3. 指数関数への複素数の導入
3−2 ラプラス方程式
実軸と虚軸で構成される”平面の数”・・・複素数こそが、思索、および、自然界の諸現象(特に、量子力学)を表現するための数の本質である。複素数の場にあっては、e の指数関数(exp 関数)のみが自由に解析的な振舞いを行うことができるように生き残っている。そしてその評価に、関数が”正則”であるかどうかが与えられている。正則性は、複素関数を考える時の”律法”のような制限事項である。
複素平面上で定義された関数について、次の2条件、1.微分可能、2.コーシー・リーマンの関係式、を満たす時、その関数は”正則関数”(解析的な自由を持つ”正統な”関数)と呼ぶ。
”整式”、”有理式(整式どおしの分数形)”で表される関数は、すべて正則である。ここで、整式の次数を無限に高めて拡張した、”べき級数”も、収束する範囲内で正則関数であり、それ以外には無い。
(たとえば、複素数の実数部分のみに対応する写像(z → x)は正則でない。 ex) 自然の本質は複素数である。量子力学において、電子の波動の干渉によって観測に現れる像(複素数の波動関数の”実数部分”)が確率的である事と関連している?)
e の指数関数や三角関数は、テーラー展開(x = 0 の時マクローリン展開とも言う)によってべき級数に展開され、それぞれの変数に複素数 z = x + i y が導入され 、exp z などが定義される構造になっている。
このようにして定義された複素数の指数関数にも実数と同じように、
1.微分しても変わらない性質 (exp z)’= exp z
2.指数法則 exp(z1+z2)=exp z1 + exp z2 が成り立つ。
指数法則により、複素数を実部と虚部で分けると、有名な、オイラーの公式
exp (z) = exp (x + i y) = exp x ・(cos y + i
sin y)
になる。 z が純虚数 i x の場合、オイラーの関係式 exp(i x) = cos x + i sin x となる。
(1) 正則関数:
複素平面 D(x 、i y)上で定義された実数値関数 u(x、y)、v(x、y)について、
1. u(x、y)、v(x、y)はともに、微分可能
2. コーシー・リーマンの関係式
を満たす時、
f(z) = u(x、y) + i v(x、y) 、 z = x + i y とおくと、
f(z)は D上で正則関数であると言う。
コーシー・リーマンの方程式は、微分をどの方向から近づけて行なっても同じ値になる条件を言っている。
(導き方:→ 3−2)
f(z)、g(z) が領域 Dで正則ならば、
・ f(z)±g(z)、 f(z)g(z)、
・ f(z)/g(z) ・・・・ 有理式 (ただし、f(z)/g(z)の場合、D でg(z)が0でない事)
も正則
(正則な関数の例)
・ f(z) = z は全平面で正則 f’(z) = z’ = 1
・ f(z) = a(定数) は全平面で正則 f’(z) = 0
・ ・・ 収束する 代数式も全平面で正則
・ は、コーシー・リーマンの関係式が成立
z 平面上の、
@) y = b(虚軸に平行な直線)の w平面(w = z2 )への像は、
より、
A) x = a(実軸に平行な直線)は、
より、
y = 1、x = 1 の直線は、z 平面上のP点(1+ i)で交差する
w = z2 によるPの像は、w 平面上の点S
写像によっても交線の角度が保たれている(90°) ・・・・ 等角性
* 正則関数による写像は、等角性が保たれる
(T は w = z2 によって Q、Q’の像が重なり合っているだけ)
(正則でない関数の例)
・ z → z* : 共役複素数への対応 ・・・ コーシー・リーマンの関係式が成り立たない
・ z (= x + i y) → x : その実数部分へ対応 ・・・ (同上)
z平面上の点 z (x、 i y)の共役複素数は、z*(x、−i
y)。それぞれの微係数は、
となり、等しくない。
複素関数の微分では、点 Z に近づくすべての方向で同じ微係数をもつ必要がある。
(2) 指数関数へのテーラー展開による複素数の導入:
正則関数 z のテーラー展開は次の式で与えられる。
実数の指数関数のテーラー展開より、実数値の代わりに複素数を代入すると、
となり、これを 複素数を冪とする指数関数の”定義”とする。
この定義により、次の公式が導かれる。
・ ・・・・ 指数関数の微分
・ ・・・ 指数法則、 特に、z を 実部と虚部で分けると
オイラーの公式
・ となる。
指数関数による写像:
(3) 変形した指数関数の例:
正規のe の指数関数(exp関数)以外は正則性がない。
f の a での1次近似を表現する式は、
f (a + h) = f (a) + f’(a)h + o(h) で与えられる。
( o は、 ランダウの o (hに比べて o は十分小さいという意味で、limh→0(o(h)/h → 0))
・ 指数関数 f(x + i y) = exp(x + i y) について、
w = h + i k に対して、 h、k は0に近いから、 exp 0 = 1、
exp’0 = 1 で近似し、
また、(f g)’ = f’g + f g’ より、
exp(z + w) = exp z ・exp w
= exp z ・ exp h ・
exp(i k)
= exp z ・(1 + h +
o(h))・(1 + i k + o(k))
= exp z + exp z ・(h
+ i k) + o(lwl)
より、
すなわち、 どこから近づけても、 である。((2)の、指数関数の微分と一致する)
・ (指数関数を変形した例) ・・・・ ”nexp” と ”hexp” ((注) ここだけの記号!)
@ ”nexp” (”nise−exp”(”偽 exp”))を、
f(x + i y) = nexp(x + i y) = exp(x + 2 i y) とおく。
この関数 f も連続で、指数法則を満たすことがわかる。
w = h + i k に対して、1次近似は、
nexp((x + i y)+(h
+ i k))
= nexp(x + i y)+nexp(x
+ i y)・(h + 2 i k) + o(lhl +lkl) より、
原点(x + i y = 0)においての複素微分係数は、
のようになり、極限は存在せず、f は z = 0 で 複素微分可能でない。(一つの複素数に定まらない)
A ”hexp” (”han−exp”(”反 exp”))を、
f(x + i y) = hexp(x + i y) = exp((1 + i)x
+ i y) とおく。
同様に、 z = 0 のときの微分係数は、
nexp と hexp への z = x + i y の対応:
それぞれの関数による写像:
z の格子の等角性が exp では保たれているが、 nexp、hexp では歪んでいる。(ハーケンクロイツは逆卍?)