ヨハネの福音書*
第1章
1 永遠の初めから*、ことば*があり続けた*。ことばは父なる神と共にあった。神である方*、それが ことばであった。
2 この方*は初めに神と共に*おられた。
3 すべてのものは、この方によって*造られた。どれ一つとしてこの方によらない*ものはなかった。
4 造られたものには、この方において いのち*があった。そしてこの いのちは人々の光であった。
5 光はやみの中に輝いている。そして、やみはこれを捕らえなかった*。
6 ここに、神から遣わされた人が現われた。その名をヨハネと言った。
7 この人はあかしのために来た。それは、光についてあかしをすることであり、彼を通してすべての人が信じるためである。
8 彼は光ではなく、ただ、光についてあかしをするために来たのである。
9 すべての人を照らす、まことの*光があって、それが世に来ようとしていた。
10 彼は世にいた。そして、世は彼を通して造られた*のであるが、世は彼を知る*ということはなかった。
11 彼は自分のところに来たのに、自分の民は彼を受け入れなかった。
12 しかし、彼を受け入れた者、すなわち、その名を信じた人々には、彼は神の子供たちとする権威*を授けたのである。
13 それらの人々は、血統によらず、肉の欲によらず、人の意欲によらず、ただ、神によって生まれたのである。
14 そして ことばは肉体をとり、私たちの間に幕屋を張られた。私たちは彼の栄光を見た。それは父の傍らにおられる、ひとり子*としての栄光である。彼は、恵みと真理*とに満ちておられた。
15 ヨハネは彼についてのあかしをして、今も叫んでこう言っている*。「『私のあとから*来られ、私の前に*現れるはず*の方は、私よりもはるか以前から*おられた方です。』と私が言ったのは、この人のことです。」
16 私たちは皆、彼の満ち満ちている豊かさの中から、恵みの上にさらに恵みを受け取ったのである。
17 律法はモーセを通して与えられ、恵みと真理とは、イエス・キリストを通して実現したのである。
18 神を見た者はいまだかつて誰もいない。ただ御父の懐(ふところ)におられる、ひとり子だけが、神を説き明かされたのである。
19 さて、ユダヤ人たちが、エルサレムから祭司たちやレビ人たち*をヨハネのもとに遣わして、「あなたは誰ですか。」と尋ねさせたが、その時ヨハネが語ったあかしは、こうだった。
20 彼は告白して否むことをせず、「私はキリストではありません。」と告白した。
21 そこで、彼らは尋ねた。「それでは、誰なのですか。あなたはエリヤですか。」* 彼は、「違います。」と言った。「では、あの預言者ですか。」* 彼は、「いいえ。」と答えた。
22 そこで、彼らは言った。「あなたは誰ですか。私たちを遣わした人々に、返事を持って行きたいのですが、あなたは自分を誰だと言われるのですか。」
23 彼は言った。「私は、預言者イザヤが言ったように、『主の道をまっすぐにせよと荒野で呼ばわる者の声』*です。」
24 彼らはパリサイ人たちから遣わされた者たちだった。
25 彼らはヨハネに尋ねて言った。「キリストでも、エリヤでも、またあの預言者でもないのなら、なぜあなたはバプテスマを授けるのですか。」
26 ヨハネは彼らに答えて言った。「私は水でバプテスマを授けていますが、あなたがたのただ中に、あなたがたの知らない方が立っておられます。
27 私のあとから*来られ、私の前に*現れるはず*の方であり、私には彼のくつ*のひもを解く*値うちもありません。」
28 これらのことは、ヨハネがバプテスマを授けていた、ヨルダンの向こうのベタニヤ*で起こったのである。
29 その翌日*、ヨハネは、イエスが自分の方に歩いて来られるのを見て、言った。「見よ、世の罪*を上げて除く*、神の小羊。
30 『私のあとから*来られ、私の前に*現れるはず*の方は、私よりもはるか以前から*おられた方です。』と私が言ったのは、この人のことです。
31 私はこの方を知りませんでした。しかし、この方がイスラエルに現れてくださるために、私はここへ来て、水でバプテスマを授けているのです。」
32 また、ヨハネはあかしをして言った、「私は、御霊が鳩のように天から降りて来て、彼の上に留まる*のを見ました。
33 私はこの方を知りませんでした。しかし、水でバプテスマを授けるようにと、私を遣わされたその方が、私に言われました。『ある人の上に、聖霊が降りて、留まるのが見えたら、その人こそは、聖霊によってバプテスマを授ける人である。』
34 私はそれを見たので、この方が神の子であると、あかしをしたのです。」
35 さらにその翌日*、ヨハネは再び、二人の弟子たち*と一緒に立っていたが、
36 イエスが歩いておられるのに目を留めて言った。「見よ、神の小羊。」
37 その二人の弟子は、ヨハネがそう言うのを聞いて、イエスについて行った。
38 イエスは振り返り、彼らがついて来るのを見て言われた。「何を求めているのですか。」 彼らは言った。「ラビ*(訳して言えば、先生*)どこにお泊りですか。」
39 イエスは彼らに言われた。「来なさい*。そうすれば分かります*。」 そこで彼らはついて行って、イエスの泊まっておられる所を知った。そして、その日はイエスのところに泊まった。そこに着いた時は、午後四時ごろ*だった。
40 ヨハネから聞いて、イエスについて行った二人のうちの一人は、シモン・ペテロの兄弟アンデレだった。
41 アンデレはまず自分の兄弟シモンを見つけて、言った。「私たちはメシヤ(訳せば、キリスト*)に会いました。」
42 そしてシモンをイエスのもとに連れて来た。イエスは彼に目を留めて言われた。「あなたはヨナ*の子シモンです*。あなたをケパ*(訳せば、ペテロ*)と呼ぶことにします。*」
43 また、その翌日*、イエスはガリラヤに行こうとされたが、ピリポを見つけて、言われた。「わたしについて来なさい。」
44 ピリポは、アンデレとペテロと同じ町、ベツサイダの出身であった。
45 このピリポが、ナタナエル*を見つけて言った。「私たちは、モーセが律法の中に書いていて、また預言者たちも書いていた人、ヨセフの子、ナザレのイエスに出会いました。」
46 ナタナエルは彼に言った。「ナザレから、何の良いものが出ることができようか。」* ピリポは彼に言った。「来て、見なさい。」*
47 イエスはナタナエルが自分の方に来るのを見て、彼について言われた。「見よ、彼こそ、本当にイスラエル人*である。彼の内には欺くところ*がない。*」
48 ナタナエルは言った。「どうして私をご存じなのですか。」 イエスは答えて言われた。「ピリポがあなたを呼ぶ前に、わたしはあなたが、いちじくの木の下にいるのを見たのです。*」
49 ナタナエルは答えた。「ラビ。あなたは神の子です。あなたはイスラエルの王です。」
50 イエスは答えて言われた。「あなたが、いちじくの木の下にいるのを見たと、わたしが言ったので信じる*のですか。これよりも、もっと偉大なことを、あなたは見ることになります。」
51 また言われた。「まことに、まことに、あなたがたに言います。天が開けて、神の御使いたちが人の子の所で*、上ったり下ったりする*のを、あなたがたは見ます。」
* ヨハネ: 主(ヤハ)は恵み深い の意。 イエスが地上におられた時の、イエスの胸の鼓動を聞いたといわれるほどの最側近であり、また、唯一殉教しなかった使徒であるヨハネが、彼の最晩年に、黙示録が書かれた後の、新約27巻の最後に書かれた福音書。 その
ヨハネの視点から、「神のひとり子」としてのイエスを、最も生き生きとあかししている。(主題の取り方の違いから、マタイ、マルコ、ルカの3つを「共観福音書」、ヨハネを「第四福音書」として区別されている。御子イエスはあまりにも偉大なので、一つの肖像画に収まらなかった) また、ヨハネの福音書には、長いたとえ話しが無く、文体は短く簡潔で、語彙は少なく、ヨハネに特徴的な言葉(いのち、あかし、ことば、真理、光、やみ、まことの、・・・)でつづられている。しかし、その内容は深遠で、神の三位一体、御子の神性の本質に最も迫るものとなっている。 使徒ヨハネはまた、預言者でもあるので、時間関係の摂理的なあかし、霊的なことの記述が多い。
*1 エン アルケー(ギ) in the beginning、origin、初め、起源、 ホ ロゴス the Word、言葉、教え; (ヨハネの福音書において、)Word of God、Jesus Christ、「神のことば」 = イエス・キリスト のこと、 エーン(未完了過去) was、 § エーンは、未完了過去なので、「(天地創造の前から) 在り続けた」となり、旧約聖書の
ヤハウェ =イヘイェー「彼は 在り続ける」(未完了相)と同じ、永遠の存在となる。(cf. 創世記1:1の ベレーシース(ヘ)は、創世記1:2の ハイェサー(完了相) became、(地は混とんと)なった、より、永遠の初めではなく、ある時に崩壊し、また、再創造された。さらに天地創造の以前の時代があって、御使いたちもその時造られた、ことを意味している)、
セオス God、 冠詞が無いので、「神たる存在」、「神であることがことばの本質であった」という意味になる。 御子が神であることを最初から言っている。 (ヨハネの福音書の最後(20章、(21章は付け足し))にも、トマスの告白で御子の神性があかしされ、御子の神性のあかしをすることがこの書の目的であると記している。)
∴ 1:1は、 「永遠の初めから、ことばが在り続けた。 ことばは、父なる神と共に在り続けた。 ことばは、神としての存在であり続けた。」 と訳しても良い。
*2 フートス(ギ) (直訳) this、これ、 プロス with、共に(to the advantage of、有利に、near、at、近くに、towards、with、with regard to、に関して) 対立ではなく共存、〜と共に住んでいた(営んでいた)
*3 ディ(<ディア) アウトウ through him、(直訳) 彼を通して、 コーリス アウトウ apart(without) from him、(直訳) 彼から離れて、彼無しで
*4 ゾエ(ギ) life、(永遠の)いのち、 § 文法的には、3節後半の一部が4節にかかり、本文太字のような訳になる (「造られたものすべてに、御子のいのちが付与されていて、世はそのいのちで成り立っている」 の意)
*5 カタラムバノー(ギ) lay hold of、catch、understand、 つかむ、捕まえる; 捉える・理解する (真空中で光が減衰せず、素通りして、エネルギーが100%伝わるように)
*9 アレシノス(ギ) true、 まことの、本当の (4:23、6:32、15:1、17:3)(⇔ 見せかけの、に対する)
*10 エゲネト(ギ、アオ過去2(瞬時過去)) <ギノマイ(ギ) become、be made、成った、造られた、 エグノー(アオ過去2) <ギノスコー know、(ある時)知った
*12 テクノン(ギ) child、offspring、子供、子孫、 エクソウシア power of authority、power、権威の力、力、統治する力
*14 モノゲネース(ギ) the only begotten (Son of God)、(神の)ひとり子、 アレセイア truth、真理 (14:6、16:13、等)(⇔ プセウドス falsehood、偽り、8:44 等)
*15 ケクラゲン(ギ、完了2(未来完了)) レゴーン(現在) will has cried saying、(今も)叫んで言っている
*15、27、30 オピソー(ギ) after、(時間的に)後に、(場所的に、後ろに)、 エムプロスセン before、in front of、(位置的に)前に、正面に、(時間的に)先に、 ゲゴネン(完了2(未来完了))
<ギノマイ become、come、happen、appear、come to pass、あるようになる、現れる、起こる、実現する、 (直訳) 私の前に成る(来る、現れる)はずの ○ § これは単純に、29節の、「その翌日」の成就にかかっている預言を表す (cf. KJVの訳: (印欧語根からの誤訳) pre(前に)・bfer(運ぶ、実行する、子を産む)
→ prefer、より良い、preferred、優先する、∴私に優る方 ×、 イザヤ14:12の ルシファー=rux(光)・fero(運ぶ)×と同様に、印欧語根の合成による誤訳) プロートス first、former、(時間・場所・ランク)一番先に、 ∴ 預言者ヨハネのこの言葉は、3つの時間関係の予告として解釈 cf. マタイ3:11、マルコ1:7、ルカ3:16では、「わたしより力ある方」(イスキュロテロス、stronger
one)で、順位を表す別の文
*19 レビ人 = その中のアロンの末裔が祭司職
*21 マラキ4:5、 申命記18:15、使徒3:22、23
*23 イザヤ40:3
*27 くつ: サンダル、 靴ひもを解く仕事は奴隷が行った
*28 エルサレム郊外のベタニヤとは異なる、 10:40
*29 翌日: 27節の予告の成就の日、 ハマルティーア(ギ) miss the mark(的を外す) → sin、罪、罪悪、 アイーロー raise from the ground、take up、take off、remove、上げて除く(マルコ16:18)、取り除く
*30 § 預言の成就により、イエスがヨハネの前に来られたというしるしによって、イエスが永遠の存在であるという後半の言葉を確かなものとして、人々を信仰に導いた(:7)
*32 メノー(ギ) remain、wait for、留まる、泊まる、保つ、待つ
*35 第3日目、 アンデレ(:40)と、ヨハネ(推定、本書に名前が出てこない)、最初はバプテスマのヨハネの弟子だった。 アンデレは”案内者”
*38 ラッビ(ギ) rabbi、 この時点でまだ ユダヤ教の教師 にしか見ていなかった、 ディダースカロス teacher、master、先生、教師、(五役者の)教師
*39 エルケスセ(ギ、現在、命令、2・複) イデーテ(アオ過去2、2・複)、 (直訳) 第10時
*41 クリストス(ギ) マーシヤハ(ヘ) 油注がれた者
*42 イオナ(ギ) Jona、ヨナ(ヘブル語で、はと の意) → バルヨナ(=ヨナの子)・シモン(マタイ16:17)、 イエスは見ただけでペテロの素性を言い当てている、 ケーファス(ギ) ケパ(アラム語)、 ペトゥロス(ギ): ペテロ
= (岩から取れた)石 cf. ペトラ(ギ) 岩、 イエスがペテロの名で呼んだのは、4つの福音書で ルカ22:34の1回のみ(しかも、これは励ます意味で)。 聖霊降臨の時までは、ペテロの揺れ動きやすい性質は基本的に変わらなかった
*43 第5日目、 ヨルダンの向こうのベタニヤから、ガリラヤへ戻ろうとされた
*45 ナタナエル = バルトロマイ といわれる (マタ10:3、ルカ6:14、ヨハ21:2。 使徒1:13にはバルトロマイとある)
*46 当時、ナザレのあるガリラヤからは、狂信家やにせ預言者しか出ていなかったので、ことわざのように言われていた、(ことわざの例→4:37) イエスが最初に
アンデレとヨハネに言われたのと同じ言葉、偏見を打ち破るためには、証拠を見せるのが一番だから
*47 イスラエリーテス(ギ) Israelite、イスラエル人 ガリラヤやサマリヤには、一部帰還したイスラエル十部族がいたと思われる、 ドロス(ギ、単数) craft、deceit、guile、悪だくみ、詐欺、虚偽、こうかつ、ずるさ (参) 黙示14:5 「(初穂として贖われた14万4千人のイスラエルの民に、)彼らの口には、欺き(ドロス、単数)を見出さなかった」 (cf. プセウドス lie、偽り、うそ、falsehood、虚偽 (8:44))
*48 イエスは、あらかじめ御父に示されて、幻で見たことを言っている (→ 5:19)
*50 信じる: イエスは神の子である、と信じたこと
*51 エピ(ギ) (場所的に) on、at、by、over、against、 創世記28:12 ヤコブの天の梯子の夢、ベト・エル(神の家)
第2章
1 その三日目に、ガリラヤのカナに婚礼があって、イエスの母がそこにいた。
2 イエスも、弟子たちも、その婚礼に招かれた。
3 ぶどう酒がなくなったので、母はイエスに向かって言った。「ぶどう酒がありません。」
4 イエスは母に言われた。「婦人よ*、あなたは、わたしと、何の係わりがありますか*。わたしの時*は、まだ来ていません。」
5 母は しもべたちに言った。「この方が、あなたがたに言いつけることは、何でもして下さい。」
6 そこには、ユダヤ人のきよめの慣習に従って、それぞれ百リットル前後*も入る石の水がめが、六つ*置いてあった。
7 イエスは彼らに、「かめに水を満たしなさい。」と言われたので、彼らは縁(ふち)のところまでいっぱいに入れた。
8 そこで彼らに言われた。「今、汲みなさい。そして料理長のところに持って行きなさい。」 すると、彼らは持って行った。
9 料理長は、ぶどう酒になった水を味わってみたが、それがどこからきたのか知らなかったので、・・・水を汲んだ しもべたちは知っていたが、・・・花婿に声をかけて、
10 言った。「どんな人でも、初めに良い*ぶどう酒を出して、酔いが回った頃に低級のもの*を出すものです。それなのに、あなたは良いぶどう酒を今までとっておかれました。」
11 イエスは、この最初のしるし*をガリラヤのカナで行い、その栄光を現わされた。そして弟子たちはイエスを信じた。
12 それから後*、イエスは、その母、兄弟たち、弟子たちと一緒に、カペナウムに下って、長い日数ではないが、そこに留まられた。
13* さて、ユダヤ人の過越しの祭りが近づいたので、イエスはエルサレムに上られた。
14 そして牛、羊、鳩を売る者や両替する者などが神殿*の中に座っているのをご覧になって、
15 細縄*でむちを作り、羊も牛もみな神殿から追い出し、両替人の金を散らし、その台をひっくり返し、
16 鳩を売る人々には、「これらのものを持って、ここから出て行きなさい。わたしの父の家を商売の家としてはならない。」と言われた。
17 弟子たちは、「あなたの家を思う熱心が、わたしを食い尽くす。」*と書いてあることを思い出した。
18 そこで、ユダヤ人たちはイエスに言った。「このような事をするからには、どんなしるしをわれわれに見せてくれるのか。」
19 イエスは彼らに答えて言われた。「この神殿*を解体しなさい*。わたしは三日のうちに、それを起こします*。」
20 そこで、ユダヤ人たちは言った。「この神殿を建てるのには、四十六年もかかった*のです。それを、あなたは三日のうちに、建てるのですか。」
21 イエスは、ご自分の御体という神殿のことについて、言われたのである。
22 それで、イエスが死人の中からよみがえられたとき、弟子たちは、イエスがこのように言われたことを思い出して、聖書とイエスが言われた言葉とを信じた。
23 過越しの祭りの間と、その祝宴の間、イエスがエルサレムに滞在しておられたとき、多くの人々は、その行われたしるしを見て、イエスの名を信じた。
24 しかしイエスご自身は、すべての人を知っておられたので、彼らに自分をお任せにならなかった。
25* すなわち、人に関しての誰の証言も、必要とされなかったのである。それはイエスが、人の心の中にあるものを知っておられたからであった。
*1 ピリポ、ナタナエルと会われて3日目、すなわち、第7日目、 母マリヤが接待役になっていたので、彼らも(ベタニヤからカナまでの約3日の道のりを通って)結婚式に招かれた。
*4 ギューナイ(ギ) <ギュネー woman (未婚・既婚問わず)、 イエスの関心と 母の関心事が 全く異なること。しかし奇跡は行われた、 わたしの時: 十字架によって贖いの血を注ぎ出す時
*6 (直訳) 二、三メトレテス、 メトレータス(ギ): 1メトレテス=約40リットル、∴100リットルくらい、 § 6は不完全数で、律法によるきよめは不完全。これをぶどう酒(すなわち御子の血)により完全にする、という象徴がある
*10 カロス(ギ) excellent、good、 エラッソン 若い、発酵途中の(甘い)ワイン、ランクの低い
*11 § ヨハネが選んだ7つのしるしのうちの、最初のしるし
*12 メタ トゥート(ギ) (記事の内容が次へ変わる際に用いられる言葉、 11:7、11、19:28) § 共観福音書にあるガリラヤ宣教は省かれ、エルサレムにおける働きから開始
*13 公的宣教の開始: エリサレム(初めの宮きよめ) → ユダヤ → サマリヤ → ガリラヤ → (5章から)エルサレム
*14 ヒエロー(ギ) sacred place、temple、神殿、宮
*15 イグサの細縄 (ケガをさせるようなものではない)
*17 詩篇69:9
*19 ナオス(ギ) temple、聖所、神殿、 ルオー loose、解く、ゆるめる、dissolve、溶かす、 エゲイロー raise up、立てる、起こす、arouse、目を覚まさせる
*20 § ヘロデ大王がBC19年から開始し、BC9年に一応完成し献堂式を行ったが、その後も工事が続けられ、開始から46年目とはAD27、8年頃になる。さらに、完成したのはAD64年で、その6年後のAD70年にはエルサレム陥落・神殿は炎上した。
*25 § イエスがなされたしるしと不思議により、人々がイエスを王に担ぎ上げて政治的に利用することを嫌い、また、十字架が成就しなくなることを避けた。
第3章
1 パリサイ人の一員で、その名をニコデモというユダヤ人の指導者*がいた。
2 ニコデモは、夜、イエスのところに来て、言った。「ラビ。私たちはあなたが、神から来られた教師であると気が付いています。それは、神が共におられるのでないなら、あなたがしておられる、これらのしるしは、誰にもできないからです。」
3 イエスは答えて言われた。「まことに、まことに*、あなたに言います。誰でも、上から新しく*生まれなければ、神の御国*を見ることはできません。」
4 ニコデモは言った。「人は老年になってから生れることが、どうしてできますか。もう一度、母の胎に入って生れることができるでしょうか。」
5 イエスは答えられた。「まことに、まことに、あなたに言います。誰でも、水と御霊*とから生れなければ、神の御国に入ることはできません。
6 肉から生れた者は肉であり、霊から生れた者は霊です。
7 あなたがたは上からもう一度生れなければならないと、わたしが言ったからといって、疑わしいと思ってはいけません。
8 風*は思いのままに吹く。あなたはその音を聞くが、それがどこからきて、どこへ行くかは知らない。御霊*から生れるすべての者も、このようです。」
9 ニコデモはイエスに答えて言った。「どうして、そんなことが起こり得ましょうか。」
10 イエスは彼に答えて言われた。「あなたはイスラエルの名だたる教師*でありながら、これらのことを知らないのですか。*
11 まことに、あなたに言います。わたしたちは知っていることを語り、見たことをあかししているのに、あなたがたは、わたしたちのあかしを受け入れません。
12 あなたがたは、わたしが地上のことを語って信じないならば、天上のことを語った場合、どうしてそれを信じるでしょうか。
13 誰も天に上った者はいません。しかし、天から下ってきた者はいます。すなわち、天にいる人の子です。
14 そして、ちょうどモーセが荒野でへびを上げた*ように、人の子もまた上げられなければならない*。
15 それは彼を信じる者が、皆、永遠のいのち*を持つ*ためです。」
16 神は、これほどまでに、世を愛してくださったゆえに、ただ一人の御子*を 与えてくださったのである。 そして、御子を信じる者は だれであっても、決して滅びることなく、永遠のいのち*を持つ*。
17 神が、御子を世に遣わされたのは、世をさばくためではなく、御子によって、この世が救われるためである。
18 御子を信じている者は、さばかれない。しかし、信じていない者は、すでにさばかれている。神のひとり子の名を信じなかったからである。
19 そのさばきというのは、光が世にすでに来ているのに、人々の行ないが悪いために、人々が光よりもやみの方を愛したことである。
20 悪を行っている者はみな光を憎んでいるので、その行ないが曝露されないように、光の方には来ない。
21 しかし、真理*を行なっている者は光の方に来る*。その人の行ないが、神にあって成されたということが、明らかにされるためである。
22 この後、イエスは弟子たちとユダヤの地に行き、彼らと一緒にそこに滞在して、バプテスマを授けておられた*。
23 一方、ヨハネもサリムに近いアイノン*で、バプテスマを授けていた。そこには水がたくさんあったからである。人々が次々とやってきてバプテスマを受けていた。
24 そのとき、ヨハネは、まだ牢に入れられてはいなかった。
25 ところが、ヨハネの弟子たちとユダヤ人たちとの間に、きよめのことで争論が起った。
26 そこで、彼らはヨハネのもとに来て、言った。「ラビ。ヨルダン川の向こう側であなたと一緒にいたことがあり、そして、あなたがあかしをしておられたあの方が、ご覧ください、バプテスマを授けておられます。そして、皆の者が、その方のところへ行っています。」
27 ヨハネは答えて言った。「人は天から与えられるのでなければ、いかなるものも受けることはできません。
28 私が、『私はキリストではなく、その方よりも先に*遣わされた者である。』と言ったことをあかししてくれるのは、あなたがた自身です。
29 花嫁を迎える者は花婿です。花婿のその友人は立って彼の声を聞き、その声を聞いて大いに喜んでいます。それゆえ、この喜びは私に満ち満ちています。
30 あの方は栄えなければならず、私は衰えなければなりません。」
31 上から来られる方は、すべてのものの上におられ、地から出る者は地に属して、地のことを語る。天から来られる方は、すべてのものの上におられる。
32 彼はその見たところ、聞いたところをあかししているが、だれもそのあかしを受け取らない。*
33 しかし、そのあかしを受け取った者は、神が真理を語る方*であることに捺印した*のである。
34 神がお遣わしになった方は、神のことばを語られる。それは、神が、量ること無しに*、聖霊を与えられるからである。
35 父は御子を愛しておられ、万物を彼の手にお与えになった。
36 御子を信じる者は、永遠のいのちを持つ。しかし、御子を信じない者*はいのちを見ることがないばかりか、神の御怒りがその人の上にそのまま残る。
*1 指導者 = サンヘドリンの議員、 (ニコデモのその後 7:50、51、 19:39)
*3 アメーン アメーン(ギ) amen amen、確かに、確かに、 アノーセン(ギ) from above、from a higher place; anew、over again、上から、高き所から; 新しく、 ヨハネの福音書で、「御国」と書いてあるのはここと
5節のみ
*5 水: バプテスマのヨハネが導いていた「罪の悔い改め」、 御霊: 信じた時に受ける「聖霊」
*8 プネイ(ギ) <プネオ、breathe、wind、息、風、 プニューマ(ギ) (Holy) Spirit、聖霊、spirit、霊、 ・ 風と御霊は同じ語根、 ・ ヘブライ語の ルーアハ(ヘ)は、風、霊の両方の意味 § 御霊から生まれる者は、聖霊の御声を聞き、聖霊に導かれて歩む の意
*10 ホ ディダスカロス(ギ) the teacher、(冠詞がついて、)(イスラエルの)名だたる教師、 ニコデモは、霊的な事柄については非常に疎かった
*14 民数記21:9 「青銅の蛇」、仰ぐ者は死ななかった、 ヒュプソオー(ギ) lift up on high、exalt、高く持ち上げる、褒める、 人の子も十字架の上に上げられる の意 (ヨハ8:28)
*15、16 ゾーエン アイオーニオン(ギ) eternal life、永遠のいのち、 エケー <エコー have、持つ、所有する
*16 トン ヒュイオン アウトウ トン モノゲネー(ギ) the Son of Him the only-begotten、(父なる)神のひとり息子、神が独自にもうけた(比類ない)息子
*21 アレーセイア(ギ) truth、真理、キリストご自身、キリストの教えにかなうもの、 (§ 日頃、慈善などの善行を(宗教は違っても、)積極的にしている人は、キリストを信じて救われる場合が多い)
*22 4:2より、弟子たちが授けていた
*23 サマリヤ北部の、イズレエル渓谷とヨルダン川の合流点近く、 アイノン:アイン(泉)が多い地、
ベテ・シャン(ヨシュ17:11、Tサム31:10、12)の南12km?
*28 エムプロスセン before、in front of、(時間的に)先に、(位置的に)前に
*32 多くのユダヤ人たちが信じなかったこと、 (積極的に)取る、 (受け入れ ×)
*33 アレセース(ギ、形容詞) true; speaking the truth、loving the truth、真実の; 真理を語る、真理を愛する スフラギゾー seal; prove、confirm、封印する、(確認の)印を押す
*34 エク メトゥロー(ギ) out of measure、量ることをしないで、限りなく、 プニューマ(単数・中性) Spirit、聖霊(単数)
*36 アペイセオー(ギ) refuse belief、信じることを拒絶する、信じない、自身で説得されない (従わない ×)
第4章
1 イエスが、ヨハネよりも多くの弟子をつくり、またバプテスマを授けておられるということを、パリサイ人たちが聞いた。そのことを主*が知られたとき、
2 ・・・ ただし、イエスご自身がバプテスマを授けておられたのではなく、その弟子たちであったが、 ・・・
3 ユダヤを去って、再び、ガリラヤへ行かれた。
4 しかし、イエスはサマリヤを通過しなければならなかった。
5 そこで、イエスはサマリヤのスカルという町に来られた。この町は、ヤコブがその子ヨセフ*に与えた土地*の近くにあったが、
6 そこにヤコブの泉*があった。イエスは旅の疲れを覚えられ、この泉*のそばに座っておられた。時は昼の十二時ごろ*だった。
7* 一人のサマリヤの女が水を汲みに来たので、イエスはこの女に、「水を飲ませて下さい。」と言われた。
8 弟子たちが、町に食物を買いに行っていたからである。
9 すると、サマリヤの女はイエスに言った。「あなたはユダヤ人でありながら、どうしてサマリヤの女である私に、水を求められるのですか。」 それは、ユダヤ人たちはサマリヤ人*たちと交流が無かったからである。
10 イエスは答えて言われた。「もしあなたが神の賜物のことを知り、また、『水を飲ませてほしい。』と言った者が、誰であるか知っていたならば、あなたの方から願い出て、その人から生ける水*をもらったことでしょう。」
11 女はイエスに言った。「主よ*。あなたは、汲む物をお持ちにならず、そして、井戸は深いのです。その生ける水を、どこから手に入れるのですか。
12 あなたは、この井戸を下さった私たちの先祖のヤコブよりも、偉大な方なのでしょうか。ヤコブ自身も飲み、彼の子らも、彼の家畜も、この井戸から飲んだのです。」
13 イエスは女に答えて言われた。「この水を飲む者はだれでも、また渇きます。
14 しかし、誰でも、わたしが与える水を飲む者は、永遠に至るまで*、決して渇くことがありません。わたしが与える水は、その人のうちで泉*を生じさせ*、永遠のいのちに至る*水が、湧き上がります。」
15 女はイエスに言った。「主よ*。私が渇くことがなく、また、こちらへ汲みに来なくても良いように、その水を私に下さい。」
16 イエスは女に言われた。「行って、あなたの夫をこの所に呼んで来なさい。」
17 女は答えて言った。「私には夫はありません。」 イエスは女に言われた。「夫がないとあなたが言うのは、まさにその通りです*。
18 あなたには五人の夫がいましたが、今の人はあなたの夫ではありません。あなたが言ったことは本当です。」
19 女はイエスに言った、「主よ*。あなたを預言者と、お見受けします。
20 私たちの先祖は、この山*で礼拝をした*のですが、あなたがたは、エルサレムに礼拝すべき場所がある、と言っています。」
21 イエスは女に言われた。「婦人よ、わたしの言うことを信じなさい。あなたがたが、この山でも、またエルサレムでもない所で、父を礼拝する時が来ます*。
22 あなたがたは知らないで礼拝していますが*、わたしたちは何を礼拝しているのか知っています。救いはユダヤ人から出るからです。
23 しかし、真*の礼拝者たちが、霊と真理*とをもって父を礼拝する時が来ます。そして今、来ています。それは、父は、そのような礼拝者たちを捜し求めておられるからです。
24 神は霊ですから、礼拝をする者も、霊と真理とをもって礼拝すべきです。」
25 女はイエスに言った。「私は、キリスト*と呼ばれるメシヤ*が来られることを知っています。その方が来られたならば、私たちに、すべてのことを知らせて下さるでしょう。」
26 イエスは女に言われた。「あなたと話をしている者、それがわたしです*。」
27 そのとき、弟子たちが帰って来て、イエスが女と話しておられるのを見て不思議に思った。しかし、「何を求めておられますか。」とも、「彼女と何を話しておられるのですか。」とも、尋ねる者は誰もいなかった。
28 女は水がめをそのままそこに置いて、町に行き、人々に言った。
29 「来て、この人を見てください。彼は、かつて私がしたことを何もかも言い当て*ました。この人がキリストではないでしょうか。」
30 すると、人々は町から出て来て、次々とイエスのところへやって来た。
31 その間に弟子たちはイエスに、「ラビ、召し上がってください。」とすすめた。
32 ところが、イエスは言われた。「わたしには、あなたがたの知らない食物があります。」
33 そこで、弟子たちが互いに言った。「誰かが、何か食べるものを持って来たのではないだろうか。」
34 イエスは彼らに言われた。「わたしの食物*とは、わたしを遣わされた方のみこころ*を行い、みわざ*を成し遂げることです。
35* あなたがたは、刈入れ時が来るまでには、まだ四か月あると、言っていませんか*。見よ、わたしはあなたがたに言います。目を上げて畑をよく見なさい。すでに色づいて*刈入れるばかりになっています。
36 刈る者は報酬をもらって、永遠のいのちに至る実を集めています。そして、蒔く者が刈る者と共に、大いに喜びます。
37* それは、『一人が種を蒔き、もう一人が刈リ取る。』ということわざは、本当なのです。
38* わたしは、あなたがたを遣わして、あなたがたがそのために労苦しなかったものを刈り取らせました。他の人々が労苦し、あなたがたは、彼らの労苦の実にあずかっているのです*。」
39* さて、この町から来たサマリヤ人の多くは、「この人は、私のしたことをことごとく言い当てた。」と、証言した女の言葉によって、イエスを信じた。
40 そこで、サマリヤ人たちはイエスのもとにきて、自分たちのところに滞在していただきたいと願ったので、二日の間、イエスはそこに滞在された。
41 そしてさらに多くの人々が、イエスのみことばによって信じた。
42 彼らは女に言った。「私たちは、もはやあなたが話すことによって信じているのではありません。それは、私たち自身で聞いて、この方こそ本当に、世の救い主*、キリストであられること知ったからです。」
43 二日の後に、イエスはここを去ってガリラヤへ行かれた。
44 それは、イエスご自身で、「預言者は自分の故郷では敬われない。」*と証言されたからである。
45 それゆえ、イエスがガリラヤに来られると、ガリラヤの人々はイエスを歓迎した。それは、彼らも祭りに行っていたので、その祭りの間に、イエスがエルサレムでなされたことのすべてを見ていたからである。
46 イエスは、再びガリラヤのカナに行かれた。そこは、かつて水をぶどう酒に変えられた所である。ところが、カペナウムに、息子が病を患っている王室の役人がいた*。
47 この人は、イエスがユダヤからガリラヤにお着きになっていることを聞いて、イエスの所に来て、カペナウムに下って彼の子をいやしていただきたいと請い願った。それは、その子が死にかかっていたからである。
48* そこで、イエスは彼に言われた。「あなたがたは、しるしと奇跡*とを見ない限り、決して信じません。」
49 この役人はイエスに言った。「主よ、どうぞ、子供が死んでしまう前に来て下さい。」
50 イエスは彼に言われた。「行きなさい。あなたの息子は今生きています*。」 彼は、イエスが彼に言われた言葉を信じて、そして帰って行った。
51 その下って行く途中、しもべたちが彼に出会い、その子が生きている*ことを告げた。
52 そこで、彼はしもべたちに、息子が良くなった時刻を尋ねると、「昨日の午後一時*に熱が引きました」と答えた。
53 それは、イエスが、「あなたの息子は生きている*。」と言われたのと同じ時刻であったことを、この父は知って、彼も、彼の家族全員も信じた。
54 これは、イエスがユダヤからガリラヤに来てから行なわれた、第二のしるしである。
*1、11 キュリエ <キュリオス(ギ) Lord、master、主、主人
*5 スカル: ゲリジム山麓の「ヤコブの井戸」の北1.5kmの所で、一説には
シェケムの町(創世記33:18)と同じといわれる、 ヨセフの子孫のエフライムとマナセに代表される北イスラエル
*6、14 ペーゲー(ギ) spring、泉 ・・・ 内側から湧き出る泉にたとえるため、井戸を泉と書いてある cf. フレアル(:11、12) well、井戸、 昼の12時: (直訳) 第6時
*7 普通は夕方に水汲みするのに、彼女は、誰もいない昼の暑い時に、人目を忍んで一人で水汲みに来た
*9 サマリヤ人: BC721年にサマリヤ陥落、アッシリヤ捕囚となってアッシリヤやメディアへ連れて行かれ(U列17:6、
18:11)、代わりにバビロン人などが強制入植させられ(U列17:24)、その後は混血となり、偶像崇拝も並行して行われた。一方、ユダヤ人は、バビロン捕囚からの帰還後、純血と宗教(ユダヤ教)の単一性を保っていたので、サマリヤ人を異邦人とみなし、交流を持たなかった。
*10 ヒュドール(受格、単・中) ゾーン(ギ、動詞、受格、単・中)
<ザオ(live、生きる) living water (having vital power in itself)、生かす水
*14 エイス トン アイオーナ(ギ) エイス into、towards、の方へ向かって、 ギノマイ become、come into existence、happen、appear、be made、起こさせる、生じさせる、現れる、なる、 エイス into、towards、の方へ向かって § 後の 聖霊のバプテスマのことを言っている
*15、19 キュリエ(ギ) 主よ
*17 カロース(ギ) rightly、excellently、commendably、good、well、正しく、見事に、褒めるに足りて、良く
*20 申命記11:29、ヨシュ8:33、 ゲリジム山: 現代にいたるまで、混血のサマリヤ人がいけにえを捧げている、 創33:20 (ヤコブは、神はベテルにいるのに、シェケムのこの場所を勝手に「イスラエルの神である神」と名付けた)
*21 マラキ1:11 「諸国の民の間で礼拝される」
*22 サマリヤ人の聖書は、モーセ五書のみ
*23 アレーシノス(ギ) true、真の、 アレーセイア truth、真理、まこと、 § 霊と真理 = 聖霊と 御子イエス、 イエスの名によって、聖霊にゆだねてする、新しい
礼拝
*25 クリストース(ギ) Christ、キリスト、 メッシアス Messiah、メシヤ
*26 エゴー エイミ(ギ) I am、 わたしはある(△)、(ここでは)わたしです
*29 エイペン(ギ、アオ過去2(瞬時過去)、3・単) <レゴー say、speak、teach; point out with words、言葉で指摘する
*34 ブロマ(ギ、単・中) food、食物(単数)、 セレマ(ギ、単・中) will、wish、意志、みこころ(単数)、 エルゴン(単・中) business、product、deed、働き、行ない、みわざ(単数)、ここでは十字架のみわざのこと § イエスがご自身を、「いのちのパン」としてお与えになること(→ 6:35、51)
*35 § 直接的には、先のサマリヤの女が、スカルの町で言いふらしたことによって人々がやって来る宣教の事。 刈り入れ時まで4か月: 11、12月の雨期の初めに種まきして、3〜5月に穀物の刈り入れ、 リューコス(ギ) bright、white、(直訳) 白く光り輝いている
*37 種を蒔くそばで、すぐに育って実を結び、刈り取っていく様子
*38 § この、「異邦人のサマリヤ」の町だけではなく、預言者たちの働きや、イエスご自身の説教やみわざ、そして、十字架の贖いによって、後に、弟子たちが「異邦人の救い」という大収穫を受け取ること。 (直訳) 彼らの労苦の中に進入している
*39 イエスの「知識の言葉」(Tコリ12:8)によって、この女性が町中に熱心にあかしすることとなり、弟子たちは労せず収穫した
*42 ソーテール(ギ) saviour、deliverer、救い主、救世主
*44 ルカ4:24等より、ガリラヤのナザレでの事であるが、ここでは、イエスを拒絶して十字架にかけた
エルサレムの事を預言している
*46 ヘロデ・アンティパスの王室の役人、わざわざカペナウムからカナまで来た
*48 § 典型的なユダヤ人の不信仰を指摘された(Tコリ1:22)。彼はよみがえりの現場を見ることができなかった、 cf. ヤイロの娘(マコ5:23)不信者を家から追い出した、百卒長(異邦人)のしもべ(マタ8:5、ルカ7:2)「お言葉を下さい」、 テラス(ギ) miracle、prodigy、portent、奇跡; 驚異、前兆、 マタ24:24、マコ13:22(終末のにせ預言者)、使徒2:19(天の前兆)、2:22(イスラエル人に対し、キリストの奇跡)、・・・(福音書はこの3ヶ所のみ、使徒行伝に多い言葉)
*50、51、53 ゼー(ギ、現在、3・単) <ザオー live、be alive、breathe、生きる、生きている
*52 (直訳) 第7時
第5章
1* この後、ユダヤ人の祭り*があったので、イエスはエルサレムに上られた。
2 エルサレムにある羊の門*のそばに、ヘブル語でベテスダ*と呼ばれる池があった。そこには五つの回廊があった。
3 その回廊の中には、盲人、足なえ、やせ衰えた者などの大ぜいの病人たちが、体を横たえていた。彼らは、水が動かされるのを待っていたのである。
4 それは、時々、主の御使いがこの池に降りて来て水をかき回すのであるが、水がかき回された時に一番先に入る者は、どんな病気にかかっていても、健全な体になるからである。
5 さて、そこに三十八年の間、病気にかかっている人がいた。
6 イエスはその人が横になっているのを見て、また、長い間患っていたのを知って、その人に、「あなたは健全な体*になりたいですか。」*と言われた。
7 この病人はイエスに答えた。「主よ。水がかき回される時に、私を池の中に入れてくれる人がいません。私が行こうとすると、他の人が先に降りて行くのです。」
8 イエスは彼に言われた。「起きて、あなたの床を取り上げ、そして歩きなさい。」
9 すると、この人はただちに健全な体になり、床を取り上げて、歩いて行った。その日は安息日であった。
10 そこでユダヤ人たちは、そのいやされた人に言った。「きょうは安息日です。床を取り上げるのは合法*ではありません。」
11 彼は答えた。「私を健全な体にして下さった方が、床を取り上げて歩けと、私に言われたのです。」
12 彼らは尋ねた。「床を取り上げて歩けと言った人は、誰ですか。」
13 しかし、このいやされた人は、それが誰であるか知らなかった。イエスは、この場所にいた群衆の中を、そっと抜け出られたからである。
14 その後、イエスは神殿でその人を見つけて、彼に言われた。「見よ。あなたは健全な体になりました。もう罪を犯してはいけません*。さらに何か悪いことが、あなたの身に起るからです。」
15 彼は出て行って、自分を健全にしてくれたのはイエスであったと、ユダヤ人たちに報告した。
16 そのためユダヤ人たちは、安息日にこのようなことをしたということで、イエスに追い迫り、どのようにして殺そうかと探った。
17 そこで、イエスは彼らに答えられた。「わたしの父は、今に至るまで働いておられます。それで、わたしも働いているのです。」
18 このためにユダヤ人たちは、ますますイエスを殺すことを捜し求めるようになった。それは、イエスが安息日を破られたばかりではなく、神を自分の父と呼んで、自分を神と等しい*ものとされたからである。
19* さて、イエスは彼らに答えて言われた。「まことに、まことに、あなたがたに言います。子は、父のなさることを見て行なう以外に、自分からは何事も行なうことができません。それは、父のなさることはすべて、子もその通りに行なうからです。
20 それは、父は子に愛情を示し*て、みずからなさることは、すべて子にお示しになるからです。そして、それよりもさらに大きなわざを示されます。あなたがたが、それによって不思議に思うためです。
21 すなわち、父が死人を目覚めさせ、いのちをお与えになる*ように、子も同様に、これと思う人々にいのちを与える*からです。
22 父は誰をもさばき*ません。さばきのことはすべて、子に与えられたからです。
23 それは、すべての人が父を敬う*と同様に、子を敬う*ためです。子を敬わ*ない者は、子をつかわされた父をも敬い*ません。
24 まことに、まことに、あなたがたに言います。わたしの言葉を聞いて、わたしを遣わされた方を信じる者は、永遠のいのちを受け、またさばかれることがなく、死からいのちに移っているのです。
25 まことに、まことに、あなたがたに言います。死人たち*が、神の子*の声を聞く時が来ます。今すでに来ています。そして聞いた人々は生きます。
26 それは、父がご自分の中にいのち*を持っておられるのと同様に、子にもまた、自分の中にいのち*を持つことが与えられたからです。
27 また、子は、人の子*でもあるので、子にさばきを行う権威をも、お与えになりました。
28* このことを不思議に思ってはいけません。墓の中にいるすべての者たちが、神の子の声を聞いて、出てくる時が来ます。
29* それぞれ、良いわざ*を行なった*人々は、いのちの復活の中に、また、悪事を働いた*人々は、さばきの復活の中に、出てきます。
30 わたしは、自分からは何事もすることができません。ただ聞く通りにさばくのです。そして、わたしのこのさばきは義である*のです。それは、わたし自身の意志*でするのではなく、わたしを遣わされた方の、みこころ*を捜し求めているからです。
31 もし、わたしが自分自身について証言をするならば、わたしの証言は真理を語って*いません。
32 わたしについてあかしをする方は他におられ、そして、その方がするあかしが真理を語って*いることを、わたしは知っています。
33 あなたがたはヨハネのもとへ人を遣わしたが、そのとき彼は真理*についてあかしをしました。
34 わたしは人からの証言を受け取りません。しかし、このことを言うのは、あなたがたが救われるためです。
35 ヨハネは燃えて輝くともしびでした。あなたがたは、しばらくの間、その光を、進んで喜び楽しもうとしたのです。
36 しかし、わたしには、ヨハネのあかしよりも、より偉大な*あかしがあります。父がわたしに成就させようとしてお与えになった多くのわざ*、すなわち、今わたしがしているこのわざ*そのものが、父がわたしを遣わされたことをあかししているのです。
37 また、わたしを遣わされた父も、ご自分でわたしについてあかしをされました。あなたがたは、まだその声を聞いたこともなく、その姿を見たこともありません。
38 また、神が遣わされた者を信じないので、神のみことばはあなたがたの中に留まっていません。
39 あなたがたは、聖書の中に永遠のいのちがあると考えているので、調べていますが、この聖書は、わたしについてあかしをしているのです。
40 そして、あなたがたは、いのちを持つために、わたしのもとに来ようと願いません。
41 わたしは人からの栄誉*を受け取りません。
42 しかし、あなたがたの中に神の愛を持っていないことを、すでに知っています。
43* わたしはわたしの父の名によって来たのに、あなたがたはわたしを受け入れません。もし、他の人*が彼自身の名によって来るならば、その人を受け入れるのです。
44 互いの栄誉*を受け取りながら、ただ一人の神からの栄誉*を捜し求めないあなたがたは、どうして信じることができるでしょうか。
45 わたしがあなたがたのことを父に訴えると考えてはいけません。あなたがたを訴える者は、あなたがたが望みを置いているモーセその人です。
46 もし、あなたがたがモーセを信じているならば、わたしをも信じるはずです。モーセは、わたしについて書いているからです。
47 しかし、モーセの書いたものを信じていないならば、どうしてわたしの言っていること*を信じるようになる*でしょうか。」
*1 4章までが初期の公生涯であり、5章から共観福音書との共通項目が出てくる、 ヘオルテー(ギ) feast、festival、祭り、(冠詞が無いので、この祭りは過越し祭ではない。→ 6:4に過越し祭、cf.シナイ写本には冠詞ヘーがある×) ∴ イエスの公的宣教の期間は、過越し(2:13)→過越し(6:4)→仮庵(7:2)→宮きよめ(ハヌカ、冬、10:22)→過越し(12:1−)の 満2年。(改ざん写本に基づいて冠詞を認めることによる、伝統的な期間の3年余り
には無理がある)
*2 プロバティコス(ギ) of sheep、sheep(gate)、羊の門 (門 は補足、北の城壁の東側・ヘロデ門、 ネヘミヤ3:1)、 ベーセスダ(ギ) ベテスダ あわれみの家 の意(ベツサイダ(漁師の家)ではない)
*6 ヒュギエス(ギ) sound、健全、健康、 § (良くなりたいのは分かり切っているが、)その人が癒される信仰を持つかどうかを知るために、癒されたい意志があるのかどうかを聞かれる
*10 エクセスティ(ギ) lawful、(律法・戒律に対して)合法、 (ネヘ13:19、エレ17:21 「安息日に荷物を運ぶな」の律法主義的曲解
× ⇔ 「安息日は人のためにある」○)
*14 彼の場合は、病の原因は罪だった
*18 イソス(ギ) equal、 (質的に)等しい、(量的に)等しい 前者の、質的に等しい、の意
*19 § 御子イエスは、御父が示される幻を見て、それに聞き従って、すべてのみわざを行っていた。 それは、ご自分の権威で、わざを行うこともできたのに、その神としての権利を放棄して(ピリピ2:6、7)、われわれへの模範を示されるため(→ 14:12)
*20 フィレオー(ギ) (love)、affectionate、好む、良いと認める、認可する; 優しくする、愛情を表す
*21 ゾオポイエオー(ギ) produce(make) alive、vivify、いのちを作り出す、生かす、元気にさせる
*22 クリノー(ギ) put asunder、approve、judge、分離する、賛成する、裁く
*23 ティマオー(ギ) estimate、honour、見積もる; 名誉や報酬を付与する、(名誉や報酬で)尊敬を表す、(マタ15:4、ルカ18:20、ヨハ8:49等、「あなたの父母を敬え」)
*26 ゾエ(ギ) (eternal)life、(永遠の)いのち (単数: いのち、聖霊は、単数扱い)
*25、27 死人たち: ここでは、霊的に死んだ者たち = 罪人たち、 § 「神の子」は、いのちを与え、「人の子」は、さばきを行う (ダニエル7:13、14)
*28、29 § 再臨の時の復活の事、「良いわざを行った人々」とは、「イエスを信じる人々」の事、→ 6:29、 アガソース(ギ) good nature、useful、excellent、(主のみこころにかなう)良いこと = 「信じること」(→ 6:28、29)、 ポイエオー make、make ready、do、act rightly、 プラッソー exercise、accomplish; commit、成す、(悪事を)働く、(罪を)犯す
*30 ディカイオス(ギ) righteous、義である、(神の前に)正しい、 セレマ will、意志、(神の)みこころ
*31、32 アレセース(ギ、形容詞) true; speaking the truth、loving the truth、真実の; 真理を語る、真理を愛する
*33 アレーセイア(ギ) truth、真理
*36 メイゾー(ギ、メガスの比較級、複・中) greater、より偉大、 エルガ(ギ、複・中) <エルゴン business、act、deed、務め、事柄、わざ、 多くの は補足
*41、44 ドクサ(ギ) opinion、judgment、view、brightness、majesty、意見、評価; 輝き、名声、栄誉
*43 § 受け入れないのは、神の三位一体(=イエスの神性)を悟ることができないから。 (「他の人」:アロス、単数・男) 一度目は、「カイザルの他に王はいない」(19:15)で成就。 (特に、)世の終わりの時に、にせ預言者により、反キリスト(単数)が自身の名によって来るならば、イスラエルの民は受け入れてしまう。目に見えない神(神本主義)でなく、人を見てしまうため(人本主義)。
*47 レーマ(ギ) (声で、語って、)言っている言葉、説教、 cf. ロゴス、ことば、 ピステユーセテ(未来、2・複) you will beleave、信じるようになる
第6章
1 その後、イエスはガリラヤの湖*、すなわち、テベリヤ湖*の向こう岸*へ渡られた。
2 すると、大ぜいの群衆がイエスについてきた。病人たちにされていたしるしを見たからである。
3 イエスは山に登って、弟子たちと一緒にそこに座られた。
4 時に、ユダヤ人の祭りである過越し*が間近かになっていた。
5 それから、イエスは目を上げ、大ぜいの群衆が自分の方に集まって来るのを見て、ピリポに言われた。「どこからパンを買ってきて、この人々に食べさせようか。」
6 これはピリポをためそうとして言われたのであって、ご自分ではしようとすることをよく知っておられたのである。
7* すると、ピリポはイエスに答えた。「二百デナリのパンがあっても、それぞれがほんの少しずついただくにも足りないでしょう。」
8 弟子の一人、シモン・ペテロの兄弟アンデレがイエスに言った。
9* 「ここに、大麦のパン五つと、魚二匹とを持っている子供がいます。しかし、こんなに大ぜいの人では、それが何になるでしょう。」
10* イエスは、「人々を横にならせなさい*。」と言われた。その場所には草が多かった*。そこに横になった*男の数は約五千人であった。
11 そこで、イエスはパンを取り、感謝をささげてから、横になっている人々に分け与え、また、魚をも同様にして、彼らがほしいだけ分け与えられた。
12 人々が十分食べてから、イエスは弟子たちに言われた。「少しでも見失わない*ように、パンくずの余りを集めなさい。」
13 そこで彼らが集めると、五つの大麦のパンを食べて残ったパンくずは、十二のかご*に一杯になった。
14 人々はイエスのなさったこのしるしを見て、「本当に*、この方こそ世に来られるはずの預言者だ。」と言った。
15 イエスは人々が来て、ご自分を力ずくで捕らえて王にしようとしているのを知って、ただ一人で、また山に退かれた。
16 夕方になったとき、弟子たちは岸辺に降りて、
17 舟に乗って湖を渡り、向こう岸のカペナウムに渡って行くところであった*。すでに暗くなっていたのに、イエスはまだ彼らのところに来ておられなかった*。
18 その上、湖に強い風が吹き下ろしてきて、湖面は荒れ出した。
19 四、五キロメートル*漕ぎ出したとき、イエスが湖の上を歩いて舟に近づいてこられるのを見て、彼らは恐怖に打たれた*。
20 すると、イエスは彼らに言われた。「わたしだ*、恐れることはない*。」
21 そこで、彼らは喜んでイエスを舟に迎えた。すると舟は、ただちに、彼らが行こうとしていた地に着いた。
22 その翌日、湖の向こう岸に立っていた群衆は、そこに小舟が一艘(そう)しかなく、またイエスは弟子たちと一緒に小舟にお乗りにならず、ただ弟子たちだけが出発したのを見た。
23 しかし、数艘(そう)の小舟がテベリヤから来て、主が感謝をささげられた後にパンを人々に食べさせた場所に近づいた。
24 群衆は、イエスも弟子たちもそこにいないことを知って、それらの小舟に乗り、イエスを捜してカペナウムに来た。
25 そして、海の向こう岸でイエス見つけて、言った。「ラビ。いつ、ここにおいでになったのですか。」
26 イエスは答えて言われた。「まことに、まことに、あなたがたに言います。あなたがたがわたしを捜しているのは、しるし*を見たからではなく、パンを食べて満腹したからです。
27 無くなる*食物のためではなく、永遠のいのちに至る、いつまでも続く*食物のために働きなさい*。これは人の子があなたがたに与えるものです。父であられる神が、人の子に確認の印を押された*からです。」
28 そこで、彼らはイエスに言った。「神の多くの*わざ*の働きをする*ために、私たちは何を成す*べきでしょうか。」
29 イエスは彼らに答えて言われた。「神が遣わされた者を、あなたがたが信じること*。これが、神が求める唯一の*わざ*です。」
30 彼らはイエスに言った。「私たちが見てあなたを信じるために、どんなしるしを行なって下さいますか。どんなことをして下さいますか*。
31 私たちの先祖は荒野でマナを食べました。それは、『天よりのパンを彼らに与えて食べさせた。』と書いてある通りです。」
32 そこでイエスは彼らに言われた。「まことに、まことに、あなたがたに言います。天からのパンをあなたがたに与えたのは、モーセではありません。天からのまことの*パンをあなたがたに与えるのは、わたしの父なのです。
33 それは、神のパンは、天から下って来て、この世にいのちを与える方だからです。」
34 彼らはイエスに言った。「主よ。いつも、そのパンを私たちにお与えください。」
35 イエスは彼らに言われた。「わたしがいのちのパンです。わたしに来る者は決して飢えることがなく、わたしを信じる者は決して渇くことがありません。
36 しかし、あなたがたに言ったとおり、あなたがたはわたしを見たのに信じようとはしません*。
37 父がわたしに与えて下さる者は皆、わたしのもとに来ます。そして、わたしは、わたしについて来る者を決して追い出しません。
38 わたしが天から下って来たのは、自分の願うところ*を行うためではなく、わたしをつかわされたかたのみこころ*を行うためです。
39 わたしを遣わされた方たのみこころとは、わたしに与えて下さった者を、わたしが一人も失わずに、その最後の日に*よみがえらせることです。
40 わたしの父のみこころは、子を見て信じる者が、ことごとく永遠のいのちを得ることです。そして、わたしはその人々を最後の日によみがえらせます。」
41 すると、ユダヤ人たちは、イエスが、「わたしは天から下ってきたパンである。」と言われたので、イエスについてつぶやいて、
42 そして言った。「これはヨセフの息子イエスではないか。私たちはその父と母を知っている。では、この人はなぜ、わたしは天から下ってきたと言っているのか。」
43 イエスは彼らに答えて言われた。「互いにつぶやいてはいけません。
44 わたしを遣わされた父が、引き寄せて下さらなければ、誰もわたしのもとに来ることはできません。わたしは、その人々を最後の日によみがえらせます。
45 預言者の書に、『彼らは皆、神に教えられる。』*と書いてあります。父から聞いて、学んだ者は皆、わたしのもとに来ます。
46 父を見た者は誰もいません。神から出た者、すなわちこの者だけが父を見たのです。
47 まことに、まことに、あなたがたに言います。 私を信じている者*は、永遠のいのちを持っています*。
48 わたしはいのちのパンです。
49 あなたがたの先祖は荒野でマナを食べたが、死にました。
50 しかし、天から下ってきたパンを食べる人は、決して死ぬことはありません。
51 わたしは天から下ってきた生けるパンです。それを食べる者は誰でも、永遠に至るまで生きます。わたしが与えることになる*パンは、世のいのちとなるための*、わたしの肉です。」
52 そこで、ユダヤ人らが互いに議論して言った。「この人はどのようにして、自分の肉をわれわれに、食べさせるために与えることができるだろうか。」
53 イエスは彼らに言われた。「まことに、まことに、あなたがたに言います。人の子の肉を食べず、また、その血を飲まなければ、あなたがたの中にいのちを持つことはありません。
54 わたしの肉を噛(か)み切って食べ*、わたしの血を飲む者には、永遠のいのちがあり、わたしはその人を最後の日によみがえらせます。
55 なぜなら、わたしの肉は本当の食物であり、わたしの血は本当の飲み物だからです。
56 わたしの肉を噛み切って食べ*、わたしの血を飲む者は、わたしにあり続け*、わたしもまたその人にあり続けます。
57 生ける父がわたしを遣わされ、また、わたしが父を通して*生きているように、わたしを噛み切って食べる者もわたしを通して*生きます。
58 天から下ってきたパンは、先祖たちが食べたが死んでしまったマナのようなものではありません。このパンを噛み切って食べる者は、永遠にまでも生きます。」
59 これらのことは、イエスがカペナウムの会堂で教えられたときに言われたものである。
60 弟子たちのうちの多くの者は、これを聞いて言った。「これは、ひどい言葉だ。誰がそんなことを聞くことができようか。」
61 しかしイエスは、弟子たちがそのことでつぶやいているのを知って、彼らに言われた。「このことが、あなたがたをつまずかせるのですか。
62 それでは、もし人の子が前にいた所に上るのを見たら、どうなりますか。
63 人を生かすものは聖霊*であって、肉は何の役にも立ちません。わたしがあなたがたに話している事柄は*は、霊のこと*であり、また、いのちのこと*です。
64 しかし、あなたがたの中には信じていない者がいます。」 イエスは、初めから、誰が信じていないか、また、誰が彼を引き渡すかを知っておられたのである。
65 そしてイエスは言われた。「だから、わたしの父が与えて下さった者でなければ、わたしのもとに来ることはできないと、言ったのです。」
66 それ以来、弟子たちの多くが、後方に去って行き、もはやイエスと共に歩かなかった。
67 そこでイエスは十二弟子に言われた。「あなたがたも、撤退するのですか。」
68 シモン・ペテロが答えた。「主よ。私たちは、誰のところに去って行きましょうか。永遠のいのちの言葉を、あなたは持っておられます。
69 私たちは、あなたが生ける神の子、キリスト*でおられることを、すでに信じ、また知っています。」
70 イエスは彼らに答えられた。「あなたがた十二人を選んだのは、わたしではありませんでしたか。そして、あなたがたのうちの一人は悪魔*です。」
71 これは、イスカリオテのシモンの子ユダについて言われたのである。それは、彼が十二弟子の一人でありながら、イエスを引き渡そうとしていたからである。
*1 (直訳) 海、 テベリヤはヘロデ・アンティパスが建てた町で、1世紀末の当時はテベリヤ湖と呼ばれていた、 北西のカペナウムから
東北岸へ
*4 この過越しの次の過越しが、イエスの十字架の時となる。 5千人の給食の記事は、マコ6:39に「青草」とあるので、春の過越しの時期と一致
*7 ピリポは計算高い人だった、 14:9より、この計算高さは、信仰には働かなかった
*9 ペテロを連れて来たアンデレは、ここでも、パンと魚をささげようとする少年を連れて来た「案内者」である
*10 アナピプトー(ギ) lie back、recline at a table、(食事のために、特に上座、正餐・晩餐で、)横になる、 § 草が多いので人々は周りの状況が見えない。 見えないことにより、不信仰から免れた 百人ずつ、あるいは五十人ずつの、列をつくって横になった(マコ6:40)
*12 アポッリュミ(ギ) destroy、kill、perish; lose、失う、なくす、 (むだにしない△、倹約の勧めではない → このくらいの量が余った、と示すため)
*13 コフィノス(ギ) basket、(中くらいの)かご、 集めたパン切れは働いた12弟子たちの報酬となった cf. スピュリース(ギ) (人が入れるほどの大きな)かご、背負うかご(マタ15:37、使徒9:25)
*14 アレソース(ギ) truly、indeed、本当に
*17 エルコント(ギ、未完了過去、3・複) <エルコマイ come、go、来ようとしていた、 マルコ6:45では、イエスは強いて弟子たちを先に行かせられた
*19 (直訳) 25、30スタディオン(1スタディオン = 185m)、 19、20 フォベオー flight by terrifying、be struck with fear、恐怖におののく
*20 エゴー エイミ(ギ) I AM、 わたしはある、という読み方もできる。 約9時間も こぎ続けていたところを(マタ14:24、25)、主が共におられると、簡単に行くことができた
*26 セーメイオン(ギ) mark、(他と区別する)しるし、sign、(神の奇跡の)しるし、
*27 アポッリュミ(ギ) (destroy、kill、perish;) lose、失う、なくす、 メノー remain、continue to be、wait for、残る、存続する、居続ける; 待つ、 エルガゾマイ work、do、働く、行なう、 スフラギゾー seal、confirm、mark、封印する、確認・認証の印を押す(= エペソ1:13)
*28 エルガ(ギ、中性・複数) <エルゴン businesses、acts、deeds、仕事、働き、わざ(複数)、 「多くの」は補足、 エルガゾマイ work、labour、do、働く、行なう、(前節の 働きなさい、に答えて)、 ポイエオー make、do、作る、産する、行なう
*29 ピステューオー(ギ) credit、have confidence、trust、信頼する、信用する、(神、キリストを)信じる、 エルゴン(ギ、中性・単数) (神が人々に求めている、)唯一のわざ(単数)、 「求める唯一の」は補足 § 信じる、信頼する、ということは、人間のなすべき「仕事」であり、人間の責任の領分 (→ ルカ17:5−10) ・・・ 幼子の時に無条件で父母を信頼した。 信じるか、信じないか、それはあなた次第です!
*30、36 § パンの奇跡が、ユダヤ人たちには 信仰に結び付けられなかった
*31 出エジ16:21
*32 アレシノス(ギ) true、本当の(⇔ にせの、見せかけの)、まことの
*38 セレマ(ギ) will、意志、みこころ
*39 エン テー エスカテー ヘーメラ(ギ、単数) in the last day(単数) = 主の再臨の日、 エスカトス last、extreme、最後の、極みの cf. テロス end、end time、終わり
*45 イザヤ54:13、エレミヤ31:34
*47 ピステユーオーン(ギ、現在、単数・男) one believing(単数)、信じている者が一人でもいたら、のニュアンス エケイ(現在) have
*51 ドーソー(ギ、未来) will give、 § 十字架上でご自身の肉を裂かれ、信じる者たちに与えられたこと、 ヒューペル in beharf of、over、〜の利益となるために、〜の代理に、〜のために、を超えて
*54、56、57、58 トゥローゴー(ギ) gnaw、eat、噛み切って食べる、 cf. エスシーオー eat、eat a meal、食べる、食事をとる、 § 血を飲むことは律法で禁じられていた(レビ3:17、7:26、17:10−)
*56 メノー(ギ) remain、continue to be、wait for、残る、存続する、居続ける; 待つ
*57 ディア(ギ) through、by reason of、〜を通して、〜のゆえに
*63 ト プニューマ(ギ、単数・中性) the Spirit、(冠詞付きで)聖霊、 レーマタ(ギ、複) <レーマ (speaking)words、matters(things)of speech、 プニューマ(単数・中)、 ゾエ(単数・女)、(どちらも冠詞無し・形容詞的に)
*69 神の聖者 (×)、 生ける神の子、キリスト(○)
*70 ディアボロス(ギ) devil、非難・中傷する者、偽り者(8:44、黙示20:10、等)、 cf. サタナス(ギ)、サタン(ヘ) Satan、敵対者、反逆者(13:27、等)、 § カペナウムのこの時点で、イエスは引き渡す者について言われた(→ 13:21−)
第7章
1 その後、イエスはガリラヤを巡回しておられた。ユダヤ人たちがご自分を殺そうとしていたので、ユダヤを巡回しようと思われなかったからである。
2* さて、ユダヤ人の仮庵(かりいお)の祭りが近づいていた。
3 そこで、イエスの兄弟たちが、イエスに言った。「あなたがしておられるわざを弟子たちにも見せるためにも、ここを離れ去って、ユダヤに行かれてはどうですか。
4 それは、自分を公けに現わそうと思っている人で、隠れて仕事をする者はいないからです。もし、あなたがこれらのことをするのであれば、自分をはっきりと世に現わすべきです。」
5 こう言ったのは、兄弟たち*もイエスを信じていなかったからである。
6 そこでイエスは彼らに言われた。「わたしの定められた時*は、まだ来ていません。しかし、あなたがたの時は常に用意されています。
7 世はあなたがたを憎むことはできませんが、わたしを憎んでいます。わたしが、世について、その行ないが悪いことをあかしするからです。
8 あなたがたは祭りに行きなさい。わたしはこの祭りには行きません。わたしのその時*はまだ満ちていないからです。」
9 彼らにこう言って、イエスはガリラヤに残っておられた。
10 しかし、兄弟たちが祭りに行った後で、イエスも、公然とではなく、人目につかないように行かれた。
11 祭りの中で、ユダヤ人たちは、「あの人はどこにいるのか。」と言って、イエスを捜していた。
12 群衆の間に、イエスについての多くのうわさが立てられた。ある人々は、「彼は良い人だ。」と言い、他の人々は、「いや、あれは群衆を迷わせているのだ。」と言った。
13 しかし、ユダヤ人らを恐れたので、イエスのことを公然と語る者はいなかった。
14 ようやく、祭りの半ば頃になって、イエスは神殿に上って行って、教えられた。
15 すると、ユダヤ人たちは不思議に思って、言った。「この人は学んだことも無いのに、どのようにして聖書*を知ったのだろうか。」
16 そこでイエスは彼らに答えて言われた。「わたしの教えはわたし自身の教えではなく、わたしを遣わされた方の教えです。
17 誰でも、神のみこころを行なおうと願うなら*、わたしの語っているこの教えが神からのものか、わたし自身から出たものか、知ることになります*。
18 自分から出たことを語る者は、自分の栄光を捜し求めます。しかし、自分を遣わした方の栄光を捜し求める者は真理を語る*のであって、その人の内には不義*がありません。
19 モーセはあなたがたに律法*を与えなかったのですか。それなのに、あなたがたの中には、その律法を行なう*者が一人もいません*。あなたがたは、なぜわたしを殺そうと捜しているのですか。」
20 群衆は答えた。「あなたは悪霊にとり憑かれています。一体誰が、あなたを殺そうと捜しているのですか。」
21 イエスは彼らに答えて言われた。「わたしが行なう一つのわざで、あなたがたは皆、不思議がっています。
22 モーセはあなたがたに割礼を命じた*ので、 ・・・ これは、実は、モーセから始まったのではなく、先祖たちから始まったものであるが*、 ・・・ あなたがたは安息日にも人に割礼を施しています。
23 もし、モーセの律法が緩まないように、安息日であっても人が割礼を受けるのなら、安息日に人の全身を健全にしたからといって、どうして、そんなに苦々しく思う*のですか。
24 見た目で人をさばかないで、神の律法による*さばきを、さばきなさい。」
25 さて、エルサレムの住民のある人たちが言った。「この人は人々が殺そうと捜している者ではないか。
26 見よ、彼は公然と語っているのに、人々はこの人に対して何も言わない。もしかしたら、議員たちは、この人が本物のキリスト*であると、本当に知ったのだろうか。
27 私たちはこの人がどこからの者であるか知っている。しかし、キリスト*が現れる時には、どこから来るのか知っている者は誰もいないはずだ。」
28 そのとき、イエスは神殿の中で教えながら、叫んで言われた。「あなたがたは、わたしを知っており、また、わたしがどこからの者であるかも知っています。しかし、わたしは自分から来たのではありません。わたしを遣わされた方は真理なる方*です。しかし、あなたがたは、その方を知りません。
29 わたしは、その方を知っています。わたしはその方からの者であり、そしてその方がわたしを遣わされたのです。」
30 そこで人々は、イエスを捕えようと思ったが、誰一人手を出す者はいなかった。イエスの時*が、まだ来ていなかったからである。
31 しかし、群衆の中の多くの者が、イエスを信じて言った。「キリストが来たなら、この人が行なったよりも多くのしるしを行なわないだろうか。」
32 群衆がイエスについてこそこそ話しているのを、パリサイ人たちは聞いた。そこで、祭司長たちやパリサイ人たちは、イエスを捕えようとして、神殿警備の役人たちを遣わした。
33 イエスは言われた。「まだ、少しの間、わたしはあなたがたと一緒にいて、それから、わたしを遣わされた方の所へ去って行きます。
34 あなたがたはわたしを捜すでしょうが、見つけることはできません。また、わたしのいる所に、あなたがたは来ることができません。」
35 そこでユダヤ人たちは互いに言った。「私たちには見つけられないというのは、どこへ行こうとしているのだろう。ギリシヤ人の中に離散している人たち*のところへ行って、ギリシヤ人を教えるつもりなのだろうか。
36 また、『わたしを捜すが、見つけることはできない。また、わたしのいる所には来ることができない。』と言ったこの言葉は、何のことだろう。」
37 祭りの最終日の大いなる日*に、イエスは立って、叫んで言われた、「誰でも渇く者は、わたしのところにいつも来て、いつも飲んでいなさい。
38 わたしを信じる者は、聖書に書いてある通り*、その腹全体から*生きている水*が川々となって流れ出ているでしょう。」
39 これは、イエスを信じる人々が受けようとしている御霊について言われたのである。すなわち、イエスはまだ栄光を受けておられなかったので、御霊がまだ下っていなかったからである。
40 群衆のある者がこれらの言葉を聞いて、「この方は、本当に、あの預言者だ。」と言い、
41 他の人たちは、「この方はキリストである。」と言い、また、ある人々は、「キリストはまさか、ガリラヤからは出て来ないだろう。
42 キリストは、ダビデの子孫から、またダビデのいたベツレヘムの村から出ると、聖書に書いてあるではないか。」と言った。
43 こうして、群衆の間にイエスのことで分裂が起こった。
44 彼らのうちのある人々は、イエスを捕えたいと思ったが、誰一人手を出す者はいなかった。
45 さて、警備の役人たちが祭司長たちやパリサイ人たちのところに帰ってきたので、彼らはその役人たちに言った。「なぜ、あの人を連れて来なかったのか。」
46 役人たちは答えた。「あの人が語るように語った者は、他にいません。」
47 パリサイ人たちが彼らに答えた。「あなたがたも、迷わされているのではないか。
48 議員たちやパリサイ人たちの中で、彼を信じた者は誰もいないのだ。
49 律法を知らないこの群衆は、のろわれている。」
50 彼らの中の一人で、夜にイエスのところに来たことのあるニコデモが、彼らに言った。
51 「私たちの律法*によれば、まずその人からよく聞き、その人が何を行なったかを知った上でなければ、判決を下してはならないのではありませんか。」
52 彼らは答えて言った。「あなたもガリラヤ出身なのか。よく調べなさい。ガリラヤからは預言者が出ないことが分かるだろう。」*
53* そして、人々はそれぞれ家に帰って行った。
*2 仮庵祭(スコット、tabernacles): レビ23:34、申命記16:13−15、 イエスが十字架にかかられる過越し祭(ペサハ、4月前半頃)の、約半年前。 (=10月初め頃、第7の月の15日から7日間。
1日:ラッパの日、10日:贖いの日(ヨム・キプール))
*5 イエスの兄弟たち: マタイ13:55、マルコ6:3より、 ヤコブ、ヨセフ(ヨセ)、ユダ、シモン。 ヤコブは、イエスが地上におられた時には不信仰だったが、後に信じた、ヤコブの手紙の著者(エルサレム教会の長老、教師)
*6、8 ホ カイロス(ギ) measure of time、the right time、適切な時、定められた時 = 十字架の時
*15 グラムマ(ギ) letter、the sacred writings、(旧約)聖書
*17 セレー ト セレーマ アウトウ ポイエイン(ギ) will the will of Him to do、 ギノスコー become known、understand、know、知ることになる
*18 アレセース(ギ、形容詞) true; speaking the truth、loving the truth、本当の; 真理を語る、真理を愛する、 アディキア injustice、unrighteousness、不正、不義
*19 ノモス(ギ) law、the Mosaic law、(モーセの)律法、 ポイエイ(現在、3・単) <ポイエーオー make、do、行なう、 第6戒(出20:13)の、「人を殺すな」、を守っていない の意
*22 レビ12:3、 創世記17:10−、21:4
*23 コラオー(ギ)(← コレー、bile、胆汁(使徒8:23)) 気のふさいでいる、苦々しい
*24 ディカイオス(ギ) righteous、observing divine laws、義の、神の律法による
*26、27 キリスト = メシヤ(油注がれた者、王)、 当時のメシヤ思想では、国を救うメシヤが、誰も知らない所から超自然的に現れると思われていた
*28 アレシノース(ギ、形容詞) true、真理の (=黙19:11)
*30 ヘー ホーラ アウトウ(ギ) the hour of Him、イエスのその時 = 十字架の時 cf. :6、8
*35 ディアスポラー(ギ) イスラエルの離散民、 § 人々は、異邦の民に福音が宣べ伝えられるようになることを、はからずも預言した
*37 仮庵の祭りの最終日に、シロアムの池から「水門」を通って運び上げられた水が、神殿の燔祭の祭壇に注がれる、「水汲みの儀式」。(ゼカ14:8 に因む、雨乞いの儀式が発祥) § ここでイエスは、生ける水の川を宣言された
*38 イザヤ44:3、55:1、58:11、他、 コイリア(ギ) whole belly、womb、gullet、腹全体、子宮、食道・のど、 ヒュダトス(単・中) <ヒュードル ゾーントス(現在、単・中) <ザオ of water living、生きている水、 その人の(単数) 腹全体から(単数) 生きている(現在、単数) 水(単数)の 川々が(複数) 流れ出るだろう(未来、複数)、 生きている水 = 聖霊(単数・中性)
*51 申命記1:16、17
*52 彼らもエルサレムの住民と同様に、イエスが、ダビデの子孫として、ユダヤのベツレヘムで生まれたことを知らなかった(Uサム7:12、ミカ5:2)
*53 § 53節から8章11節まで、アレキサンドリア型写本(アレキサンドリア、シナイ、バチカン)では欠く。 この区間は、ヨハネ8:15
の「わたしは誰をもさばかない」の実践例として、仮庵の祭りの話を中断してまで、挿入している。(文体としては、ルカ文書に近い)
第8章
1 イエスはオリーブ山に行かれた。
2 朝早くまた神殿に来られると、人々が皆、みもとに集まってきたので、イエスは座って彼らを教えておられた。
3 すると、律法学者たちやパリサイ人たち*が、不倫*をしている時に捕らえられた女を連れて来て、中央に立たせて、イエスに言った。
4 「先生、この女は姦淫*の場で捕らえられました。
5* モーセは律法の中で、このような女を石で打ち殺せ*と命じましたが、あなたはどう思われますか。」
6 彼らがそう言ったのは、イエスを試みて、告発する口実を得るためだった。しかし、イエスは身をかがめて、彼らの言うことが聞こえないかのように、指で地面に何かを書いておられた。*
7 彼らが問い続けるので、イエスは身を起して彼らに言われた。「あなたがたの中で罪の無い者が、まず最初に、この女に石を投げつけなさい。」
8 そして、再び身をかがめて、地面に書き続けられた。
9 これを聞くと、彼らは年長者から始めて*最後の一人まで、一人また一人と、出て行き、ついにイエスと、中央に立っていたままの女とが、残された。
10 そこでイエスは身を起こして、彼女の他に誰もいないのを見て、言われた。「女よ。あなたを責める人たちはどこへ行きましたか。あなたを罪に定める者はいなかったのですか。」
11 女は言った。「主よ、誰もいません。」 イエスは言われた。「わたしもあなたを罪に定めません。お帰りなさい。これからはもう罪を犯さないように。」
12 それからもう一度、イエスは、人々に語ってこう言われた。「わたしは世の光です*。わたしについて来る*者は、暗やみの中を歩く*ことにはならず、いのちの光を持つ*ようになります。」
13 するとパリサイ人たちがイエスに言った。「あなたは、自分のことをあかししている。あなたの証言は真理を語って*はいない。」*
14 イエスは彼らに答えて言われた。「もし、わたしが自分のことをあかししても、わたしの証言は真理を語って*います。それは、わたしがどこから来たのか、また、どこへ去って行くのかを知っているからです。しかし、あなたがたは、わたしがどこから来て、どこへ去って行くのかを知りません。
15 あなたがたは肉の考え*に従って、人をさばいていますが、わたしは誰をもさばきません*。
16 しかし、もしわたしがさばくとすれば、わたしのさばきは真理を語って*いるのです。なぜなら、わたしは一人ではなく、わたしと、わたしを遣わされた父が、さばくからです。
17* あなたがたの律法にも、二人による証言により立証される*と、書いてあります。
18 わたしは自身についてをあかしする者であり、また、わたしを遣わされた父も、わたしのことをあかしして下さるのです。」
19 すると、彼らはイエスに言った。「あなたの父はどこにいるのですか。」 イエスは答えられた。「あなたがたは、わたしをもわたしの父をも知りません。もし、あなたがたがわたしを知っていたなら、わたしの父をもまた知っていたはずです。」
20 イエスが神殿の中で教えておられた時、これらの言葉を献金箱*が置いてある所で語られたのであるが、イエスの時がまだ来ていなかったので、だれも捕える者がいなかったのである。
21 それからもう一度、彼らに言われた。「わたしは去って行きます。あなたがたはわたしを捜しますが、自分の罪の中で死ぬでしょう。わたしの行く所には、あなたがたは来ることができません。」
22 そこでユダヤ人たちは言った。「わたしの行く所に、あなたがたは来ることができないと、言ったのは、自殺する気なのだろうか。」
23 イエスは彼らに言われた。「あなたがたは下から出た者だが、わたしは上から来た者です。あなたがたはこの世の者ですが、わたしはこの世の者ではありません。
24* それゆえ、わたしは、あなたがたは自分の罪の中で死ぬであろうと、言ったのです。もし、わたしはある、という者である*、ことをあなたがたが信じなければ、あなたがたの罪のうちに死ぬからです。」
25 そこで彼らはイエスに言った。「あなたは、誰ですか*。」 イエスは彼らに言われた。「わたしが誰であるかは、初めからあなたがたに言っています。
26 あなたがたについては、言うべきこと、さばくべきことが、たくさんあります。しかし、わたしを遣わされた方は真理を語る*方です。わたしは、その方から聞いたこれらのことを、世に対して語るのです。」
27 彼らは、イエスが父について話しておられたことを、知らなかった。
28 そこでイエスは言われた。「あなたがたが人の子を高く上げてしまう*時になって、それから、わたしはある、という者であること、また、わたしは自分からは何もせず、ただ父が教えて下さった通りに話していることを、知るようになるでしょう。
29 わたしを遣わされた方は、わたしと共におられます。わたしを残して去って行かれることはありません。それは、わたしが、すべての時に父を喜ばせることを行なっているからです。」
30 これらのことが語られると、多くの人々がイエスを信じた。
31 イエスは自分を信じたユダヤ人たちに言われた。「もしわたしの言葉にうちに留まっている*なら、あなたがたは、本当に*わたしの弟子なのです。
32 また、あなたがたは真理*を知るようになるでしょう。そして真理*は、あなたがたを自由にします。」
33 そこで、彼らはイエスに言った。「私たちはアブラハムの子孫*であって、人の奴隷になったことは、一度もありません。なぜ、あなたがたを自由にすると、言うのですか。」
34 イエスは彼らに答えられた。「まことに、まことに、あなたがたに言います。罪を犯す者は誰でも、罪の奴隷なのです。
35 そして、奴隷はいつまでも家に留まる者ではありません。しかし、息子はいつまでも居残っています。
36 だから、もし子があなたがたを自由にしたならば、あなたがたは、本当に自由になるのです。
37 わたしは、あなたがたがアブラハムの子孫であることを知っています。けれども、あなたがたはわたしを殺そうとしています。わたしの言葉が、あなたがたの中のどこにも場所を取って*いないからです。
38 わたしはわたしの父のもとで見たことを語っていますが、あなたがたは自分の父から聞いたことを行っています。」
39 彼らはイエスに答えて言った。「私たちの父はアブラハムです。」 イエスは彼らに言われた。「もしアブラハムの子供たちであるなら、アブラハムのわざ*を行なうはずです。
40 ところが今、神から聞いた真理*をあなたがたに語ったわたしを、殺そうとしています。このようなことを、アブラハムはしませんでした。
41 あなたがたは、あなたがたの父のわざ*を行っているのです。」 彼らは言った。「私たちは、不品行*によって生まれた者ではありません。私たちにはひとりの父があって、それは神です。」
42 イエスは彼らに言われた。「神があなたがたの父であるならば、あなたがたはわたしを愛していたはずです。それは、わたしが神から出て、ここに来ている者だからです。わたしは自分から来たのではなく、その方がわたしを遣わされたのです。
43 何ゆえに、あなたがたは、わたしの話すことを理解できないのでしょう。それは、あなたがたが、わたしの言葉を聞くことができないからです。
44 あなたがたは自分の父、悪魔*から出てきた者であって、その父の欲望を行いたいと願っているのです。彼は、造られた時からの*殺人者*であって、真理*に立っていません**。彼のうちには真理*が無いからです。悪魔が偽り*を語る*ときはいつでも、自身の内側から出ることがら*を語ります*。それは、彼が偽り者であり、偽りの父だからです。
45 それで、わたしが真理を語っているので、あなたがたはわたしを信じようとしません。
46 あなたがたのうちの誰が、わたしを罪に定めるのですか。わたしは真理を語っているのに、何ゆえに、あなたがたはわたしを信じないのですか。
47 神から出た者は、神の語りかけに*聞きます*。あなたがたが聞かないのは、神から出た者でないからです。」
48 ユダヤ人たちはイエスに答えて言った。「あなたはサマリヤ人*で、悪霊に取りつかれていると、私たちが言うのは、当然ではないですか。」
49 イエスは答えられた。「わたしは、悪霊にとり憑かれていません。わたしはわたしの父を敬っています*。しかし、あなたがたはわたしを辱(はずかし)めています。
50 わたしは自分の栄光を求めてはいません。それをお求めになり、また さばきをなされる方がおられます。
51 まことに、まことに、あなたがたに言います。誰でも、わたしの言葉*をよく守るならば、その人は決して、永遠に至るまで死を見ることがありません。」
52 ユダヤ人たちは言った。「あなたが悪霊にとり憑かれていることを、今、知りました。アブラハムは死に、預言者たちも死んでいます。それなのに、あなたは、誰でもわたしの言葉を守る者は永遠までも死を味わうことがないと、言います。
53 あなたは、私たちの父アブラハムより偉大なのですか。彼も死に、預言者たちも死にました。あなたは一体、自分を誰だと言いたいのですか。」
54 イエスは答えられた。「わたしがもし自分に栄光を帰するなら、わたしの栄光は、無に等しい*ものです。わたしに栄光を与える方は、わたしの父であって、あなたがたが自分の神だと言っているのは、その方のことです。
55 あなたがたはその神を理解していませんが、わたしはよく知っています。もし、わたしが神を知らないと言うならば、あなたがたと同じような偽り者になるでしょう。しかし、わたしはその方を知り、彼の言われる言葉をよく守っています。
56 あなたがたの父、アブラハムは、わたしのこの日*を見たことで、大いに喜びました*。そうです、それをはっきり見たので、喜んだのです*。」
57 そこでユダヤ人たちはイエスに言った。「あなたはまだ五十*にもならないのに、アブラハムを見たのですか*。」
58 イエスは彼らに言われた。「まことに、まことに、あなたがたに言います。アブラハムが在るようになる*以前から、わたしはある*、のです。」
59 そこで彼らは石を取って、イエスに投げつけようとした。しかし、イエスは神殿から出られ、彼らの真ん中を抜けて、このように通り過ぎて行かれた。
*3 律法学者たちやパリサイ人たち、は、ヨハネの福音書でここのみ出現
*3、4 モイケイーア(ギ) adultery、(狭義の姦淫で) 不倫 cf. ポルネイーア(ギ) 広義の姦淫で売春、未婚性交、不貞などすべての不品行 (マルコ7:21、22)
*5 レビ20:10、申命記22:22 「他人の妻と姦通した男も、女も殺せ」、「婚約中に他の男と性交する場合のみ、石打ち」 § 殺さないとモーセの律法に反するので告発できる。 殺すことに同意すれば、今まで説いてきた罪人へのあわれみに反するので、人望を失うと同時に、ローマ帝国の死刑を判決する権威に立ち向かうことになる。
*6 § 訴えている人々すべての、生々しい罪についての、(ただしその人にしか分からない、)言葉を、地面に書いておられた = 「知識の言葉」 (Tコリント12:8)
*9 § 年長者ほど罪を重ね、罪の意識が強くなる (神が罪を覚えておられ、年ごとに罪意識を与える、 ヘブ10:2、3)
*12 1:4 より、 いのちそのものである光、 (いのちを与える光 △) アコロウソーン(ギ、現在、単・男) follow、ついて来る、 ペリパテーセイ(未来、3・単) will walk、 エクセイ(未来、3・単) will have、
*13、14、16、17、26 アレセース(ギ、形容詞) true; speaking the truth、loving the truth、真実の; 真理を語る、真理を愛する、(有効である×?) :13 § 5:31
の言葉じりを捉えてこう言っている
*14 § 自分の起源や予告的運命を知るのは、神の領域に属する。 特に、未来のことを語るのは、神のみによる、預言的啓示による(「イエスのあかしは預言の霊です」(黙示19:10))
*15 の考え は補足、 上記、8:1〜11 に例示した通り、御霊による真理を、「知識の言葉」で表現した
*17 申命記19:15、17:6 「罪について、二人、または三人の証言によって
立証される(クーム(ヘ) 起こる、設立する、立つ、履行する)」
*20 マルコ12:41、ルカ21:1、 (献金の所で、人の本当の献身度、信仰の深さ、を最もよく見ることができる)
*23 エク トーン(複・男) カトー(ギ) out of the below、 エク トウ(複・男) アノー out of the above、
*24 § 24節は、イエスが、出エジ3:14で、モーセに自己紹介した
YHWH(主、ヤハウェ)と、同一であることを、最も直接的に語っておられる箇所。(他に、8:28、58、18:6、8、マコ14:62、ルカ22:70、等)、 ホティ エゴー エイミ that I AM
*25 ヤハウェと自称したので、ここでユダヤ人たちは驚いて、あらためて誰であるか尋ねた
*28 ヒュプソー(ギ) lift up on high、to exalt、高く上げる; 称賛する、 ここでは 十字架につけること
*31 メノー(ギ) remain、wait for、居残る、留まる、待つ、 アレーソース(副詞) truly、indeed(in reality)、most certainly、本当に、確かに
*32、40、44、45 アレーセイア(ギ) truth、the truth、(冠詞+)真理
*33 (直訳) 種(単数・中性)、(直系の)子孫、種族
*37 コウレーオ(ギ) leave space to make room、部屋を作って(物を入れるための)場所を空ける
*39、41 ヨハ6:28、 エルガ(ギ、中性・複数) <エルゴン businesses、acts、deeds、仕事、働き、わざ(複数)、 § アブラハムは神の3人の使者(主と、2人の御使い)をひれ伏して迎えた(創18:2−)
*41 ポルネイーア(ギ) 広義の姦淫で売春、未婚性交、不貞などすべての不品行 (マルコ7:21、22)。 彼らは、異邦の偶像の子ではなく、イスラエルの神の純粋な血統の子孫と主張している
*44 ディアボロス(ギ、男) devil、非難・中傷する者、偽り者(6:70、黙示20:10、等)、 cf. サタナス(ギ)、サタン(ヘ) Satan、敵対者、反逆者(13:27、等)、 アプ アルケース from beginning、origin、(直訳)初めからの、根源的に、 アンスローポクトーノス manslayer、murderer、殺人者、 ** 創世記3:4 主が語ったことと真逆を語っている、 ト(単数・中) プセウドス(単数・中性) (lie)うそ; the falsehood、偽り(単数)、 ラレー(現在、仮定、3・単) speak、語る(3・単)、 エク トーン(冠詞、複数・中) イディオーン(形容詞、複数・中) out of the own (things)、自身の内側から出る数々の(ことがら)、 ラレイ(現在、3・単) speak、語る(3・単)、 cf. マタイ12:34 「心に満ちあふれることを、口が語る」、「悪い倉から悪いもの」
*47 レーマ(ギ) word by the voice、speech、thing spoken of、声の言葉、語りかけ、 アコーオー(ギ) hear、hear to understand; not deaf、hear something、聞く、聞いて理解する; 健聴者である、聞こえる
*48 ユダヤ人は、サマリヤ人(ゲリジム山で、主を礼拝すると共に、偶像神の悪霊も拝んでいた)を敵視していたので、こう言った、 マルコ3:29、30 「赦されない罪」
*49 ティマーオ(ギ) honour、estimate of value、敬う、価値を見積もる、 御父を敬うのであって、悪霊ではない の意。 また、父母を敬うと長生きする(出20:12、エペ6:2、3)
*51 ロゴン(ギ、単数・男) <ロゴス word、saying、Word of God、言葉、ことば、 cf. レーマ (:47)
*54 ウーデイス(ギ) nothing、no one、何も無い
*56 創世記17:17 § この「笑う」は不信仰ではなく、喜びの笑い。アブラハムは、主によって、預言的に
この日の幻を見せられた。 テーン ヘーメラン(ギ、受格、単数・女) the day、この日(単数)、 アガッリアオ(ギ) exult、rejoice exceedingly、大いに喜ぶ、 カイーロー rejoice, be glad、be well、喜び(のあいさつ)、お元気で
*57 § イエスは約30歳で宣教を始められた (ルカ3:23)、 アブラハムが大いに喜んだ時代にいて、その時彼を見ていたのか の意、 ユダヤでは、50歳で成熟し、良い忠言をすることができるとされた
*58 ギノマイ(ギ) come to existence、happen、appear、在るようになる、現れる、 エゴー エイミ(ギ、現在) I AM、わたしはある (、という者である) → 8:24
第9章
1 イエスが道を通られた時、生れつきの盲人をご覧になった。
2 弟子たちはイエスに尋ねて言った。「ラビ。この人が生れた時から盲人なのは、誰が罪を犯したからですか。本人ですか。その両親ですか。」*
3 イエスは答えられた。「この人が罪を犯したのでも、その両親が罪を犯したのでもありません。ただ、神のわざ*が、彼の上に現れるためです。
4 わたしたちは、わたしを遣わされた方のわざ*を、昼の間にしなければなりません。夜が来ます。それは、だれも働け*なくなる時です。
5 わたしは、この世にいる間は、世の光です。」
6 イエスはそう言って、地につばきをし、そのつばきで泥をこね*、その泥を盲人の両目に塗リ広げて、言われた。
7 「シロアム*(訳すと、遣わされた者、の意味)の池に行って洗いなさい。」 そこで彼は行って洗った。そして見えるようになって、帰って行った。
8 近所の人々や、彼が以前、盲人だったのをよく見ていた人々が言った。「この人は、座って物乞いをしていた者ではないか。」
9 ある人々は、「その人だ。」と言い、他の人々は、「いや、ただあの人に似ているだけだ。」と言った。しかし、彼は、「私がその本人です。」と言った。
10 そこで人々は彼に言った。「それでは、あなたの両目はどのようにして開いたのですか。」
11 彼は答えた。「イエスという人が、泥をこねて*、私の両目に塗リ広げ、『シロアムに行って洗いなさい。』と言われました。それで、行って洗うと、見えるようになりました。」
12 人々は彼に言った。「その人はどこにいるのですか。」 彼は、「分かりません。」と答えた。
13 人々は、以前は盲人であったこの人を、パリサイ人たちのところに連れて行った。
14 イエスが泥をこねて*、彼の両目を開けたのは、安息日であった。
15 パリサイ人たちも同じように、彼に尋ねた。「どのようにして見えるようになったのか。」 彼は答えた。「あの人が私の両目に泥をつけて、私がそれを洗い、そして見えるようになりました。」
16 そこで、あるパリサイ人たちが言った。「その人は神からの者ではない。安息日を守っていないからだ。」 しかし、別の人々は言った。「罪人である者が、どのようにして、そのようなしるしを行うことができるだろうか。」 そして彼らの間に分裂が生じた。
17 そこで彼らは、もう一度この盲人に聞いた。「あなたの目を開けたその人について、あなたは何と呼びますか。」 「彼は、預言者です。」と彼は言った。
18 ユダヤ人たちは、彼が以前、盲人であったが見えるようになったことを、まだ信じていなかった。ついに彼らは、目が見えるようになったこの人の両親を呼び出して、
19 尋ねて言った。「彼が、生れた時から盲人であったと、あなたがたが言っている息子ですか。それではどうして、今は目が見えるのですか。」
20 両親は答えて言った。「彼が私たちの一人息子であること、また生れた時から盲人であったことはよく知っています。
21 しかし、どのようにして今、見えるようになったのか分かりません。また、誰がその目を開けてくれたかも知りません。あれに聞いて下さい。あれはもう、大人の年齢になっています。自分については自分で話せるでしょう。」
22 両親がこう答えたのは、ユダヤ人たちを恐れていたからである。それは、もしイエスをキリストと告白する者があれば、会堂から追放することを、すでにユダヤ人たちが決めていたからである。
23 彼の両親が、「大人の年齢ですから、あれに聞いて下さい。」と言ったのは、そのためであった。
24 そこで彼らは、盲人であった人を、さらにもう一度、呼んで言った。「神に栄光を帰しなさい。あの者が罪人であることは、われわれには分かっている。」
25 すると彼は言った。「あの方が罪人であるかどうか、私は分かりません。ただ一つのことだけ知っています。私は盲人でしたが、今は見えるということです。」*
26 そこで彼らは言った。「その者はおまえに何をしたのか。どのようにしておまえの目を開けたのか。」
27 彼は答えた。「そのことはもうお話したのに、あなたがたは聞いてくれません。なぜ、もう一度聞こうとするのですか。あなたがたも、あの人の弟子になるつもりなのですか。」
28 そこで、彼らは彼をののしって言った。「おまえはあの者の弟子だ。しかし、われわれはモーセの弟子だ。
29 モーセに神が語られたということを知っている。しかし、われわれは、あの者がどこからの者か*、知らない*。」
30 そこで彼が答えて言った。「これは驚きました。私の目を開けて下さったのに、その方がどこからのお方か、ご存じないと言われるからです。
31 私たちはこのことを知っています。神は、罪人の言うことはお聞きになりませんが、誰でも、神を崇拝し、神のみこころを行う人ならば、聞き入れて下さいます。
32 生れた時からの盲人であった者の目を開けた人の話など、世の中に、聞いたことがありません。
33 もしあの方が神からのお方でなかったら、何一つできなかったはずです。」
34 これを聞いて彼らは言った。「おまえは全くの罪の中に生れていながら、われわれを教えるのか。」 そして、彼を外へ追い出した。
35 イエスは、その人が会堂から*追放されたことを聞かれた。そして彼を見つけて、言われた。「あなたは人の子を信じますか。」
36 彼は答えて言った。「主よ*、それはどなたですか。私はその方を信じたいと思うのですが。」
37 イエスは彼に言われた。「あなたは、すでにその人に会っています。今あなたと話している者が、その人です。」
38 すると彼は、「主よ*、信じます。」と言って、イエスにひざまずいて礼拝した。
39 そこでイエスは言われた。「わたしは、さばきのために、この世に来ました。すなわち、目の見えない人たちが見えるようになり、見える者たちが盲目になるためです。」
40 そこに、パリサイ人たちのうち、イエスと一緒にいた人たちがそれを聞いて、イエスに言った。「それでは、私たちも盲人ではありませんか。」
41 イエスは彼らに言われた。「もし、あなたがたが盲人であったなら、罪はなかったでしょう。しかし、あなたがたは、今、『われわれは、よく見えている*。』と言っています。それゆえ、あなたがたの罪は残っているのです。
*1 盲人のいやしは、本書の、 第6のしるし
*2 例えば、ヨブの友人たちが、ヨブの不幸を彼の罪が原因と決めつけたのと同じ、当時の伝統的な考え
*3、4 エルガ(ギ、中性・複数) <エルゴン businesses、acts、deeds、仕事、働き、わざ(複数)、 エルガゾマイ work、labour、do、働く、行なう
*6、11、14、16 makes mud、 § この「泥をこねる」という行為が、当時の「言い伝え」により、安息日に禁止されていた「労働」に当たる、とされた
(by. 口伝律法に詳しいメアニック・ジューによる)
*7 シロアムの池: エルサレム南東の、テュロペオンの谷の南端、 人工的に岩に穴をあけて流れるようにした池なので、遣わされた者
の呼び名がある。 イザヤ8:6 より、「シロアハの水をないがしろにした」のは、人々のイエスに対する態度を予告している
*25 独善的な尋問者に対し、明確な事実の体験だけを、くりかえし淡々と答えている
*29 ルカ13:25、27、 ポセン エスティン(ギ) whence He is、どこ(からの)者か = 神からの者か、人からの者か の意、 ウーク オイダ 知らない (強い否定の言葉で、シナゴーグからの追放にも用いる)
*35 会堂(シナゴーグ)から は補足、 追放: ユダヤの宗教的・社会的生活から締め出されたことを意味する
*38 キュリエ(ギ) <キュリオス Lord、master、主、主人、 プロスクネーオ worship by kneeling
*41 ブレポー(ギ) see、discern、have (the power of) understanding、見る、識別する、理解力がある
第10章
1* まことに、まことに、あなたがたに言います。羊の囲いに入るのに、門*からでなく、他の所から乗り越えて来る者は、泥棒であり、強盗です。
2 門*から入る者は、羊たちの羊飼いです。
3 彼のために、門番は門を開きます。羊は彼の声*を聞き分け*、そして彼は自分の羊を、名前で呼んで連れ出します。
4 自分の羊をみな出してしまうと、彼は羊の先頭に立って行きます。羊はその声を知っているので、彼について行くのです。
5 しかし、他の人には、決してついて行かないで、彼から逃げ去ります。他の人々の声を知らないからです。」
6 イエスは彼らにこの比喩*を話されたが、彼らは自分たちについて何を話されているのか、分からなかった。
7 そこで、イエスはまた言われた。「まことに、まことに、あなたがたに言います。 わたしは羊の門*です。
8 かつて、わたしよりも以前に来たすべての者たち*は、泥棒であり、強盗です。しかし、その羊たちは彼らに聞き*ませんでした。
9 わたしは門です。 もし誰でも、わたしを通って入る者は救われます。また、入って、出て、そして牧草を見つけます*。
10 泥棒が来るのは、盗み、屠殺(とさつ)し*、破壊するためです*。 わたしが来たのは、羊に永遠のいのち*を持たせ、しかも、非常に豊かに*持たせるためです。
11* わたしは良い羊飼いです。 良い羊飼いは、羊の身代わりになって*いのち*を捨てます。
12 羊飼いではなく、羊が自分のものでもない雇い人は、狼(おおかみ)が来るのを見ると、羊を置き去りにして逃げます。そして、狼は羊を捕え、また追い散らします。
13 雇い人は逃げます。それは、彼は雇い人であって、羊のことを心にかけていないからです。
14 わたしは良い羊飼いであって、わたしのものたち*を知り、わたしのものたちもまた、わたしを知っています。
15* それはちょうど、父がわたしを知っておられ、わたしが父を知っているのと同じです。そして、わたしは羊の身代わりに*、いのち*を捨てます。
16* わたしにはまた、この囲いにいない他の羊があります。わたしは彼らをも導かなければなりません。彼らも、わたしの声を聞き分けます*。そして、ついに一つの群れ、一人の羊飼いとなります。
17 それゆえ、父は、私を愛してくださいます。なぜなら、わたしが自分のいのち*を捨てるからです。そして、わたしは、それを再び受け取ります。
18 誰かが、わたしからそれを取り去るのではなく、わたしが、自分からそれを捨てるのです。 わたしには、それを捨てる権威があり、また、それを再び受ける権威があります。これはわたしの父から授かった命令なのです。」
19 これらの言葉が語られたため、ユダヤ人の間に、もう一度分裂が起こった。
20 彼らの内の多数の者たちが言った。「彼は悪霊にとり憑かれて、気が狂っている。なぜ、あなたがたは彼の言うことを聞くのか。」
21 他の人々は言った。「それらは悪霊にとり憑かれた者の言葉ではない。悪霊は盲人たちの目をあけることができないのだ。」
22 そのころ、エルサレムで宮きよめの祭り*が行われた。時は冬であった。
23 イエスは、神殿の中にあるソロモンの回廊*を歩いておられた。
24 するとユダヤ人たちが、イエスを取り囲んで言った。「いつまで私たちをいら立たせておくのですか*。あなたがキリストであるなら、そうとはっきり言ってください。」
25 イエスは彼らに答えられた。「わたしは話しましたが、わたしの父の名によって行なっているすべてのわざ*が、わたしについてあかししていることを、あなたがたは信じようとしません。
26 あなたがたが信じないのは、私があなたがたに言ったとおりに、わたしの羊に属していないからです。
27* わたしの羊は、わたしの声を聞き分けます*。 わたしは彼らを知っており、彼らはわたしについて来ます。
28 わたしは、彼らに永遠のいのちを与えます。だから、彼らは永遠に至るまで破壊されて失われるようなことはなく、また、彼らをわたしの手から奪い去る者はいません。
29 彼らを私に与えて下さったわたしの父は、すべてにまさって偉大です。そして、わたしの父のみ手から、彼らを奪い取ることはできません。
30* わたしと父とは、一つの存在です。」
31 そこでユダヤ人たちは、イエスを石打ちで殺そうとして、また石を取り上げた。
32 するとイエスは彼らに答えられた。「わたしは、父による多くの良い*わざ*を、あなたがたに示しました。その中のどのわざ*ために、わたしを石打ちにしようとするのですか。」
33 ユダヤ人たちは答えた。「あなたを石で殺そうとするのは、良いわざのためではなく、神への冒涜(ぼうとく)のためであり、またあなたは人間であるのに、自分を神である*としているからです。」
34 イエスは彼らに答えられた。「あなたがたの律法に、『わたしは言う、あなたがたは神々である。』*と書いてあるではありませんか。
35 神の言葉が来て現れた人々が、神々であるといわれているとすれば、(そして聖書は、その効力が緩むことがあり得ないので、)
36 父が聖別して、世に遣わされた者が、『わたしは神の子である。』と言ったからといって、どうして、『あなたは神を冒涜する者だ。』と言うのですか。
37 もし、わたしが父のわざを行なっていないならば、わたしを信じないでいなさい。
38 しかし、もし行っているなら、たといわたしを信じなくても、わたしのわざを信じなさい。そうすれば、父がわたしに在られ、また、わたしが父に在ることを知って、信じるでしょう。」
39 そこで、彼らはまたイエスを捕えようとしが、イエスは彼らの手から逃れて去って行かれた。
40 さて、イエスはまたヨルダン川の向こう岸、すなわち、ヨハネが初めにバプテスマを授けていた所*に行かれ、そこに滞在しておられた。
41 多くの人々がイエスのところに来て、互いに言った。「ヨハネは何一つしるし*を行わなかったが、ヨハネがこの方について言ったことは、皆、本当*だった。」
42* そして、そこで多くの者たちがイエスを信じた。
*1、2、7 「良い牧者」について: シューラ(ギ、単数) door、vestibule、entrance、戸、扉、玄関、入口
*3 羊の囲いの門番は、羊飼いだけを入り口から入れた、 フォネー(ギ) sound、tone、voice、声
*3、8、15、27 アコウオー(ギ) hear(to understand)、聞こえる(健聴者である)、聞く、聞いて理解する
*6 パロイミア(ギ) proverb、ことわざ、格言、箴言; 比喩を用いて(16:25、29、Uペテ2:22
のみ) cf. マタイ13:3、等 パラボレー parable、proverb、たとえ
*8 昔の にせ預言者たちや、当時の にせメシヤなどを、イスラエルの民は見破った
*9 詩篇23:1、2
*10 シュオー(ギ) sacrifice、slay、kill、犠牲にする、屠殺する、 § サタンの3大誘惑(高慢、ねたみ、作り話・うわさ話) → (もたらす3大結果)盗み、殺し、破壊する、 ゾエ (eternal) life、(永遠の)いのち、 ペリッソース more than is necessary、extraordinary、有り余るほど多く、量れないほど
*11、15、17 § 十字架の贖いを言っている、 ヒューペル(ギ) in behalf of、の身代わりに、for sake of、over、のために、 プシュケー(ギ) life、(肉的)いのち、soul、たましい、 ティセミ set、put; lay down、(命を)捨てる、なげうつ
*14 エモス(ギ) mine、my、私のもの
*16 § 異邦人に福音が宣べ伝えられ、ユダヤ人と共に、イエスが「大牧者」(ヘブ13:20)となり、(地域教会としてではなく、)霊的教会として、一つの大きな群れとなることの予告
*22 BC165年12月25日に、シリアのアンティオコス・エピファネスの手からエルサレムを奪還して、神殿をきよめた記念の祭り(ハヌカ祭、ハナク、捧げる の意)
*23 エルサレム神殿の東側(正面)の壁下の、2重円柱列の直線状の長い回廊、 ペテロもここで説教した(使徒3:11、5:12)
*24 アイーロ(ギ) raise up、raise from the ground(1:29、マルコ16:18)、remove、(直訳) たましいを宙に上げたままにしておく、 エルゴン work、act、働き; (神の)わざ
*27 § 誰でも救われているクリスチャンならば、主の語りかけを聞くことができる の意
*30 エゴー カイ ホ パテール ヘン(形容詞、単・中) エスメン(ギ、現在、1・複) I and the Father one are、 わたしと父とは、一つの存在(一つである者)です
*32 カロース(ギ) beautiful、excellent、good、precious、美しい、良い、貴重な、 エルゴン work、act、働き; (神の)わざ
*33 セオン(ギ、冠詞無し) God、神という存在
*34 セオイ(ギ、冠詞無し、複・男) Gods、神々という存在、 § 詩篇29:1(ベネイ・エリイム、神々の子)、82:6(ベネイ・エルヨン、いと高き方の子)、ルカ3:38、ヨハネ1:12、10:34
等、では (選民の)人間、 cf. 御使いを表す場合: 創6:4、ヨブ記1:6、2:1、38:7
(ベネイ・ハ・エロヒーム)、詩篇89:6(ベネイ・エリイム)
*40 ヨルダン川の向こうのベタニヤ(1:28)
*41 セメイオン(ギ) sign、sign of miracle and wonder、しるし、神の奇跡、 アレセース(形容詞) true; loving truth、speaking truth; truthful、真理の、真理を語る、うそを言わない
*42 1:7 の成就
第11章
1 さて、ラザロという一人の病人がいた。彼は、マリヤとその姉妹マルタの村ベタニヤ*の人であった。
2 このマリヤは主に香油を塗り、自分の髪の毛で、主の足を拭った女性であって、病気であったのは、彼女の兄弟ラザロであった。
3 姉妹たちは人をイエスのもとに遣わして、「主よ。ご覧ください。あなたのお気に入りの*者が病気です。」と言わせた。
4 イエスはそれを聞いて言われた。「この病気は死に至るものではなく、神の栄光*のためのものであり、また、神の子がそのことを通して栄光を受ける*ためです。」
5 イエスは、マルタとその姉妹とラザロとを、ずっと愛しておられた。
6 それゆえに、ラザロが病気であることを聞いてから、さらに二日間、そのおられた所に滞在された。
7 それから弟子たちに、「もう一度ユダヤに行こう。」と言われた。
8 弟子たちは言った。「ラビ。ユダヤ人らが、この間も、あなたを石打ちにしようと求めていたのに、またそこに行かれるのですか。」*
9 イエスは答えられた。「昼の時間は十二時間あるでしょう。昼間歩けば、人はつまずくことはありません。この世の光を見ているからです。
10 しかし、夜歩けば、つまずきます。その人の中に、光がないからです。」
11 イエスはこのように言われたが、それからまた、彼らに言われた。「わたしたちの友*のラザロが眠っています。わたしは彼の眠りを覚ましに行きます。」
12 すると弟子たちは言った。「主よ。もし彼が眠っているのでしたら、救われるでしょう。」
13 イエスはラザロが死んだことを言われたのであるが、弟子たちは、彼が眠って横になっていることを言われたのだと思った。
14 するとイエスは、はっきりと彼らに言われた。「ラザロは死んだのです。
15 そして、わたしがそこに居なかった*ことを、喜びます。それは、あなたがたが信じる*ためです。では、彼のところに行きましょう。」
16 するとデドモ*と呼ばれているトマスが、仲間の弟子たちに言った。「私たちも行って、主*と一緒に死のうではないか。」
17 さて、イエスが行ってご覧になると、ラザロは墓の中に置かれ、すでに四日間も経っていた。
18 ベタニヤ*はエルサレムに近く、十五スタディオン*ほど離れたところにあった。
19 大ぜいのユダヤ人が、その兄弟のことで、マルタとマリヤのところに慰めを言いに来ていた。
20 マルタはイエスが来られたことを聞いて、出迎えに行ったが、マリヤは家で座っていた。
21 そして、マルタはイエスに言った。「主よ、もしあなたがここにいて下さったなら、わたしの兄弟は決して死ななかったでしょう。
22 しかし、あなたが神にどんなことをお求めになっても、神はお与えになることを、わたしは今でも、そう思っております。」
23 イエスはマルタに言われた。「あなたの兄弟はよみがえります。」
24 マルタは言った。「終りの日の*よみがえりの時、よみがえることは、知っております。」
25 イエスは彼女に言われた。「わたしはよみがえり*であり、いのち*です。わたしを信じる*者は、たとい死ん*でも生きる*のです。
26* また、生きていて、わたしを信じる者は、永遠までも、決して死んでしまうことはない。あなたはこのことを信じるということです。」
27* マルタはイエスに言った。「主よ。あなたがこの世に来たるべき方*キリスト*、神の御子である*と、すでに信じています*。」
28 こう言ってから、マルタは帰って行って、姉妹のマリヤを呼び、「先生が来てくださって、あなたを呼んでおられます。」と、ひそかに言った。
29 これを聞いたマリヤはすぐに立ち上がって、イエスのところへ行った。
30* イエスはまだ村に、入って来られず、マルタがお迎えしたその場所におられた。
31 マリヤと一緒に家にいて彼女を慰めていたユダヤ人たちは、マリヤが急に立ち上がって出て行くのを見て、彼女は墓に嘆き悲しみ*に行くのだろうと言って、その後について行った。
32 マリヤは、イエスのおられる所まで来て、お目にかかり、その足もとにひれ伏して言った。「主よ、もしあなたがここにいて下さったなら、わたしの兄弟は死ななかったでしょう。」
33 イエスは、彼女が嘆き悲しみ、また、彼女と一緒にきたユダヤ人たちも嘆いているのをご覧になり、ご自身の霊が深く動かされ*、また心が動揺され*、そして言われた。
34 「彼をどこに置きましたか。」 彼らはイエスに言った。「主よ。来て、ご覧ください。」
35 イエスは涙を流された*。
36 するとユダヤ人たちは言った。「ご覧なさい。なんと彼のことが好きだった*ことか。」
37 しかし、彼らのうちの幾人かは言った。「盲人の目を開けたこの人は、あの人も死なせないでおくことはできなかったのか。」
38 イエスは再び、ご自身が深く動かされ*、墓に来られた。それは、ほら穴であって、石を乗せて閉じてあった。
39 イエスは言われた。「あなたがたは、石を取り除けなさい。」* 死んだ人の姉妹マルタが言った。「主よ。もう四日も経っているので、臭くなっております。」
40 イエスは彼女に言われた。「もし信じるなら、神の栄光を見るであろうと、あなたに言ったではありませんか。」
41 人々は、死んだ人が横たえられている所の石を取り除けた。するとイエスは、天に目を向けて、言われた。「父よ、わたしの願いをお聞き下さったことを感謝します。
42 あなたが、いつもわたしの願いを聞き入れて下さることを、知っていました。しかし、こう申しましたのは、周りに立っている群衆が、あなたがわたしを遣わされたことを、信じるためです。」
43 こう言われると、大声で、「ラザロよ、出てきなさい。」と叫ばれた。
44 すると、死んでいた人は、両手、両足を布でまかれ、顔には覆い布が結ばれたまま、出てきた。イエスは人々に言われた。「彼をほどいてやって、帰らせなさい。」
45 このことにより、マリヤのところに来て、イエスがなされたことをよく見ていた多くのユダヤ人たちは、イエスを信じた。
46 しかし、彼らのうちの幾人かがパリサイ人たちのところに行って、イエスのなされたことを告げた。
47 そこで、祭司長たちとパリサイ人たちとは、議会を召集して言った。「あの者が多くのしるしを行なっているというのに、われわれは何をしているのだ。
48 もしこのまま放置しておけば、すべての者が彼を信じるようになるだろう。そして、ローマ人たちがやって来て、われわれの土地も国民も奪ってしまうことになる。」
49 彼らのうちの一人で、その年の大祭司であったカヤパ*が、彼らに言った。「あなたがたは、何も分かっていない。
50 一人の人が国民の身代わりに*死んで、全国民が滅びないようになるのが、われわれにとって得策だということをも、考えていない。」
51 このことは彼が自分から言ったのではなく、彼はこの年の大祭司であったので、イエスが国民の身代わりになって*死ぬことを、預言したのである。
52 またその預言は、ただ国民のため*だけではなく、散っている神の子らを一つに集めるためにも、死ぬことになっていると、言ったのである。
53 彼らはこの日からイエスを殺そうと相談した。
54 そのためイエスは、もはや公然とユダヤ人の間を歩かないで、そこを出て、荒野に近い地方のエフライム*という町に行かれ、そこに弟子たちと一緒に滞在しておられた。
55* さて、ユダヤ人の過越しの祭りが近づいたので、多くの人々は身をきよめる*ために、祭りの前に、地方からエルサレムへ上って来た。
56 人々はイエスを捜し、神殿の中に立って互いに言った。「あなたがたはどう思いますか。イエスはこの祭りに来ないのでしょうか。」
57 また、祭司長たちとパリサイ人たちも、その居場所を知っている者があれば申し出るように、という命令を出していた。
*1 11:18、マタイ21:17、 エルサレムの南東3km。 ラザロのよみがえり: 第7のしるし
*3 ホン(単・男) フィレイス(ギ、現在) <フィレオー whom you are fond of、承認する、好む、接吻のあいさつをする
*4 ドクサ(ギ) glory、栄光、 ドクサーゾー think、praise、honour、make glorious、栄光を与える、 § ヨハネの福音書では、栄光を受ける とは、十字架の死との関連で常に語られる
*8 ヨルダン川の向こうのベタニヤから、エルサレム近くのベタニヤへ
*11 フィロス(ギ、形容詞、名詞) friend、associate、友人、(親しい)仲間
*15 エムエン(ギ、未完了過去、1・単) was、居(なかっ)た、 ピステユーセーテ(アオ過去、2・複) you will believe、 喜ぶ、 行く は、現在
*16 ディデゥモス(ギ) twain → twin、アラム語で 双子 の意、 師: (直訳) 彼、 § トマスは死ぬ覚悟はできていたが、(これだけ多くのしるしを見たのに、)あまりにも不信仰だった
*18 11:1、マタイ21:17、 1スタディオン = 185m、15スタディオン: 約3km
*24 エン テー エスカテー((時間・場所・ランクで)最後) ヘーメラ(ギ、単数) in the last day、最後の日(単数)に
*25 ヘー アナスタシス(ギ) the rising from the dead、resurrection(レザレクシャン) 復活、 ヘー ゾーエー the (eternal) life、(永遠の)いのち、 ピステユーオーン(現在、単・男) 信じている(者)、 アポサネー(アオ過去2、3・単) may died、死んでしまって(も)、 ゼーセタイ(未来、3・単) will live、生きるだろう
*26 § 直接的には、霊的な死を味わわない、の意。 間接的には、世の終わりの時、生きている者たちのこと(Tコリ15:51)
*27 エルコメノス(ギ、現在、単・男) come、 § 「来たるべき方」はメシヤの称号、キリスト=メシヤ、(このようにイエスに対する明白な信仰告白した人物は、本書においてこのマルタただ一人)、 エイ(現在、2・単) are、 ペピステューカ(完了、1・単) have believed
*30 § マリヤが来て、イエスの心を動かすまでは、そこに留まられていた
*31 クライオ(ギ) mourn、weep、lament、嘆く、泣く、嘆き悲しむ(哀悼する)
*33、38 エムブリマオマイ(ギ) charge with earnest admonition、厳しく説得される(=:38)、厳しく咎める(=マコ14:5)、厳しく戒める(=マタ9:30、マコ1:43)、 タラッソー agitate、かく乱する
*35 エダクリューセン(ギ、アオ過去、3・単) <ダクリュオー shed tears、weep、涙を流す、 § (霊はもちろん神であるが、肉体と共に、)たましいも人として来られたイエスは、人としての感情を表された
*36 エフィレイ(ギ、未完了過去、3・単) <フィレーオ was fond of、気に入っておられた
*39 § 「不信仰の石を取り除けなさい」 と聞こえる
*48 ローマ帝国は治安が維持される限りは、政治、宗教の自治に寛大な措置を取った。しかし、イエスによって暴動でも起こされれば、この限りではない、の意
*49 カヤパが正式な大祭司で、カヤパのしゅうとのアンナスは引退したはずが、その地位を離れず、2人の大祭司がいる状態が続いていた
*50、51、52 ヒューペル(ギ) in behalf of、for the sake of、over、の身代わりに、のために
*54 エフライム: U歴13:19、 エルサレムの北東約20kmの町?
*55 過越の祭り: エルサレムの周辺30キロに住む成人男子はこれに参加する義務があった、 ハグニゾー(ギ) ceremonially to make pure、purify、cleanse; morally、(儀式的に)純粋にする、きよめる
第12章
1* 過越しの祭りの六日前に、イエスはベタニヤ*に行かれた。そこは、イエスが死人の中からよみがえらせたラザロのいた所である。
2 人々はイエスのためにそこで晩餐の用意をし、マルタは給仕をしていた。ラザロも、イエスと一緒に横になって食卓につく者たちの中いた。
3 その時、マリヤは高価で純粋なナルドの香油一リトラ*を持ってきて、イエスの足に塗って、自分の髪の毛でそれを拭いた。すると、家中に香油の香りが満ちた。
4 弟子の一人で、イエスを引き渡そうとしていたイスカリオテのユダが言った。
5 「なぜこの香油を三百デナリに売って、貧しい人たちに、施さなかったのか。」
6 彼がこう言ったのは、貧しい人たちを気遣ったためではなく、彼が盗人であり、金入れの袋を預かっていて、その中身をよく抜いていたからであった。
7 イエスは言われた。「彼女にさせておきなさい。わたしの埋葬の準備の日のために、それを取っておいたのです。
8 貧しい人たちはいつもあなたがたと共にいます。しかし、わたしはいつも共にいるわけではないからです。」
9 そこにイエスがおられるのを知って、大ぜいのユダヤ人たちがやって来た。それはイエスだけではなく、イエスが死人の中からよみがえらせたラザロをも見るためだった。
10 そこで祭司長たちは、ラザロをも殺そうと相談した。
11* それは、ラザロのために多くのユダヤ人が離れて行き、イエスを信じるようになったからである。
12* その翌日、祭りに来ていた大ぜいの群衆は、イエスがエルサレムに来られると聞いて、
13 シュロの枝を手に取って、出迎えに行った。そしてこう叫んだ。「ホサナ*。主の御名によって来られる者に祝福あれ。イスラエルの王に*。」*
14 イエスは、ろばの子を見つけられ、その上に乗られた。それは、次のように書いてある通りであった。
15* 「シオンの娘よ、恐れるな。見よ。あなたの王が、ろばの子に乗って来られる。」
16 弟子たちは最初はこれらのことを理解しなかった。しかし、イエスが栄光をお受けになった時に、これらのことがイエスについて書かれてあり、またその通りに人々がイエスに対して行なった、ということを思い出した。
17 また、イエスがラザロを墓から呼び出して、死人の中からよみがえらせた時に、一緒にいた群衆が、そのことをあかしをした。
18 群衆がイエスを迎えに出たのは、イエスがこのようなしるしを行われたことを、聞いていたからでもある。
19 そこで、パリサイ人たちは互いに言った。「どうしたことだ。何もうまくいっていないではないか。見なさい。世の人々は彼について行ったではないか。」
20 祭りで礼拝するために上ってきた人々のうちに、数人のギリシヤ人がいた。
21 彼らはガリラヤのベツサイダ出身のピリポ*のところに来て、「先生*。イエスさまにお目にかかりたいのですが。」と言って頼んだ。
22 ピリポはまずアンデレのところに行ってそのことを話し、さらにアンデレとピリポは行って、イエスに伝えた。
23 すると、イエスは答えて言われた。「人の子が栄光を受ける時が来ました。
24 まことに、まことに、あなたがたに言います。一粒の麦が地に落ちて死ななければ、それはただ一粒のままです。しかし、もし死んだなら、多くの実を結ぶようになります。
25 自分のいのち*を愛する者はそれを失い、この世で自分のいのち*を憎む*者は、それを保って永遠のいのち*に至ります。
26 それでも*、わたしに仕えようとする人があれば、その人はわたしについて来なさい。わたしのいる所に、仕える者もまた、いるべきです。もし、わたしに仕えるなら、父は、その人を名誉ある者として扱って*くださいます。
27* 今わたしのたましいはかき乱されている。わたしは何と言おうか。父よ、この時からわたしをお救い下さい。 否、わたしはこのためにこそ、この時に至ったのです。
28 父よ、み名があがめられますように。」 すると、御声が天からやって来た。 「わたしはすでに栄光を現わし*、そして、更に栄光を現わすであろう*。」*
29 すると、そこに立っていた群衆がこれを聞いて、「雷が鳴ったのだ。」と言い、他の人たちは、「御使いが彼に話しかけたのだ。」と言った。
30 イエスは答えて、言われた。「この御声が現われたのは、わたしのためではなく、あなたがたのためです。
31 今はこの世がさばかれる時です。今こそ、この世の支配者*は追い出されます。
32 そして、もし、わたしがこの地から上げられる*ならば、すべての者を*をわたし自身に引き寄せます*。」
33 イエスはこう言われ、ご自分がどのような死に方で死のうとしておられるか*を、お示しになったのである。
34 すると群衆はイエスに言った。「私たちは律法によって、キリストは永遠に至るまで在り続ける方、と聞いていました。それなのに、どうして人の子は上げられなければならないと、言われるのですか。その人の子とは、誰のことですか。」
35 そこでイエスは彼らに言われた。「もうほんの少しの間、光はあなたがたと一緒に、ここにあります。あなたがたに光がある間に*歩いて、やみがあなたがたを捕えないように*しなさい。やみの中を歩く者は、自分がどこへ行くのか知らないのです。
36 あなたがたに光がある間に*、光の子となるために、光を信じなさい。」 イエスはこれらのことを話してから、立ち去って、彼らからご自身を隠された。
37 このように多くのしるしを彼らの前で行なわれたが、彼らはイエスを信じなかった。
38 それは、預言者イザヤの次の言葉が成就するためである。「主よ。誰が、私たちが聞いたことを、信じたでしょうか。また、主のみ腕は誰に示されたでしょうか。」*
39 このことのために、彼らは信じることができなかった。イザヤはさらに、このようにも言った。
40* 「主は、彼らの目を盲目にし、心を鈍くされた。それは、彼らが目で見ず、心で理解せず、悔い改めて、いやされることがないためである。」
41 イザヤがこう言ったのは、イエスの栄光を見たからであって、イエスのことについて語ったのである。
42 しかし、それにもかかわらず、指導者たちの中にも、多くの者がイエスを信じた。しかしパリサイ人たちをはばかって、会堂から除名されないように、公言はしなかった。
43 彼らは神の栄誉よりも、人の栄誉を愛したからである。
44 イエスは叫んで、言われた。「わたしを信じる者は、わたしを信じるのではなく、わたしを遣わされた方を信じるのであり、
45 また、わたしを見る者は、わたしを遣わされた方を見るのです。
46 わたしは光として、この世に来ました。それは、わたしを信じる者が皆、やみの中に留まっていることのないためです。
47 もし誰かが、わたしの言うことを聞いて、それを信じなかった*としても、わたしはその人をさばきません。それは、わたしが来たのは、この世をさばくためではなく、この世を救うためだからです。
48 わたしを退け、わたしの語っている言葉*を受け取らない人には、その人をさばくものがあります。わたしの語ったその言葉*が、最後の日にその人をさばくでしょう。
49 わたしは自分から語ったのではなく、わたしを遣わされた父ご自身が、わたしが何を言うべきか、語るべきかを、お命じになったのです。
50 わたしは、父の命令が永遠のいのちであることを知っています。それゆえ、わたしが語っていることは何でも、わたしの父がわたしに言われた通りに、そのまま語っていることなのです。」
*1 受難週: 過越の祭の6日前(金曜日)にベタニヤに到着。そこで安息日を過ごし、日曜日にエルサレムへ入城する。 (過越しの祭り 1日間・木曜日の日没から + (続けて)種なしパンの祭り7日間)、 ベタニヤの、らい病人シモンの家 (マタイ26:6、マルコ14:3)
*3 1リトラ = 約300グラム、 口を閉じた石膏の容器。 ヒマラヤ産のナルド草の根からとる、 埋葬にも用いられた、 :5より、300デナリ≒150〜300万円もする cf. ルカ7:37 パリサイ人シモンの家、罪深い女、涙で足をぬぐう
*11 § 死人のよみがえりは、非常に人々の関心を集める
*12 シュロの日曜日、エルサレム入城
*13 ホサナ: 救ってください、 詩篇118:25、26、 ヨハ1:49、 § 「イスラエルの王」: 民衆はイエスがローマを駆逐することを期待して、こう付け加えた
*15 ゼカリヤ9:9
*21 ヨハネ1:44、 使徒ピリポ、 キュリエ(ギ、呼格、単・男)
<キュリオス Lord、master、sir、主、主人、旦那、(教師という意味はない)、 フィリッポス(ギ) ピリポ、はギリシャ名で、おそらくギリシャ語を話せたため。そしてアンデレも同じベツサイダ出身、
*25 プシュケー(ギ) (肉的)いのち、たましい、 ミセーオ hate、detest、憎む、忌み嫌う、 ゾーエーン <ゾエ (永遠の)いのち
*26 (20節のギリシャ人に、特に語られた?)、 ティマオー(ギ) estimate for the value、honour、価値を認める、名誉と報酬を付与する (= マコ7:10、「(父母を)敬え」)
*27 § 主は、人のたましい として来られ、ここで、葛藤された
*28 エドクササ(ギ、アオ過去、1・単) <ドクサゾー glorified、honoured、栄光を現わした、 ドクサソー(未来、1・単) 栄光を現わすであろう、 § 前者はラザロのよみがえり、後者は、イエスのよみがえり、を言っている
*31 ホ アルコーン(ギ) the ruler、支配者、 民衆が期待した、ローマ帝国からの解放のことではなく、サタンのこと (14:30、16:11)
*32 ヒュプソーソー(ギ、アオ過去、1・単) <ヒュプソオー lift up on high、exalt、高く持ち上げる、称賛する、 (ここでは復活ではなく、)十字架につける の意(ヨハ3:14、8:28)、 パンタス(形容詞、複数・男製) all、すべての、 ヘルキュソー(未来、1・単) <ヘルキュオー draw、drag off、引く、引っ張り出す、
§ すべての(複数・男性)〜 〜が何を表しているか: アンドゥレス(men、人々、複・男)、アンドゥラス、アンスローポス(man、human being) cf. ハマルティア(sin、罪、単・女)、 プラグマタ(things、事がら、複・中)、 エルゴン(bussiness、みわざ、単・中) ∴ 罪を引き寄せる、のではなく、人々を引き寄せる、の意。ただしここでは復活の意味は無く、人々の罪を取り除くことを言っている。 (= ガラテヤ2:20、 キリストと共に十字架に付けられ(完了体)、その結果、罪が十字架につけられ、罪に死んだ)
*33 エーメッレン(ギ、未完了、3・単) <メロー、be about、今まさにしようとしている、に直面している
*35、36 (直訳) あなたがたが光を持っている間に、 カタラムバノー(ギ) lay hold of、catch、understand、 (追いかけて)捕まえる; 捉える・理解する (ヨハ1:5、ピリ3:12)
*38 イザヤ53:1
*40 イザヤ6:10
*47 メー ピステユーセー(ギ、アオ過去、3・単) not believe 信じない (cf. アレ型では、 守らない ×)
*48 レーマタ(ギ、複・中) <レーマ words spoken、messages、語っている言葉、語りかけ、 ロゴス(単数・男) the word、(その)言葉、(すでに語られた)言葉
第13章
1 過越しの祭りの前に*、イエスは、この世を離れて父のみもとに行くべき自分の時が来たことを知り、世にいる自分の者たちを愛しておられ、そして終わりに至るまで彼らを愛された。
2 夕食が始まるとき、悪魔はすでにシモンの子イスカリオテのユダの心に、イエスを引き渡す思いを入れていた。
3 イエスは、父がすべてのものを自分の手にお与えになったこと、また、自分は神から出て来て、神に帰って行くことを思い、
4 夕食の席*から立ち上がって、上着を脱ぎ、手ぬぐいを取って腰に巻いた。
5 それから、水をたらいに入れて、弟子たちの足を洗い、腰に巻いた手ぬぐいで拭き始められた。
6 こうして、シモン・ペテロのところに来られた。すると彼はイエスに、「主よ。あなたが私の足を洗ってくださるのですか。」と言った。
7 イエスは彼に答えて言われた。「わたしのしていることは、今あなたには分からないが、後で理解するようになります。」
8 ペテロはイエスに言った。「わたしの足を決して洗わないで下さい。」 イエスは答えられた。「もしわたしがあなたの足を洗わないなら、あなたはわたしと何の関係もありません*。」
9 シモン・ペテロはイエスに言った。「主よ。では、足だけではなく、手も、頭もお願いします。」
10 イエスは彼に言われた。「すでに体を洗った者は、足の他は洗う必要がありません。全身がきよい*からです。あなたがたはきよい。しかし、皆がそうなのではありません。」
11 イエスは自分を引き渡す者を知っておられた。それで、「皆がきよいのではない。」と言われたのである。
12 こうして彼らの足を洗ってから、上着を着て、再び席に戻って、彼らに言われた。「わたしがあなたがたに行なったことが分かりますか。
13 あなたがたはわたしを先生、また主と呼んでいます。そう呼ぶのは正しい。わたしがその通りの者だからです。
14 しかし、主であり、また教師であるわたしが、あなたがたの足を洗ったのだから、あなたがたもまた、互いに足を洗い合うべきです。
15 それは、わたしがあなたがたに行なった通りに、あなたがたもするためであり、わたしは模範を示したのです。
16 まことに、まことに、あなたがたに言います。しもべはその主人に優るものではなく、遣わされた者は遣わした者に優る者ではありません。
17 もしこれらのことをよく分かっていて*、それを行うなら*、あなたがたは幸いです*。
18 あなたがた全部の者について、こう言っているのではありません。わたしは自分が選んだ人たちを知っています。しかし、『わたしと共にパンを食べている者が、わたしに向かってかかとを上げた。』*とある聖書は、成就されなければなりません。
19 そのことがまだ起らない今のうちに、あなたがたに言っておきます。まさにその事が起ったとき、わたしがそれであることを、あなたがたが信じるためです。
20 まことに、まことに、あなたがたに言います。わたしが遣わす者を受け入れる者は、わたしを受け入れるのです。わたしを受け入れる者は、わたしを遣わされた方を、受け入れるのです。」
21 イエスがこれらのことを言われた後、霊のかく乱を覚えられ*、あかしして言われた。「まことに、まことに、あなたがたに言います。あなたがたのうちの一人が、わたしを引き渡します。」
22 弟子たちは、誰のことを言われたのか分からず困惑し、互いに顔を見合わせた。
23 弟子たちの一人で、イエスの愛しておられた者*が、イエスの胸のあたりで横になり席についていた。
24 そこで、シモン・ペテロは彼にうなずいて合図をして言った。「誰のことを言われたのか、聞いてみなさい。」
25 その弟子はイエスの胸に寄りかかって、「主よ、それは誰ですか。」と言うと、
26 イエスは答えられた。「わたしが一切れのパンを浸して与える者が、それです。」 そして、パン切れを浸して、取り上げ、シモンの子イスカリオテのユダにお与えになった*。
27 このパン切れを受けるとすぐに、サタンがユダに入った。そこでイエスは彼に言われた。「あなたがしようとしていることを、ただちに行いなさい。」
28 席を共にしていた者のうち、なぜユダにこう言われたのか、知っていた者は一人もいなかった。
29 ある者たちは、ユダが金入れの袋を預かっていたので、イエスが彼に、「祭りのために必要なものを買いなさい。」と言われたか、あるいは、貧しい者に何か施しをするよう言われたのだと思った。
30* ユダはパン切れを受けると、すぐに出て行った。時は夜であった。
31* さて、ユダが出て行くと、イエスは言われた。「今や、人の子は栄光を受け*ました。そして、神は、人の子によって栄光を受けられ*ました。
32 もし、神が人の子によって栄光を受けられた*のなら、神ご自身も人の子に栄光をお与えに*なります。しかも、ただちに栄光をお与えに*なります。
33 小さい子供たちよ。あなたがたと一緒にいる時は、ほんのわずかになりました。あなたがたはわたしを捜すでしょうが、すでにユダヤ人たちに、『あなたがたはわたしの行く所に来ることはできない。』と言った通り、今はあなたがたにもこのように言うのです。
34 わたしは、一つの新しい戒め*をあなたがたに与えます。 互いに愛し合いなさい*。わたしがあなたがたを愛したように、あなたがたも互いに愛し合いなさい。
35 もし、互いの間に愛を持っている*ならば、それによって、あなたがたがわたしの弟子であることを、すべての者が知るのです。」
36 シモン・ペテロがイエスに言った。「主よ。どこへ行かれるのですか。」 イエスは答えられた。「あなたはわたしの行くところに、今はついて来ることはできません。しかし、後になってから、ついて来ることになるでしょう。」
37 ペテロはイエスに言った。「主よ。何のゆえに、今あなたについて行くことができないのですか。あなたのためには、いのちも捨てます。」
38 イエスは答えられた。「わたしのために、いのちを捨てると言うのですか。まことに、まことに、あなたに言います。鶏が鳴く前に、あなたは三度、わたしを知らないと言います。」
*1 木曜日の日没から最後の晩餐 (過越しの祭りの食事は、金曜の日没後、イエスの十字架は、この過越しの食事の前に羊をほふる時と一致) → 18:28 告別説教: (13章−17章)、場所はすべて2階の広間で(マコ14:15、ルカ22:12)、 § ここで、用いられている用語が大きく変化する: 1−12章までは、ゾエ、ザオー(永遠のいのち、47回)、フォース(光、23回) (アガペー、アガパオー 6回) → 13−17章では、 アガペー、アガパオー(愛、愛する、31回) (ゾエ、ザオー 6回、フォース 0回) ∴ 「いのち」と
「光」の 究極的現れが、「愛」において与えられることを意味する
*4 デイプノン(ギ) supper、feast、formal meal、夕食、ごちそう、晩餐、 皆横になって、中央の低いテーブルから取って食べた。足は外側を向いた
*8 (直訳) not have a part with me、わたしと共になる部分を持たない
*10 カサロース(ギ) pure、clean、純粋な、不純物が無い(= マタ5:8、)、きよい、 cf. カサリゾー make clean、(食物規定等で)きよめる (マコ7:19)
*17 マカリオス(ギ) blessed、happy、幸い、(マタ5:3−、マタ25:46、ローマ4:7、8、黙示1:3、等)、 § 同僚の弟子たちを愛することをしないと、主である師である方よりも偉いことになる。行いにおいても、イエスの模範にならう者となること
*18 詩篇41:9、 イスカリオテ・ユダが主人を蹴る馬のようにふるまったこと
*21 タラッソー(ギ) agitate、stir up、かく乱する (=11:33、38)
*23 「愛された弟子」: 本書では、使徒ヨハネの名前を出さずに、このように記述
*26 § パンをぶどう酒に浸して与える行為は、主人が客をもてなす、特に、その座の主賓に対する行為。 イエスはこのように、今引き渡そうとしている者に、最後の愛を示された。
*30 § ユダは、イエスに何もかも知られていて、しかも主賓扱いで、非常にばつの悪い思いをして出て行った。夜の暗さは、ユダの心の暗さである
*31、32 § 不信者で反逆者のユダがいなくなり、ここでイエスは心を開いて、すべての奥義を弟子たちに打ち明けられた。 この5つとも、 ドクサゾー(ギ) think、praise、honour、make glorious、栄光を与える = ユダが出て行って、イエスが十字架と復活を通られることが確定したこと
*34 Tヨハ2:8、4:21、 一つの は補足、 エントレーン(ギ、受、単数・女)
<エントレー command、commandment、(一つの)命令、戒め、 カイネーン(受、単・女) <カイノース new、 アガパテ(動詞、命令、現在、2・複) アッレロース be loving one another
*35 アガペーン(名詞、受、単数・女) エケーテ エン アッレロイス love(名詞、受、単数) you have in one another、(一つの)愛を、互いの中で、持つ(保つ)、 各自の人間的愛情や好みではなく、イエスにある
神の愛(単数)を共有すること
第14章
1 「あなたがたは、心をかき乱されてはなりません。あなたがたは、神を信じています*。またわたしをも信じ続けなさい*。
2 わたしの父の家には、住まいがたくさんあります。もし無ければ、わたしはそう言っておいたでしょう。あなたがたのために、場所を備えに行きます。
3 そして、行って、あなたがたの場所の用意ができたならば、再び来て、あなたがたをわたしのところに迎え入れます。わたしのいる所に、あなたがたもまた、いるべきだからです。
4 わたしがどこへ行くのか、あなたがたは知っており、その道もあなたがたは知っているはずです。」
5 トマスはイエスに言った。「主よ。どこへ行かれるのか、私たちは知りません。どうしてその道がわかるでしょう。」
6 イエスは彼に言われた。「わたしは道*であり、真理*であり、いのち*です。だれでもわたしを通らないでは、父のみもとに行くことはできません。
7 もしあなたがたがわたしを知っているならば、わたしの父をも知ったでしょう。しかし、今は、父を知っており、またすでに父を見たのです。」
8 ピリポ*はイエスに言った。「主よ。私たちに父を見せて下さい。そうして下されば、私たちは満足します」
9 イエスは彼に言われた。「こんなに長くあなたがたと一緒にいるのに、わたしを知らなかったのですか。ピリポ。わたしを見た者は、父を見たのです。なぜ、あなたは、私たちに父を見せてほしいと言うのですか。
10 わたしが父におり、父がわたしにおられることを、あなたは信じないのですか。わたしがあなたがたに話している言葉は、自分から話しているのではありません。わたしの内におられる父が、みわざを行なっておられるのです。
11 わたしが父におり、父がわたしにおられることを、信じなさい。もしそうでなければ、まさにそれらのわざによって*、信じなさい。
12 まことに、まことに、あなたがたに言います。わたしを信じる者は、わたしの行なっているわざを行ない、さらに、もっと大きなわざ*を行ないます。わたしが父のみもとに行くからです。
13 また、あなたがたが、わたしの名によって求めることは、何でも、わたしはそれをしましょう*。父が子によって栄光を受けられるためです*。
14 もしあなたがたが、わたしの名によって、何かを わたしに求めるなら、わたしはそれをしましょう*。
15 もしあなたがたがわたしを愛するなら、わたしの戒め*を守り行ないなさい。
16 わたしは父にお願いします。そうすれば、父はもう一人の助け主(ぬし)*をあなたがたに与えてくださいます。その方は、永遠に至るまで、あなたがたと共に住んでくださいます*。
17 その方は、真理の御霊*です。 世はその方を受け入れることができません。なぜなら世はその方を見もせず、知りもしないからです。しかし、あなたがたはその方を知っています。
その方は、あなたがたと 共に住んでくださり*、ただ中に居続けてくださるでしょう*。
18 わたしはあなたがたを捨てて孤児とはしません。あなたがたのところに来ます。
19 もう少し経てば、世はもはやわたしを見なくなります。しかし、あなたがたはわたしを見ます。それは、わたしが生きるので、あなたがたも生きるからです。
20 その日には、わたしはわたしの父にあり、あなたがたはわたしにあり、また、わたしがあなたがたにあることを、理解するでしょう。
21 わたしの戒め*を持っていて、これを守り行う者は、わたしを愛する者です。わたしを愛する者は、わたしの父に愛されるでしょう。わたしもその人を愛し、その人にわたし自身を現わします*。」
22 イスカリオテでない方のユダ*がイエスに言った。「主よ。あなたご自身をわたしたちに現わして、世にはそうされないのはなぜですか。」*
23 イエスは彼に答えて言われた。「もしだれでもわたしを愛するならば、わたしの言葉を守り行ないます。そして、わたしの父はその人を愛し、また、わたしたちはその人のところに来て、その人と共に建て上げます*。
24 わたしを愛さない者はわたしの言葉*を守りません。 そして、あなたがたが聞いているこの言葉*は、わたしの言葉ではなく、わたしを遣わされた父の言葉です。
25 これらのことは、あなたがたと一緒にいる間に、すでに語ったことです。
26 しかし、助け主、すなわち、父がわたしの名によってつかわされる聖霊は、あなたがたにすべてのことを教え、またわたしが話したことを、ことごとく思い起させてくださいます。
27 わたしはあなたがたに平安を残して行きます。わたしの平安をあなたがたに与えます。わたしが与えるのは、世が与えるようなものではありません。あなたがたは心を騒がせたり、臆病になったり*してはいけません。
28 『わたしは去って行きますが、また、あなたがたのところに帰って来きます。』と、わたしが言ったのを、あなたがたは聞いています。もしわたしを愛しているなら、わたしが父のもとに行くのを大いに喜ぶはずです。わたしの父は、わたしより大きい*からです。
29* そして、今わたしは、そのことが起こる前に、あなたがたに語りました。それは、事が起った時に、あなたがたが信じるためです。
30 わたしはもはや、あなたがたに、多くを語りません。この世の支配者が来るからです。ただし、彼はわたしに対して、何もできないのです。
31* しかし、わたしが父を愛していることを世が知るように、わたしは父がお命じになったとおりに、このように行なうのです。立ち上がって、ここから進軍して行くのです*。
*1 ピステューエテ(ギ、現在、2・複) 前者は、現在のみ、 後者は、命令+現在なので、「信じ続けなさい」
*6 ホドス(ギ、単数) way、course of conduct、(導きの)道、 アレーセイア(単数) truth、真理、 ゾーエー(単数) (eternal) life、(永遠の)いのち
*8 ピリポは(疑い深いのではなく、)計算高かった。それゆえ、信仰に結び付けられにくかった。(ヨハ6:7) 知性から、信仰への飛躍をする必要 cf. ごくまれに、御座に座っておられる方を幻で見る場合もある(黙示4:2−)
*11 ディア タ エルガ(ギ、複数・中) オウタ(複・中) through(by) the works(acts) themselves、それらのわざ自体によって
*12 メイゾナ(ギ、比較、複・中) greater、より大きな(多くの、偉大な)
*13、14 § 御父は御子を愛しておられ、御子イエスの名を通すならば、御父は喜んでことを成してくださる = 御子が事を成される、ことと同じ
*15、21 エントラス(ギ、受、複数・女) <エントレー 命令、戒め(複数); モーセの十戒
*16 パラクレートス(ギ) (called to one's side) pleader、(側に呼ばれる・遣わされる)弁護人、代弁者、困難な時に手助けする人、 メノウ 留まる、住む
*17 ト プニューマ(単数・中) テース アレセイアス the Spirit of the truth、真理の御霊、 § 聖霊を特徴づける第一のものは、御子、御父と同じく、「真理」でおられること、 メネイ(現在、3・単)、住む、 エスタイ(未来、3・単) ずっといる、いるはず
*21 エムファニソー(ギ、未来) <エムファニゾー manifest、show one's self、indicate、明示する、自身を現わす、指し示す (マタ27:53、ヘブ9:24、他)
*22 ヤコブの子ユダ (ルカ6:16、使徒1:13) = タダイ(シャダイ、乳房(単数)) (マタ10:3、マコ3:18)、 § ユダは、復活されたイエスは、世の未信者にも、公然と変貌山のような本来の御姿を現すべきではないか、と言った。 しかし、人々が、信じる、ことによって救われることが神のみこころ。 わざによって信じてもよい。 復活のしるし(ヨナのしるし)のみを与える
*23 ポイエーソメン(未来、1・複) make、make ready、construct、do、do to one
*24 ロゴユス(複数) (これらの数々の)言葉、説教、 ロゴス(単数) (今言った)言葉
*27 デイリアオー(ギ) (心を)臆病にさせる cf. デイロス(形容詞) 臆病な、小心な、(黙示21:8; マタ8:26、マコ4:40 のみ) 神の霊を受けていないために、平安(信仰)の無い者、の意
*28 エカレーテ(ギ、アオ過去2、2・複) <カイーロー rejoice exceedingly; be well、大いに喜ぶ、元気、 メイゾーン(メガスの比較級) (大きさが)より大きい cf. 質的には等しい(ピリピ2:6)
*29 § 預言と成就により信仰に持っていく: 御子イエスの御名の権威を行使する事(マルコ16:15−18)、ペンテコステ以降の聖霊降臨(使徒2:1−4)の約束、聖霊によるわざと
きよめ、平安、喜び、の予告、 「救い」と「わざ」における神の三位一体の具現
*31 アゴーメン(ギ、1・複) <アゴー (軍事用語で)行進する、進軍する、敵を迎え撃つ → サタンとの対決の意志を固められた。 § ただしここで、外に出て行ったのではなく、まだ二階の大広間にいて、17章の祈りまで、ここで行われた。
第15章
1 わたしは本当の*ぶどうの木、わたしの父は農夫です。
2 わたしに付いているあらゆる枝*のうち、実を結ばないものは父がすべてこれを取り除き*、実を結ぶものはすべて、もっと多く実らせるために、きれいに刈り込みをされます*。
3 あなたがたは、わたしが語った教えの言葉*によって、すでに きれいになっています*。
4 わたしにつながっていなさい*。そうすれば、わたしはあなたがたとつながっています。枝がぶどうの木につながっていなければ、自分だけでは実を結ぶことができないように、あなたがたもわたしにつながっていなければ実を結ぶことができません。
5 わたしはぶどうの木、あなたがたはその枝です。 もし人がわたしに留まり、またわたしがその人に留まっていれば、その人は多くの実を結びます。あなたがたは、わたしから離れては何もできないからです。
6 もし、人がわたしにつながっていないならば、不要な若枝*のように外に投げすてられて枯れます。人々はそれを集め、火に投げ入れて、焼いてしまいます。
7 あなたがたがわたしにつながっていて、わたしの語りかけ*があなたがたに留まっているならば、なんでも望むものを求めなさい。そうすれば、与えられます。
8 あなたがたが多くの実を結んでいて、そしてわたしの弟子*であることが明らかになる*ことによって、わたしの父は栄光をお受けになるのです。
9 父がわたしを愛されたように、わたしもあなたがたを愛しました。わたしの愛のうちに留まりなさい。
10 もし、わたしの戒めを守り行なった*ならば、あなたがたはわたしの愛のうちに留まるはず*です。それは、わたしがわたしの父の戒めを、すでに守り行なった*ので、その愛のうちに留まっている*のと同じです。
11 わたしがこれらのことを話したのは、わたしの喜びがあなたがたのうちに留まり、あなたがたが喜びに満ちあふれるためです。
12 わたしの戒めは、これです。 わたしがあなたがたを愛したように、あなたがたも互いに愛し合いなさい。
13 人がその友のために自分のいのち*を捨てること、これよりも大きな愛を、誰も持っていません。
14 わたしがあなたがたに命じることを、行うならば、あなたがたはわたしの友です。
15 わたしは、もはや、あなたがたを しもべとは呼びません。しもべは主人のしていることを知らないからです。わたしはあなたがたを友と呼びました。わたしの父から聞いたことを皆、あなたがたに知らせたからです。
16 あなたがたがわたしを選んだのではありません。わたしがあなたがたを選び、あなたがたを任命した*のです。それは、あなたがたが行って、実を結び、その実が残るためであり、また、あなたがたがわたしの名によって父に求めるものは何でも、父が与えて下さるためです。*
17 これらのことを命じるのは、あなたがたが互いに愛し合うためです。
18* もしこの世があなたがたを憎むならば、あなたがたよりも先にわたしを憎んだことを、あなたがたは知っています。
19 もしあなたがたがこの世から出たものであったなら、この世は、あなたがたを自分のものとして好意を持ってくれた*ことでしょう。しかし、あなたがたはこの世のものではありません。かえって、わたしがあなたがたをこの世から選び出したのです。 それで、この世はあなたがたを憎むのです。
20 わたしがあなたがたに、『しもべはその主人にまさるものではない。』*と言ったことを、思い出しなさい。もし人々がわたしを迫害したなら、あなたがたをも迫害するでしょう*。また、もし彼らがわたしの言葉を守り行なったなら、あなたがたの言葉をも守り行なうでしょう。
21 彼らはわたしの名のゆえに、あなたがたに対してすべてそれらのことをするでしょう。それは、わたしを遣わされた方を彼らが知ったことが無いからです。
22 もし、わたしが来て、彼らに語らなかったならば、彼らには罪は無かったでしょう。しかし今となっては、彼らのその罪について、罪が無いとの口実を設けることはできません。
23 わたしを憎む者は、わたしの父をも憎むのです。
24 もし、わたしが、他の誰も行なったことがないわざを、彼らの間で行なわなかったならば、彼らには罪は無かったでしょう。しかし今や、彼らはわたしとわたしの父とを見た上で、憎んだのです。
25 それは、『彼らは理由なしにわたしを憎んだ。』*と書いてある、彼らの律法*に書かれている言葉が成就するためです。
26 父のみもとから、わたしがあなたがたのところに遣わされることになっている助け主、すなわち、真理の御霊*が父のみもとから来られる時、その方はわたしについてあかしをします*。
27 あなたがたも、初めからわたしと共にいたのだから、あかしをするのです。
*1 アレシノス(ギ) true、本当の、真実な; ここでは、「模型に対する、実体」 の意、 ぶどうの木にたとえられるイスラエル=「神のぶどう畑」(イザ5:1−7、エレ2:21、詩篇80:8)に対し、御子イエスのこと
*2 クレーマ(ギ) tender and flexible branch、柔らかい枝、若枝 アイロー(ギ) raise up、lift up; remove、(地面から)上げる、取り除く、 カサイーロ(ギ、動詞) cleanse; prune、清浄にする、きよめる; 刈り込みする (本節 15:2のみ)、 3節の きよい と同じ語根
*3 ロゴン(受、単数・男) 言葉、説教、教え(単数)、 カサロース(ギ、形容詞) clean、pure (=13:10、マタ5:8、27:59、黙示15:6、等) (元々)混ざり物の無い、純粋な の意。
*4 メイーナテ(ギ、命令、アオ過去、2・複) <メノウ remain、abide、(同じ場所に)留まる、残る、離れないでいる; 存続し続ける; 待つ
*6 不要な は補足、 § ブドウの木の剪定: 前年の枝の多くは切り落とし、数本だけ残す。夏季(5−6月)の若枝は切っても樹液が出ないので木の勢いを落とさない。 (棚を作り?)持ち上げて、横に成長した枝は、ブドウの房の生長点をいくつか残して、その先を切り捨てる
*7 レーマタ(ギ、複数・中) <レーマ (語りかけの)言葉、語っている言葉(複数)、 § この、「レーマ」=「主の語りかけの言葉」
が起点となって、祈りが聞かれ、実を結び、御子の弟子となり、御父への栄光、戒めの順守と
御子の愛、御子の喜びが満ちること、へと続いていく ∴ 「愛」とは、主との交わりのことであり、 「愛する」とは、主の語りかけに応答する事 (Tコリ13:1−7)
*8 マセテース(ギ) learner、disciple、学ぶ者、弟子 (cf.マタイ28:19 マセテユーオー be a disciple of、make a disciple)、 ゲネーセスセ(未来、2・複) <ギノマイ become、appear、なる、成る、現れる、起こる、実現する、 (今実を結んでいて(現在)、その結果、弟子であることが証明される(未来) の意)
*10 守り行なった(アオ過去) 留まるはず(未来)、 すでに守り行なった(完了) 留まっている(現在)
*13 プシュケー(ギ) life、soul、(肉の)いのち、たましい
*16 § これは、直接、御父に、御子イエスの名によって、祈り求める、という、よく知られた求め方を言っている。これは御子の選びにより、建て上げられ、兄弟を愛することを条件として、御子の「友」とされ、神の計画を知ったことによる cf.
14:13、14 御子に、御子イエスの名によって、求める。 これは「信じる」という段階でもできる祈り求め。「主の名を呼ぶ者は皆救われる」 ティセミ(ギ) set、put down、establish; ordain、置く、据える、設立する; 任命する
*18 すでに起こったこととしては、安息日に穂を摘んで食べたこと(マコ2:23−28)、浸さない手で食べたこと(マコ7:1−13)など、弟子たちがしたことのパリサイ人による非難を、イエスが一身に受けた
*19 エフィレイ(ギ、未完了過去、3・単) <フィレオー 好んだ、気に入った、愛した
*20 ヨハネ13:16、 Tコリ4:11、Uコリ4:9、Uテモ3:12
*22 プローファシス(ギ) pretext、(偽りの)口実、弁解、pretence、見せかけ、ふり
*25 ドーレアーン(ギ、副詞) freely、undeservedly、勝手に、不当にも、不相応に、 詩篇35:19、69:4 (キンナム(ヘ、副)
freely、without cause、勝手に、理由なしに)、 ノモス(ギ) 詩篇も律法に含めている
*26 ト プニューマ(ギ、単数・中) テース アレーセイアス(ギ、単数・女) the Spirit of the truth、 マルトュレーセイ(ギ、未来、3・単数) マルトュレーオー be(bear)witness、証人となる、give testimony、証言をする、 = 「聖霊は、罪について、義について、さばきについて、世にその誤りを認めさせる」(ヨハ16:7、8)、「人となって来たイエス・キリストを告白する霊は、神からのもの」(Tヨハ4:2)
§ 真理の御霊の働きは、第一に、迫害下・困難下にあって、聖徒たちのあかしが弱まることのないように、弁護して助けること。 結果的に、迫害の中で、多くの恵みを受け取っていく(マコ10:30; Tコリ14:1、エペ6:17、黙示19:10)
第16章
1 わたしがこれらのことを話したのは、あなたがたが、つまずくことのないためです。
2 人々はあなたがたを、会堂から追放します。その上さらに、あなたがたを殺す者が皆、そのことで、自分たちは神への奉仕を捧げているのだと考えるようになる時が来ます。
3 彼らがそのようなことをするのは、父をも、わたしをも、知らないからです。
4 わたしがあなたがたにこれらのことを言ったのは、彼らの時が来た場合、わたしが彼らについて言ったことを、あなたがたが思い出すためです。これらのことを初めから言わなかったのは、わたしがあなたがたと一緒にいたからです。
5 しかしながら、今わたしは、わたしを遣わされた方のところに行こうとしています。しかし、あなたがたのうち、誰も、『どこへ行くのですか。』と、尋ねる者はいません。
6 むしろ、わたしがこれらのことを語ったために、あなたがたの心は悲しみで満たされています。
7 それでも、わたしは真理*をあなたがたに言いますが、わたしが去って行くことは、あなたがたの益になります*。それは、わたしが去って行かなければ、あなたがたのところに助け主は来ないからです。もし行けば、助け主をあなたがたに送り出します。
8 その方が来られると、世に対し、罪と、義と、さばきとについて、その間違いを厳しく指摘する*でしょう。
9* 罪についてとは、彼らがわたしを信じないからです。
10* 義についてとは、わたしが父のみもとに行き、あなたがたは、もはやわたしを見なくなるからです。
11* さばきについてとは、この世の支配者が、すでにさばかれているからです。
12 わたしには、あなたがたに言うべきことがまだ多くありますが、あなたがたは今はそれに耐えられません。
13* しかし、真理の御霊が来る時には、あなたがたをあらゆる真理に導いてくださいます。それは、御霊は自分から語るのではなく、聞くままを語り、起ころうとしていること*をあなたがたに知らせるからです。
14* 御霊はわたしに、栄光を与えます*。わたしからのものを受け取って*、それをあなたがたに知らせるからです。
15* 父が持っておられるものはすべて、わたしのものです。御霊はわたしのものを受け取って、それをあなたがたに知らせると、わたしが言ったのは、そのためです。
16 しばらくすれば*、あなたがたはもうわたしを見なくなります。それは、またしばらくすれば、わたしに会えるでしょう。それは、わたしが父のところへ行くからです。」
17 そこで、弟子たちのうちの何人かが互いに言った。「『しばらくすれば、わたしを見なくなる。またしばらくすれば、わたしに会える。』と言われ、また、『わたしの父のところに行く。』と言われたのは、どういうことなのだろう。」
18 彼らはまた、「『しばらくすれば』と言われるのは、どういうことだろうか。私たちには、主が何を言おうとしているのか分からない。」と言った。
19 イエスは、彼らが質問したがっていることを知られて、彼らに言われた。「しばらくすればわたしを見なくなる、またしばらくすればわたしに会えると、わたしが言ったことで、互いに論じ合っているのですか。
20 まことに、まことに、あなたがたに言います。あなたがたは泣いて、嘆くが、この世は喜ぶのです。あなたがたは悲嘆に暮れるが、その悲しみは喜びに変わります。
21 女が子を産む場合には、その時が来たので、痛み苦しみ*ます。しかし、子を産んでしまうと、もはやその苦しみを覚えていません。一人の子供がこの世に生れた、という喜びがあるためです。
22 このように、あなたがたも今は痛み*を持っています。しかし、わたしは再びあなたがたと会います。そして、あなたがたの心は喜びに満たされるでしょう。その喜びをあなたがたから取り去る者はいません。
23 その日には、あなたがたは何もわたしに尋ねないでしょう。 まことに、まことに、あなたがたに言います。あなたがたが父に求めるものは何でも、わたしの名によって与えてくださいます。
24 今の時までは、あなたがたはわたしの名によって何も求めませんでした。 求めなさい。そうすれば、受け取ります。* それは、あなたがたの喜びが満ちあふれるためです。
25 わたしはこれらのことを比喩を用いて話しましたが、もはや比喩で話すことをせず、自由に心開いて、父についてを、あなたがたに知らせる時が来ます。
26 その日には、あなたがたは、わたしの名によって求めます。わたしは、あなたがたのために父に願ってあげようとは言いません。
27 父ご自身があなたがたを気に入っておられる*からです。それは、あなたがたがわたしを好んでくれた*からであり、また、わたしが神のみもとから来たことを信じたからです。
28 わたしは父から出てこの世に来ましたが、またこの世を去って、父のみもとに行きます。」
29 弟子たちは言った。「ああ。今は、心開いてお話しになって、少しも比喩によって話されませんでした。
30 あなたはすべてのことを知っておられ、誰もあなたにお尋ねする必要のないことが、今、分かりました。このことで、わたしたちはあなたが神から来られた方であると信じます。」
31 イエスは答えられた。「あなたがたは、今は、信じています。
32 見よ。あなたがたは、それぞれ自分のところ*に散らされ、わたしを一人だけ残す時が来ます。いや、すでに来ています。しかし、わたしは一人でいるのではありません。父がわたしと共におられるのです*。
33 これらのことをあなたがたに話したのは、わたしにあって平安を得るためです。あなたがたは、この世では艱難*があります。しかし、勇敢でありなさい。わたしはすでに世に勝利した*のです。」
*7 テーン アレーセイアン(ギ、単数・女) the truth、(冠詞付きで)その真理、 シュムフェロー bear together、expedient、共に生む、共に運ぶ、益になる、助けになる、得策だ(ヨハ18:14、Tコリ6:12) cf. ケルドス gain、advantage、儲け、利益(ピリ1:21、3:7のみ)
*8 エレグコー(ギ) 曝露する(3:20)、罪に定める、有罪とする(8:46、ルカ3:19)、叱責する(マタ18:15、黙3:19)
*9 § イエスを信じないで、人々が自己中心な道に行くことに、人の罪の根源(=原罪)がある
*10 § イエスの十字架と復活、昇天により、イエスが語られた言葉とわざの正しさ、すなわち、「神の義」が証明される
*11 § 十字架は、実は、サタンがさばかれる場である、 ケクリタイ(ギ、完了、受、3・単) <クリノー has been judged、すでにさばかれている
*13、14 ドクサゾー(ギ) glorify、make glorious、think、praise、栄光を与える、栄光を現わす ラムバノー take with hand、choose、receive、受け取る、 § 未来のことや知恵、知識などの、啓示の霊として働かれる。必然的に、「イエスを告白する霊」(Tヨハ4:2)である、 タ エルコメナ
<エルコマイ the (things) coming into、(直訳) (時間的に)来ようとしていること
*15 御父 → 御子 → 聖霊 → (啓示)、 今の新約時代・教会時代は、聖霊の啓示の時代。 信じる者すべてが、信仰の土台となる神の語りかけの言葉をいただいて、信仰の歩みをする
*16 ミクロン(ギ) 短い間、しばらくすれば = イエスの死と復活の間
*21、22 リューペ(ギ) sorrow、pain、悲しみ、痛み
*24 アイテイテ(ギ、命令、現在、2・複) カイ レープセスセ(will get) cf. マタイ7:7、ルカ11:9、アイテイテ カイ ドセースタイ(will be given)
*25 パロイミア(ギ) proverb、ことわざ、格言、箴言; 比喩を用いて(10:6、16:29、Uペテ2:22
のみ) cf. マタイ13:3、等 パラボレー parable、proverb、たとえ
*27 フィレイ(ギ、現在、3・単) <フィレオー like、be fond of、好む、気に入る、愛する、 ペフィレーカテ(完了、2・複) 好んだ § この時は弟子たちはまだ、聖霊に満たされてはいなかったが、それでも父なる神は喜んでくださった
*32 タ(冠詞、複・中) イデア(形容詞、複・中) the 〜 own、 〜は、世の持ち場のこと 事柄:プラグマタ(複・中)(ルカ2:49)、 働き、仕事:エルガ(複・中)(ヨハ6:28) cf. 家:オイキア(女)×、家族:オイコス(男)×、 § この後すぐ、ゲッセマネの祈りの直前に、御父との3時間の分離を示された(マコ14:33、34)
*33 スリプシス(ギ、名詞) pressing、oppression、tribulation、(元々薬草などを)すり潰す; 苦しみ(16:21、マタ24:9、黙2:10等)、迫害(使徒11:19等)、艱難、抑圧、 ネニケーカ(完了、1・単)
<ニカオー (軍事的に)征服した の意
第17章
1* これらのことを語り終えると、イエスは目を天に向けて、言われた。「父よ。時が来ました。あなたの子があなたの栄光を現わすために、子の栄光を現わして下さい。
2 あなたは、すべての肉なる者を支配する権威を、子にお与えになりました。それは子に与えて下さったすべての者に、永遠のいのちを与えるためです。
3 この、永遠のいのちとは、唯一の、本当の*神なる方*でおられるあなたと、また、あなたが遣わされたイエス・キリストとを、絶えず知り続ける*ことです。
4 わたしは、わたしが行なうように与えて下さった、そのわざ*を成し遂げて、地上であなたの栄光を現わしました。
5 父よ。世があるようになった以前から*、わたしがみそばで持ち続けていた*栄光で、今、み前で、わたしをその栄光で輝かせて下さい。
6* わたしは、あなたが世から引き出し、わたしに与えて下さった人々に、あなたの御名を現わしました。彼らはあなたのものでしたが、わたしに与えて下さいました。そして、彼らはあなたのみことば*を守りました。
7 今、彼らは、わたしに与えて下さったすべてのもの*が、あなたから出たものであることを知りました。
8 なぜなら、わたしはあなたから受け取った語りかけの言葉*を彼らに与え、彼らはそれを受け取り、わたしがあなたから来た者であることを本当に知り、そのように、あなたがわたしを遣わされたことを信じたからです。
9 わたしは彼らのためにお願いします。それは、この世のためにではなく、あなたがわたしに下さった者たちのためにです。彼らはあなたのものです。
10 わたしのものは皆あなたのもの、あなたのものはわたしのものです。そして、わたしは彼らによって栄光を受けました。
11 わたしはもうこの世にはいなくなります。 この人々はこの世にいます。わたしはみもとに行きます。 聖なる父よ*。わたしに下さった御名*の中に、彼らを保って下さい。それはわたしたちがそうであるように、彼らが一つであるためです。
12 わたしが、世にいる彼らと共にいた時は、あなたの御名の中に彼らを保っていました。その*、あなたが与えて下さった彼らを、わたしは保護し、彼らのうちの誰も失われることはなく、ただ滅びの子*が滅びました。それは聖書が成就するためです*。
13 今、わたしはあなたのみもとに行きます。そして世にいる間にこれらのことを語るのは、わたしの喜びが彼らのうちに満ちあふれるためです。
14 わたしは彼らにみことば*を与えましたが、世は彼らを憎みました。わたしが世からのものでないように、彼らも世からのものではないからです。
15 わたしがお願いするのは、彼らを世から取り去ることではなく、彼らを悪しき者*から守って下さることです。
16 わたしが世のものでないように、彼らも世のものではありません。
17 真理によって彼らを聖別*して下さい。あなたのみことば*は真理です。
18 あなたがわたしを世に遣わされたように、わたしも彼らを世に遣わしました*。
19 そして、彼らが真理によって聖別*されるために、彼らの身代わりに*、わたし自身を聖なる捧げもの*とします。
20* わたしは彼らのためだけではなく、彼らの言葉*を通してわたしを信じるようになる人々のためにも、お願いします。
21 それは、父よ、あなたがわたしの中におられ、わたしがあなたの中にいるように、すべての者が一つになるためです。すなわち、彼らをも、わたしたちのうちにおらせるためであり、それによって、あなたがわたしを遣わされたことを、世が信じるためです。
22 わたしは、あなたからいただいた栄光を彼らにも与えました。それは、わたしたちが一つであるように、彼らも一つであるためです。
23 わたしが彼らにおり、あなたがわたしにおられるのは、彼らが一つになることが成し遂げられる*ためであり、また、あなたがわたしを遣わし、わたしを愛された*ように、彼らを愛された*ことを、世が知るためです。
24 父よ。あなたがわたしに与えて下さった人々が、わたしのいる所に共にいるようにして下さることをお願いします。天地が造られる以前からわたしを愛して下さって、わたしに与えて下さった栄光を、彼らが見るようになるためです。
25 父よ。義なる方*。この世はあなたを知ったことが*ありません。しかし、わたしはあなたをすでに知り*、また彼らも、あなたがわたしを遣わされたことを知りました*。
26 そして、わたしは彼らに、あなたの御名を知らせました。またこれからも知らせるでしょう。それは、あなたがわたしを愛して下さったその愛が彼らのうちにあり、またわたしも彼らのうちにいるためです。」
*1−5: 17章は、「大祭司の祈り」と呼ばれる。 1−5節はご自身のための祈り
*3 アレシノス(ギ、形容詞) true、(偽りの神々に対し、)本当の (15:1)、 セオン God、(冠詞無しで、)神なる方、 ギノスコーシン(現在接続法、3・複) <ギノスコー 絶えず知り続ける § 御子を知り続けることが、唯一の本当の神をより深く知る道であり、そして神を知り続けることが、「永遠のいのち」そのものである。 ex) 黙示4:8
より、ケルビムたちは、造られた時から今に至るまで御座の周りを飛び回り、一回転するたびに、今まで一度も見たことのない新しい御父の栄光を垣間見て、驚愕のあまり「聖なるかな」と叫び続けている
*4 ト エルゴン(ギ、単数・中) the act、work、(単数、その特定の)わざ = 十字架上の贖いのわざがすでに成し遂げられたと、宣言している
*5 プロ(ギ) before、(時間的に)以前から、(場所的に)の前、 エイクオン(未完了過去、1・単) I had、持ち続けていた (未完了 = 1:1、 御子の先在性 8:58、17:24; 箴言8:27)
*6−19: 弟子たちのための祈り
*6 トン ロゴン(ギ、受、単・男) <ロゴス the word、みことば
*7 パンタ(ギ、複・中) all (things)、すべての 〜、〜は 事柄(= わざ、教え)
*8 レーマタ(ギ、複・中) <レーマ word spoken、speech、(声で語る)言葉、語りかけ
*11 パテル ハギエ(ギ、呼、単・男) Holy Father、 § 「父の御名」 (御名=実質) とは、「聖」(17:11、マタ6:9「御名が聖なるものとされますように」)と、 「義」(17:25、使徒13:39(直訳)、イザヤ32:17)
*12 オウス(ギ、複・男) whom、(与えられたのは御名ではなく、「彼ら」のこと)、 詩篇41:9、 § 御父によって与えられたイスカリオテ・ユダが、聖書が成就するために用いられたこと。終末の「破滅の子」(Uテサ2:3)もみことば通りに現れる
*14、17、20 トン ロゴン(ギ、単・男) <ホ ロゴス the word、speech、みことば(単数)
*15 トウ ポネーロウ(ギ、単数・男) <ポネロース the wicked one、悪しき者(単数、サタンのこと、 マタイ6:13)
*17、19 ハギアゾー(ギ) separate from profane things and dedicate to God、dedicate、きよめ分かつ、聖なるものとして捧げる cf. ローマ12:1 「聖なる捧げものとして捧げる = 霊的な礼拝」
*18 § 本書では一度も、「使徒」という言葉は使われていないが、「使徒」=「遣わされた者」の意味で出てくる
*19 ヒューペル(ギ) in behalf of、for the sake of、over、の身代わりに、のために
*20−26: 弟子たちによって信じる、すべての信者のための祈り
*23 テテレイオーメノイ(ギ、完了、受動、複・男) <テレイオーオ have been perfected、make perfect、 エガペーサス(アオ過去、2・単) <アガパーオ you loved、あなたは愛した
*25 ディカイエ(ギ、形容詞、呼、単・男) <ディカイオス righteous、observing divine laws、義なる、 エグノー(アオ過去2(瞬時)、3・単)、エグノーン(アオ過去2、1・単)、エグノーサン(アオ過去2、3・複)
<ギノスコー § 御子が永遠の昔から、御父に愛されてきたからこそ、この世が決して知ることのない、神を正確に知る知識を持っておられ、 「聖なる父」(17:11)、 「義なる方」(17:25) と呼ばれた
第18章
1 イエスはこれらのことを語り終えて、弟子たちと共にケデロンの谷あい*の向こう側へ行かれた。そこには園があって、イエスは弟子たちと一緒にその中に入られた。
2 イエスを引き渡そうとしていたユダは、その場所をよく知っていた。イエスと弟子たちとが、頻繁にそこで集まっていたからである。
3* さてユダは、一隊の兵士ら*と、祭司長たちとパリサイ人たちが送った役人たち*を引き連れ、たいまつや灯火や武器を持って、そこへやって来た。
4 しかしイエスは、自分の身に起ろうとすることを皆、知っておられたので、出て来て彼らに言われた。「誰を捜しているのか。」
5 彼らは、「ナザレのイエスを。」と答えた。イエスは彼らに言われた、「わたしが、それである*。」 イエスを引き渡そうとしているユダも、彼らと一緒に立っていた。
6 イエスが彼らに、「わたしが、それである*。」と言われたとき、彼らは後ろへ下がって、地に倒れた。
7 そこで再び彼らに、「誰を捜しているのか。」と尋ねられると、彼らは、「ナザレのイエスを。」と言った。
8 イエスは答えられた。「わたしがそれである*と、言ったではないか。もし、わたしを捜しているのなら、この人たちを去らせなさい。」
9 それは、「あなたが与えて下さった人たちのうちの誰も、失われませんでした。」*とイエスの言われたその言葉*が、成就するためであった。
10 シモン・ペテロは剣を持っていたが、それを抜いて、大祭司のしもべに切りかかり、その右の耳*を切り落した。そのしもべの名はマルコス*であった。
11 すると、イエスはペテロに言われた。「剣をさやに納めなさい。父がわたしに下さった杯*を、どうして飲まずにいられよう。」
12 それから一隊の兵士*と、その千卒長*と、ユダヤ人からの役人たちが、イエスを捕え、縛り上げて、
13 まずアンナス*のところに引き連れて行った。彼はその年の大祭司カヤパ*のしゅうとであった。
14 カヤパは以前、一人の人が国民の身代わりに死ぬのは得策だと、ユダヤ人に助言した者である*。
15 シモン・ペテロともうひとりの弟子*とが、イエスについて行った。この弟子は大祭司の知り合いであったので、イエスと一緒に大祭司の中庭に入った。
16 しかし、ペテロは外で戸口に立っていた。すると大祭司の知り合いであるその弟子が、外に出て行って門番の女に話し、ペテロを中に入れた。
17 すると、この門番の女がペテロに言った。「あなたも、あの人の弟子たちの一人ではありませんか。」 ペテロは答えた。「私はその者ではない。」
18 しもべや役人たちは、寒かったので、炭火を起こして暖をとっていた。ペテロもまた彼らと共に、立って暖まっていた。
19 大祭司はイエスに、彼の弟子たちについて、また教えについてを尋ねた。
20 イエスは答えられた。「わたしはこの世に対して公然と語ってきました。すべてのユダヤ人が集まる会堂や神殿で、いつも教えていました。隠れて語ったことはありません。
21 なぜ、わたしに尋ねるのですか。わたしが彼らに語ったことは、それを聞いた人々に尋ねなさい。わたしの言ったことは、見よ、彼らが知っています。」
22 イエスがこう言われると、そこに立っていた役人の一人が、平手でイエスを打ち、「大祭司に対し、そのような答えをするのか。」と言った。
23 イエスは答えられた。「もしわたしが何か悪いことを言ったのなら、その悪い証拠を示しなさい。しかし、正しいことを言ったのなら、なぜわたしを打つのか。」
24 それからアンナスは、イエスを縛ったまま大祭司カヤパのところへ送った。
25 シモン・ペテロは、立って火に当たっていた。すると人々が彼に言った。「あなたも、あの人の弟子の一人ではないか」。彼はそれをうち消して、「いや、私ではない。」と言った。
26 大祭司のしもべの一人で、ペテロに耳を切り落とされた人の親族の者が言った。「あなたが園であの人と共にいるのを、私が見なかったとでも?」
27 もう一度、ペテロはそれを否定した。するとすぐに、鶏が鳴いた。
28 それから人々は、イエスをカヤパのところから総督官邸*に連れて行った。時は夜明け前*であった。彼らは、汚れを受けないで過越しの食事*ができるように*と、官邸に入らなかった。
29 そこで、ピラト*は彼らのところに出てきて言った。「あなたがたはこの人に対して、何を告訴するのですか。」
30 彼らはピラトに答えて言った。「もしこの人が犯罪者でなかったなら、あなたに対して、引き渡しはしなかったでしょう。」
31 そこでピラトは彼らに言った。「あなたがたは彼を引き取って、あなたがたの律法によってさばきなさい。」 するとユダヤ人らは彼に言った。「私たちには、人を死刑にする権限がありません*。」
32 これは、ご自分がどのような死に方をしようとしているかを示して言われたイエスの言葉*が、成就するためであった。
33 さて、ピラトは再び官邸に入り、イエスを呼び出して言った。「あなたは、ユダヤ人たちの王ですか。」
34 イエスは答えられた。「あなたは自分からそう言うのですか。それとも他の人々が、わたしについてあなたにそう言ったのですか。」
35 ピラトは答えた。「私は全くユダヤ人ではありません。あなたの同族や祭司長たちが、あなたを私に引き渡したのです。あなたは一体何をしたのですか。」
36 イエスは答えられた。「わたしの王国はこの世から出たものではありません。もし、わたしの王国がこの世から出たものであれば、わたしに仕える者たちは、わたしをユダヤ人に渡さないように戦ったでしょう。そして今や、わたしの王国はここからのものではありません。」
37 そこでピラトはイエスに言った。「それでは、あなたは王なのですね。」 イエスは答えられた。「あなたの言うとおり、わたしは王です。 わたしは真理についてあかしをするために生まれ、また、そのためにこの世に来ました。 誰でも真理に属する者は、わたしの声に聞きます。」
38 ピラトはイエスに言った。「真理とは何ですか。」 こう言って、彼はもう一度ユダヤ人たちの所に出て行き、彼らに言った。「私は、この人に、罪に当たる理由を何も見出しません。
39 過越しの時には、私があなたがたのために、一人の人を釈放するのが、あなたがたとの慣例になっています。それでは、あなたがたは、このユダヤ人の王を釈放してもらいたいのですか。」
40 すると、彼らは皆、再び大声で叫んで、「その人ではなく、バラバ*だ。」と言った。このバラバは強盗であった。
*1 ケイマロス(ギ) winter brook、冬季に川となるワジ、 ケデロンの谷: 神殿の丘とオリーブ山の間の谷。 川向こうへ行くとゲッセマネ(油絞り、の意)の園がある
*3、12 ローマ兵の一隊=600人、 神殿警備の役人(7:32)、 § いかにも大犯罪者を捕えるかのように、わざと大掛かりにして、民衆の前にイエスの捕縛を正当化しようとした
*5、6、8 エゴー エイミ(ギ) I am、わたしである、 わたしはあるという者である(I AM)、ということを ほのめかして、重ねて言っている(cf. 8:24、出エジ3:14)
*9 ヨハ17:12、 ホ ロゴス(ギ) the word、その言葉
*10 耳たぶ、外耳、ルカ22:51では、この直後に耳をいやしている、 大祭司のしもべマルコスは、おそらくこのイエス逮捕団の責任者だった(後にペテロの弟子となったヨハネ・マルコ(使徒12:12−)とは異なる)
*11 ト ポテリオン(ギ) cup、drinking vessel、杯 § すなわち、人の罪に対する、「神の御怒りの杯」
*12 一隊=600人、 千人隊長
*13 アンナス: BC6−AD15まで大祭司、引退したものの、カヤパのしゅうととして引き続き実権があった、 カヤパ: AD18−36 大祭司 § イエスの降誕は
BC5−6年(マタイ2:1)、約30歳で宣教開始(ルカ3:23)、そのとき(過越し、ヨハ2:13)から、満2年で十字架(ヨハネ5:1)、 したがって、AD26、または、27年
の過越しに、十字架・復活・昇天
*14 ヨハネ11:50
*15 ヨハネはガリラヤ出身なので、ヨハネとは別人の弟子。ただし、このヨハネの福音書が書かれるために、(特に、大祭司関係のことがらについて、)寄与した人物
*28 プローイ(ギ) 夜明け前: 午前3時〜6時までの間、 プライトーリオン(ギ) ローマの総督府、総督官邸(祭りの最中なので200人ほどの兵がいた)、 カヤパの裁判は徹夜で行われた、 § イエスたちは、通常の1日前(木曜日)に「過越しの食事」を済ませていた(13:1)。 使徒11:3 無割礼の人々と共に食事をすることの禁止。 異邦人のところに入って身を汚すまいとした。しかし皮肉なことに、彼らが御子を十字架につけることよって、ユダヤ人と異邦人の隔ての壁(神殿にあった異邦人の庭と分ける壁)が取り払われた(エペ2:14)
*29 ポンティオ・ピラト: 在任AD26?−36?、ローマ帝国のユダヤ属州の総督、 (イエスの死はAD26、7年なので、この任期(by.タキトゥス)では着任直後に十字架につけたこととなり、ルカ13:1−の事件も着任後すぐということになる)
*31 ユダヤの死刑法である石打ちの刑が、ローマの法の下では許されていないため。 ローマの法を順守していることを人々は強調した
*32 ヨハ12:32 「地上から上げる」、マタ20:19、等 「十字架」
*40 バル・アバス(アラム語) 父の子 の意、 ピラトは、「神の子」と、「父の子」とを引っかけて、どちらを赦すか民衆に問うた
第19章
1 そこでピラトは、イエスを捕まえ、むちで打たせた*。
2 兵士たちは、いばらで冠を編んで、イエスの頭にかぶらせ、紫の上着*を着せ、
3 それから、イエスの前に進み出て、「ばんざい*。ユダヤ人の王様。」と言った。そして平手でイエスを打った。
4 するとピラトは、また出て行ってユダヤ人たちに言った。「見なさい。私はこの人をあなたがたの前に引き出しますが、それは、私がこの人に罪に当たる理由を何も見出さないことを、あなたがたに知ってもらうためです。」
5 イエスはいばらの冠をかぶり、紫の上着を着たままで外へ出られると、ピラトは彼らに言った。「さあ。この人です。*」
6 祭司長たちや役人たちはイエスを見ると、大声で叫び、「あなたが十字架につけろ。十字架につけろ。」と言った。ピラトは彼らに言った。「あなたがたが、この人を引き取って十字架につけなさい。私は、彼には罪に当たる理由を何も見出しません。」
7 ユダヤ人たちは彼に答えた。「私たちには律法があります。その律法によれば、彼は自分を神の子としたのだから、死罪に相当します*。」
8 ピラトがこの言葉を聞いたとき、ますます恐れ*、
9 もう一度官邸に入り、イエスに言った。「あなたは、どこの出身ですか。」 しかし、イエスは彼に答えをお与にならなかった。
10 そこでピラトは言った。「何も話さないのですか。私には、あなたを釈放する権威があり、また十字架につける権威があることを、知らないのですか。」
11 イエスは答えられた。「もし、上から与えられるのでなければ、あなたはわたしに対して何の権威もありません。だから、わたしをあなたに引き渡した者には、もっと大きな罪があるです。」
12 これを聞いて、ピラトはイエスを釈放しようと努めた。しかしユダヤ人たちは叫んで言った。「もしこの人を釈放したなら、あなたはカイザルの盟友*ではありません。自分を王とするものはすべて、カイザルに反逆する者です。」
13* ピラトはこれらの言葉を聞いて、イエスを外へ連れて行き、敷石、ヘブル語ではガバタ*、という場所で裁判の席に座った*。
14 その日は過越しの準備の日*であって、時は朝の六時*頃であった。ピラトはユダヤ人たちに言った。「さあ。あなたがたの王です。」
15 すると彼らは大声で叫んだ。「上げろ*。上げろ。彼を十字架につけろ。」 ピラトは彼らに言った。「あなたがたの王を、私が十字架につけるのか。」 祭司長たちは答えた。「われわれには、カイザル以外に王はありません。」*
16 そこでピラトは、十字架につけさせるために、イエスを彼らに引き渡した。彼らはイエスを受け取り、連れて行った。
17 イエスはみずから十字架の横木を背負って、どくろ、すなわち、ヘブル語ではゴルゴタ*、という場所に出て行かれた。
18 彼らはそこで、イエスを十字架につけた。イエスを真中にして、他の二人の者を両側に、イエスと共に十字架につけた。
19 ピラトは罪状書きも書いて、十字架の上に掲げた。それには、「ユダヤ人の王、ナザレのイエス。」*と書いてあった。
20 イエスが十字架につけられた場所は都に近かったので、多くのユダヤ人がこの罪状書きを読んだ。それはヘブル語、ギリシヤ語、ラテン語で*書いてあった。
21 ユダヤ人の祭司長たちはピラトに言った。「『ユダヤ人の王。』と書かずに、『この者は、私がユダヤ人の王である、と言った。』と書いてほしい。」
22 ピラトは答えた。「私が書いたことは、私が書いたのだ。」*
23 さて、兵卒たちはイエスを十字架につけてから、その上着*をとって四つに分け、おのおの、その一つを取った。また下着*を手に取ってみたが、それには縫い目がなく、上の方から全部一つに織ったものであった。
24 そこで彼らは互いに言った。「それを裂かないで、誰のものになるか、くじを引こう。」 これは、「彼らはわたしの上着を分け合い、わたしの衣のためにくじを引いた。」*という聖書が成就するためで、兵士たちはまさにそのように行なった。
25 さて、イエスの十字架の近くには、イエスの母と、母の姉妹と、クロパの妻マリヤと、マグダラのマリヤとが、立っていた。
26* イエスは、母が近くにいて、イエスが愛していた*弟子がそばに立っているのをご覧になって、母に言われた。「婦人よ。さあ。あなたの息子です。」
27* それからこの弟子に言われた。「さあ。あなたの母です。」 そのときから、この弟子は彼女を自分の家に引き取った。
28 この事の後、イエスは、すべてがすでに成し遂げられたことを知られて、「わたしは、渇く。」*と言われた。それは、聖書が全うされるためであった*。
29 そこに、酢いぶどう酒水が器に満たされて置いてあった。そして人々は、このぶどう酒水を含ませた海綿をヒソプの茎に付けて、イエスの口のところへさし出した。
30 それから、イエスはそのぶどう酒水を受けられると、「完了した。」*と言われ、こうべを垂れて、霊をお渡しになった。
31 さてユダヤ人たちは、その日が備えの日であったので、安息日に死体を十字架の上に残しておかないように*、特にその安息日は大いなる日*であったので、ピラトに願って、足を折って*、死体を取り去ることにした。
32 そこで兵士たちが来て、イエスと一緒に十字架につけられた初めの者と、もう一人の者との足を折った。
33 しかし、彼らがイエスのところに来た時、イエスはすでに死なれていたのを見たので、その足を折らなかった。
34 しかし、兵士の一人が槍(やり)でそのわき腹を突くと、すぐ血と水とが出て来た*。
35* それを目で見た者があかしをした。その彼のあかしは本当である*。彼はまた*、真理のもの*を語っていることに気がついた。それは、あなたがたが信じるようになるためである。
36 これらのことが起ったのは、「彼の骨は砕かれない。」*との聖書の言葉が、成就するためであり、
37 また聖書の他のところには、「彼らは自分たちが突き刺した者を見る。」*とある。
38 これらの出来事の後に、ユダヤ人を恐れて、ひそかにイエスの弟子となっていたアリマタヤ*のヨセフという人が、イエスの死体を取り降ろしたいと、ピラトに願い出た。ピラトはそれを許したので、彼はイエスの死体を取り降ろしに行った。
39 また、以前、夜にイエスのところに行ったニコデモ*も、没薬と沈香(じんこう)の混合したものを百リトラ*ほどを持ってきた。
40 彼らは、イエスの死体を取り降ろし、ユダヤ人の埋葬の習慣に従って、香料と共に亜麻布で巻いた。
41 イエスが十字架にかけられた所には、一つの園があり、そこにはまだだれも葬られたことのない新しい墓*があった。
42 その日はユダヤ人の備えの日だったので、その墓が近くにあったため、イエスをそこに納めた。
*1 古代ローマの過酷なむち打ち刑、 先端に骨が付いた鉛球を付け、皮膚が切り裂かれていく。 ピラトはこれに王に見立てたいばらの冠とローマ兵の紫のマントを着けさせ、ユダヤ人たちに彼を死刑にするのをとどまらせようとした(ルカ23:16)が、結果的にはひどいものとなった。 イエスはあまりにも弱っておられたので、十字架上で6時間で死なれた
*2 兵士の着る赤紫色のマントを、皇帝の長いマントに見立てて着せた
*3 カイーレ(ギ、呼・命、2・単) be joying、be you rejoicing、喜びあれ、お元気で、万歳
*5 イデー ホ アンスローポス(ギ、主格、単・男) Lo! the human、さあ、この人だ(主格) (cf. エッケ・ホモ(ラテン)、この人を(対格)見よ(動詞、命令) ×)
*7 レビ24:16、より、石打ちの刑
*8 § ピラトは「神の子」という言葉を聞いて恐れた。 ローマ皇帝の称号”ディヴィ フィリウス(ラテン)=神の子”を自ら名乗っている者がここにいて、皇帝に対する反逆罪としてユダヤ人たちが皇帝(ティベリウス)に直訴することを恐れた。 (ルカ13:1に、ピラトがガリラヤ人の血をガリラヤ人たちのささげるいけにえに混ぜた、とあるように残虐な性質ではあった) そのため、イエスの出身について詳しく尋ねようとした(:9)
*12 フィロス(ギ) friend、associate、友、盟友・同志(かたい誓いで結ばれた友)、仲間、 ここで再度、ピラトは、カイザル(テベリオは疑り深い暴君で有名だった)への反逆と脅され、ますます恐れた
*13 正式な裁判: ガバッサ(ギ) ガバタ(アラム語) 台地、盛り上がった所 の意、 大理石のモザイク舗道 のこと、 (エカシスセン(アオ過去、能動、3・単)
<カシゾー には他動詞の意味もあり、この場合、 (イエスを裁判官の座に)座らせた、とも読め、さらなる嘲弄と
死刑をやめさせようとする意図ととれる(=ペテロの福音書))
*14 過越しの準備日 = 金曜日、 (直訳)第6時、 ヨハネの福音書では、(ヨハネが晩年に書いたので、)ローマ式の表示に変えた (← 18:28 では、「夜明け前(午前3−6時)」に、カヤパのところから総督官邸に)
*15 アロン(ギ、命令、アオ過去、2・単) <アイロー raise up、lift up、remove、あなたは上げよ、除け、 § ヨハ5:43 の一回目の成就。後のネロ・カイサル(666の数字を持つ)は反キリストのひな型。 二回目は、世の終わりの時に、にせ預言者により、反キリスト(単数)が自身の名によって来るならば、イスラエルの民は受け入れてしまう(黙示11:7、8)
*17 § ゴルゴタ(アラム語のgulg th '): 城壁北側の外のいわゆる”ゴルドンのゴルゴタ”(崖の岩の形が今でも頭蓋骨に見える)が最も有望。この場所の地下にはエレミヤの洞窟と
地下の石切り場がある。 隣には「園の墓」がある。 「いけにえは宿営の外で焼かれた」事と一致(ヘブル13:11、12、出エジ29:14) (cf. 聖墳墓教会は城壁の中なので異なる)
*19、20 ラテン語の場合、略号で、INRI (IESVS NAZARENVS REX IVDAEORVM)
*22 ホ ゲグラファ(完了、1・単) ゲグラファ(完了、1・単)、which I have written I have written、 ピラトはこの点だけは妥協しなかった、 この掲げた言葉は預言だった
*23 ヘロデ・アンティパスから着せられた派手な衣(ルカ23:11)、 キトン(ギ) tunic、袖なしの丈の長いワンピース型の肌着
*24 詩篇22:18
*26 使徒ヨハネは一早く回復して、十字架の真下に戻ってきていた、 エーガパ(未完了過去、3・単)
<アガパーオ 愛し続けていた
*26、27 十字架上の第3番目の言葉、 (この後、ヨハネはマリヤを連れて一度場を離れ、もう一度戻って来た。 その間の、「エリ、エリ、ラマ、サバクタニ」は聞いていない。突然の暗闇で動けなかった。 ヨハネはマリヤを母として引き取ったので、使徒たちの中で唯一殉教せず100歳近くまで長生きした(「父母を敬え。齢が長くなるため。」、出エジ20:12))
*28 詩篇69:21、42:2、 十字架上の5番目の言葉(十字架のもとにいたヨハネだけが聞き取った)
*30 十字架上の6番目の言葉(十字架のもとにいたヨハネだけが聞き取った、聖書で最も重要な言葉)、 テテレスタイ(ギ、完了、受動、3・単)
<テレ−オ has been finished、has been performed、完了した、完済した、完済の印(「支払い済み」の印、商業用語); (罪の)負債を完済して、=律法の要求を全うして、(信じる)人々の買い戻しが完了したこと (= ホセア3:2)
*31 申命記21:22、23、 ニサンの15日が過越しの第1日=大いなる日、 しかも安息日の備えの日(金曜日)に重なっていた、 § 日没から安息日なので、過ぎ越しの祭りの夕べの礼拝はいつもより早く、午後1時半くらいから始められ、過越しの小羊がほふられる時刻は午後3時頃となり、奇しくもイエスの死の時間と同じ時刻になった。 足(すね)を折る(砕く)と、死期を早める
*34 血と、腹水が流れ出た(すでに死亡していた証拠?)、 cf. 「血を注ぎ出すことがなければ、罪の赦しはない」(ヘブ9:22)、 罪を贖う「血」と、永遠のいのちとなる「水」(4:14)、「腹から流れ出る」(7:38)
の象徴、 (Tヨハ5:6−8は 水の象徴が不明)
*35 § あかしをする者、ヨハネは、実際に目撃したことが、みことば(=真理)にも書かれていたことに気がついたことを、間に挿入した。 アレシノスの(ギ、形容詞、単・女) true、(模型、フィクションに対して、)実体の、本物の、 カケイノス and he、he also、 アレセースの(形容詞、複数・中性) true〜、真理の、 〜は、things(複・中)、 ここでは、36、37節の 聖書のみことば のこと
*36 詩篇34:20、 出エジ12:46、民数9:12
*37 ゼカリヤ12:10、 (黙示1:7)
*38 ルカ23:50、マルコ15:43、 サンヘドリンの有力な議員。 金持ち(マタ27:57)、 アリマサイアス(ギ) Tサムエル1:1 の ラマタイム(エルサレムの北西32キロのエフライムの山地)
*39 ヨハネ3:1−、 没薬 ミルラ、 沈香 (アロエとは明らかに別物、伽羅(きゃら)は後年のものでこれも別)、 100リトラ = 約33kg (1リトラ=328グラム)
*41 マタイ27:60 より、ヨセフが自分用に岩を掘って造った墓
第20章
1 さて、一週の初めの日*に、朝早くまだ暗いうちに、マグダラのマリヤが墓に行くと、墓から石が取りのけられているのを見た。
2 そこで、彼女は走って、シモン・ペテロのところと、イエスが気に入っておられた*もう一人の弟子のところへ行って、彼らに言った。「誰かが、主を墓から取り去りました。どこへ置いたのか、分かりません。」*
3 そこでペテロともう一人の弟子は出て来て、墓へ行った。
4 二人は一緒に走り出したが、そのもう一人の弟子の方が、ペテロよりも早く走って先に墓に着き、
5 身をかがめて*覗き込むと、亜麻布がそこに置いてあるのを見たが、中へは入らなかった。
6 それからシモン・ペテロも続いて来て、彼は墓の中に入った。そして、亜麻布がそこに置いてあるのを見たが、
7 イエスの頭に巻いてあった布はその亜麻布のそばにはなくて、離れた別の場所に巻いたままで置かれていた*。
8 すると、先に墓に着いたもう一人の弟子も入って来て、これを見て信じた*。
9 しかし、彼らは、イエスが死人たちの中から、よみがえらなければならない、という聖句*に、まだ気がついていなかったのである。
10 それから、二人の弟子たちは自分の家に帰って行った。
11 しかし、マリヤは墓の外で、墓に向かって立って、泣いていた。そして泣きながら、身をかがめて墓の中を覗くと、
12 白い衣を着た二人の御使いが、イエスの死体の置かれていた場所に、一人は頭の方に、一人は足の方に、座っているのが見えた。
13 すると、彼らはマリヤに、「女よ。なぜ泣いているのですか。」と言った。マリヤは彼らに言った。「私の主を、誰かが持ち去りました。そして、どこに置いたのか、分からないのです。」
14 そう言って、後ろを振り向くと、そこにイエスが立っておられるのを見た。しかし、彼女にはイエスであることが分からなかった。
15 イエスは彼女に言われた。「婦人よ。なぜ泣いているのですか。誰を捜しているのですか。」 マリヤは、その人が園の番人だと思って言った。「もしあなたが、あの方を動かしたのでしたら、どこへ置いたのか、どうぞ、言って下さい。そうすれば私が引き取ります。」
16* イエスは彼女に、「マリヤ。」*と言われた。マリヤは振り返って、イエスに、「ラボニ*。」と言った。それは、先生という意味である。
17 イエスは彼女に言われた。「わたしに、しがみついて*はいけない。わたしは、まだ父のみもとに上ってしまっていないからです*。ただ、わたしの兄弟たちの所に行って、『わたしは、わたしの父またあなたがたの父であり、また、わたしの神またあなたがたの神であられる方、その方のもとへ上る。』と、伝えなさい。」
18 マグダラのマリヤは弟子たちのところに行って、主を自分の目で見たことと、イエスが彼女に言われたこれらのことの、知らせを持って行った*。
19 その日、すなわち、一週の初めの日*の夕方、弟子たちはユダヤ人を恐れて、自分たちのいる所の戸を皆閉めていると、イエスが入って来られ、彼らの真中に立たれ、「あなたがたに平安あれ。*」と言われた。
20 そう言って、両手と片方のわき腹とを、彼らに示された。弟子たちは主を見て大いに喜んだ。
21 イエスはもう一度、彼らに言われた。「あなたがたに平安あれ。 父がわたしを遣わされたように、わたしもまた、あなたがたを送り出します。」
22 そう言われてから、彼らに息を吹きかけて、言われた。「聖霊を受けなさい。
23* 誰であっても、あなたがたがその人の罪を赦すならば、赦され、あなたがたが留め置くならば、罪はそのまま残ります。」
24 十二弟子の一人で、デドモ*と呼ばれているトマスは、イエスが来られたとき、彼らと一緒にいなかった。
25 他の弟子たちが、彼に、「私たちは主を、この目で見た。」と言うと、トマスは彼らに言った。「私は、彼の両手に釘あとを見て、私の指をその釘あとに入れ、また、私の手をそのわき腹に入れてみなければ*、決して信じません。」
26 八日の後*、イエスの弟子たちは再び集まっていて、トマスも一緒にいた。戸はみな閉じられていたが、イエスが入って来られ、真中に立たれ、「あなたがたに平安あれ。」と言われた。
27 それからトマスに言われた。「あなたの指をここに持ってきて*、わたしの手を見なさい。手を持ってきてわたしのわき腹に入れてみなさい*。信じない者にならないで、信じる者になりなさい。」
28* トマスはイエスに答えて言った、「わが主。そして、わが神。」*
29 イエスは彼に言われた。「あなたはわたしを見たので信じたのですか。見ないで信じる者は、幸いです。*」
30 イエスは、この書に書かれていないしるしを、他にも多く、弟子たちの前で行われた。
31* しかし、これらのことを書いたのは、あなたがたがイエスは神の子キリストであると信じるようになる*ためであり、また、あなたがたが信じ続けて、イエスの名によって永遠のいのちを持ち続けているためである。
*1 日曜日 (土曜は安息日で静かにしていた(ルカ23:56)、土曜の日没後に香料を買いに行った(マコ16:1、2))
*2 エフィレイ(ギ、未完了過去、3・単) <フィレーオ was fond of、ずっと好んでいた
*5 パラキュプサス(ギ、アオ過去、単・男) <パラキュプトー stoop to a thing in order to look at、かがんで(よく見る); 一心に見つめる(ヤコ1:25、Tペテ1:12)
*7、8 § 布が巻かれたままの形で置かれ、死体がすっぽり抜けた状態であるのを見て、ヨハネは最初の「見ないで信じる者」
となった。 ただし、彼らがイエスの復活を、みことばからはっきり理解したのは、復活・昇天の後 (2:22、12:16)
*9 使徒2:27、詩篇16:10、 グラフェー(ギ、単数・女) writing、the Scripture、(一つの)書いてある言葉、聖句
*16 § 良い羊飼いは羊を名前で呼ぶ。(10:3) 羊は羊飼いの声を聞き分ける。(10:27) この一言が、マリヤに全てを悟らせた。 復活のイエスがまず第一に会われた人物は、使徒たちではなく、(解放により)多く愛された、マグダラのマリヤだった、 マリア(ギ) (マリアム(アラム語)と書く写本もある)、 ラボニ(アラム語) master、teacher、先生、教師 (マコ9:17、10:17、18、51)
*17 ハプトー(ギ) fasten to、adhere to、結びつく、固定する、くっつく、 アナベベーカ(ギ、完了、1・単) <アナバイノー have gone up、have risen、上がって、上ってしまって、 § 完了形なので、イエスの昇天が完結していない の意 : 顕現の時期 ・・・ 霊だけと、栄光の御体との、中間の特殊な状態
*18 アパンゲロー(ギ) bring tidings、proclaim
*19 マリヤが知らせを持ってきた、その復活の日曜日、 エイレーネー ヒューミン(ギ) peace to you、 ヘブライ語訳聖書では、シャローム ラーケム(ヘ)
*23 § 使徒たちに、人の罪を赦すか、罪に定めるかの、権限を与えられた
*24 デドモ: 双子(ディデュムス(ギ)) の意、
*25 トマスは、イエスの十字架のしるしを見るだけでなく、触らないと信じない、と言ってしまった
*26 この数え方で、次の週の日曜日
*27 イエスはトマスに、ここでも触れるのではなく、傷穴の空間に差し入れよ、と言っている(触れていない)、 しかし、完全に霊だけの存在ではないことは、食事をとられたことにより明らか(ルカ24:42、43)
*28 ホ キュリオス ムウ カイ ホ セオス ムウ(ギ) my the Lord and my the God、私の主、そして、私の神、 § ヨハネの福音書は、「イエスの神性」をあかしするのが中心テーマ。 トマスは疑り深い人の代名詞とされてしまったが、この20章は、本書の事実上の最後の章(21章は、同一著者による
付け足し)であり、ここでトマスは、イエスを、「わが神。」と、本書の締めくくりにふさわしい最高のあかしをしている
*29 マカリオス(ギ) blessed、happy、幸い、 § 他の使徒たちのように、見てから、信じても、幸いなことには変わりない。 ここでは、トマスの態度の問題を言われた。
*31 ピステューセーテ(ギ、アオ過去(不定過去)、2・複) 信じるようになるため、 本書の目的 = イエスが「神の子キリスト」であることを信じるようになるためと、信じ続けているため
第21章*
1 その後、イエスはテベリヤの湖のほとり*で、ご自身をもう一度弟子たちに現わされた。その現わされた次第は、こうである。
2 シモン・ペテロが、デドモと呼ばれているトマス、ガリラヤのカナのナタナエル、ゼベダイの子ら*や、他の二人の弟子たちと共にいたときのことである。
3 シモン・ペテロは彼らに、「私は漁に行く。」と言うと、彼らは、「私たちも一緒に行きましょう。」と言った。彼らは出て行って、舟に乗った。しかし、その夜は全く魚が獲れなかった。
4 すでに夜が明ける頃になって、イエスが岸に立っておられた。しかし弟子たちはそれがイエスだと分からなかった。
5 イエスは彼らに言われた。「子供たちよ、何か食べるものがありますか」。彼らは「ありません。」と答えた。
6 そこでイエスは彼らに言われた。「舟の右の側に網をおろしなさい。そうすれば、見つかる*でしょう。」 彼らは網をおろすと、今度は非常に多くの魚が入ったので、網を引き上げることができなかった。
7 イエスが愛しておられた*弟子が、ペテロに、「主です。」と言った。シモン・ペテロは主であると聞いて、裸だったため、上着をまとって湖に飛び込んだ。
8 他の弟子たちは小舟に乗って、魚の入っている網を引きながら帰って来た*。陸からはあまり遠くない九十メートル*ほどの所にいたからである。
9* 彼らが陸に上って見ると、炭火が起こしてあり、その上に魚が載せてあり、またそこにパンがあった。
10 イエスは彼らに言われた。「今獲れた魚を、少し持ってきなさい。」
11 シモン・ペテロが行って、網を陸へ引き上げると、百五十三匹の大きな魚でいっぱいになっていた。それほど多かったが、網は破れないでいた。
12 イエスは彼らに言われた。「さあ、朝の食事をしなさい。」 弟子たちは、主であることに気がついていたので、誰も、「あなたはどなたですか。」と、あえて尋ねる者はいなかった。
13 それから、イエスは来られて、パンを手に取って彼らに与え、また魚も同じようにされた。
14 イエスが死人たちの中からよみがえられてから、弟子たちにはっきり現われたのは、すでに三度目である。
15 彼らが食事を済ませると、イエスはシモン・ペテロに言われた。「ヨナの子シモン*。あなたはこの人たち以上に、わたしを愛しますか**。」 ペテロは言った。「はい。主よ。私があなたを愛する***ことは、あなたがご存じです。」 イエスは彼に、「わたしの小羊*を養いなさい*。」と言われた。
16 またもう一度彼に言われた。「ヨナの子シモン。わたしを愛しますか**。」。彼はイエスに言った、「主よ。そうです。わたしがあなたを愛する***ことは、あなたがご存じです。」 イエスは彼に言われた。「わたしの羊を牧しなさい*。」
17 イエスは三度目に言われた。「ヨナの子シモン。わたしを愛しますか***。」 ペテロは「わたしを愛するか***。」とイエスが三度も言われたので、心を痛めてイエスに言った。「主よ。あなたはすべてをご存じです。わたしがあなたを愛して***いることは、ご存知です。」 イエスは彼に言われた。「わたしの羊を養いなさい。
18 まことに、まことに、あなたに言います。あなたがもっと若かった時には、自分で帯をしめて、どこへでも行きたいところを歩き回っていました。しかし年をとってからは、自分の手を前に伸ばして、他の人があなたに帯を結びつけ、行きたくない所へ連れて行きます。」
19 これは、ペテロがどのような死に方*で、神の栄光を表すかを示すために、話されたのである。こう話してから、「わたしについて来なさい。」と言われた。
20 ペテロはふり返ると、イエスが愛しておられた*弟子がついて来るのを見た。この弟子は、あの晩餐のときイエスの胸に寄りかかって、「主よ。あなたを引き渡す者は、誰ですか。」と尋ねた者である。*
21 ペテロはこの弟子を見て、イエスに言った。「主よ。この人はどうなるのですか。」
22 イエスは彼に言われた。「もし仮に、わたしが来る時まで彼が生き残っていることを、わたしが望んでいるとしても、あなたには何の係わりがありますか。あなたは、わたしについて来なさい。」
23 それゆえ、この弟子は死なないといううわさが、兄弟たちの間に広まった。しかしイエスは、彼が死ぬことはないと言われたのではなく、ただ、「もし仮に、わたしの来る時まで彼が生き残っていることを、わたしが望んでいるとしても、あなたには何の係わりがありますか。」と言われたのである。
24 これらの事についてあかしをし、またこれらの事を書いたのは、この弟子である。そして彼のあかし*が真理を語っている*ことを、私たちは知っている。
25 イエスが行なわれたことは、この他にも数多くある。もし一つ一つ書きしるすならば、世界もその書かれた巻物を収めることはできないと、私は思う。アーメン。
* 21章は、ヨハネの福音書20章までと同じ文体なので、同一筆者(使徒ヨハネ)による追加文とされる。しばらく異邦にいてギリシャ語に通じた人物と思われる。 (アガパオーと
フィレオー のくだりは、ヘブライ語(同じ アーアッブ、愛する)では厳密には訳せない)
*1 イエスがガリラヤに先に行かれて、そこの山(タボル山)で弟子たちと会われ(マタイ28:16、マルコ16:7)、その後弟子たちはエルサレムに戻った(ルカ24:49) この、ガリラヤにいた時の、3度目の顕現の様子
*2 ゼベダイの子、ヨハネの名がここに初めて登場する
*6 ヒュリスコー(ギ) come upon、hit upon、find、see、見出す (マタイ7:7)
*7 エーガパ(ギ、未完了過去、3・単) <アガパーオ loved、愛し続けていた
*8 引き上げることができないので、そのまま水中を引いて来た、 (直訳) 200ペーキュス、 1ペーキュス(1キュビト) = 45cm
*9 獲れた魚を持ってくる前に、イエスは魚とパンを用意されていた、 (ピーターズ・フィッシュ: 全長30cm前後?。クロスズメダイの一種で、白身で淡白な味)
*15 バル・ヨナ(アラム語): ヨナの子、 シモン: シメオン、聞かれる (マタイ16:17)、 アルニオン(ギ) little lamb、lamb、小羊、 ボスコー feed、養う、 § ペテロが3度主を否定したので、イエスは3度、愛するか、と聞かれた。
ペテロは3度、愛する、と告白することにより、罪許され、羊の牧者である「牧師」に任命された。 小羊を飼うことの条件は、第一に
主を愛する者であること
*16 ポイマイノー(ギ) keep sheep、rule、govern、羊を飼う、治める、牧する (黙示2:27)、 プロバートン sheep、羊
*15、16、17 ** アガパ−オー(ギ) welcome、love dearly; contented 歓迎する、親しく愛する; 満足する、 *** フィレオー approve、like、be fond of; kiss 良いと認める、好む、気に入る; キスする、 § 本来の会話では、アラム語で話されたと思われる。
ヘブライ語新約聖書では、 フィレオー(ギ)を、 アーアッブ(ヘ)、love、(広範囲な「愛する」の意)、 アガパオー(ギ)を、 レ ヒセアヘヴ(ヘ)、fall in love (with Me)、愛に陥る、 と表現している
*19 伝承によれば、AD67年にネロによって、逆さ十字架 で召された、 本書を書いたときには、すでに殉教していた
*20 エ−ガパ(ギ、未完了過去、3・単) loved、愛し続けていた、 ヨハネ13:25
*24 マルテューリーア(ギ、単数・女) testifying、testimony、あかし、 アレセース(ギ、形容詞) true、speaking the truth、真理を語る