3. 町田・並木理論


 量子力学では波動関数によって量子状態を表現する。しかし、これは量子状態が完全に重なり合っている”純粋状態”の場合にのみ有効な方法であり、一つの状態ベクトルによって表現できる。
 ところが、干渉し合わない多粒子が共存する”混合状態”では、各粒子の状態が測定によって変化するというパラドックスが発生する。


 日本の町田氏及び並木氏が提示した”統計作用素”を状態ベクトルの代わりに用いる事によって解決された。これは、系の状態のあらゆる可能性を同時に表現するもので、その結果、EPR問題のように、観測によって以前の系と分離されて混合状態になる場合でも正しく扱うことができ、パラドックスは発生しない。

              →   理論の詳細;


 町田・並木理論によるいくつかの結果を述べると、次のようになる。

 (1) 全系が一つの純粋状態であっても、一般に、その部分系は混合状態。

 (2) 閉じた系における統計作用素は時間によらない。すなわち、閉じた系が純粋状態ならばいつまでも純粋状態であり、混合状態ならばいつまでも混合状態である。
   → 外部からの影響を受けないならば、干渉している状態から粒子が自動的に分離するような事はない。また、真空という一つの純粋状態から粒子が分離生成して混合状態になることもない。

 (3) EPR現象の観測に伴い、全系は純粋状態から混合状態へ変化する。その際、部分系として見ると、粒子2の状態はもう一方の粒子1の測定によって何ら影響を受けない

        

 したがって、すべては初めから決定されていて、観測者にわからないだけである。すなわち、”不定”という本質的な意味の量子状態は存在しない
 (偶然の否定、したがって、偶然という概念に基づくすべての物理的仮説、たとえば、”量子ゆらぎ”などの否定。)