  サラミス: キプロス島の東岸の、商業の町で、ユダヤ人も多かった、  初めはシナゴーグで、ユダヤ人(ヘレニスト)を中心に伝道した、  トン ロゴン(ギ、単数・男) the word、みことば(単数)、  ヨハネ・マルコ 12:12
   *6  パポス: 島の西端、首府、近くの旧都にはヴィーナス崇拝の根拠地がある、  バルイエス son of jesus、救いの子 の意、 神の名を語って魔術を行なっているこのユダヤ人を、紛らわしいので ”にせ預言者”と書いている
   *8  エルマ:  マゴス(ギ) 賢者、博士 (マタ2:1) = アリム(アラビア語)よりエルマへ転化
   *9  § ローマ市民名が、パウロ、 今後すべて「パウロ」の表示になる。 パウロス(ギ) = パウルス(ラテン) 「小さい」 の意
   *10  ドーロス(ギ、名詞) craft、deceit、巧妙さ、欺瞞、  ラディオールギア(形容詞) unscrupulous、cunning、無節操な、狡猾な、 § エバへの欺きと、狡猾なことが、園のへびの特徴だった(創世3:1、4、5)
   *13  パウロ主体の書き方: ホイ ペリ トン パウアロン(ギ) the ones concerning(about) the Paul、  パンフリヤのペルガ: 小アジヤ南部の港町に再上陸、  ヨハネ・マルコは早くもここで脱落、理由は明確でない。 バルナバの郷里(キプロス)伝道は終わったのに、パウロ主体でさらに進んでいったのを嫌ってか
   *15  ピシデヤのアンテオケ: シリヤのアンテオケと区別するためこう呼ばれたが、実際はピシデヤの州境いの外にあり、さらに内陸の ガリラヤ州の中心地だった
   *16  片手を振って聴衆を静め、立ったまま説教する、ギリシャの演説家のスタイル、cf. イエス 座ったまま説教、   神を恐れる = ユダヤ教の神を信奉する、ユダヤ教となった異邦人
   *17  § ステパノと同様にイスラエルの歴史を回顧しつつ、結論でこの「神の恵み」を語る。 パウロの異邦人伝道の召しの通り、大勢の異邦人たちが救われたが、ユダヤ人たちは ねたみに燃えた
   *18  トゥロポフォレオー(ギ) bear one's manner、〜のやり方(態度、性質)を耐え忍ぶ、 不信仰を は補足
   *20  エジプト寄留400年 + 荒野の放浪40年 + ヨルダン川から相続地まで 10年 (ヨシュ14:1−)、  さばき人: クリテース(ギ) judge、士師、さばきつかさ
   *22  Tサム13:14の変形
   *23  (直訳) seed、種(単数)
   *25  ヨハ1:20
   *33  詩篇2:7
   *34  イザヤ55:3 (ただし、70人訳×)  「わたしはあなたがたととこしえの契約、ダビデへの変わらない愛の契約を結ぶ」○
   *35  詩篇16:10 (×)  「まことに、あなたは、私のたましいを よみに捨て置かず、あなたの聖徒に墓の穴をお見せにはなりません。」○
   *41  ハバクク1:5
   *47  イザヤ49:6
   *51  ルカ9:5、10:10−12



  第14章


 1 そして、イコニオムでも同じような事が起こった。彼らはそこのユダヤ人の会堂に入って語ったところ、ユダヤ人もギリシヤ人も大ぜい信じたのである。
 2 ところが、不信者のユダヤ人たちは、異邦人たちの思いを扇動して、兄弟たちに対して悪意をいだかせた。
 3 それにもかかわらず、彼らは十分に多くの時をそこで過ごして、大胆に主について語った。主は、主の大いなる恵みのあかしをされ、彼らの手を通してしるしと奇跡が起こるようにされた。
 4 そこで町の人々が二派に分かれ、ある人たちはユダヤ人たちの側に、ある人たちは使徒たちの側についていた。
 5 しかし、ついに、異邦人たちやユダヤ人たちが役人たちと一緒になって、使徒たちをはずかしめ、石で打とうという暴力的な動きに出たので、
 6 彼らはそれに気がついて、ルカオニヤの町々、ルステラ、デルベおよびその付近の地へ逃れ去り、
 7 そこで福音を宣べ伝え続けた。

 8 ところが、ルステラに足のきかない人が、ずっと座っていた。彼は母の胎から出た時からの足なえで、歩いた事がなかった。
 9 この人がパウロが語るのを聞いていたが、パウロは彼をじっと見て、彼が救われる信仰を持っているのを認め、
10 大声でこう言った。「自分の足で、まっすぐに立ち上がりなさい。」 すると彼は飛び跳ねながら、歩き始めた。
11 群衆はパウロのしたことを見て、声を張り上げ、ルカオニヤの地方語で、「神々が人間の姿をとって、私たちのところに降臨されたのだ。」と叫んだ。
12 彼らはバルナバをゼウスと呼び、パウロはおもに語る人なので、彼をヘルメスと呼んだ。
13 そして、郊外にあるゼウス神殿の祭司が、彼らにに犠牲をささげようとして、群衆といっしょに、雄牛数頭と花輪を門の前に持ってやって来た。
14 使徒たちバルナバとパウロとは、これを聞いて自分の上着を引き裂き、群衆の中に飛び込んで行き、叫んで、
15 こう言った。「皆さん、なぜこんな事をするのですか。私たちも、皆さんと同じ感情を持つ人間です。そして、あなたがたがこのような偶像を捨てて、天と地と海と、その中のすべてのものを造られた、生ける神に立ち帰るようにと、福音を宣べ伝えている者たちです。
16 神は、過ぎ去った時代には、すべての国の人々が、それぞれの道を行くのを許しておられましたが、
17 それでも、ご自分のことを、あかししないでおられたのではありません。すなわち、神は良い働きをなされ、あなたがたのために天から雨を降らせ、実りの季節を与え、食物と喜びで私たちの心を満たしてくださっているのです。」
18 こう言って、やっとのことで、彼らは、群衆が自分たちに犠牲をささげるの止めさせた。

19 ところが、あるユダヤ人たちはアンテオケやイコニオムからやって来て、群衆を説き伏せて、パウロを石で打ち、死んでしまったと思って、彼を町の外に引きずり出した。
20 しかし、弟子たちがパウロを取り囲んでいる間に、彼は起き上がって、町へ入って行った。そして翌日には、バルナバと共にデルベに向けて出発した。
21 その町で福音を宣べ伝えて、大ぜいの人を弟子とした後、ルステラ、イコニオム、アンテオケに帰って行き、
22 弟子たちの心をさらに力づけ、信仰にしっかり留まるようにと勧め、「私たちが神の御国に入るのには、多くの苦難を経なければならない。」と語った。
23 また、教会ごとに彼らのために長老たちを選び出し、断食をして祈り、彼らを彼らが信じている主の御前にゆだねた。
24 それから、彼らはピシデヤを通過して、パンフリヤに来たが、
25 ペルガでみことばを語った後、アタリヤに下り、
26 そこから船でアンテオケに帰った。そこは、彼らが今、成し終えた働きのために、神の恵みをゆだねられて、彼らが送り出された場所であった。
27 彼らがそこに到着すると、教会の人々を呼び集めて、神が彼らと共におられて行なって下さった数々のこと、また異邦人への信仰の扉を開いて下さったことを報告した。
28 そして、彼らは短かからぬ期間、弟子たちと共に過ごした。


   *1  イコニオム: アンテオケの南東144km、エペソとローマに通じる要路なので繁栄していた
   *2  アペイセオー(ギ) refuse belief、not to comply with、応じない、受け入れない、不信仰の、(= ヨハ3:36)、  プシュケー(ギ) 息、(肉の)いのち、たましい、心・思い
   *6  ルステラ: イコニオムの南40km
   *4、14  アポストロイス(ギ、複数・男) apostles、使徒たち:  14節にも、「使徒たちバルナバとパウロは、」とある、  § すなわち、バルナバも(小羊の12使徒ではないが、)五役者の「使徒」であることになる。 アンテオケ教会から、聖霊に示され按手礼によって遣わされた(13:2、3)だけではなく、それ以前に、(パウロと同様に、)個人的に直接、イエスが任命された (エペ4:11)
   *12  ヘルメス ギリシャ神話の主神ゼウスの子で、神々の使者
   *15  トーン マタイオーン(ギ) devoid of force、useless、of no purpose、力の無いもの、役に立たないもの、(冠詞を付けて)偶像
   *19、20  Uテモ3:11 に、当時の迫害について述べている、  デルベ: イコニオムの南72kmの 辺境の町
   *21  ガイオはこの町で救われた(20:4)
   *25  13:13
   *28  クロノン ウーク オリゴン(ギ) time not brief、短いと言えない期間、  § 第1回伝道旅行から戻って、おそらく1年以上、アンテオケで活動した



  第15章


 1 さて、ある人たちがユダヤから下ってきて、兄弟たちに、「もしあなたがたが、モーセの慣習による割礼を受けなければ、救われない。」と、教えを説いていた。
 2 そこで、パウロとバルナバにとって、彼らに対して、少なからず対立と論争が起こったので、パウロ、バルナバ、その他数人の者がエルサレムに上り、使徒たちや長老たちと、この問題について話し合うことになった。
 3 彼らは教会の人々に見送られ、フェニキヤ、サマリヤを通って行き、道の途中で、異邦人たちの改宗について詳細に物語ったので、すべての兄弟たちを大いに喜ばせた。
 4 エルサレムに着くと、彼らは教会と使徒たち、長老たちに迎えられて、神が彼らと共にいて行なわれたことを、すべて報告した。

 5 ところが、パリサイ派から信仰に入った人たちの幾人かが立ち上がって、「彼らに割礼を施し、またモーセの律法を守らせるべきである。」と主張した。
 6 そこで、使徒たちや長老たちが、この問題について審議するために集まった。
 7 激しい争論が起こった後、ペテロが立って言った。「皆さん。兄弟たち。ご承知のとおり、異邦人が私の口から福音のみことばを聞いて信じるようにと、神は、初期の頃から、あなたがたの中から私をお選びになりました。
 8 そして、人の心を知っておられる神は、私たちへと同様に、聖霊を彼らにも与えて下さることによって、彼らのためにあかしをされ、
 9 また、私たちと彼らとの間に、何の差別もなさらず、その信仰により彼らの心をきよめてくださいました
10 それでは、今更なぜ、あなたがたは、私たちの先祖たちも私たちも負うことができなかったくびきを、あの弟子たちの首にかけて、神を試みるのですか。
11 確かに、主イエスの大いなる恵みを通して救われたことを、私たちは信じていますが、彼らも同様なのです。」
12 すると、全会衆は黙ってしまった。それから、バルナバとパウロとが、彼らを通して異邦人の間で神が行われた数々のしるしと奇跡を、報告するのを聞いた。

13 彼らが語り終え、ヤコブはそれに答えて、こう言った。「兄弟たちよ、私の意見を聞いてください。
14 まず初めに、神が、異邦人たちを顧みられ、その中から御名で呼ばれる民を獲得された次第は、シメオンがすでに説明した通りです。
15 預言者たちの言葉も、それと一致していて、こう書いてあります。
16 『その後、わたしは帰ってきて、倒れたダビデの天幕を建て直し、廃墟と化した箇所を立て直し、それを元通りにしよう。
17 残っている人々も、わたしの名を唱えているすべての異邦人も、主を尋ね求めるようになるためである。
18 世の初めからこれらの事を知らせておられる主が、こう言われる。』
19 それゆえ、私の判断では、異邦人の中から神に立ち返っている人たちを、煩わせてはいけません。
20 ただ、偶像に供えて汚れた物、不品行、絞め殺したもの、血、から回避するよう、彼らに書き送りたいと思います。
21 それは、古い時代から、どの町にもモーセの律法を宣べ伝える者がいて、安息日ごとにそれを諸会堂で朗読されているからです。」
22 そこで、使徒たちと長老たちは、全教会と共に、彼らの中から人々を選んで、パウロとバルナバと共に、アンテオケに派遣することに決めた。選ばれたのは、バルサバと呼ばれるユダと、シラスであったが、どちらも兄弟たちの間で指導する者だった。
23 この人たちに託され、こう書き送られた。「あなたがたの兄弟である使徒および長老たちから、アンテオケ、シリヤ、キリキヤにいる異邦人の兄弟たちへ、喜びのごあいさつをいたします
24 こちらから行ったある者たちが、私たちからの指示も受けていないのにいろいろなことを言って、あなたがたを動揺させ、あなたがたの心を乱したと伝え聞きました。
25 そこで、私たちは人々を選んで、愛するバルナバおよびパウロと共に、あなたがたのところへ派遣することを、全会一致で決めました。
26 この人たちは、私たちの主イエス・キリストの名のために、いのちを差し出した人々ですが、
27 彼らと共に、ユダとシラスとを派遣する次第です。この人たちは、あなたがたに、同じ趣旨のことを、口頭でも伝えるはずです。
28 すなわち、聖霊と私たちとは、次の必要な事がらの他は、どんな負担をも、あなたがたに負わせないことに決めました。
29 それは、偶像に供えたものと、血と、絞め殺したものと、不品行とを、避けるということです。これらのものから遠ざかっていれば、それで結構です。よろしくお願いいたします
30 さて、一行は人々に見送られて、アンテオケに下って行き、全教会員を集めて、その書面を手渡した。
31 それから、それが朗読され、人々はその勧めの言葉を大いに喜んだ。

32 ユダとシラスとは共に預言者であったので、多くの言葉をもって兄弟たちを励まし、また建て上げた
33 二人は、しばらくの時をそこで過ごしてから、兄弟たちのところから平安のうちに、彼らを遣わした人々のところに帰って行った。
34 にもかかわらず、シラスだけは、そこに留まることにした
35 パウロとバルナバとはアンテオケに滞在を続けて、他の多くの人たちと共に、主のみことばを教え、また、宣べ伝えた。

36 さて、幾日か経って後、パウロはバルナバに言った。「以前に主のみことばを宣べ伝えた、すべての町々の兄弟たちがどうしているのか、もう一度訪問して、見て来ようではありませんか。」
37 そこで、バルナバはマルコというヨハネも一緒に連れて行くつもりでいた。
38 しかし、パウロは、以前にパンフリヤで一行から離れて、働きをするために共に来なかった者は、連れて行かない方が良いと考えた。
39 こうして激しい怒りによる分裂が起こり、その結果、彼らは互に別行動となり、バルナバはマルコを連れてキプロスに渡って行き、
40 パウロはシラスを選び、兄弟たちから神の恵みを預け渡され、出発した。
41 そしてパウロは、シリヤ、キリキヤの地方を通って、諸教会を建て上げた


   *1  § 救いの条件に、十字架以外のものが入っているので、異端である、  ガラテヤ2:12より、ヤコブのところから来た、という人々
   *2  アンテオケ教会の中で、パウロ派とエルサレム派が分かれて争った の意、  § パウロの二度目のエルサレム、すでにダマスコ脱出から、3年(ガラ1:18)+14年 以上経っている (ガラ2:1)
   *8、9  ドゥース(ギ、アオ過去2) gave、(聖霊を)与える と、 カサリサス(アオ過去2) cleaned、きよめる、 は同時に行われたことを強調
   *11  大いなる は補足
   *14  シメオン = シモン・ペテロ
   *16、17、18  アモス9:11、12、  ただし 70人訳(△)、 ルカがヘブル語本文を70人訳旧約聖書から引用、あるいは、ギリシャ語で会議した?  スケネー(ギ) tenttabernacle、(あるいは)幕屋 (ヘブル語原文では 仮庵)
   *20  トーン アリスゲーマトーン トーン エイドーローン(ギ、所有格、複・中) the pollutions of the idols、偶像にささげられて汚れたもの(ダニ1:8、Tコリ8:7−13)、  ポルネイーア(単・女) 広義の姦淫で、売春、未婚性交、不貞などすべて (マコ7:21; レビ18:6−8)、  トウ プニクトー(単・中) strangled、(首を)絞め殺されたもの (創世9:4) § 血抜きが十分できないため、  ハイマトス(所有格、単・中) <ハイマ blood、血 (レビ3:17)
   *21  § 逆に、モーセの律法を朗読する慣習の無い異邦人は、(キリストご自身が戒められた、姦淫の件以外は、)これらに束縛される必要が無い ことになる。 要は、偶像に親しんできた異邦人信者につまずきを与えないための配慮(Tコリ8:7−13)、 また、律法に親しんできたユダヤ人信者への配慮(ローマ14:20−23)
   *22  シラス: 預言者であり、 ローマ名シルワノとして、Uコリ1:19、Tテサ1:1、Uテサ1:1、Tペテ5:12
   *23  カイレイン(ギ、命令) be rejoicing、(直訳) 喜びなさい、(ギリシャ語の手紙のあいさつの定型文)、  この手紙は、書き出しのあいさつの文面がヤコブの手紙に似ているので、ヤコブの著といわれる (cf. パウロは、恵みと平安あれ、をつける)
   *29  エッロースセ(ギ、命、2・複) <ローニュミ (直訳) 健康であれ、強くあれ、 (定型文) farewell、ごきげんよう、さようなら (別れの挨拶)
   *32、41  § 旧約時代の預言者と異なる、五役者の預言者(エペソ4:11)、  ロゴウ(ギ、単数・男) (冠詞が無いので、みことば、ではなく) 言葉、(この場合、)預言の言葉、   エピステリゾー establish besides、strengthen more; confirm、さらに設立する、より強める; 確認する、 :41より、教会を力付ける、建て上げる、堅固にする (使徒の働き だけの言葉)
   *37  12:12、13:13
   *39  パロクシュスモス(ギ、名詞、単・男) 激しい怒り (ここと、ヘブ10:24 奮い立たせる のみ)、 単にマルコのことだけでなく、割礼問題の確執もあった(ガラ2:13)、 ただし、後にパウロは成長したマルコを、「同労者」と呼んでいる (ピレ:24、コロ4:11、Uテモ4:11)
   *40  § パウロの 第2回伝道旅行の開始、 使徒 + 預言者 の組み合わせ。(パウロとバルナバは、使徒+使徒 の組み合わせ) 完全な異邦のマケドニア(ヨーロッパ)宣教を含む、非常に実り多い宣教となった (イザヤ66:19の成就)
   *41  使徒、預言者の働きは、教会形成(エペ2:20)だけでなく、教会を、キリストの体に 建て上げる 働きをする



  第16章


 1 それから、彼はデルベに行き、次にルステラに行った。そして、見よ。そこにテモテという名の弟子がいた。信者のユダヤ婦人を母に持ち、ギリシヤ人を父とし、
 2 ルステラとイコニオムの兄弟たちの間で、評判の良い人物だった。
 3 パウロはこのテモテを連れて行きたかったので、その地方にいるユダヤ人の手前、まず彼に割礼を受けさせた。彼の父がギリシヤ人であることは、皆が知っていたからである。
 4 それから彼らは通る町々で、エルサレムの使徒たちや長老たちの取り決めた教義を守るようにと、人々にそれを渡した。
 5 こうして、諸教会はその信仰が堅固なものとなり、日ごとに人数が増していった。
 6 それから彼らは、アジヤでみことばを語ることを聖霊に禁じられたので、フルギヤ、ガラテヤ地方を通って行った。
 7 そして、ムシヤに向かう所に来ていたが、ビテニヤに進んで行こうとしたところ、御霊がこれを許さなかった。
 8 それで、ムシヤを通り過ぎて、トロアスに下って行った。
 9 ここで夜、パウロは一つの幻を見た。一人のマケドニヤ人が立って、「マケドニヤに渡って来て、私たちを助けて下さい。」と、彼に懇願するのであった。

10 パウロがこの幻を見た時、これは彼らに福音を宣べ伝えるために、主が私たちを呼ばれたと確信して、私たちは、ただちにマケドニヤに出発する手段を探した
11 そこで、私たちはトロアスから船出して、サモトラケに直航し、翌日ネアポリスに着いた
12 そこからピリピへ行った。これはマケドニヤのこの地方第一の町で、植民都市であった。私たちは、この町に数日間滞在した。
13 ある安息日に、私たちは町の城門を出て、祈り場があると思って、川の岸辺に行った。そして、そこに座り、集まってきた婦人たちに話をした。
14 ところが、テアテラ市の紫布の商人で、神を敬うルデヤという婦人が聞いていた。主は彼女の心を開いて、パウロが語る事がらに耳を傾けさせた。
15 そして、この婦人もその家族も、共にバプテスマを受けたが、その時、彼女は、「もし私を、主を信じる者と認めてくださるなら、どうぞ私の家に来て、泊まって下さい。」と言って頼み込み、強いてそうさせた。

16 ある時、私たちが、祈り場に行く途中、占いの霊にとり憑かれた女奴隷に出会った。彼女は占いをして、その主人たちに多くの利益を得させていた者である。
17 この女は、パウロや私たちの後について回り、「この人たちは、いと高き神のしもべたちで、あなたがたに救いの道を伝えている人たちです。」と、叫び続けて言った。
18 そして、こんなことを幾日間も続けたので、困り果てたパウロは振り返って、その霊に、「イエス・キリストの名によって命じる。彼女から出て行け。」と言った。すると、同時に霊が出て行った。
19 彼女の主人たちは、自分らの利益を得る望みが無くなったのを知って、パウロとシラスとを捕え、役人に引き渡すため広場に引っ張って行った。
20 それから、彼らを長官たちの前に連れて来て、こう言った。「この人たちはユダヤ人でありまして、私たちの町をかく乱し、
21 私たちローマ人が、受け入れるのも、行なうのも、合法でない風習を宣伝しているのです。」
22 群衆も彼らに反対して立ち上がったので、長官たちは彼らの衣類をはぎ取って、棒で打つことを命じた。
23 そして、彼らに多数回、打たせた後、牢に入れ、看守にしっかり番をするようにと命じた。
24 この命を受けた看守は、彼らを奥の牢に入れ、彼らの足に足かせをかたく掛けておいた。
25 真夜中ごろ、パウロとシラスとは、神に祈りつつ、賛美の歌を歌っていた。囚人たちも聞き入っていた。
26 ところが突然、大きな地震が起って、牢屋の土台が揺れ動き、全部の扉がたちまち開いて、すべての者の鎖が解けてしまった。
27 看守は目を覚まし、牢のそれぞれの扉が開いているのを見て、囚人たちが逃げてしまったものと思い、剣を抜いて自殺しようとした
28 そこでパウロは大声をあげて言った。「自害してはいけない。私たちは皆、ここにいる。」
29 すると、看守は、明かりを取って来て、牢に駆け込んで、震えながらパウロとシラスの前にひれ伏した。
30 それから、彼らを外に連れ出して言った。「先生がた。私は救われるために、何をしなければならないでしょうか。」
31 彼らは言った。「主イエスを信じなさい。そうすれば、あなたも、あなたの家族も救われます。」
32 それから、彼と、彼の家のすべての人々に、主のみことばを語った。
33 彼は真夜中にもかかわらず、彼らを引き取って、その打ち傷を洗った。そして、その場でただちに自分も家族も、全員がバプテスマを受け、
34 さらに、彼らを自分の家に案内して食事のもてなしをし、神を信じる者となったことを、家族全員と共に、心から喜んだ。
35 夜が明けると、長官たちは警吏たちを送って、「あの人たちを釈放せよ。」と言わせた。
36 そこで、看守はこの言葉をパウロに伝えて言った。「長官たちが、あなたがたを釈放させるようにと、使いをよこしました。さあ、ここを出られて、無事にお帰りください。」
37 しかし、パウロは警吏たちに主張した。「彼らは、ローマ人である私たちを、裁判にもかけずに、公衆の前で打ち叩いたあげく、牢に入れてしまった。それなのに、今になって、私たちをひそかに出そうとするのですか。それはいけない。彼ら自身がここに来て、私たちを連れ出すべきです。」
38 警吏たちはこの言葉を長官たちに報告した。すると長官たちは、彼らがローマ人だと聞いて非常に狼狽し、
39 迎えにやって来て、彼らを外に連れ出し、町から去ってくれるように頼んだ。
40 彼らは牢を出てから、ルデヤの家に行った。そして、兄弟たちに会って励ましの言葉を語り、それから出かけて行った。


   *1  パウロとシラスは、パウロの故郷キリキヤのタルソを通って、タウロス山脈(3587m)を越え、コンマゲネ王国を通り抜け、ガラテヤ州に入った
   *3  § パウロは、当時まだ多くいたユダヤ人たちを獲得するために、テモテにもそうさせた (Tコリ9:20)
   *6、7  § 出て行ってから、聖霊による指示があるパターン → (海岸のアジヤ州(パンフリヤ、ルキヤ)ではなく、)内陸部を通って再び海岸に出て、(ビテニヤ・黒海方面ではなく、)海を渡って、マケドニヤ方面へ行く道
   *9  幻による具体的な示し
   *10  § ここから急に、第1人称のナレーションが入る(「私たち章節」 16:10−17、20:5−15、21:1−8、27:1−28:16)、 筆者のルカも同行していたためといわれる
   *11  夕凪(風が吹かない)にためサモトラケで仮泊、翌日100km先のネアポリス着、2日間の船旅
   *12  フィリッポイ(ギ):  ポリス コロニア city colony、 ローマの植民地の大きな町、住民はイタリヤ市民権(免税・自治)を持つ、近くの金鉱のため発展した。
   *13  ピリピには、ユダヤ人のシナゴーグは無かった。(ユダヤ人10家族以上で会堂が作られたので、10家族以下。その代わり祈り場で祈っていた。パウロの服装はラビの服装で、目立った) 当時は伝道して、すぐに水のバプテスマを授ける習慣のためでもあり、川岸に行った

   *14  シュアーティラ(ギ): アジヤ州のテアテラ (黙示2:18)、 シリアツブリガイという貝を用いて赤紫色に染色した布生地あるいは繊維の形で売買。非常に高価であり、ローマでは一時期、金と同じ重量で取引きされたという。 当時の王、貴族、祭司などが着る「紫の衣」。「帝王紫」や「クレオパトラの紫」とも呼ばれる、  セボマイ revere、敬う、崇拝する、 神を敬う = ユダヤ教の神を信じる
   *15  ルデヤは、マケドニヤ、すなわち、ヨーロッパで初めての、ピリピ教会の創設者の一人となった。 ピリピ教会は、初めから一貫して福音宣教の拠点となった(ピリピ1:5)

   *16  (直訳) ピュソーン(ギリシャ神話の蛇)の霊、   占い: 未来を予言する神託
   *17、18  § (悪霊はある程度見通しが聞くので、)事実を言っているが、実を結ばない、迷惑な存在。 結局、それは悪霊なので、イエスの名によって出て行った
   *21  エクセスティ(ギ) is lawful、合法
   *27  当時は、軍と同様に、このような厳しい規則になっていた。 看守は生と死とのはざまで、救いを受け入れた
   *39、40  パラカレーオ(ギ) call for、summon、addressspeak to); console、encourage、admonish、迎えに行く、呼び出す、話しかける; 慰める、勇気づける、訓戒する



  第17章


 1 一行は、アムピポリスとアポロニヤとを通って、テサロニケに行った。そこにはユダヤ人の会堂があった。
 2 パウロはいつものように、その会堂に入って行って、三つの安息日にわたり、聖書に基いて彼らと論じ、
 3 キリストは必ず苦難を受け、そして死人の中からよみがえらなければならないことを、人々の心を開かせ、詳しく説明し、また、「私があなたがたに伝えているこのイエスこそ、キリストなのです。」と言った。
 4 ある人たちは説得されて、パウロとシラスの側に加わった。その中には、信仰熱心なギリシヤ人が多数いて、貴婦人たちも少なくなかった。

 5 ところが、信じなかったユダヤ人たちは、ねたみにかられ、町のならず者らを集めて暴動を起し、町を騒がせ、ヤソンの家に陣取り、二人を民衆の前に引き出そうとして捜し続けた。
 6 しかし、彼らが見つからなかったので、ヤソンと数人の兄弟たちを、町の役人たちのところへ引いて行き、叫んでこう言った。「世界中をかく乱してきた者たちが、ここにもはいり込んでいます。
 7 ヤソンが彼らを自分の家に迎え入れました。彼らは皆は、イエスという別の王がいるなどと言って、カイザルの詔勅(しょうちょく)にそむいて行動しています。」
 8 これを聞いて、群衆と町の役人たちは恐れと不安で揺らいた。
 9 それで、ヤソンや他の者たちから、保証金を取った上、彼らを釈放した。
10 そこで、兄弟たちはすぐに、夜のうちに、パウロとシラスとをベレヤへ送り出した。彼らはベレヤに到着すると、ユダヤ人の会堂に行った。
11 ここにいるユダヤ人たちは、テサロニケの者たちよりも崇高な人たちで、非常な熱意をもってみことばを受け入れ、果してそのとおりかどうかを、毎日聖書を調べていた。
12 そのため、彼らの中から多くの者が信者になった。また、ギリシヤの貴婦人や男子で信じた者も、少なくなかった。
13 しかし、テサロニケのユダヤ人たちは、パウロがベレヤでも神のみことばを伝えていることを知り、彼らはそこにもやって来て、群衆を煽動して騒ぎを起こした。
14 そこで、兄弟たちは、ただちにパウロを送り出して、海辺まで行かせ、シラスとテモテとはそこに踏みとどまった
15 パウロを案内した人たちは、彼をアテネまで連れて行った。そして、テモテとシラスとになるべく早く来るようにとのパウロの指示を受けて、帰っていった。

16 さて、パウロはアテネで彼らを待っている間に、市内に偶像が数多くあるのを見て、心に憤りを感じた。
17 そこで彼は、会堂では、ユダヤ人や神を敬う人たちと論じ、広場では、毎日そこで出会う人々を相手に論じた。
18 また、エピクロス派やストア派の哲学者数人も、パウロと議論を戦わせていたが、その中のある者たちが言った。「このおしゃべりは、何を言おうとしているのか。」 また、他の者たちは、「あれは、外国の神々を伝えようとしているらしい。」と言った。パウロが、イエスと復活について、福音を宣べ伝えていたからである。
19 そこで、彼らはパウロをアレオパゴスに連れて行って、「あなたが語っている新しい教えがどのようなものか、知らせてもらえませんか。
20 あなたが何やら珍らしいことを語って聞かせてくれているので、それが何の事なのか知りたいと思うからです。」と言った。
21 アテネ人もそこに滞在している外国人も皆、何か耳新しいことを話したり聞いたりすることだけに、時を過ごしていた。
22 そこでパウロは、アレオパゴスの真中に立って、力説した。「アテネの人たち。あなたがたは、あらゆる点において、非常に神々を敬う方々であると、私は見ます。
23 それは、私が道を通りながら、あなたがたの拝むものをよく見ているうちに、『知られない神に』と刻まれた祭壇があるのを見つけたからです。そこで、あなたがたが知らずに拝んでいるこれを、私はあなたがたに発表いたします

24 この世界と、その中にある万物とを造られた神は、天地の主ですから、手で造った神殿にはお住みになられません。
25 また、何か必要に迫られて、人の手によって仕えられることもありません。神は、すべての人々に生命と息とすべてのものとを与え、
26 また、一つの血統から、人々のあらゆる国を作り出し、地の全面に住まわせて、それぞれの時代の区分と、その住まいの境界とを、あらかじめ定めて下さったのです。
27 これは、主を捜して見出すためです。それゆえ、もし人々が本当に、神を手で触れて感じれば、見出すことができるのです。事実、神は私たち一人一人から遠く離れているのではありません
28 それは、神の中にあって、私たちは生き、動き、存在しているからです。 あなたがたのある詩人たちも、『われわれも、確かにその子孫である。』と言った通りです。
29 このように、私たちは神から出た子孫なのですから、神を、人間の造形美術想像で作った、金や銀や石の彫像と、同じと見なすべきではありません。
30 神は、このような無知の時代を見過ごしてこられましたが、今はどこででも、すべての人が悔い改めるべきことを命じておられます。
31 神は、あらかじめ定められた方により、義をもってこの世界をさばくための日を、設定しておられます。そして、この方を死人たちの中からよみがえらせたことによって、その根拠をすべての人に提示されました。」

32 死人の復活のことを聞くと、ある者たちはあざ笑い、またある者たちは、「この事については、いずれまた聞くことにしよう。」と言った。
33 こうして、パウロは彼らのただ中から出て行った。
34 しかし、何人かは彼にしっかり加わった。その中には、アレオパゴスの裁判官デオヌシオと、ダマリスという女、また、その他の人々もいた。


   *1  セッサロニーケ(ギ)  マケドニヤの首府、テルマ湾の北端の海港、ユダヤ人も多くいた
   *4  セーボー(ギ) revere、敬う、崇拝する、 神を敬う = ユダヤ教の神を信じる (= 16:14)、  ヘレン Greek、ギリシャ人
   *5  (直訳) 説得されなかった (ヨハ3:36)
   *9  ヒカノン(ギ、単・中) <ヒカノス many enough、(直訳) 十分多くの〜、 〜=保証金
   *11  ユーゲネステロイ(ギ、比較、複・男) <ユーゲノース noble、well born、(心の)高貴な、寛大な、上品な、  トン ロゴン(単数・男) the word、みことば、 タス グラファス(複・女) the scriptures、聖書
   *12  ギリシャの有力者の婦人
   *14  ヒュポメノー(ギ) remain、留まる、居残る(ルカ2:43)、踏みとどまる、endure、(信仰の立場を)降りない、耐え忍ぶ(マタイ10:22、24:13、マルコ13:13、ローマ12:12)、  cf. メノー 滞在する
   *18  エピクロス派: 快楽主義、神は人間とはかけ離れた遠い存在、  ストア派: (元々)あらゆるものに神が宿るという 汎神論 (いわゆる”ストイック”は、後の時代の変遷)  両派は、広場を歩いて議論の相手を探していた、   スペルモロゴス(ギ) picks up grain in fields、(直訳) 畑から種子をついばむ鳥、市場をぶらついて落ちている物を拾う者、素寒貧(すかんぴん)、大声で無意味な(訳の分からない)ことを言う者、  ダイモーニオン(ギ) ダイモン、神々、邪霊
   *19  アレイオス(戦いの神)・パゴス(丘)、 知識人の議会
   *22  デイシダイモネステロス(ギ) 神々を敬う(恐れる)、迷信深い (→ 25:19)
   *25  ゾエ(ギ) life、  プノエー breath
   *26  ハイマ(単数・中) blood、血、一つの血統 = アダムとエバ、  cf. ヨハ1:13(複数) 血、血統、(出産)、 (殺戮の血ではない)
   *27  プセラファーオ(ギ) handle、touch and feel、seek after tokens、手で触れる(ルカ24:39、Tヨハ1:1)、模索する、しるし(証拠)を探し求める、 § しるしによって、神を体験的に見出すことを言っている、  神は遠く離れた存在ではない(申命30:12、13、ローマ10:6−8) ・・・ エピクロス派に反駁
   *28  § ストア派の汎神論の言い方に似ているが、文体からキリスト信仰へ導入している、  クレテ人エピメニデスの詩、ただし神々について (エピメニデスは、クレテ人のパラドックスで有名 (テトス1:12−15))
   *29  トゥー セオー the God、神(単数・男)、  テクネ(ギ) plastic art、造形美術、  エンシューメシス thinking、thoughts、考え、想像
   *31  ピスティス(ギ) faith、 (直訳) 信仰; 信頼; 信条、(信仰の)根拠、よりどころ
   *32  § それまで聴衆は、アナスタシス(復活 の意)を、新しい神の名前だと思っていた。それが死者の復活のことだと分かると、とても信じられなくて、急に興味が失われた (ギリシャの哲学者は、霊魂の不滅は信じていたので、このアプローチにすれば良かった?)
   *34  § 皆、きれいごとを言っても、問題は起こることをよく知っていた、  アレオパゴスに来る女性は非常に限定される。非常に教養のある人(、あるいは遊女?)



  第18章


 1 その後、パウロはアテネを去ってコリントへ行った。
 2 そこで、アクラというポント生れのユダヤ人と、その妻プリスキラとに出会った。クラウデオ帝が、すべてのユダヤ人をローマから退去させるようにと、命じたため、彼らは近ごろイタリヤから来ていたのである。パウロは彼らのところに行ったが、
 3 彼と同業者であったので、その家に住み込んで、一緒に仕事をした。天幕造りが彼らの職業であった。
 4 パウロは安息日ごとに会堂で討論しては、ユダヤ人やギリシヤ人に説得し続けていた。
 5 ここで、シラスとテモテが、マケドニヤから下ってきたので、パウロは聖霊に強くうながされてキリスト・イエスを、ユダヤ人たちに(おごそ)かにあかしした
 6 しかし、彼らがこれに反抗して非難中傷しているので、パウロは自分の上着を振ってちりを落として、彼らに言った。「あなたがたの血は、あなたがたの頭に降りかかれ。私は潔白です。今から私は異邦人の方に行きます。」

 7  こう言って、彼はそこを去り、神を敬うユストという人の家に行った。その家は会堂の隣にあった。
 8 会堂管理人クリスポは、彼の家族全員と共に、主を信じた。また多くのコリントの人々も、パウロの話を聞いて次々と信じ、バプテスマを受けていた。
 9 すると、ある夜、幻のうちに主がパウロに言われた。「恐れるな。語り続けなさい。黙っていてはならない。
10 わたしはあなたと共にいる。誰もあなたに危害を加えることはない。この町には、わたしの民が大ぜいいるからだ。」
11 パウロは一年六か月の間ここに腰を据えて、神のみことばを彼らの間で教え続けた。
12 ところが、ガリオがアカヤの総督であった時、ユダヤ人たちは一緒になってパウロに反抗して立ち上がり、彼を法廷に引いて行った。
13 「この人は、律法にそむいて神を拝むように、人々をそそのかしています。
14 パウロが口を開こうとすると、ガリオはユダヤ人たちに言った。「ユダヤ人諸君。もし本当に不法行為や、悪質な犯罪が起きたなら、ああ、私は当然、ユダヤ人諸君の訴えを取り上げるだろうが、
15 もし諸君の言葉や名称や律法に関する問題であるなら、諸君が自身を裁判人に見立てればよかろう。私はそのような事の裁判人にはなりたくないからだ。」
16 こう言って、彼らを法廷から追い出した。
17 そこで、ギリシャ人たちは皆、会堂管理人ソステネを捕え、法廷の前で打ち叩いた。ガリオはそのことについて、全く関心が無かった。

18 さてパウロは、さらにかなり長い間、そこに滞在した後、兄弟たちに別れを告げて、シリヤへ向け出帆した。プリスキラとアクラも同行した。パウロは、ある誓願を立てていたので、ケンクレヤで頭を剃っていた
19 一行がエペソに着くと、パウロは二人をそこに残して、自分だけ会堂に入って、ユダヤ人たちと論じた。
20 人々は、パウロにもっと長い間、彼らのところに滞在するように願ったが、彼は同意せず
21 「神のみこころなら、またあなたがたのところに帰って来ます。」と言って、別れを告げ、エペソから船出した。
22 それから、カイザリヤに上陸して、エルサレムに上り、教会にあいさつしてから、アンテオケに下って行った。


23 そこにしばらくいてから、彼はまた出かけ、ガラテヤおよびフルギヤの地方を次々と巡回して、すべての弟子たちを建て上げた
24 さて、アレキサンドリヤ生れで、学問のあるアポロというユダヤ人が、エペソに来た。彼は聖書に精通していた。
25 この人は主の道の教えを受けており、また、霊に燃えてイエスのことを正確に、語ったり、教えたりしていたが、ただヨハネのバプテスマしか知らなかった。
26 彼は会堂で大胆に語り始めた。それを、プリスキラとアクラとが聞いて、彼を招いてさらに詳しく神の道を説明した。
27 それから、アポロがアカヤに渡りたいと願っていたので、兄弟たちは彼に行くように勧め、先方の弟子たちに、彼を歓迎するようにと、手紙を書き送った。彼は到着して、恵みを通してすでに信者になっていた人たちと、大いに意気投合した
28 それは彼が、力強く、公然と、ユダヤ人たちを論破し、イエスがキリストであることを、聖書を通して証明したからである。


   *1  コーリンソス(ギ) コリント: ギリシャ南部の重要な商業都市、 東西貿易の中継点の港町、それゆえ風紀が乱れた町(”コリンティアゾマイ、コリント風に振舞う”=不品行 の意) (Tコリ5:1−)
   *2、3  パウロの天幕づくり(Tテサ2:9)の同業者、プリスキラ(ルカによる愛称、本名はプリスカ)とアクラは、AD49年のクラウディオ帝によるユダヤ人のローマからの追放令により、ここで合流した。すでにローマに多くにキリスト者が流入し、彼らはローマでキリスト者だった。 プリスキラとアクラは、エペソ教会設立に大きな役割を担った (:19−)、最終的にはローマに帰還した (ローマ16:3、4)
   *5  ディアマルテュロマイ(ギ) give solemn testimony、おごそかにあかしする (ルカ16:28、Tテモ5:21、ヘブ2:6、他)
   *12  デルフィの碑文から、AD51年頃コリントのあるアカヤ地方の総督に就任   (→ パウロの宣教年代を決定する資料になっている)
   *13  公認宗教であるユダヤ教に対し、それに反する教えを宣伝した、と訴えた
   *17  ソステネはクリスポの後に会堂管理人になった人、 Tコリ1:1のソステネと同一とは限らない
   *18  民数6:2、5、18  ナジル人の誓願
   *19  エフェソス(ギ) エペソ: 小アジヤ西部のアジヤ州の首府、当時の人口25万人でユダヤ人も多かった、アルテミス神殿があった(→ 19:23−41、 その女神=獣、Tコリ15:32)、 霊の戦いの後、エペソはアジヤで最も有力な教会となった(黙示1:11、2:1−7)
   *20  (直訳) 頭を(首を)縦に振らず、  § 地中海の船旅は3月10日ころからで、パウロはエルサレムで五旬節を過ごしたいと思っていたので、急いでいた
   *21、22  プリスキラとアクラをエペソに残し出発した、  エルサレムに は補足
   *23  ここから、第3回伝道旅行、 エペソ中心、(エペソ宣教には、おそらくルカは同行していない)、  エピステリゾー(ギ) より強める、建て上げる (= 15:32、41)
   *27  シュームバロー(ギ) converse、bring together in one's mind、共に運ぶ、語り合う



  第19章


 1 アポロがコリントにいた時、パウロは内陸部を通ってエペソに来た。そして、何人かの弟子たちに出会って、
 2 彼らに、「あなたがたは、信仰に入った時に、聖霊を受けましたか。」と尋ねたところ、「いいえ、聖霊がおられることさえ、聞いたことがありません。」と答えた。
 3 「では、どのようなバプテスマを受けましたか。」と彼が言うと、彼らは「ヨハネによるバプテスマを受けました。」と答えた。
 4 そこで、パウロは言った。「ヨハネは、自分のあとから来られる方、すなわち、キリスト・イエスを信じるように人々に言って、それで、悔改めのバプテスマを授けたのです。」
 5 人々はこれを聞いて、主イエスの名によるバプテスマを受けた。
 6 そして、パウロが彼らの上に手を置くと、聖霊が彼らに臨み、それから彼らは異言を語り続け、また、預言をし続けた。
 7 その人たちは皆で十二人ほどであった。

 8 それからパウロは会堂に入って、三か月もの間、大胆に語り続け、神の御国について討論し、彼らを説得しようとした。
 9 ところが、ある人たちは心をかたくなにして、いつまでも信じようとせず、会衆の前でこの道をののしったので、彼はその人たちから離れ、弟子たちを連れて行き、ツラノの講堂で毎日論じた。
10 それが二年間も続いたので、アジヤに住んでいる者は皆、ユダヤ人もギリシヤ人も、主イエスのみことばを聞いた。

11 神は、パウロの手によって、力のわざのみならずいつもは起こらないわざ、次々と行なわれた。
12 たとえば、人々が、彼の身につけている手ぬぐいや前掛けを外して、病人に当てると、その病気が去り、悪霊が出て行くのであった。
13 ところが、各地を巡回しているユダヤ人の悪魔祓い師たちが、悪霊にとり憑かれている者に対し、主イエスの御名を用いて、「パウロの宣べ伝えているイエスの名によって命じる。出て行け。」と、ためしに言ってみた。
14 ユダヤの祭司長スケワという者の、七人の息子たちが、これを行なっていた。
15 すると悪霊がこれに答えて、言った。「イエスは知っている。パウロもよく分かっている。だが、おまえたちは何者だ。」
16 そして、悪霊にとり憑かれている人が、彼らに飛びかかり、全員を押えつけて打ち負かしたので、彼らは裸にされ、傷を負って、その家から逃げ出した。
17 このことが、エペソに住むすべてのユダヤ人たちとギリシヤ人たちに知れ渡ったので、すべての者が非常な恐れに陥り、そして主イエスの御名をほめたたえた。
18 また、すでに信者になっていた者が大ぜい来て、自分の行為を告白して、皆に知らせた。
19 さらに、魔術を行っていた かなりの人数の者が、その巻物背負って持ち込み、皆の前で焼き捨てた。その値段を総計すると、銀貨五万枚にもなることが分かった。
20 このように、力の働きによって、主のみことばは広まっていき、強くなっていった。
21 これらの事が十分成し遂げられた後、パウロは御霊に示され、マケドニヤ、アカヤを通って、エルサレムへ行く決心をして、言った。「私は、そこへ行った後、ローマも見なければならない。」
22 そこで、自分に仕えている者の中から、テモテとエラストとの二人を、まずマケドニヤに送り出し、彼自身はもうしばらくの間アジヤに留まった。

23 その同じ頃、この道に関して、かなり大きな騒乱が起こった。
24 それは、デメテリオという銀細工人が銀のアルテミス神殿を作らせ、職人たちにかなりの利益を得させていたからである。
25 この男がその職人たちや、同類の仕事をしていた者たちを集めて、こう言った。「皆さん。私たちが儲かっているのは、御承知の通り、この仕事のおかげです。
26 しかし、皆さんが見ての通り、聞いての通り、このパウロが、エペソのみならず、ほとんどアジヤ全体に渡って、手で造られたものは神ではないと言って、かなり多くの人々を説得して、間違った道に導いているのです。
27 これでは、この仕事のことで非難される恐れがあるだけでなく、大女神アルテミスの神殿への思い入れは無くなり、全アジヤ、いや全世界が拝んでいるこの大女神のご威光も地に落ちてしまいます。」
28 これを聞くと、人々は怒りに燃え、大声で、「エペソ人のアルテミスは、偉大なるかな。」と叫び続けた。
29 そして、町中が大混乱に陥り、人々はパウロの連れの者であるマケドニヤ人ガイオとアリスタルコとを捕えて、いっせいに劇場へなだれ込んだ。
30 パウロは群衆の中に入って行こうとしたが、弟子たちがそうさせなかった。
31 アジヤ州の高官で、パウロの友人であった何人かも、彼に使いを送って、自分を差し出してまで劇場に入って行かないように、懇願した。
32 中では、集会が大混乱に陥ってしまい、大多数の者は、何のために集まったのかも分からないでいたので、ある者はこのことを、別の者はあのことを叫び続けていた。
33 そこで、ユダヤ人たちがアレキサンデルという者を前に押し出して、群衆の中のある人たちが促したので、彼は手を振って、人々に弁明しようと試みた。
34 ところが、彼がユダヤ人だと分かると、皆の者がいっせいに声を上げ、「エペソ人のアルテミスは、偉大なるかな。」と、二時間ばかりも叫び続けた。
35 ついに、町の書記役が、群衆を押し静めて、こう言った。「エペソの皆さん。エペソの町が、大女神アルテミスと、ゼウスから下ったご神体との、守護者であることを知らない者が、誰かいるでしょうか。
36 これは否定のできない事実ですから、皆さんは静かにしているべきで、軽はずみな行動は慎むべきです。
37 皆さんはこの人たちをここに引いて来ましたが、彼らは神殿荒らしでも、私たちの女神を冒涜する者でもありません。
38 だから、もし、デメテリオとその職人仲間が、誰かに対して訴え事があるなら、裁判の日はあるし、総督たちもいるのだから、互いに訴え出れば良いのです。
39 さらに、何かもっと要求したい事があれば、それは法に基づく議会で解決してくれるでしょう。
40 今日の事件については、正当な理由が全くないので、騒擾罪(そうじょうざい)に問われる恐れがあり、この点に関して、私たちはこの無秩序な集まりを弁護することはできません。」
41 こう言って、彼はこの集会を解散させた。


   *9  カコロゲーオ(ギ) speak evil of、revile、 curse、悪口を言う、ののしる、呪う (マタ15:4、マコ9:39等)、  テューランノス ツラノ (直訳) 暴君 の意、 彼がいない時、その講堂を使用した、  スコレー 講堂、(学校 の語源)
   *12  御霊が分け与える賜物のうち、「信仰」の賜物 (Tコリ12:9)の一つ、イエスの御衣のふさ(マコ5:27−)、ペテロの影(5:15) と同類、  手ぬぐい: 額に巻いた細い布の汗拭き、  前掛け: テント職人の仕事用のエプロン
   *13、14  エクソルキステース(ギ) exorcist、悪魔祓い師、ユダヤ人の魔除け祈祷師 (→ マタイ12:27) § 当時は、ユダヤの祭司らによってある程度の悪霊追い出しが行なわれていた。 さらに、それを模倣して、一般のユダヤ人たちで悪魔祓い師になる者もいた。 彼らは不信者であり、用いる資格が無いのに、イエスの御名をみだりに唱えた (出エジ20:7、マルコ16:17)
   *16  § 一般に、悪霊憑きは非常に力が強く、人間的な力では対処できない。 しかし、イエスの御名の権威を正しく用いることにより、驚くほど簡単に追い出される、(ただし、追い出すべきはっきりした時がある)
   *19  銀貨(ドラクマ) 5万枚 = 5万ドラクマ (≒ 3億円)、 それほど忌まわしい、焼き捨てるべきもの、  1ドラクマ=1デナリ=1/100ミナ=1/6000アテネ・タレント
   *20  カタ クラトス(ギ、名詞、受格、単数・中) 
according tothrough out work of power、力の働きに応じて
   *21  (直訳) 御霊の中で、  パウロはここで初めてローマ宣教を公表する
   *22  ローマ16:23(コリント市の収入役)?
   *27  § アルテミス崇拝(性格: 処女神、出産の守護神、しかし怒ると恐ろしい → 群衆を扇動して、騒乱を起こす) 女神=獣 であり、パウロも、後のヨハネも、この獣と戦った(Tコリ15:32)、 処女神 ⇔ cf. 母子神崇拝 ・・・ ニムロデとその母、アシュタロテとバアル、マリヤ崇拝、終末の「大淫婦」まで一貫して一つの悪霊が乗り換えて、続いている
   *29  ガイオはありふれた名前で特定できない。 アリスタルコは、20:4より、テサロニケ出身、  セーアトゥロン(ギ、中) theatre、 § エペソの劇場は、2万5千人収容のものが発掘され、娯楽、演劇だけでなく、市民の集会場(議会)にもなった
   *31  § アジヤ州の諸都市の代表者の中から、毎年行われるローマの祭礼の大祭司が選ばれた。 当時は、大迫害の前で、ローマでは依然としてキリスト教に好意的だったので、このような、ローマにかかわりの深い地位の人々はパウロに味方した、  (あるいは、) 自分を死に渡してまで
   *32  エクレシア(ギ) 教会、議会、集会
   *33  ユダヤ人がこの件に関与していないことを弁明しようとした
   *35  議会(エクレシア)の書記、公文書を作成する、権限の大きな者、 暴動になりそうだったのを、権限を利用して止めた

   *39  エンノモス(ギ) bound to the law、lawful、合法的な、法に基づく、正式な (ノモス =法、律法)



  第20章


 1 騒ぎが収まって後、パウロは弟子たちを呼び集めて激励し、別れのあいさつをし、マケドニヤへ向かって出発した。
 2 そして、その地方を通り、多くの言葉で彼らを励ました後、ギリシヤへ来た。
 3 彼はそこで三か月間過ごした。それからシリヤへ向かって、船出しようとしていたその時、彼に対するユダヤ人の陰謀があったので、マケドニヤを経由して帰ることに決めた。
 4 プロの子であるベレヤ人ソパテロ、テサロニケ人アリスタルコとセクンド、デルベ人ガイオ、それからテモテ、またアジヤ人テキコとトロピモが、パウロの同行者であった。
 5 彼らは先に出発して、トロアスで私たちを待っていた。

 6 私たちは、種なしパンの祝いが終ったのちに、ピリピから船出し、五日かかってトロアスの彼らのところに来て、そこで七日間滞在した。
 7 週の初めの日に、私たちはパンを裂くために集まった。パウロは彼らと語り合っていたが、彼は翌日出発する予定だったので、それが夜中まで続いた。
 8 私たちが集まっていた屋上の間には、多くの灯火(ともしび)一緒に集めて置かれてあった。
 9 ユテコという若者が窓に腰をかけていたところ、パウロの話が長引いていたので、ひどく眠けがさして、とうとう眠り込んでしまい、三階から下に落ちた。抱き起したが、もう死んでいた。
10 そこでパウロは降りてきて、若者の上に身をかがめ、彼を抱き上げて、「心配することはありません。まだいのちがあります。」と言った。
11 そして、また上がって行って、パンを裂いて食べてから、明け方まで長い間人々と語り合って、それから出発した。
12 人々は生き返った若者を連れて行って、測り知れないほど慰められた。

13 さて、私たちは先に船に乗り込み、アソスへ向かって出帆した。そこからパウロを船に乗せて行くことにしていた。彼だけは陸路を歩いて行くことに決めていたからである。
14 パウロがアソスで、私たちと落ち合った時、私たちは彼を船に乗せてミテレネに行った。
15 そこから出帆して、翌日キヨスの沖合に停泊し、次の日にサモスに寄り、その翌日ミレトに着いた。
16 それは、パウロがアジヤで時間をとられないため、エペソには寄らないで行くことを決めていたからである。彼は、できればペンテコステの日にはエルサレムに着いていようとして、旅を急いだのである。
17 そこでパウロは、ミレトからエペソに使いを送って、教会の長老たちを呼び寄せた。

18 そして、彼らが集まってきた時、パウロは彼らに言った。「私が、アジヤの地に足を踏み入れた最初の日以来、いつもあなたがたとどのように過ごしてきたか、よくご存じです。
19 私は、謙遜の限りをつくし、涙をもって、ユダヤ人の陰謀によって自分の身に及んだ数々の試練の中にあって、主の奴隷となりました
20 また、あなたがたの益になることは、(おおやけ)の場でも、また家々でも、一切隠すことなく話して聞かせ、また教え、
21 ユダヤ人にもギリシヤ人にも、神に対する悔改めと、私たちの主、イエス・キリストに対する信仰とを、(おごそ)かにあかししてきたのです。
22 そして、見よ。私はすでに御霊に縛られて、エルサレムへ行こうとしています。そこで、何が私を待ち受けているか、私には分かりません。
23 ただ、聖霊がどの町々でも私にあかししておられるのは、束縛と苦難とが、私を待っているということです。
24 しかし、私は自分の行程を走り終え、主イエスから受け取った神の恵みの福音をあかしする任務を果し終えるならば、私のいのちは少しも惜しいとは思いません。
25 そして今、見よ。あなたがたは、あなたがたの間を巡回して神の御国を宣べ伝えたこの私の顔を、今後は二度と見ないことを、私は知っています。
26 それゆえ、今日のこの日に、あなたがたにあかしします。すべての人の血について私は潔白です。
27 それは、一切隠し立てせず、神のご計画全体をあなたがたに伝えておいたからです。

28 そこで、あなたがた自身に気をつけ、また、すべての群れに気を配りなさい。聖霊は、主がご自身の血で買い取られた神の教会を牧させるために、あなたがたをその監督者にお立てになりました。
29 というのは、私が去った後に、あなたがたの中に狂暴な狼(おおかみ)が入り込んで、群れを食い荒らすようになることを、私は知っているからです。
30 また、あなたがた自身の中からも、いろいろ曲ったことを言って、弟子たちを自分の方に引っ張り込もうとする者たちが起こるでしょう。
31  だから、目を覚ましていなさい。そして、私が三年の間、夜も昼も止めることなく、涙をもって、あなたがた一人一人を訓戒してきたことを、思い出しなさい。
32 そして、あなたがた、兄弟たちよ。今、私は、神と、その恵みのみことばとに、あなたがたをゆだねます。みことばは、あなたがたを建て上げ、聖別されたすべての人々の間に、御国を受け継がせることができます。
33 私は、人の金や銀や衣服を欲しがったことはありません。
34 あなたがた自身が知っての通り、私のこの両手は、自分の生活のためにも働き、また一緒にいた人たちのためにも仕えてきました
35 私は、あなたがたもこのように労苦して、弱い者を助けるべきこと、また、『受けるよりも、与える方が幸いである。』と言われた、主イエスの言葉を思い出すべきことを、すべてについて示してきたのです。」

36 こう言ってから、パウロは一同と共に、両ひざでひざまずいて祈った。
37 彼らは、すべてが嘆き悲しみ、パウロの首を抱いて、幾度も接吻し、
38 特に、「もう二度と私の顔を見ることはないでしょう。」と言った言葉によって、心を痛めた。それから、彼を船まで見送った。


   *1  エペソ伝道の終了(19:21) → マケドニアへ
   *4  計7人の同行者、 ルカは :5 から加わった。 マケドニヤから: ソパテロ(ソシパテロ)(ロマ16:21)、アリスタルコ(19:29、27:2、コロ4:10)、セクンド、  ガラテヤから: デルベ人ガイオ(19:29かどうか不明)、テモテ、  アジヤから: テキコ(エペ6:21、コロ4:7、Uテモ4:12、テト3:12)、トロピモ(21:29、Uテモ4:20)
   *8、9  空気が悪かったらしい、  この屋上の間は、屋上に部屋を作った 3階部分で、外階段で出入りする
   *10  プシュケー(ギ) life、soul、(肉の)いのち、  § ここで、語る信仰の言葉に注意。 この時点でいのちが入っていた、 ex) 「眠っているだけです」(マコ5:39、ヨハ11:11)
   *11  :13 より、愛餐のあと、おそらくパウロは、生き返った青年を見届ける理由で、乗船せず、一人で陸路でアソスまで行った
   *15、16  ミレト: 小アジヤ(エペソに次いで)第二の町、通常ここで3−4日停泊、 パウロは五旬節までにエルサレムに行きたかったので、エペソ行きには乗らなかった
   *28  主が は補足
   *32  御国を は補足
   *34  (直訳) row、漕いで (使徒13:36 仕え、20:34 働き・仕え、24:23 援助する、 のみ)
   *35  マカリオス(ギ) happy、blessed、幸い、  福音書のどこにも無い  ≒ ルカ6:38 「与えなさい。そうすれば与えられる。」、 ヨハ13:34「互いに愛し合いなさい。」、等



  第21章


 1 私たちは彼らと別れて船出してから、コスに直航し、翌日はロドスに、そこからパタラに着いた。
 2 ここでフェニキヤ行きの船を見つけたので、それに乗り込んで出帆した。
 3 やがてキプロスが左手に見えてきたが、シリヤに向けて航海を続け、ツロに入港した。ここで積荷を降ろすことになっていたからである。
 4 私たちは、弟子たちを捜して見つけ出し、そこに七日間泊まった。ところが彼らは、御霊の示しによって、エルサレムには上って行かないようにと、パウロに忠告した。
 5 しかし、滞在期間が終った時、私たちはまた旅立つことにしたので、すべての者が妻や子供と一緒に、町はずれまで私たちを見送りにきてくれた。そして、共に海岸でひざまずいて祈り、
 6 互いに別れのあいさつをした。それから、私たちは船に乗り込み、彼らはそれぞれ自分の家に帰った。
 7 私たちは、ツロからの航海を終えて、トレマイに着き、そこの兄弟たちにあいさつをし、彼らのところに一日滞在した。

 8 翌日そこから外に出て、カイザリヤに着き、あの七人の一人である伝道者ピリポの家に行き、そこに泊まった。
 9 この人に、四人の未婚の娘がいたが、いずれも預言をしていた。
10 幾日か滞在している間に、アガボという預言者がユダヤから下ってきた。
11 そして、私たちのところに来て、パウロの帯を取り、それで自分の手足を縛って、こう言った。「聖霊がこのように言われます。『エルサレムでユダヤ人たちが、この帯の持ち主を、このように縛って、異邦人の手に引き渡します。』」
12 私たちはこれを聞いて、土地の人たちと一緒になって、エルサレムには上って行かないようにと、パウロに頼み続けた。
13 その時パウロは答えた。「あなたがたは、泣いたり、私の心をくじいたりして、いったい、何をしようとするのですか。私は、主イエスの御名のためなら、エルサレムで縛られるだけでなく、死ぬことをも覚悟しているのです。」
14 このように、パウロが全く説得されないので、私たちは、「主のみこころが成りますように。」とだけ言って、それ以上は何も言わなかった。

15 数日後、私たちは旅の支度をして、エルサレムへ上って行った。
16 カイザリヤの弟子たちも数人、私たちと同行して、初期からの弟子であるキプロス人マナソンの家に案内してくれた。私たちは、その家に泊まることになっていたのである。
17 私たちがエルサレムに到着すると、兄弟たちは喜んで迎えてくれた。
18 翌日パウロは私たちを連れて、ヤコブを訪問しに行った。そこには長老たちが皆集まっていた。
19 パウロは彼らにあいさつをした後、自分の働きを通して、神が異邦人の間になされた事がらを一つ一つ報告した。
20  彼らはこれを聞いて神をほめたたえ、また一方で、パウロにこう言った。「兄弟よ。ご承知のように、ユダヤ人の中で信者になった者が数万にものぼっていますが、皆、律法に熱心な人たちです。
21 ところが、彼らが伝え聞いていることは、あなたは異邦人の中にいるユダヤ人一同に対して、子供に割礼を施すな、またユダヤの慣例に従うなと言って、モーセにそむくことを教えている、ということです。
22 どうしたら良いでしょうか。あなたがここに来ていることは、大勢いる彼らもきっと耳にするに違いありません。
23 そこで、今私たちの言う通りのことをしてください。私たちの中に、誓願を立てている者が四人います。
24 この人たちを連れて行って、彼らと共にきよめを行い、また彼らの頭をそる費用を出してあげなさい。そうすれば、あなたについて、うわさされていることは、根も葉もないことで、あなたも同じように律法を守って正しい生活をしていることが、すべての者に分かるでしょう。
25 異邦人で信者になった人たちには、すでに、偶像に供えたものと、血と、絞め殺したものと、不品行とを避けるべきとの決議を、手紙で私たちから知らせてあります。」
26 そこでパウロは、その翌日、四人の者を連れて、彼らと共にきよめを受けてから神殿に入った。そしてきよめの期間が終って、一人一人のための供え物をささげる日時を告げた。

27 ところが、七日の期間が終ろうとしていた時、アジヤからきたユダヤ人たちが、パウロが神殿にいるのを見かけて、すべての群衆を扇動して、パウロに手をかけて、
28 こう叫び立てた。「皆さん。イスラエルの人々よ。手伝ってください。この者は、この民と、律法と、この場所とに逆らうことを、あらゆる所で、すべての人々に教えているのです。その上、ギリシヤ人を神殿の中に連れ込んで、この神聖な場所を汚したのです。」
29 彼らは、エペソ人トロピモが、パウロと一緒にエペソの町を歩いていたのを以前に見かけたので、その人をパウロが神殿の中に連れ込んだのだと思い込んだのである。
30 そこで、町全体が大騒ぎになり、民衆が走り寄って来て、パウロを捕え、神殿の外に引きずり出した。そして、ただちに神殿の門が閉ざされた。
31 彼らがパウロを殺そうとしていた時に、エルサレム全体が混乱状態に陥っているとの情報が、守備隊の千卒長に届いた。
32 そこで、彼はすぐさま兵士たちや百卒長たちを率いて、その場に駆けつけた。人々は千卒長や兵士たちを見て、パウロを打ちたたくのを止めた。
33 千卒長は近づいて来てパウロを捕え、彼を二つの鎖につなぐように命じた上、パウロは何者か、また何をしたのか、と尋ねた。
34 しかし、群衆のおのおのが、それぞれ違ったことを叫び続け、騒がしさのあまり確かなことを知ることができないので、彼はパウロを兵営に連れて行くように命じた。
35 パウロが階段にさしかかった時には、群衆による暴行を避けるため、兵士たちに担ぎ上げられて行くというありさまだった。
36 それは、大ぜいの民衆が、「彼を取り除け。」と叫びながら、ついて来たからである。
37 パウロが兵営の中に連れて行かれようとした時、千卒長に、「あなたにお話してもよろしいですか。」と尋ねると、千卒長が言った。「おまえはギリシヤ語を知っているのか。
38 では、あなたは、以前に暴動を起こして、四千人の刺客を引き連れて荒野へ逃げて行った、あのエジプト人ではないのか。」
39 パウロは言った。「私はタルソ生れのユダヤ人で、キリキヤのれっきとした町の市民です。お願いですが、民衆に話をさせて下さい。」
40 千卒長が許したので、パウロは階段の上に立ち、民衆に向かって手を振った。すると、一同がすっかり静まったので、パウロはヘブル語で呼びかけた


   *3  アナファイノー(ギ) (左舷に)見えて来た (航海用語)、 沿岸を通らず、海洋を横断したので、パタラからツロ(テュロス)まで 5日間で行った
   *4  § 聖霊の、指示ではなく、予告を受けただけなので、(パウロに伝えるだけなら良かったが、)行かないように忠告までしたのは間違い
   *7  トレマイ: ツロから40km南、ここまで船で  旧約時代のアコ(士師1:31) → BC3世紀にプトレマイス → トレマイ に変遷
   *8  エクセルコマイ(ギ) go out、外に出る より、ここから歩いて行ったという説がある、  カイザリヤ: § ここまで、ピリピから出発して(20:6)約1ヶ月の旅、  伝道者ピリポ(6:3−6)、ピリポの最終居留地はカイザリヤ(8:40)、それから20年以上たってもずっとこの地を拠点にしてい
   *10  預言者アガボ 11:27、28
   *11、12  旧約時代によく行われた、実物による預言の表示法 (イザ20:2−、エゼ4:1−、等)、  アガボは、予告を語っただけ○、 一方、パウロの一行はエルサレム行きを止めさせようとした×
   *16  忠実な異邦人キリスト者の家: cf. ユダヤ人キリスト者の家は敬遠した、  エルサレムのユダヤ人クリスチャンの数はすでに数万人にもなっていた (:20)
   *18  使徒のペテロやヨハネたちはすでにいなかった cf. ガラ1:18、 2:1、 (ガラテヤ人への手紙はこの時以前)、  ヤコブ: イエスの兄弟のヤコブで、エルサレム教会の長老、ヤコブの手紙の著者、教師
   *19  デイアコニア(ギ) ministry、service、働き、奉仕、ミニストリー
   *24  民数6:1−より、 ナジル人の誓願(30日の期間)、その後、神殿できよめの儀式を受ける(7日間)、それが終わると髪が剃られた(民数6:18)、  § 彼らはパウロに、具体的行動によって、うわさが偽りであることを幾万ものユダヤ人信者たちに納得させると、進言した
   *25  異邦人クリスチャンについての以前の決議を、あらためて確認した (15:29)
   *26  § パウロは、自分が律法の下にはいないことをよく知っていたが、「ユダヤ人を獲得するため」という動機で、この進言に従った (Tコリ9:20)
   *29  エペソの は補足、  訴えた彼らはトロピモを知っていたので、エペソから来たユダヤ人らしい、 パウロはエペソで3年間宣教していた (19:10)、 異邦人は、一番外側の「異邦人の庭」を越えて、「内庭」に入ることは禁止されていた
   *30  神殿の内庭と外庭の間の 「聖所の門」、 = 「隔ての壁」1.2mの木製の柵、”異邦人が入ったら死刑”と書かれていた (エペ2:14)
   *31  神殿のすぐ北西には、ヘロデ大王が建てたアントニア要塞があり、神殿警備のため、常時1000人ほどのローマの歩兵隊が駐屯していた
   *33  縛り上げたうえ、二人の兵士の腕に鎖でつなぐ
   *34  アッロイ(形容詞、主格、複・男) デ(接続) アッロ(形容詞、受格、単・中) ティ(代名、受格、単・中) others (cried one thing), and some another、ある者はこう(叫び)、別の者は他のことを(叫び続け、)
   *38  ヨセフォスによると、AD54年、エジプト人の 自称預言者が3万人をオリーブ山に引き連れ、城壁が崩れることを予言し、城内のローマ軍を撃破すると言った。 その後散らされ、4千人の 短剣を上着に隠した国粋主義者の刺客が、彼とともに逃げた。  これも思い込みによる誤解



  第22章


 1 「皆さん。兄弟たちよ。父たちよ。今、私のする弁明を聞いてください。」
 2 パウロが、ヘブル語でこう語りかけるのを聞いて、人々はますます静粛になった。そこで彼はこう言明した。

 3 「私はキリキヤのタルソで生れたユダヤ人ですが、この町で育てられ、ガマリエルのもとで先祖伝来の律法について厳しい教育を受け、今日の皆さんと同じように、神に対して熱心な者でした。
 4 そして、この道を迫害し、男であれ女であれ、縛って牢に投げ入れ、彼らを死にまでも至らせました。
 5 このことは、大祭司も長老たちの議会一同も証言してくれます。さらに私は、この人たちからのダマスコの兄弟たちに宛てた手紙を受け取り、出かけて行きました。それは、その地にいる者たちを縛り上げて、エルサレムに引いて来て、処罰するためでした。
 6 ところが、旅を続けて真昼ごろダマスコの近くにきた時に、突然、かなり強い光が天から私の回りを照らしました。
 7 私は地に倒れ、そして、『サウロ、サウロ、なぜわたしを追跡して迫害するのか。』と、呼びかける声を聞きました。
 8 これに対して私は、『あなたはどなたですか。主よ。』と言いました。すると、その声が、『わたしは、あなたが迫害しているナザレ人イエスである。』と答えました。
 9 私と一緒にいた者たちは、確かにその光は見ましたが、私に語りかけた方の声は聞きませんでした。
10 私が、『私は何をしたらよいのでしょうか。主よ。』と尋ねると、主はこう言われました。『起き上がって、ダマスコに行きなさい。そうすれば、あなたがするように任命されている事が、すべてそこで告げられます。』
11 私は、その光の輝きによって何も見えなくなっていたので、連れの者たちに手を引かれて、ダマスコに行きました。
12 すると、律法に忠実に従い、ダマスコ在住のユダヤ人全体に評判の良いアナニヤという人が、
13 私のところに来て、そばに立ち、『兄弟サウロよ、見えるようになりなさい。』と言った。するとその瞬間に私の目が開いて、彼の姿を見上げました。
14 彼は言いました。『私たちの先祖の神が、あなたを選び、みこころを知らさせ、義なる方を見させ、その方の口から出る御声を聞かせるようにとされたのです。
15 それはあなたが、その見て聞いた事について、すべての人に対して、その方の証人となるためです。
16 そこで、今、ためらうことはありません。すぐ立ち上がって、主の御名を呼び求めてバプテスマを受け、あなたの罪を洗い落しなさい。』
17 それから私は、エルサレムに帰って神殿で祈っているうちに、恍惚状態になり、
18 その方を見ました。その方は私に、こう言われました。『急ぎなさい。そしてすぐにエルサレムを出て行きなさい。彼らは、わたしについてのあなたのあかしを、受け入れないからです。』
19 そこで、私は言いました。『主よ。人々は、私があらゆる所の会堂で、あなたを信じる人々を牢に入れ、むちで打ったことを、知っています。
20 また、あなたの証人ステパノの血が流された時も、私は立ち合って、それに同意し、また彼を殺した人たちの上着の番をしていたのです。』
21 すると、その方は私に言われました。『行きなさい。私が、あなたを遠く異邦の民へ遣わす。』」

22 彼の言葉をここまで聞いていた人々は、この時、声を張り上げて、言った。「こんな男は地上から除いてしまえ。生きているのに値しないからだ。」
23 人々がこう叫びあげ、上着を地に投げ捨て、空中にちりをまき散らすので、
24 千卒長はパウロを兵営の中に引き入れるように命じ、なぜ人々が彼に対して、このように大声で叫び続けるのかを知ろうとして、彼をむちで打って取り調べるように言い渡した。
25 彼らが、革ひもで彼の手を前方の柱に縛りつけていた時、パウロはそばに立っている百卒長に言った。「ローマ市民である者を、裁判にかけずに、むち打って良いのですか。」
26 百卒長はこれを聞き、千卒長のところに行って報告し、そして言った。「どうなさいますか。あの人はローマ人です。」
27 そこで、千卒長がパウロのところに来て言った。「私に言ってくれ。あなたはローマの市民なのか。」 パウロは「そうです。」と言った。
28 これに対して千卒長が言った。「私はこの市民権を、多額の金で取得したのだ。」 するとパウロはこう宣言し続けた。「私は生れながらの市民です。」
29 そこで、パウロを取り調べようとしていた人たちは、ただちに彼から身を引いた。千卒長も、パウロがローマ市民であることがよく分かり、また、彼を縛っていたので、恐れた。
30 翌日、彼は、ユダヤ人がなぜパウロを訴え出たのか、その真相を知ろうと思って彼の鎖を解いてやり、そして、祭司長たちと全議会とを召集するよう命じ、そこに彼を引き出して、彼らの方に向くように立たせた。


   *3  ガマリエル(律法教師、パリサイ派の議員) = 5:34
   *7  9:4−
   *9  cf. 9:7 同行の人々は音は聞こえ(声は聞き分けられなかったが)、姿は見えなかった
   *13  cf. 9:17、18では、アナニヤは手を置いて、こう言った
   *17  10:10
   *20  7:58
   *25、26  手を前方の柱 は補足、 この自白を引き出すためのむちは最も過酷なもので、むき出しの背中に骨を埋め込まれた鉛の球を付けた皮のむちで引き切られる。続けると、死亡するか、かたわになる (cf. 16:22の 3度の棒の鞭、5度のユダヤの39のむち(Uコリ11:24、25)は、懲らしめのためであり、これとは異なる、  ローマイオス(ギ、形容詞(名詞)) Roman、of RomaRoman citizen、ローマ人、ローマの、ローマ市民



  第23章


 1 パウロは議会をじっと見つめて言った。「皆さん。兄弟たちよ。私は今日まで、神の前に、すべてにおいて正しい良心に従って、市民生活を送ってきました。」
 2 すると、大祭司アナニヤが、パウロのそばに立っている者たちに、彼の口を打てと命じた。
 3 そのとき、パウロはアナニヤに言った。「あなたを打つであろう方は神です。白く塗られた壁よ。あなたは、律法に従って私をさばくために座についているのに、律法にそむいて私を打つことを命じるのですか。」
 4 すると、そばに立っている者たちが言った。「神の大祭司に対して叱責するのか。」
 5 パウロは言った。「兄弟たちよ。私は彼が大祭司だとは気がつかなかった。確かに、聖書には、『民のかしらを悪く言ってはならない。』と、書いてあります。」
 6 パウロは、議員の一部がサドカイ人であり、一部はパリサイ人であるのを見て、議会の中で声高に叫んで言った。「皆さん。兄弟たちよ。私はパリサイ人であり、パリサイ人の子です。私は、死者たちの復活の望みに関することで、裁判を受けているのです。」
 7 彼がこう言ったところ、パリサイ人とサドカイ人との間に論争が起こり、群衆は二つに分裂した。
 8 それは、サドカイ人は、復活も、御使いも、霊も、一切存在しないと言い、パリサイ人は、それらのすべてが存在すると言っていたからである。
 9 そして、騒ぎが大きくなり、パリサイ派の一部の律法学者たちが立ち上がり、激しく争って、言った。「われわれは、この人には何も悪いことを見出さない。もしかすると、霊か、御使いが、彼に告げたのかも知れない。われわれは、神に対抗して戦ってはいけないのだ。」
10 こうして、争論が非常に激しくなったので、千卒長は、パウロが彼らに引き裂かれることがないようにと、兵隊に、降りて行ってパウロを彼らの中から力づくで引き出し、兵営に連れて来るように命じた。

11 その夜、主がパウロのそばに立って、こう言われた。「勇気を出しなさい。パウロよ。あなたは、エルサレムでわたしのことをあかししたように、ローマでもあかしをしなければならない。」
12 夜が明けると、ユダヤ人たちは陰謀を巡らし、パウロを殺すまでは一切、食べたり飲んだりしないと言って、誓い合った。
13 この陰謀に加わった者は、四十人以上であった。
14 彼らは、祭司長たちや長老たちのところに行って、こう言った。「われわれは、パウロを殺すまでは何も食べないと、呪いの誓いを誓い合いました
15 そこで、あなたがたは議会と組んで、彼のことでさらに詳しく取調べをするふりをして、パウロをあなたがたのところに連れ出すように、千卒長に頼んで下さい。われわれのほうでは、パウロがそこに近づく前に殺してしまう手はずを整えています。」
16 ところが、パウロの姉妹の子が、この待伏せのことを耳にし、兵営に入って行って、パウロにそれを知らせた。
17 そこでパウロは、百卒長の一人を呼んで言った。「この若者を千卒長のところに連れて行ってください。お伝えする事があるようですので。」
18 この百卒長は若者を連れて、千卒長のところに行って、こう言った。「囚人のパウロが、この若者があなたに何かを話したいと言うので、あなたのところに連れて行ってくれるようにと、私を呼んで頼みました。」
19 そこで千卒長は、若者の手を取り、人のいない所へ連れて行って尋ねた。「私に伝えたいことというのは、何か。」
20 若者は言った。「ユダヤ人たちが、パウロのことをさらに詳しく取調べをするふりをして、明日、彼を議会に連れ出すように、あなたに頼むことに決めています。
21 どうぞ、彼らの頼みを聞き入れないでください。四十人以上の者が、パウロを待伏せします。彼らは、パウロを殺すまでは一切、食べたり飲んだりしないと、誓い合っています。そして今、手はずを整えて、あなたの承諾をいただこうとしているのです。」
22 そこで千卒長は、「このことを私に知らせたことは、誰にも口外してはいけない。」と命じて、若者を帰した。

23 それから彼は、二人の百卒長を呼んで言った。「歩兵二百名、騎兵七十名、投石兵二百名を、カイザリヤに向け出発できるように、今夜九時までに用意せよ。
24 また、パウロを乗せるために馬を用意して、彼を総督ペリクスのもとへ無事に連れて行け。」
25 さらに彼は、次のような文面の手紙を書いた。
26 「クラウデオ・ルシヤ、つつしんで総督ペリクス閣下に喜びのごあいさつを申し上げます
27 この者は、ユダヤ人たちに捕えられ、まさに殺されようとしていたのを、彼がローマ市民であることを知ったので、私は兵士たちを率いて行って、彼を救い出しました。
28 それから、彼が訴えられた理由を知ろうと思い、彼を議会に出頭させました。
29 ところが、彼はユダヤ人の律法の問題で訴えられているのであり、なんら死刑または縄で縛られることに当る告発内容ではないことがわかりました。
30 しかし、この者に対して陰謀が巡らされているとの報告がありましたので、私は速やかに彼を閣下のもとにお送りすることにし、彼を訴える者たちには、閣下の前で訴えるようにと、命じておきました。どうぞご健勝で。」
31 そこで歩兵たちは、命じられたとおりパウロを引き取って、夜の間にアンテパトリスまで連れて行き、
32 翌日は、騎兵たちにパウロを護送させることにして、兵営に帰って行った。
33 騎兵たちは、カイザリヤに着くと、手紙を総督に手渡し、さらにパウロを彼に引き合わせた。
34 総督は手紙を読んでから、パウロに、どの州の者かと尋ね、キリキヤ出身であると知って
35 「あなたを訴える人たち来てから、詳しく聴取することにする。」と言った。そして、ヘロデの官邸に彼を守っておくように命じた。


   *2  ネデベウスの子 アナニヤ(就任: AD47−)、悪名高い者だった
   *3  白く塗った壁: もろくなった危険な壁をしっくいで厚く塗って分からなくしたもの (エゼ13:10、マタ23:27)

   *5  出エジ22:28
   *6  パウロが師事していたガマリエルがパリサイ派だった(22:3)。 パリサイ人は復活を信じ、サドカイ人は復活を否定していた。 パウロはここで、「知恵」を使った
   *12、14  アナセマティゾー(ギ) のろいをかけて誓う(マコ14:71)、 アナセマ のろい(23:14)、のろわれよ(Tコリ16:22)、  (直訳) のろいをもって自分ら自身をのろう = 誓いが果たせなかった場合は、自分たちが神にのろわれても構わない の意
   *16  パウロの甥(おい) (ここだけの記事)、  パウロは軟禁状態だった
   *23  デクシオラボス(ギ) 右手で投げること、slinger、投石器を使って石を投げる兵隊、(あるいは、弓隊、槍兵)、   (直訳) 夜の第3時
   *24  総督ペリクス(フェリクス): クラウディオ帝より、AD52年から59年まで カイザリヤの総督、元 解放奴隷、 ユダヤ総督時代多くのユダヤ人を弾圧して殺したので、皇帝に訴えられ、ネロ(在位54−68)によって罷免された
   *26  ここで初めて千人隊長の名前、 おそらくローマ市民権を買ったとき クラウディオ帝の名前をもらったと考えられる、  to the most-high governor Felix、総督ペリクス閣下に、  ≒ most excellent Theophilus、テオピロ殿 (ルカ1:3)、  カイレイン(ギ、現在) to be rejoicing、喜びのごあいさつを致します  § ギリシャ、ローマ式のあいさつでは、「喜びあれ(カイレテ)」が用いられる cf. ユダヤでは 「平安あれ(シャローム)」
   *30  エッローソ(ギ、命、完了、受、2・単) <ローンニュミ (直訳) 強くあれ、健康であれ; 
Farewell、さようなら(あいさつ語)
   *31  ヘロデ大王(アンテパス)が建て、その名、 エルサレムの北西56km、かなりの強行軍だった
   *32  騎兵はここから35km先のカイザリヤへ
   *34  § ローマ市民の裁判は、事件を起こした所(エルサレム)か、その者の出身地(キリキヤ)かで行なわれ、キリキヤならば シリヤ総督のところへ移送する必要があった



  第24章


 1 五日の後、大祭司アナニヤは、長老数名と、テルトロという法廷弁士とを連れて下り、パウロを総督に訴え出た。
 2 パウロが呼び出されたので、テルトロは論告を始めた。「ペリクス閣下。閣下のお陰で、私たちが十分なる平和に到達し、またあなたの先見の明によって、この国が、
 3 あらゆる方面でのみならず、あらゆる所において、数々の成果を上げていることで、心より感謝しております。
 4 しかし、これ以上ご迷惑をおかけするのは止めにしまして、手短かに申し上げますから、どうぞ、穏やかな心でお聞き取りのほど、お願いいたします。
 5 さて、この男は、疫病のような人間で、世界中のすべてのユダヤ人の中で騒ぎを起している者であり、また、ナザレ人たちという分派のかしらであります。
 6 この者が神殿までも汚そうとしていたので、私たちは彼を捕縛したのです。 そして、私たちの律法に従って、さばこうとしていたところ
 7 千卒長ルシヤが干渉して、彼を力づくで私たちの手から引き離してしまい
 8 彼を訴える者たちは閣下のところに来るようにと、命じました。 それで、閣下ご自身でお調べになれば、私たちが彼を訴え出た理由が、すべてお分かりになるでしょう。」
 9 ユダヤ人たちも、この申し立て同意して、全くそのとおりだと言った。

10 そこで、総督がうなずいて合図をして発言を促したので、パウロは答弁して言った。「閣下が、多年にわたりこの国民の裁判をつかさどられた方と存じておりますので、私は喜んで自分のことを弁明いたします。
11 お調べになればお分かりですが、私が礼拝をしにエルサレムに上ってから、まだ十二日しか経っていません。
12 そして、神殿の中でも、会堂内でも、あるいは都のどこででも、私が誰かと争論したり、群衆を集合させたりするのを見た者はありませんし、
13 今、私を訴えていることについて、何も出すことはできないはずです。
14 ただ、私は閣下の前で、この事は認めます。私は、彼らが、この分派とみなしている道に従って、私たちの先祖の神に仕え、律法預言者の書とに書いてある、すべての事がらを信じており、
15 また、死者たちが、義人であれ悪人であれ必ず復活するという、彼ら自身も持っている希望を、神にあって持っているのです。
16 私はまた、神に対しても、人に対しても、良心が責められることがないように、いつも努めております

17 さて私は、同胞に施しをし、また、供え物をするために、何年ぶりかに帰って来ました。
18 そこで彼らは、私が神殿できよめを行っているのを見ただけで、その時、群衆もおらず、騒動もなかったのです。ところが、アジヤから来た幾人かのユダヤ人がおりましたが、
19 もし、彼らが私に対して何かあるならですが、自分であなたの前に来て訴えているべきなのです。
20 さもなければ、もし、私が議会の前に立っていた時に、何か私に不正なことがあったなら、彼ら自身にそれらのことを言わせてください。
21 すなわち、このただ一言、私は彼らの中に立って、『私は、死者の復活のことで、今日、あなたがたの前でさばきを受けているのです。』と叫んだだけなのです。」

22 ここでペリクスは、この道のことに関して、かなり詳しく知っていたので、「千卒長ルシヤが下って来るのを待って、あなたがたの事件を正確に判断することにしよう。」と言って、裁判を延期した。
23 そして百卒長に、パウロを監禁するように、しかし彼を(ゆる)やかに扱い、友人らが世話をするのを止めないようにと、命じた。
24 数日たってから、ペリクスは、ユダヤ人である妻ドルシラと一緒にきて、パウロを呼び出し、キリストに対する信仰について、彼から聞いた。
25 そこで、パウロが、義について、自制について、来たるべき審判について論じたので、ペリクスは恐れを感じて、言った。「今日はこれで帰りなさい。また、良い機会があれば、呼び出すことにしよう。」
26 彼は、それと同時に、パウロから金をもらいたい下心(したごころ)があったので、何度もパウロを呼び出しては語り合った。
27 さて、二年が経った時、ポルキオ・フェストが、ペリクスと交代して任についた。ペリクスは、ユダヤ人に恩を売ろうと考え、パウロを監禁したままにしておいたからである。


   *1  レートル(ギ) forensic orator、法廷雄弁家(ユダヤ法にもローマ法にも詳しい発言人) (ここだけの言葉)
   *3  カトールソーマトーン(ギ、複・中) successful achievements 良い成果、業績 (ここだけの言葉)  改革×
   *11  ナジル人のきよめの7日(21:27) + 5日の後(24:1)
   *16  アプロースコポス(ギ) not causing to stumble、(直訳) つまずきにならないよう(Tコリ10:32)、非難されることがなく(ピリ1:10)
   *22  アクリベステロン(ギ、副詞、比較) より詳細に、もっと正確に (18:26)
   *24  ドルシラ: ヘロデ・アグリッパ1世の末娘(AD38生まれなので、当時20歳)、 シリアの小国の王と結婚していたのが無理やり離婚させられ、16歳の時ペリクスの第3夫人になった、(主によって、彼女が福音を聞くため、ペリクスは2年も裁判を延期するようにさせられた、と考えられる)
   *26  パウロの相続財産が入ったので、もらおうと試みたが、実際パウロが払ったかは不明
   *27  § この2年のカイザリヤ監禁の間に、パウロが書簡を書いた記録はない (獄中書簡: エペソ書、ピリピ書、コロサイ書、ピレモン書は、ローマで軟禁された2年間 という説が有力)、  フェスト(ポルキオ・フェスト): ペリクスに比べて実行型の能吏である(25:6)、任期 AD59−61、就任後たった2年で死亡



  第25章


 1 さて、フェストは、任地に着いてから三日の後、カイザリヤからエルサレムに上ったところ、
 2 祭司長たちやユダヤ人の中心人物たちが、パウロを訴え出て、
 3 彼の件について自分たちに好意を持ってくれるように頼み、彼をエルサレムに呼び出すよう懇願した。それは、彼らは道の途中で待ち伏せして、パウロを殺すつもりでいたからである。
 4 しかしフェストは、パウロをカイザリヤに監禁してあり、自分も間もなくそこへ帰るつもりだ、と答え、
 5 こう言った。「もし、あの者に何か不都合なことがあるなら、あなたがたの中からの有力者たちが、私と一緒に下って行って、彼を告訴しなさい。」
 6 フェストは、彼らの所に十日以上滞在して、カイザリヤに下って行き、その翌日、裁判の席について、パウロを引き出すように命じた。

 7 パウロが出て来ると、エルサレムから下ってきたユダヤ人たちが彼を取り囲み、彼に対してさまざまな重い罪状を申し立てたが、それらの証拠は効力の無いものばかりだった。
 8 パウロは、「私は、ユダヤ人の律法に対しても、神殿に対しても、またカイザルに対しても、何の罪も犯してはいません。」と弁明した。
 9 ところが、フェストはユダヤ人に恩を売ろうと思って、パウロに言った。「あなたはエルサレムに上り、そこでこれらの件に関し、私の前で裁判を受けることを望むか。」
10 パウロは言った。「私は今、カイザルの法廷に立っているので、当然、私はこの法廷で裁判されるべきです。あなたがご存知の通り、私はユダヤ人たちに何も悪いことをしていません。
11 もし、本当に私が悪いことをし、死に当るようなことをしたのなら、私は死ぬことを拒みません。しかし、もし、彼らの訴えることに何一つ根拠が無いとすれば、誰も私を彼らに引き渡すことはできません。 私はカイザルに上訴します。」
12 そこでフェストは、陪席の者たちと協議したうえ、こう答えた。「あなたはカイザルに上訴を申し出た。カイザルのところに行きなさい。」

13 数日後、アグリッパ王とベルニケとが、フェストに敬意を表するため、カイザリヤに来た。
14 彼らがそこに何日間も滞在していたので、フェストは、パウロの件を王に打ち明けて、言った。「ここに、ペリクスが囚人として残して行った一人の者がいます。
15 私がエルサレムに行った時、祭司長たちやユダヤ人の長老たちが、この男のことを私に報告し、彼を罪に定めるようにと要求したのです。
16 そこで私は、彼らに答えました。『訴えられた者が、訴えた者の前に立って、告訴に対し弁明する機会を与えられる前に、その人を見放してしまうのは、ローマ人の慣例にはないことである。』
17 そこで、彼らがここに集まってきた時、私は遅延させること無しに、その翌日に裁判の席について、その男を引き出させました。
18 訴える者たちは立ち上がりましたが、私が思っていたような罪の告発は、どれ一つとして提出されませんでした。
19 ただ、彼と争い合っているのは、彼ら自身の宗教に関し、また、死んでしまったのに生きているとパウロが主張している、イエスという者に関する問題に過ぎません。
20 これらの問題を、どう取り扱って良いか分からなかったので、私は彼に、『エルサレムに行って、これらの問題について、そこでさばいてもらうことを望むか。』と尋ねてみました。
21 ところがパウロは、皇帝の判決を受ける時まで、このまま自分を守っておいてほしいと言うので、彼をカイザルに送りとどける時まで守っておくようにと、命じておきました。」
22 そこで、アグリッパがフェストに、「私も、その人の話を聞きたいと思います。」と言ったので、フェストは、「では、あす彼が語るのをお聞きください。」と答えた。

23 翌日、アグリッパとベルニケとは、大いに威儀を整えて到着し、千卒長たちや市の代表者たちに付き添われて講堂に入った。すると、フェストの命令によって、パウロがそこに連れて来られた。
24 そこで、フェストが言った。「アグリッパ王、ならびにご臨席の皆さん。ご覧になっているこの人物は、ユダヤ人たちの誰もが皆、エルサレムにおいても、また、この地においても、これ以上、生かしておくべきでないと叫んで、私に訴え出ている者です。
25 私は、彼は死に当ることは何もしていないと捉えています。しかし、彼自身が皇帝に上訴すると言い出したので、彼をそちらへ送ることに決めました。
26 ところが、彼について、主君に書きおくる確かな事がらが何もないので、私は、彼を皆さんの前に、特に、アグリッパ王にですが、あなたの前に連れてきました。取調べをしていただいた後は、何か書き送るべきことが得られるでしょう。
27 というのは、告訴の理由を示さないで囚人を送るのは、不合理だと思うからです。」


   *1  前任のペリクスはユダヤに反乱を起こさせた責任で辞任させられたので、フェストはユダヤ問題を第一優先した
   *7  (直訳) 告発の票を投じてきた、  (直訳) 力の無い
   *9  = 24:27、  フェストはユダヤ人の律法に関して何も知らなかったので、エルサレムで公判することを提案し、同時に、(ペリクス同様)ユダヤ人に恩を売ろうとしてこう言った。 ローマ法上、法廷はカイザリヤでもエルサレムでもどちらでも良かった
   *11  カイサル(ギ) Caesar (severed、切断された の意)、 時の皇帝は、ネロ(在位 54−68年、反キリストの前身(獣の数字666)、ローマ大火(64)の責任転嫁でキリスト者への大迫害(65−67?パウロ殉教、ペテロ殉教))
   *13  ヘロデ・アグリッパ2世: 12章の、ヘロデ・アグリッパ1世の子、 1世の死去の時(44年)17歳だったので、53、56年になってからガリラヤ、ペレアを含む広大な領土を任された(この年AD59年で、32歳)、  ベルニケもアグリッパ1世の娘で、ドルシラ(24:24)の姉、  彼らは新任のローマ総督のところに表敬訪問した
   *19  デイシダイモニア(ギ) 神々を敬うこと、宗教、信心; 迷信 (17:22 形容詞)
   *23  ファンタシーア(ギ、名詞) showy appearance、displaypomp、見せるために着飾ること、壮観 (若いので軽く見られないように着飾った)



  第26章


 1 アグリッパはパウロに、「あなたは、自分の言い分を述べてもよろしい。」と言った。そこでパウロは、手をさし伸べて、弁明をし始めた。

 2 「私が、ユダヤ人たちから訴えられているすべての事に関して、アグリッパ王。本日、あなたの前で弁明できますことを、幸いに存じます。
 3 あなたは、ユダヤ人のあらゆる慣例や問題を、特によく知っておられる方でおられるからです。それゆえ、私の申すことを、忍耐をもって聞いてくださるようお願いいたします。
 4 さて、私は初めから自国民の中で、またエルサレムで、過ごしたのですが、その若い時の私の生活ぶりは、ユダヤ人が皆よく知っているところです。
 5 彼らは私を初めから知っているので、証言しようと思えばできることですが、私は、私たちの宗教の最も厳格な派にしたがって、パリサイ人としての生活をしていました。
 6 今私は、神が私たちの先祖に対して約束された希望に基づいて、裁かれる側に立っているのであります。
 7 私たちの十二の部族は、夜昼、熱心に神に仕えて、その約束を得ることを期待しています。アグリッパ王よ。この希望のために、私はユダヤ人から訴えられています。
 8 神が死人をよみがえらせることを、あなたがたは、なぜ信じられないこととして考えてしまうのでしょうか。

 9 確かに私自身も、ナザレ人イエスの名に反抗して、敵対する行動をしなければならないと思っていました。
10 そして私は、それをエルサレムで実行し、祭司長たちから権限を与えられて、多くの聖徒たちを牢に閉じ込め、彼らが殺される時には、それに賛成の意を表しました。
11 それから、すべての会堂で何度も彼らを罰して、強(し)いて神を汚す言葉を言わせようとし、彼らに対して怒りに燃え、追跡し続けてついに外国の町々にまで至りました。
12 そのような時に、私は、祭司長たちから権限と委任とを受けて、ダマスコに行ったのですが、
13 真昼に、その道の途中で、王よ。私は見たのです。天から、太陽よりもはるかに強く光り輝く光が、私と同行者たちの回りを照らしました。
14 私たち全員が地に倒れましたが、その時ヘブル語で私にこう呼びかける声を聞きました。『サウロ。サウロ。なぜわたしを迫害するのか。針のついた突き棒を蹴るのは、あなたにとって痛いことです。』
15 そこで私が、『主よ。あなたはどなたですか。』と尋ねると、主は、こう言われました。『わたしは、あなたが迫害しているイエスである。
16 さあ、起き上がって、自分の足で立ちなさい。わたしがあなたに現れたのは、あなたがわたしを見た事と、これからわたしがあなた示そうとしている事とについて、働き人、また証人として、あなたを選んだからです。
17 わたしは、この国民と異邦人との中から、あなたを救い出して、今、あなたを彼らに遣わします。
18 それは、彼らの目を開き、彼らをやみから光へ、悪魔の支配から神に立ち帰らせ、また、わたしを信じる信仰によって、彼らが罪の赦しを得て、聖とされた人々の中に加えられるためです。』

19 ですから、アグリッパ王よ。私は天からの啓示にそむかず、
20 まず初めにダマスコにいる人々に、それからエルサレムにいる人々、ユダヤの全地域、ならびに異邦人たちに、悔い改めて神に立ち帰り、悔い改めにふさわしい行ないをするようにと、宣べ伝えてきました。
21 これらのことのゆえに、ユダヤ人は、私を神殿で捕えて殺そうとしたのです。
22 しかし、私は今日に至るまで神の助けを受け、堅く立って、小さい者にも大きい者にもあかしをし、預言者たちが後に起るはずの事を語ったこと、およびモーセのことについてを語り、それ以外は何も語りませんでした。
23 すなわち、キリストが苦難を受けること、また、死者たちの中から最初によみがえって、この国民と異邦人とに光を宣べ伝えていることを、あかししたのです。」

24 パウロがこのように弁明をしていると、フェストは大声で言った。「気が狂っている。パウロ。博学が、あなたを狂わせている。」
25 パウロは言った。「私は気が狂ってはおりません。フェスト閣下。私は、真理の言葉を、正気な心で語っております。
26 王はこれらのことをよく知っておられるので、王に対しても、率直に申し上げているのです。また、これらのことは、ほんの片隅で行われたのではありませんから、どれ一つとして王が見逃されたものはないと信じます。
27 あなたは預言者の書を信じておられますか。アグリッパ王。私は、あなたが信じておられると、分かっております。」
28 アグリッパがパウロに言った。「あなたは短い演説によって、私がクリスチャンになるように説得している。」
29 パウロは言った。「話が短くても、長くても、私が神に祈るのは、ただあなただけでなく、今日、私の言葉を聞いたすべての人も、これらの鎖は別にして、私のようになって下さることです。」
30 それから、王も総督もベルニケも、また列席の人々も、皆立ち上がり、
31 退場してから、互いに語り合って、言った。「あの人は、死や縛られることに相当することは、何もしていない。」
32 そして、アグリッパはフェストに何度も言った。「この人は、もしカイザルに上訴しなかったなら、釈放されることはいつでもできたはずです。」


   *1  王に対する敬意と挨拶 (cf. 13:16、21:40 民衆を静めるため)、  § 主が語られた言葉のとおり(9:15)、主がすべてを導かれて(25:13、22)、パウロは王に伝道した。 パウロ(AD5年生まれ)はこの時、54歳?
   *13  ヒューペール(ギ) in behalf of、for the sake of、身代わりに、のために; over、beyond、more than、よりもはるかに超えて
   *14  ケントゥロン(ギ) 昆虫・さそりなどの毒針(黙示9:10); 家畜を追う突き棒 (サンダルで蹴るとケガをする)  = 9:5
   *18  (直訳) くじを引く
   *25  アレーセイア(ギ、名詞) truth、真理、  ソフロシューネ(名詞) soundness of mind、心の健全さ、正気; 慎み深いこと (⇔ マニーア madness、狂っていること に対して) cf. Uテモ1:7(ソフロニスモース、健全さ、自制(ここだけ))
   *27  § もし預言者の言葉とモーセを信じないと言うならユダヤ教徒から人望を失い、信じると言うならキリストの福音を受け入れざるを得なくなる。そこで苦し紛れに話をそらした。(:28)
   *28  オリゴー(ギ、形容詞、単数・中性)〜 <オリゴス little、small、few、 〜 = レーマ(単・中) saying、speech、discourse、語りかけ、演説、講話、談話 (単数なので、言葉(words、複数)ではない)、 プラグマ(単・中)matter、thing、事がら (cf. 時間、フォラ、〜時(hour)、オラ は女性、 クロノス(time、year)男性)、  クリスティアノス(男) クリスチャン、キリストについて行く者
   *29  ポロー(ギ、形容詞、単・中)〜 <ポルース many、much、large
   *29、31  デスモス(ギ) (直訳) band、bond、縄で縛られること、なわめ、(≒鎖、投獄) (16:26、23:29、26:29、等)



  第27章


 1 さて、私たちが、船でイタリヤに行くことが決まったので、パウロと他の数人の囚人とは、親衛隊の百卒長ユリアスに託された。
 2 そして私たちは、アジヤ沿岸の各所に寄港して航行する、アドラミテオの船に乗り込んで出帆した。テサロニケのマケドニヤ人アリスタルコも同行した。
 3 次の日、シドンに入港したが、ユリアスは、パウロを親切に取り扱い、友人たちのところへ行ってもてなしを受けることを許可した。
 4 それから私たちは、ここから船出したが、逆風にあったので、キプロスの島陰(かげ)を航行し、
 5 キリキヤとパンフリヤの沖を過ぎて、ルキヤのミラに入港した。
 6 そこに、イタリヤ行きのアレキサンドリヤの舟があったので、百卒長は、私たちをその船に乗り込ませた。
 7 何日もの間、船の進み方が遅く、私たちはやっとのことでクニドの沖合にきたが、風が私たちの行く手をはばむので、サルモネの沖、クレテの島陰(かげ)を航行し、
 8 その岸に沿って進み、なんとか「良き港」と呼ばれる所にたどり着いた。その近くにラサヤの町があった。

 9 かなりの時を費やしてしまい、断食の季節も過ぎて、すでに航海が危険になったので、パウロは人々に強く勧めて
10 言った。「皆さん。この航海では、積荷や船体ばかりでなく、私たちの生命にも、危害と大きな損失が及ぶと、私は見ています。」
11 しかし百卒長は、パウロの意見よりも、航海長や船長のほうを信頼した。
12 そして、この港は冬を過ごすのに適していないので、大多数の者はここから出て、できればなんとかして、南西風北西風が向かって吹く、クレテのピニクス港に行って、そこで冬を過ごしたいということになった。
13 ちょうどその時、南風が穏やかに吹いてきたので、彼らは、そこにたどり着けると考え、錨(いかり)を上げて、クレテの沿岸に沿って航行した。
14 ところが、間もなく、ユーラクロンと呼ばれる暴風が、陸から吹きおろしてきた。
15 そのため、船が流されて風に逆らうことができないので、やむを得ず私たちは吹き流されるままに任せた。
16 それから、クラウダという小島の陰に入り込んだので、私たちはようやく小舟を処置することができ
17 それを船に引き上げてから、備え綱で船体を巻きつけた。また、スルテスの浅瀬に乗り上げるのを恐れ、帆を降ろして流れるままにした。
18 私たちは、嵐にひどく悩まされていたので、次の日には、人々は積荷を捨て始め、
19 三日目には、船具までも、自らの手で投げ捨てた。
20 太陽も星も見えず、暴風が激しく吹きまくる日が何日も続き、私たちが助かる最後の望みも消えようとしていた。

21 すべての者は長い間、まともな食事から遠ざかっていたが、その時、パウロが彼らの中に立って、こう言った。「ああ。皆さん。私の言うことに従って、クレテから出航しなかったなら、このような災難や損失を被らなくて済んだはずでした。
22 しかし今、お勧めします。元気を出しなさい。それは、船が失われるだけで、あなたがたの中でいのちを失うものは誰もいないからです。
23 昨夜、私がその方のものであり、また私が仕えているところの神、その神からの御使いが、私の脇に立ってこう言いました。
24 『恐れてはいけません。パウロ。あなたはカイザルの前に立たなければならないのです。見よ。神は、あなたと同船の人々すべてを、喜んであなたに与えて下さいました。』
25 それゆえ、皆さん、元気を出しなさい。すべて私に語られた方法に従ってその通りになると、このように私は神を信じているからです
26 私たちは、どこかの島に打ち上げられます。」

27 私たちがアドリヤ海に漂ってから十四日目の夜の真夜中ごろ、水夫たちは、どこかの陸地が彼らに近づいているように思った
28 そこで、水の深さを測ってみたところ、三十六メートルであることがわかった。それから少し進んで、もう一度測ってみたら、二十七メートルであった。
29 私たちは、どこかの暗礁に乗り上げることを心配して、船尾から四つの錨(いかり)を投げ降ろし、夜が明けるのを待っていた。
30 その時、水夫たちが船から逃げ出そうとして、船首から錨(いかり)を投げ降ろすと見せかけ、小舟を海に降ろしていたので、
31 パウロは、百卒長や兵士たちに言った。「あの人たちが、船に残っていなければ、あなたがたも助かりません。」
32 そこで兵士たちは、小舟の綱を断ち切ってそれを落とし去った
33 夜が明けかけたころ、パウロは一同の者に、食事をするように勧めて言った。「あなたがたはずっと待ち続け、ろくに何も食べないで、今日で十四日目になります。
34 それゆえ今、食事を取ることをお勧めします。それが、あなたがたを救うことになるのだからです。髪の毛一筋でも、あなたがたの頭から落ちることはありません。」
35 彼はこう言って皆の前でパンを取り、神に感謝をささげてから、それを裂いて、食べ始めた。
36 そこで、皆の者も元気づいて、その食事をした。
37 船にいた私たちは、全員で二百七十六人であった。
38 すべての者は、十分に食事をした後、穀物を海に投げ捨てて船を軽くした

39 夜が明けて、どこの陸地かよく分からなかったが、砂浜のある入江が見えたので、できれば、そこに船で突っ込もうということになった。
40 そこで、錨(いかり)を切り離して海に捨て、同時にかじの綱を解き、風に前の帆を上げて、砂浜に向かって進んだ。
41 ところが、船は二つの潮流が合わさってできる浅瀬に乗り上げてしまって、船首がめり込んで動かなくなり、船尾の方は激しい波の力によって壊れ始めていた。
42 兵士たちの意見では、囚人たちが泳いで逃げることのないように、殺してしまってはどうかというものだったが、
43 百卒長は、パウロを救おうと強く望んでいたので、彼らの意見を退け、泳げる者は先に海に飛び込んで陸まで行き、
44 残りの者は、板切れや船にあるものにつかまって行くように命じた。 このようにして、すべての者が危険の中を守られて上陸することが、成し遂げられた


   *1  皇帝直属の”アウグスト隊”の一部であり、カイザリアに来ていた、  この百卒長も(聖書の他の箇所と同様に、) 品性の良い隊長であり、パウロに良くしてくれた
   *2  著者ルカも同行、  アドラミテオ: 小アジア北西のムシヤの港、  アリスタルコ: かなり初期からの弟子、エペソでガイオと共に捕らえられた(19:29、20:4)、この後ローマでパウロと共に囚人になった(コロ4:10)
   *4、5  そろそろ冬の季節であり、西風が強くなっていたので、沿岸風と海流を利用して進んだ、  ミラ: アジヤ州南端のルキヤの港、エジプト貿易の中継点 → ここでイタリヤ行きに乗り換え
   *7  北西の風のため何日もかけて沿岸をジグザグに進んだ、  小アジヤ南西端最後の沿岸部、この後沖に出る
   *8  クレテ島の南中部、夏季には安全な投錨地
   *9  テーン ネーステイアン(ギ)、the fast、断食の季節 = 贖いの日(ヨム・キプール、レビ16:29、23:27等、ユダヤ暦7月10日、9月末から10月初め)、 § この日を境にユダヤの「冬」になる、 冬期間は地中海は荒れるので、11月11日〜3月5日は航海は閉鎖された
   *11  ローマ官僚の百卒長がこの船の中で指揮官の地位にある
   *12  リプス(ギ) southwest wind、南西風、 コーロス northwest wind、北西風、 フォイニクス(ギ) ピニクス(ヤシの木 の意): 同じクレテ島の、さらに65km西にある、西側に開いた湾の港、 近い距離を行くだけと思って出帆した
   *13  (直訳) 目的を達成する
   *14  ユーラクロン: クレテ島のイダ山(イディ山、最高峰・2456m)から吹き下ろす東北東の突風
   *16  急な風だったので 帆も上げたまま、小舟(当時は曳航していた)も降ろしたままだったので、水がいっぱい入っていた
   *17、18、19  ステルスの洲(浅瀬)は、アフリカ側のクレネの西の沖合にあったが、何日も流されることを考え、船のバランスを取り 船底を上げる(喫水線を下げる)ために、積み荷や船具までも捨て始めた。 帆は降ろして風の影響を最小限にした
   *23  トー セオー フー エイミ(ギ) of the God whose I am、私がその方のものである神
   *28  (直訳) 20オルグイア (1オルグイア = 1.8m)、  (直訳) 15オルグイア
   *29、30  船首=へさき、 船尾=とも
   *36  § パウロがパンを裂いて増やす奇跡を行ない、彼が自分でそれを食べるのを見て、他の人々に信仰がわき起こり、さらにパウロが増やすパンを全員で食べた
   *38  パンの奇跡によって、救われる信仰が起こったので、人々は最後まで取っておいた食料を捨てた
   *41  二つの は補足、  (直訳) 場所、  (直訳) 〜の中に落ち込んで
   *44  エゲネト(ギ、アオ過去2、3人称・単) <ギノマイ (it) became、be performed、(それ = パウロが預言したこと が、)成し遂げられた (:26 の成就)



  第28章


 1 こうして私たちは完全に守られ、そして、ここがマルタと呼ばれる島であることを知った。
 2 島の人々は私たちに、普通はあり得ないようなことをしてくれて、降りしきる雨や寒さをしのぐために、火をたいて私たちを親切にもてなしてくれた。
 3 そのとき、パウロはひとかかえの柴を束ねて火にくべたところ、熱気のために一匹のまむしが這い出てきて、彼の手に巻きついた
 4 土地の人々は、この生き物がパウロの手からぶら下がっているのを見て、互いに言った。「この人は、間違いなく人殺しだ。海からは逃れたが、復讐の女神が彼を生かしてはおかないのだ。」
 5 ところがパウロは、その生き物を火の中に振り落して、何の害も受けなかった。
 6 彼らは、彼が間もなく腫れ上がるか、あるいは、倒れて急死するだろうと、様子をうかがっていた。しかし、長い間待っていても、彼の身に何ら変った様子が起らないのを見て、彼らは考えを変えて、「この人は神様だ。」と言い出した
 7 さて、その場所の近くに、島の首長、ポプリオという人の領地があった。彼は、そこに私たちを招待して、三日の間、親切にもてなしてくれた。
 8 ちょうどその時、ポプリオの父が赤痢にかかり、高熱で床についていた。そこでパウロはその人のいるところに入って祈りながら手を彼の上に置いていやしを行なった
 9 このことがあってから、他にも病気をしている島の人たちが、次々とやって来て、皆、いやされた
10 彼らは私たちを非常に尊敬し、私たち出帆する時には、必要な品々を持ってきてくれた。

11 三か月たった後、私たちは、この島で冬を過ごしていたディオスクロイの船飾りのあるアレキサンドリヤの船で、出帆した。
12 そして、シラクサに寄港して、三日間そこに停泊し、
13 そこから帆を上げて、レギオンに着いた。それから一日たつと南風が吹いてきたので、二日の後にはポテオリに入港した。
14 そこで兄弟たちに会い、勧められるままに、彼らのところに七日間滞在した。このようにして、私たちはついにローマにやって来た。
15 ところが、兄弟たちは、私たちのことを聞いて、アピオ・ポロおよびトレス・タベルネまで出迎えてくれた。パウロは彼らに会って、神に感謝をささげ、また、勇気づけられた。
16 私たちがローマに着いた後、百卒長は囚人たちを守備隊長に引き渡したが、パウロは、一人の番兵をつけられ、一人で住むことを許された。

17 三日経ってから、パウロは、おもだったユダヤ人たちを招き、すべての者が集まってから、彼らにこう言った。「皆さん。兄弟たちよ。私は、われらの国民に対しても、あるいは先祖からの慣例に対しても、何一つ違反する行為が無かったにもかかわらず、エルサレムで囚人としてローマ人たちの手に引き渡されました。
18 彼らは私を取り調べた結果、死刑にする理由が何もないので、私を釈放しようと思ったのですが、
19 ユダヤ人たちがこれに反対したので、私はやむを得ず、カイザルに上訴しました。しかし、それは、わが同胞を訴えようとしているからではありません。
20 こういうわけで、あなたがたに会ってお話ししたいと願っていました。事実、私は、イスラエルの希望のゆえに、この鎖につながれているのです。」
21 そこで彼らは、パウロに言った。「私たちは、ユダヤ人たちから、あなたについて、何の知らせも受け取っていません。また、兄弟たちの中からここに来て、あなたについて悪いことを、報告したり話したりした者も、いませんでした。
22 私たちは、あなたの考えていることを、直接あなたから聞くのがよいと思っています。それは、この宗派について、至る所で反対されていることを、私たちは知っているからです。」

23 そこで、日を定めて、さらに大ぜいの人々がパウロの宿にやって来たので、パウロは朝から夕方まで語り続け、神の御国のことをあかしし、またモーセの律法や預言者の書によって、イエスについて彼らを説得しようと務めた。
24 ある者たちは確かにパウロの言うことに説得されつつあったが、ある者たちは不信仰のままだった
25 彼らは互いに意見が合わず、帰ろうとしていたので、パウロは一言語って言った。「聖霊が、預言者イザヤによって、あなたがたの先祖に語られたことは、まさにその通りです。
26 『この民のところに行って、告げよ。あなたがたは確かに聞くが、決して理解しない。確かに見るが、決して心で見ていない
27 この民の心は鈍くなり、その耳は遠く、その目は閉じているからである。それは、彼らがその目で見ず、その耳で聞かず、その心で悟らず、立ち返っていやされることがないためである。』
28 それゆえ、あなたがたは知っておいてください。神のこの救いは、異邦人に送られました。彼らは耳を傾けるでしょう。」
29 彼がこれらのことを語り終えると、ユダヤ人たちは、互いに大いに論じ合いながら帰って行った

30 そして、パウロは、満二年の間、自費で借りた家に住んで、尋ねて来る人々を皆迎え入れ、
31 すべての語る自由をもって、妨げられることなく、神の御国を宣べ伝え、主イエス・キリストのことを教えた。


   *1  クラウダ島(27:16)から900kmも流された
   *2  バルバロイ(ギ、複) <バルバロス ギリシャ人・ローマ人以外の未開人(ローマ1:14); ギリシャ語を語らない人、  この島の人々は、多くがフェニキヤ系の人種
   *3  § パウロは進んで奉仕をしていた、  エキドゥナ(ギ) まむし (現在はマルタ島にまむしはいない)、 冬眠から覚めて出て来た、  カサープトー bind on、lay hold of、絡みついた (人々は”噛みついた”と思っていた)
   *4  ディケー(ギ) (直訳) 正義、審判、さばき、復讐 (女神 は補足)、 フェニキヤ人は古来、蛇を神聖視していた
   *6  § マルタの人々は非常に素朴に「考え」を入れ替え、幼子のような単純な信仰の素質があった。(信仰は、「思索」から入る。(Tコリ15:2)) それで、次のいやしのミニストリーがやりやすくなった。
   *8  デューセンテリオン(ギ) 赤痢、  入って(アオ過去2(瞬時))、祈りながら(アオ過去(単純))、手を置いて(アオ過去2(瞬時))、いやした(アオ過去(単純))、  マルコ16:18
   *9  セラピューオー(ギ) (直訳) 医師の手当てを受ける; 仕える、直す、いやす (医者ルカも手伝ったが、パウロの手を通して、本当の医者である聖霊が超自然的ないやしを行なわれた。  人間的な医療伝道ではない)
   *11  ゼウスの子、カストルとポルックスの双子の彫像 (当時、船乗りが好んだ)
   *13  レギオンは、海峡を渡る風を待つ場所でもあった
   *14、15  § パウロがもちろん初めて来たローマのこれらの町々に、すでに福音が宣べ伝わり、多くのキリスト者がいた。初めて出会ったのに、聖霊によって旧知の仲のようにもてなした
   *15  ポテオリからローマまで180kmで、約1週間の道のり、  アッピア街道(全長540km、幅8m の石造りの道)上の、 ローマからそれぞれ、アピオ・ポロ70km、トレス・タベルネ53kmの地点の宿場町
   *16  ストゥラトペダールケース(ギ) military tribune、(古代ローマの軍団(レギオー)の)軍指揮官; 高級将校、幕僚
   *20  § 旧約の預言者たちによって語られてきた希望が、イエス・キリストによって実現したこと
   *26  シュニーエミー(ギ) (直訳) 一緒になる、一つ心になる; 理解する、  ホラーオー 目で見る、心の目で見る; 注意を払う

   *26、27  イザヤ6:9、  心は鈍く:(直訳) 厚く、太って; 心が鈍く、  耳は遠く:(直訳) 聞くのに重く、  エピストゥレフォー(ギ) turn to、return、転向する
   *30  § この2年間の軟禁状態の時、いわゆる 「獄中書簡」(ピリピ; エペソ、コロサイ、ピレモン) をローマから各教会へ書き送っている。  この後のパウロの行方には諸説ある。 すでにネロ帝の時代(在位 54−68年)であり(ローマ大火AD64年)、パウロの殉教の時期は、AD67年頃といわれる(生誕AD5より62歳?)  いわゆる「牧会書簡」(テモテT、U、テトス)は殉教直前









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