3. サムシング・グレートの存在



  無神論は、あまりにも状況を考えていない短絡的な思想である。

  自然の実態をよく調べると、自然発生的には絶対考えられないいくつかの決定的事実が存在する。その一つとして、生物のDNAが挙げられ、それがあまりにも精緻な”分子レベルの巨大情報の紐”によってできていることから、このことが言えるのである。

  すなわち、DNAは、
    @ 自然発生的に生成できない、
    A 人間や宇宙人(?)が(無生物素材から)作る事も到底できない、
  ならば、消去法により、
    B ある 桁外れに非常に高度な能力を持つ何者か(= サムシング・グレート)が造ったとしか言いようが無いのである。
  それは、DNAが それぞれの生物が発生・成長して一つの個体になるための巨大なプログラムであり、代々複製され、遺伝して伝えられるように、初めから何者かによって造られたということである。(”ニワトリが先か?卵が先か?”の問いには、迷わず、”ニワトリが先”と答えられるのである。)



  DNAは、我々の知る物質の”複雑さ”の極致である。

  DNAは、細胞の核内に 二重らせん形のひも状になって存在し、4種の塩基(A(アデニン)、T(チミン)、C(シトシン)、G(グアニン))が、最も単純なインフルエンザ菌で 180万個、ヒトの場合 約30億個が直線状に配列されている。これは、直線状にして、1個の細胞に含まれているDNAの長さは約1m、ヒトの全体細胞は約60兆個あるから、すべてつなげると 太陽系の直径ほどの長さに達する!
  しかも、DNAは、プラスチックや合成ゴムのような、でたらめにただ単に長い分子(高分子化合物)ではなく、一つ一つの塩基分子がそれぞれ意味を持つ”情報体”高分子である。このようなものが、自然発生的に合成されたという議論は全くナンセンスであり、人間が合成しようとしても全く不可能である。DNAをある箇所で選択的に切断するだけの目的の酵素(* PCR法で用いられる酵素など)でさえも、すべて既存の生物から作られる。


  * 最近、アメリカのキリスト教保守派(福音派)から、アメリカの公立学校の理科過程で、進化論だけではなく”インテリジェント・デザイン論(ID論)”をも教えるべきであるという意見が活発に出されている。アメリカでは1960年代から公立学校における聖書教育を廃止しているが、その後の生物学的発見により、進化論だけでは説明できない細胞やDNAの構造、地層学的発見などから、聖書の記述の正当性、そして、”サムシンググレート(高度な知能)”の存在が必要となっているというものである。(ただし、この”サムシンググレート”がそのまま「神」であるとは言っていない。アメリカ国民の42%が、生物や人間は初めから現在の姿だったと考えている。)

  ** また、科学と神学の共存が模索され、ハーバード大では”神が作った世界における進化”というテーマで、伝統的な神学部と数理生物学などの科学者たちが、約200万ドルのキリスト教財団の寄付金による予算のもとに共同研究を行なっている。それは、自然淘汰とそれに反する道徳心の整合性が模索され、進化における 時空を越えた「神」の介入をも認めるというものである。 ただし、アメリカは、伝統的な宗教国家(人口の半分が教会に所属するクリスチャン、4分の1がプロテスタント・福音派)で、キリスト教が日本の檀家制のような影響力をもつという程度の理由によるもので、このように大まじめに議論されているのである。このことは、アメリカ大統領選の各候補者たちが、宗教票を獲得するために自分が信仰深いことを人々にアピールしていることによっても理解できるが、もちろん、いくら教会に所属し、学術的、政治的に議論したとしても、イエス・キリストを”個人的”に救い主として受け入れないならば、救われて天国に行くことはできない。



  DNAが自然発生的に作られにくいことは、その構造が直線状に非常に長く複雑なこと、しかも、それらをつなげる一つ一つの分子がそれぞれはっきりと区別され、独立した情報としての意味を持たなければならないことから明らかである。このことを考察してみよう。


  (1) 単純な確率計算:

  生物の構成物質であるたんぱく質の簡単なものは340個のアミノ酸が結合して構成されていて、アミノ酸の配列の仕方は 10300通りもある。だから、最も単純に、必要な全ての材料がまわりに満ちている理想的な環境であると仮定しても、自然発生的にこのたんぱく質が生成する確率1/10300、すなわち、少しでも配列の異なる分子を1個づつ加えた総重量は 10280グラム(= 地球の質量の10253倍 = 全宇宙の総重量の 3×10226)というとてつもない量になる。 まして、30億個配列されているDNAが自然発生的にできるわけが無い!。(・・・ できる和気清麻呂だ!?)

  また、できるだけ進化モデルに有利に計算した結果でさえも、最も簡単な生物(ウィルスで塩基の数が100万個程度)が 3兆年(進化論的宇宙の年齢の200倍)の間に自然に発生する確率は1/10280(=ほとんど全くの 0)だった。(マルセール・ゴレ、情報学者)
  この結果は、地球以外の他の惑星においても、宇宙人どころか 細菌のような単純な生命が自然発生する可能性すら完全に否定している。太陽のような星に1個の地球のような惑星があったとして(1000億(銀河系中の恒星の数)の1000億(全宇宙の星雲の数)倍=1022個の地球)、これらのうちのたった一個の惑星に生物が自然発生する確率は1/10268で やはりほとんど全くの0である。

  * ちなみに、太陽系では地球環境に最も近い火星の表面の土に含まれる生物の分析(放射性炭素をマーカーとして入れた養分の変化の追跡、呼吸によるガス組成の変化、光合成の有無)からは全く生物はいないという結果であった(1975・ヴァイキング1、2号)


  (2) 化学平衡論:

  化学平衡とは、その閉じた系の中でエントロピーが最大になることを意味している。原料を反応容器に入れ、化学平衡に達するまで反応させると、必ずある割合でそれぞれの反応物が生成し、自動的に副生成物(不純物)が混在した状態になる。だから、工業的には、目的物質の収率を上げるために、温度、圧力、濃度などの条件を調整して平衡状態をシフトさせ、その後、蒸留、濾過、分液、吸着などの方法によって目的物を人為的に分離・精製する必要がある。

  たとえば、化学反応   a A + b B → a’A’ + b’B’  において、
  平衡状態では、         であり、物質 A と B から A’ だけを作りたくても、どうしても B’ も PB’ という割合で生成してしまう。( Kp(T) は 温度 T における平衡定数、凾f はギブスの標準生成エネルギー)

  ミラーの実験(ユーレイとミラー、シカゴ大、1950)では、容器中の水、メタン(CH4)、アンモニア(NH3)に火花放電を一週間加えるもので、光学異性体の ラセミ体(右旋性アミノ酸と左旋性アミノ酸が50%ずつの混合物)のアミノ酸が生成された。しかし、自然発生的には、ほんの少しでも右旋性アミノ酸が混入すると、新陳代謝のできない異構造のたんぱく質ができあがるため、100%純粋な左旋性アミノ酸のみが材料として存在していなければならない。したがって、この実験は生命体の起源の説明にはなり得ないのである。(アミノ酸は、ただ単に温度が高くなるだけでラセミ体に変化する。)

  また、人間(あるいは、比較的高度な知能を持った宇宙人(?)が仮にいたとしても、)が、純粋な左旋性物質を作ることはできない。生物の構成物質を用いないでそれを作るには、同じ左旋性の物質(左旋性の水晶など、目視で結晶形からその光学異性体一つ一つを分離する)に吸着させ人為的に極限まで分離する方法を考えることはできる。
  * 不斉合成: ノーベル賞学者の野依良治氏は不斉な配位子を持つ金属錯体を触媒とする選択的還元反応を考案した。ただし、触媒の汎用性が無い。 しかし、不斉合成の触媒による方法は、合成のときその異性体生成物の収率が高くなるというだけで、どのような方法によっても完全に100%純粋に作ることは到底不可能である。

  まして、それらの分子量の低い原料を正確に複雑に組み立てていく方法は全く知られていない。(切断の場合は、微生物から取られた酵素を用いて行なうことはできる。)


  (3) 残る可能性 ・・・ サムシンググレート:

  一方、DNA鑑定に用いられるPCR法は、もともとのDNA自身が、周りの構成物質を選択的に摂取して、それ自身のコピーを作り、これを繰り返して一晩で 初めの数を何十万倍にも増幅させている。この方法は、(分析に必要な、部分的な短い塩基配列についてのみではあるが、)所定のいくつかの切断酵素群・合成酵素群と温度をコントロールできる装置により、比較的簡単に操作することができる。

  したがって、初めから、このミクロで非常に複雑なDNAが存在し、それが整えられた環境の中で、自発的に周りにある必要とされる物質を選択・摂取して、それ自身が増殖していった、としか考えようが無いのである。

  そして、それらを初めから設計し、ある時瞬間的に創造した”サムシンググレート”が存在する必要があることが結論付けられるのである。


  ** その他にも、「神による大創造」と「聖書の記述」を傍証する事例はたくさんあるが、”決め手”となるのは、「神の奇跡」の存在である。
      (→ 新しい創造論



   (参考)   「オーパーツと天地創造の科学」、久保有政 著、学研、2004・5; レムナント・ミニストリー
         ・ クリエーション・リサーチ(旧 創造科学研究会)


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