5. 電子回路の相互言及
思索において、1) 論理的真偽も、2) (2進法としての)すべての数値も、”0”、”1”のみで表現される。(数値の場合は桁上げで表示される。)
それだけでなく、自然においても、電気のデジタル信号も電位差の”L”、”H”(= それぞれ”0”、”1”)という2種類の値で表現できるので、このデジタル信号を使って多くの計算をすることができる。
(1) ゲーデル命題の物理化:
さて、論理的な”決定不能命題”に相当するものは、電子回路にも現れる。電子回路は物理的なメカニズムであるから、この決定不能命題のやりとりは時間的に掃引(そういん)されて、ある周波数をもつ電気的な”発振”現象となる。
何らかの方法で 出力の一部を 位相を反転してもう一方の入力にフィードバックする機構を作ると、増幅器(アンプ、能動素子)は、他の受動素子(コンデンサー
C、抵抗 R、インダクタンス L)の組合せによる時間的遅れを伴って、出力信号の反転を繰り返す。
(cf. 1つのアンプで信号を反転する”負帰還”は、アンプの出力を少し下げるだけである。負帰還は、回路の寄生発振を防ぎ
増幅動作を安定させるために用いられる。)
2つのアンプに負帰還をかけるメカニズムは、論理的に否定的な”自己言及”や”相互言及”を組み込むことに相当するから、発振回路は 物理的な”ゲーデル命題”であると言える。
もちろん、発振は純粋な物理現象であって、物事の真偽や矛盾や善悪の意味を持たない。コンピューターによる計算結果についても、人間がその意味付けを行う。
(2) 無安定マルチバイブレーター:
電源を入れると自動的に発振してパルス波形を作り出す回路で、デジタル回路の発振器としてよく用いられる。これは、電子回路における”相互言及”の形である。(* デジタル回路の基本要素は、NAND、NOT で、”反転”機能を持つ。)
たとえば、半導体アンプの反転の入力動作電圧(”H”、”L” 状態を認識する
スレシホールドレベル)を、それぞれ VL = 1.4V、VH =4.5V、 C = 4.7μF、R =33kΩ とすれば、
半周期 T = −C R ln (VL/VH) = 0.18(s)
∴ f = 1/(2T) = 2.8(Hz)
(アンプには、TTL IC の74LS00・・・NAND回路×4ヶ、74LS04・・・NOT回路×6ヶ
などが使える。 C1・R1とC2・R2の値を変えれば、幅の異なる方形波になる。)
単安定、および、双安定マルチバイブレーターも、論理的な”不定”状態を作る。双安定マルチバイブレーターの動作は、フリップ・フロップ回路(フリップ・フロップ = シーソー、ぎっこんばったん)の動作と同じである。
* また、自己言及に相当する回路は、自励発振回路などが挙げられる。これは LC 共振器から出力を、直線性の良いアナログ増幅器(トランジスター)にフィードバックする回路なので、出てくる波形は正弦波である。LC共振器の周波数は、 f = 1/(2π√(LC))。
** LC 共振器の代わりに水晶振動子を用いることもできる。この場合、水晶の圧電特性により機械的共振となり、やはりトランジスターのベースへ正帰還する。(水晶の板厚方向の超音波の速度分遅れて帰還。発振周波数の精度は水晶の機械的精度による。)
その他、分布定数回路、マグネトロンなど、何らかの形でタイミングを遅らせた正帰還をかける形で発振器となる。
(3) 指数関数による自然の記述:
方程式とは、変数 x についての”自己言及”の形(連立方程式のような複雑なものには”相互言及”も形成できる)であり、その無限の可能性の中から、それを”満たす”解、あるいは、関数を求める性質のものである。
自然の中にあるサイクリックな復元の形態を見てみよう。次の、微分方程式とその解を考える。
@ は、 f ’= f” = ・・・ = f であり、 exp x の定義そのものである。 しかし、 exp x 型 の関数は
自然界には存在しない。
A は、1回微分すると −符号が付く物理法則:
ファラデーの法則 ・・・ 、 ヘンリーの法則 ・・・
これは オームの法則 V = i R を用いて、変数分離形の微分方程式にすることができ、簡単に解かれる。
すなわち、exp(−x) 型の関数となり、自然にだらりとした「死」の物理現象を表わす。熱力学の記述も、この 変数分離型の1階の微分方程式と exp(−x)
の形となる。ばらばらの砂粒のような原子、分子は、統計力学によってこの”死の
e ”が現れてくる。(スターリングの公式 → ボルツマンの式 : S = k ln
W)
B は、 f = exp(i x) として、 f’ = i exp(i x)、 f” = −exp(i x) = −f のように、2回微分して−符号になる物理法則である。ファラデーの法則のVに ヘンリーの法則のVを代入すると(LC共振回路、電流の方向が逆になり、符号が逆になることに注意)、
、 この解として、
となる。
これは、VやQ(電荷)についても成り立ち、LC共振回路の永続的な電気的振動現象を表現している。(電気抵抗が無ければ永続的に振動する。)
このような、2階微分方程式の解である、指数関数の冪に虚数単位が入った
exp(i x) 型の関数は、「いのち」の物理現象を表わしている。 exp(i x) の形は 量子力学の波動関数に現れているので、ミクロの水面下の状態は、ことごとく、創造主の”いのち”で満ち溢れていることになる。
したがって、負帰還(=論理的に反転する自己言及、相互言及)による発振回路の電気振動は、創造主のいのちを象徴しているとも言える。