3) 母性の悲惨;
・ うば捨て山;
昔の東北のある貧しい地域で、”口減らし”の為に行われてきた残酷な風習である。
村の掟により、自分の母親を山に背負って捨てに行ったが、結局、背負ったまま降りてきたと言う話がある。
捨てられた老婆は、飢え渇き、夜の寒さに凍え、カラスに目をえぐりとられ、山イヌの群れに引き裂かれて死ぬのである。
今までいっしょうけんめい働いてきたのに何も報われず、村人に見捨てられ、そして、お腹を痛めた息子に捨てられ、なんと悲しい思いをし、なんと恐ろしい思いをし、また、なんと激しい苦痛の中でこの世を去ったのであろうか。
・ 大戦時の若い特攻隊;
太平洋戦争末期の、人間爆弾となった若い特攻隊たちの最期の言葉のほとんどは、無線の記録によると、”大日本帝国万歳”でも”天皇陛下万歳”でもなく、”お母さん”であった。
時代が、厳しく統制され、国家の権限が厳しかったゆえ、本当に最後に慕い求めたのは母親しかいなかったのだ。しかし、次の瞬間、激烈な死の苦痛とともにバラバラになって吹っ飛んでしまったのである。
・ エルサレム陥落時のこと;
ローマに寝返って生き恥をさらしたユダヤ人の作家ヨセフォスの文による。
AD70年、ついにエルサレムに神のさばきが下り、ティトゥスの率いるローマ軍がエルサレムの城壁を越えなだれ込んでいった。エルサレムはなかなか降伏せず長い間兵糧攻めを受けていてのであるが、そこでローマ兵が見たものは、屈強な兵士たちさえもたじろぐほどの凄惨な光景だった。
ひどい飢えの為、母親が自分の幼い子供を焼いて食べていたのである。そして、そのローマ兵にもその肉を勧めたのである。エルサレムが滅亡する寸前の、弱肉強食の世界である。
(これは、神に逆らい続けた結果としての、神のさばきの預言の成就である。(哀歌4−10など))