4−2 級数の中の虚数の振舞い  ・・・  4.の無限級数の証明



  ・  2)式  調和級数の総和が発散する事:

  古典的でエレガントな証明である。
              
                                                    (ニコル・オレスム 1350?・仏)
  マイナスや虚数の概念はこの時代には無かった。学者の間でも、マイナスは不吉なものとしてタブー視されていた。この時代の十字架信仰がなっていないことと同じである!。 調和級数の和の発散はおそろしく遅く、100億項目までの部分和が約23.6。 S1の部分和が100に達するには、1.5×10の43乗以上の項が必要。 それでも ∞ に発散する!。



  ・  3)式  2 = π2/6:

  三角関数のべき級数展開
            より、次の無限次多項方程式
    ・・・ @
  をつくる。
  これは、sin(√y) = 0 の時にのみ根が存在する。 上式の右辺は y = 0 のとき 1になるから  y = 0 は根ではない。すなわち、根は、
    (n は0でない任意の整数)  あるいは、
                                                          ・・・ A
  ここで、多項方程式  には
  代数学の基本定理より n 個の根 が存在し、左辺は因数分解されて
                 
       の(n−1)乗の係数は   となることより、

       について、
                         
  これが無限次の多項方程式にも成り立つとすると、 a1 すなわち @の級数の2項目は、Aを用いて、
                  
  したがって、 2 = π2/6 を得る。                                (オイラー・1739)



  ・  6)式  メルカトルの式:

  幾何級数の式(* 級数に公比をかけて引くと得られる)
           
  を積分すると、
           

  出てくる積分の不定定数は、z = 0 とおけば 両辺が0となって消去される。 (ニコラス・メルカトル 1668・デンマーク)
  また、z = 1 とおけば
            
  となる。



  ・  7)式  グレゴリーの式の証明:

  虚数単位の性質を利用して、π の値を計算する式を導く。( i からπが出てくる!)
  オイラーの関係式から、exp( i π/2 ) = i より、さらに i そのものが自在に変化して、
           

  メルカトルの式から、 z = i として 対数を展開すると、
         
  両式の各項どうしを引いて
           
                                            (ジェームズ・グレゴリー 1671・スコットランド)

  グレゴリーの式は、πを計算するには収束が非常に遅く全く実用的でない。そのため改良が考えられ、いくつかの式(シェルバッハ、マシン)が同様にして導かれた。
          
  対数を展開して
       

  また、さらに収束を速めて、
             より、
 
        = 4 tan‐1(1/5) − tan‐1(1/239)              (シェルバッハ/マシンの式・1706)

  この式を用いて、約250年後(1949)に世界最初の電子計算機 ENIAC が πを2000小数位以上計算した。現在でも収束の早い式として知られている。



  ・  10)式  Sp と γ の関係式:

  メルカトルの式
           
  に  z = 1、1/2、1/3、1/4、・・・ を代入すると、

           

  これらの式を加え合わせると、対数の項は ln (n+1) のみが残り、

       
  したがって、オイラーの定数 γ と  p が2以上の Sp との関係式が導かれる。
      


  ・  11)式  オイラー積:

  ゼータ関数による素数の分布の表示式を計算する。
  ζ(z)に1/2^zをかけると、
         
  これをζ(z)から引くと、
          
  これに1/3^zをかけると、
          
  これを(1−1/2^z)ζ(z)から引くと、
          
  このように、1/n^z(n = 素数)を逐次かけて上の式から引く操作を繰り返すと、素数の倍数をすべて引き去ることになり、オイラー積
                
  が導かれる。


  ・  12)式  素数の無限性:

  オイラー積の式で、 z = 1とおくと、
          
  両辺の対数をとると、総積の対数は総和になるから、
           
  メルカトルの式に z = −1/P とおいて対数部分を展開すると、
           
  より
           
  右辺の第2項は幾何級数とみなすと、
           
  したがって、
           

  1 = ∞ より、 ln (S1 = ∞ 、  ゆえに、
                                






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