5−3 コーシーの積分定理:
歴史的な発見順とは逆であるが、ストークスの定理を先に述べて骨組みを作り、それから コーシーの積分定理(1814)に行った方が理解がしやすいと思われる。
(ストークスの定理は、グリーンの定理、ガウスの定理、ロシアではオストログラズキーの定理とも呼ばれる。19世紀の時代は、電磁気や流体、重力の理論で、体積と曲面の積分の問題で必要とされていたので、同時に多くの人が報告した。)
積分計算に用いられるコーシーの
第1積分定理は、複素平面における関数の制限事項である正則性、および、最も直感的に物理的な概念の式を導入できる ラプラスの式(調和方程式)と同じことを言っている。
主が定めた正則性という律法は、御子の十字架(e 、π)によって完全に成就し、聖霊様( i )によって結果的に守ることができる。正則でない特異点を含む場合でも(真性特異点でないかぎり)発散の危険を狡猾に回避することができる。すなわち、特異点のまわりを一周した次の世への復活に希望がかけられている。(ロマ ) このとき 量子論的には 量子数が一つ増え、エネルギー準位が一段階上がる。没我するわけではない。
そして復活(一周 2πi )のためには、御子の十字架の時(πi )を経なければならなかった!。
(1) ストークスの定理:
実数上の線積分と面積分を結びつける式。
実平面内の積分路 C を境界とする二次元的変域 R について、
ただし P、Q は x と y の実関数。
まず、右図の四角い領域における積分を考える。
右辺の第二項について、
C2 、C4 に沿う場合は、 dx = 0 より それらの積分は 0 であるが、それらも形式的にあらわすと、
第一項についても同様に、C1、C3 に沿って dy = 0 より、
次に、任意の形の領域について、図のように、四角を薄い長方形にして積み重ねると、長方形どおしが接する部分は打ち消し合い、外周部
C のみが積分に有効な行程として残る。
(2) コーシーの第1定理(コーシーの積分定理):
複素平面上の経路積分を考える。
複素積分の定義は、複素平面の領域 D(D 内に 経路 C)で定義された
連続関数 w = f(z)について、
ただし、ξi は C 上で zi と zi+1 の間にある任意の点。 定義の形式は実数の場合と同じであるが、グラフのつくる面積ではなく、関数 f(z) の平均的挙動(ベクトルの総和の極限)を意味する。
f(z) を 領域 D で定義された正則関数、C を D 内にある単一閉曲線(内部と外部が定義され、線は交叉しない)とすると、
(コーシーの第1定理)
これは、整式(多項式)や収束円内でのべき級数は、始点 α と終点 β だけで値が決まり、f(z)
= F’(z) より F(z)が正則関数であり、∫C f(z)dz = F(β)−F(α) となり、収束円内にある閉曲線では 0
になることを表している。 領域 D に穴があいている場合、そこは”外部”になる。
u 、v を x 、y の実関数として、
ここで ストークスの定理より P = u、 Q =− v とおくと、
それぞれの積分内は、f が正則関数である条件から、u、v は コーシー・リーマンの方程式
を満たすので、
∴
この不思議な定理は 実数体には見られなかったもので、このように”正則性”の条件から来ている。 どんな関数であっても、ただ ”正則” であるということだけで、複素平面上を一周して積分すると
0 になるのである! (逆(積分が0であるなら f は正則)もまた真であることも
後の時代に証明された)
正則性は、整式、(分母が 0 でない)有理式、そして 指数関数(+ 三角関数)、および それらの組み合わせのみがクリヤーする。
(3) コーシーの第2定理(コーシーの積分公式):
では、積分路の中に 関数が”正則でない(解析的でない)点” を含む場合はどうなるだろうか?
たとえば、分数式 f(z)/(z − z0) は z = z0 で 爆発(∞ に発散)する! そのような点は、1位の特異点(あるいは 単純な極)と呼ばれている。 f(z)/(z−z0)2、f(z)/(z−z0)3、は 2位、3位の特異点をもつという。 分数式の積分は特異点を特別な方法によって処理しなければならない。
論理的展開としては、特異点を”外部”の点として避け その領域で関数が正則であるとして 第1定理を適用し、それから極限へもっていく。
図のように、 a から出発して C - ab - C * - ba を通って a に戻る経路を考える。
C * は z0を中心とする 半径 ρ の円とする。 この経路は、”単一閉曲線”になっていて、特異点
z0 は曲線の”外部”にある。
したがって、この閉曲線内では f(z)/(z − z0) は正則なので、
コーシーの第1定理より、
はコーシー核(積分核)と呼ばれる。 経路 ab と ba (横断線)の積分は相殺され、 C*
の経路は C と逆周りだから、
C*は z0を中心とする円だから、 C* 上で z = z0 + ρexp(iθ) 、
d z = i ρexp(iθ)dθ とおけるので、
ここで、|exp(iθ)|は ρ によらず有限なので、 ρ → 0 にすると、
f(z0+ρexp(iθ)) は 定数 f(z0) となって積分の外に出せるので、
したがって、
(コーシーの第2定理)
(4) 留数(りゅうすう):
実数の定積分の中には、留数を用いて比較的容易に解ける場合が多い。
留数を、特異点(孤立特異点) a として、
と定義する。 すると、 コーシーの第2定理は 留数によって拡張され、
この a1から ak までは C の内部にあり、 外部の点の留数は 第1定理により すべて 0 となる。
・ 例)
について、 分母を因数分解すると、
となり、 a1 〜 a4 は それぞれ f(z) の 1位の極になっている。
図のように積分経路をとると、C の内部にあるのは a1、a2 のみで、
a3、a4 は除外される。
留数を計算すると、
同様に、
ゆえに
経路 C を 図の@からCまでに分けると、
@ は 実軸上の積分になる。
ABC は 次の計算ですべて 0 になる。
したがって、
を得る。
(5) ローラン展開と真性特異点:
テーラー展開を、負べきの項まで拡張したものを、ローラン展開という。コーシーの第2定理から a を中心とする 外側の円 C と 内側の円
C * に沿って、
が導かれる。 ((C の積分) = −(C * の積分)) 特に、a-1 は
留数 になっている。
ローラン展開は、特異点 a の判別に用いられる。
@) 除去可能な特異点: limz→a f(z) = A (A:有限な複素数) ・・・ 負べき項を含まない
A) m位の極となる特異点: limz→a f(z)(z − a) = A (n=m)、 = ∞ (n<m) ・・・ 負べき項は有限個
B) 真性特異点: limz→a f(z)(z − a)^n = ∞ (すべての n について) ・・・ 負べき項は無限個
ex) 真性特異点の例;
・ は、z = 0 の周りでローラン展開すると、
のように 負べき項が無限に現れる。 z が実数の場合、
は +∞、−∞ に振動しながら 0 に近づく。
(「ただ、滅びの子が滅びました。」)