(2) 遅延選択実験
(**米・メリーランド大、独・ミュンヘン大、各独立に実験、1993〜95)
光子が1個ずつ出るように充分出力を絞ったレーザー光を、ビームスプリッターで互いに直交する2つの偏光に分け、それぞれ光路1,2を進ませる。光路1は高速の切換スイッチにより、粒子をカウントする光検出器の方向と、光路2からの光と合成して(このとき、光路1の偏光を90°回転させ光路2との振動方向をそろえる)干渉縞を観測する方向とに分けられるようにする。
** 実験の詳細
光路長 ・・・・・・ 光路1,2共に 4.3m (光の通過時間 14.5ns)
切換スイッチ ・・・ ポッケル・セル(電圧をかけると複屈折を起こす結晶で、偏光を90°回転させるよう調整) + 偏光板
切換時間 ・・・ 9ns
実験結果は、@ 粒子として観測するように切換スイッチを選ぶと、光子はビームスプリッターを素通りして光路1のみを通り、粒子として観測され、また、A 波動として観測するように切り換えると光子はビームスプリッターで2つの偏光に分けられ、光路1,2の両方を通って再合成され、干渉縞すなわち波動として観測された。
検出ルート切換の図
そして、さらに驚くべきことに、光がビームスプリッターを出たはずの時刻より後に切り換えを行っても、同様の結果が得られたのである。
切換スイッチ | 光の状態 | 光路 | ビームスプリッター |
@ | 粒子 | 1 (1光路) | 透過のみ |
A | 波動 | 1、2 (2光路) | 透過と反射 |
したがって、量子力学の主張(コペンハーゲン解釈)がさらに強く次のように示されたのである。
実験事実という範囲内で、
1.量子状態は、超光速の遠隔作用で測定装置の変化に応じて変化する。
2.粒子性−波動性だけではなく、光の通り道もそれだけでは物理的意味を持たず不定である。(***)
*** 中性子線の分割・再合成の実験でも、干渉計中のどの経路を通ったかが不定であるという結果が出された。