5−2  複素積分の実例:


  複素平面上における積分路積分を考えるとき、コーシーの積分定理が用いられる。このとき、正則な関数は 第1定理により項が消去され、特異点を含むものは第2定理の式が適用され、結局、虚数項が皆消えてしまう!。
  聖霊様が働かれて、”実”が残る!。 
  (複素積分の理論については、5−3 ”コーシーの積分定理”参照)


  (1)
      について、 右図のような積分路 C をとる。

  @ C の実軸部に沿って、  z = x
  A 半円周の弧に沿って 、 
       x = R  のとき、 θ = 0 、 x = −R  のとき、 θ = π
  これは、 R → ∞ の極限の場合に対し、a と b (正の定数)をもつ。

  @とAの積分路の積分に分けると、
          

 ・ 左辺は、
        

  この第2項は、 z = −i b の特異点は 図より C の外側にあるから、この領域で関数は正則なので、コーシーの第1定理より、= 0 となる。

  第1項は、 z = i b の特異点は、 b < R → ∞ で 常に C の内側にあるようになるので、コーシーの第2定理
         で  、 0 i b とおいた場合だから、
        

 ・ 右辺は、第2項(θ の積分の項)
          は、 R → ∞ で 0 に収束する。(*)

  したがって、右辺の第1項だけが残り、さらにオイラーの関係式より、
     
  ここで 実・虚等値より、この第2項(sin の項)は = 0 になる。
  結局、最後まで残ったのは、両辺とも実部のみで、

                  ・・・ (a 、b は正の実数)
  特に、 a = 1、 b = 1 のとき、
                          

  これは、重要な神のメッセージを含み、数学の基本定数 e 、π と ∞ を含む単純でエレガントな式である。
  ( → 7.)


  * 
       が  R → ∞ で 0 に収束することの証明:


    
                                        2 を消して、
             より、
                   オイラーの関係式より、
             より、
       
  ここで θ が 0 から π で 常に  より、
       


  (2)  コーシーの第1積分定理による フレネル積分の導出:


     を図の楔形の積分路で解く。

   実軸正の方向に沿って    z = x 、 dz = dx 、
   1/4 円弧に沿って      z = Rexp(iθ)、 dz = i Rexp(iθ)dθ、
   戻る直線に沿って       z = (1+ i)x 、 dz = (1+ i)dx

  (z) は全複素平面で正則であるので、コーシーの第1定理より、
  
  右辺の第1項は、
        であることが知られている。(ガウス積分の半分、5.の(1)より)
  第2項は、R → ∞ で 0 になる。(**)

  したがって、第3項については オイラーの関係式より、
      
  実虚等値すると、
   より、

  変数を θ2 = 2 2 とおくと、
          ∴     (フレネル積分)
                                      ( ・・・・・ 5の(2)の結果と同じ)


   **   I = (右辺 第2項) とおくと、
  
      φ = 2θ におきかえると、    

      ここで 図より、 φ が 0 から π/2 の間で、直線 y = (2/π)(π/2-φ) = 1 − (2/π)φ が y = cos φ よりも常に下にあるので、

     
    


  (3)
      ただし n、m は非負の整数  について解く。

  被積分関数の特異点は、 円分方程式    の解で、 ド・モアブルの定理より、
                     ・・・ 1)
  の 2 n 個あって、複素平面の単位円周上を分割している。

   (1)と同様に 半径 R、角度 0 から π の半円形の積分路をとると、
       

  右辺第2項は n > m より、 R^2n  は少なくとも  R^(2m+1) よりも 1次多いので、 R → ∞ のとき 0 になる。したがって、
                     ・・・ 2)

  ここで 左辺について、
  被積分関数の部分分数展開として書くと、2 n 個の 特異点はすべて 1次であって、
             ・・・ 3)
  とおける。 ここで、 N は定数とおく。
  積分路は 上半分の半円なので、積分を 上半分と下半分にある特異点によって分けると、
       
   から 2n‐1 までの特異点は、積分路の外部にあるので、 コーシーの第1定理より すべて 0 になる。
  また、 0 からn-1 までの特異点は、積分路の内部のあるので、
  コーシーの第2定理(z) = 1 、 (z0) = 1 とおいた場合で、
       より、    ・・・ 4)

  N p 、 0 <= p <= n−1 とおく。 3) に () をかけて、すなわち、
 
  において、 z → z とすると 右辺の  以外の項は すべて 0 になるから、
            

  ここで、 ロピタルの規則  limx→x0  (x)/g(x) = limx→x0  f’(x)/g’(x)  より、分子、分母をそれぞれ微分した極限は、
            
   に 1) を代入して、
     
  したがって、 2) 4) より、
                
  この総和は  を 公比とする 幾何級数になっているから、オイラーの関係式を用いて整理し、
              が導かれる。
  したがって、      、 n > m  ・・・ 5)
  5)式で、 α = 2 m + 1、 β = 2 n とおけば、
                     (一般的な形)
                   ( ・・・・  オイラーの反射式を導くのに用いられた式(5−1(4)))となる。
  5)式で、 m = 0、 n = 1 のとき、
                  (よく知られた積分)
        m = 0、 n = 2 のとき、
                   (5−3(4)の結果と同じ) などとなる。

 


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